戦いのあと7
わくわくするお姉様の活躍を描いてみたい。
そんな作者の願望から始めた物語です。
この物語のメインテーマは、『格好のいい男前なお嬢様』の物語。
皆が応援したく成る『お姉様』を書きたいと思います。
火曜日と金曜日に更新を行います。
短編の外伝を作成しました。
こうれからも不定期で作成してまいります。
『主人公じゃないけど頑張ります』
40話から45話のお話です。
『帝国の崩壊』
本文で語られている「先の大敗」のお話です。
「さて、これからの作業なんだけど、順に課題を述べて貰えるかしら」
朝食の後、ここにいる幹部、ブルック、バルタザール殿、エリー、アレクセイ、アンゼルム、カタリナ、ハイデ、クヌート、エルンストの全員を集めて会議を開く。
各人の立ち位置は、ブルックはシルディ機関の総帥で学園都市の代官であり、私の活動資金の源である。
(こう言うと何か私の貢君の様に聞こえるけど、シルディ機関の大株主は私で、ブルックは雇われ社長なのだからいいのよ)
バルタザール殿とアンゼルムは相談役。
(アンゼルムには将来的には宰相を任せようと思っていたけど、昨日、戦旗を預けてからは本人的には総戦隊司令長官を目指すつもりかな。まあ、同じ年にアーダルベルトがいるからそれもいいけど。ああ、総戦隊司令長官と言うのは、私の考えた役職で、全ての戦隊の長官の事で、今までなら総騎士団長って所ね。壊滅的ネーミングセンスとか思った奴にはアーレイをぶち込む)
エリーは軍令部部長だけど、シルディ機関の技術部部長でもある。
(火薬の開発、ロング、高速二輪馬車。細々とした所では簡易テントやランタン。金属の精錬や水力を利用した織機の開発など、本人はクールな理性派のつもりなのに、多彩な才能やアイデアを持った変人を上手く使いこなすのよね)
カタリナとハイデ、クヌート、エルンストは戦隊司令官。
(将来的にはクリスも加えて複数の戦隊を指揮する事になる。カチアは私の直属の幕僚にするから、戦隊からは離れて貰う。ベルンはアンゼルムが一人前になるまで総戦隊司令長官をお願いしようかしら)
アキム族族長のアクセレイはタカツ地方攻略軍副司令官として、生き残ったアキム族の全てを束ねてもらう。
(将来的にはヒルダと結婚して侯爵になってもらうのだけど、どの役職に付けるかが難しいわ。こうしてみると、私の人材って状況から言って仕方ないけど、内政面の人材が弱いのよね。内政面って軍事と違って天才に任せれば良いというものでは無いから、うちの学園の生徒なら誰でも一定の成果は出せるのが救いね)
「では、僕からいいかな?」
ブルックが当然の様に真っ先に発言を求めて来たので、私は思索を打ち切って皆を見る。
みな当然の様に紅茶を飲んでいるので、序列に異議は無いようだ。
「どうぞ、ブルックからお願いします。
特にこことウノシルディスまでの補給線については詳しくお願いします」
私がブルックに発言を促す。
「それでは、まず補給線の要である街道の整備ですが、こここからウノシルディスまで約120キロ。
まだ舗装は終っていないが、伐採作業は既に完了、あと3日で馬車の使用が可能となります」
ブルックは立ち上がり大型黒板に張り出されたウノシルディス地方の全体図に街道を書き込む。
「舗装と言うのはどの程度の舗装なのかな?」
バルタザール殿には街道の舗装と言うのが不明らしい。
(舗装と言えば、城内の一部で行われる石畳による舗装しか知らないから無理もないわ)
「道を整地した上で砂利を10センチほどで平らにならし、その上に50センチの幅の木製の平板を防腐措置を行った上で4本を敷設しています。
道幅5メートル、約3分の1は完成し、全線開通までにはあと20日と言うところですね」
バルタザール殿の質問にブルックが答える。
「50センチの幅の平板と言うのは以前にルーペルトが試作していた馬車用の木製レールの事じゃな。
将来的には石に変える必要はあるが、取りあえずは木製でも十分じゃな」
「あの平板の事をバルタザール殿が知っているとは思いませんでした。今後はあの板の事を単純にレールと呼ぶ事にしましょう」
「そうじゃな、どうしてレールと言うのかは知らんが、ルーペルトがそう言っておったからそうなのじゃろう」
バルタザール殿はその時の事を懐かしそうに言う。
「あと、渡河作戦に使用する舟の手配ですが、昨日学園都市に材料の調達の依頼を出したので、あと10日もすれば、50隻分の材料は届くので街道整備に使っていた人員を造船に回します」
「お兄さま、その船の大きさは?」
公式の会議ではあるが、親しい者だけなのでエリーも普通にブルックを兄と呼ぶ。
「オール10本で操る平底の舟で兵員なら50人、馬なら4頭までなら乗せれると思う」
「そうですか、ウノ族は100人を乗せていましたから、その半分の大きさですね」
エリーはたかが舟の大きさでもウノ族に負けたのが不満なのだろうか。
「材料を運搬する関係があるからね。そこまで大きい舟はつくれないよ」
さすがにブルックは妹のあしらいが上手い。
運搬と言う合理的原因があれば、エリーは納得するだろう。
「わかりました。
ですが、渡河作戦の時にはアーレイを搭載する必要があります。
この要塞の防御に使っているのと同じ方法で、舟に装備して、上陸作戦の支援に使います」
「上陸支援なら、ここからロングによる支援でも良いのではなくて? 射程は十分でしょう?」
私にはエリーが言い出したアーレイを装備させる必要性がわからなかった。
「いえシルディ様、ロングの射程は確かに2000メートルもあり、ここから撃っても十分対岸まで届きますが、精密な攻撃は出来ません。
その点、アーレイであれば400メートルまでなら、精密な射撃が可能で直接敵を視界に納めて攻撃する事が出来るので、エリー様のおっしゃられる通り、上陸作戦には不可欠と考えます」
クヌートが自信をもってエリーの意見に賛同する。
「それにロングの威力と射程を知るウノ族は生き残っていません。
橋頭保を確保した後の防御戦を有利に進める為にもまだロングは秘匿しておいた方が良いと考えます」
エルンストは上陸後の先の事も考えて意見を述べる。
「もっともな意見ね。
舟にはアーレイを舳先、中央、艫の中心線に3機装備する事とします。
アーレイの発射機は予備機を回しますが、エリー、予備機ってあと何機あるの」
私は3人の意見を採用して、さりげなく具体的な数まで付け足した。
「戦闘での損害が無かったので、組み立てれば200機ほど。
橋頭保を確保した後の防御に回す分が無くなりますが、これは舟から外した分を使えば良いでしょう」
「つまり、数は十分にあるわけね。
そういう事なので、ブルックは舟の造船に合わせてアーレイも装備出来る様に改造して下さい」
私は以降の事はブルックに丸投げして一件落着、紅茶を飲む。
「・・・了解した。
アーレイの知る良い機会だ、クヌート、エルンストお前達に士官候補生も造船作業に加わってもらうぞ」
さすがにエリーに作業を振る事は出来ないのか、ブルックは後輩二人を巻き込んだ。
その表情からは、(舟に乗せた馬から撃てばいいじゃないか)と言いたいのがありありと判る。
エリーにもそれは明らかであった様で、目を合わせるとウインクして来た。
(悪い妹よね。兄の仕事を増やして喜ぶなんて)
「先輩、ひどいです。学園生徒との親睦を深める時間が・・・・」
「それは八つ当たりでは・・・・」
クヌートとエルンストが不満を囁く。
「クヌート、エルンスト。見分と経験を積む良い機会です。
士官候補生を率いて造船作業の手伝いを行う事。
総司令官として命令します」
私は総司令官として正式に命令をだし、ブルックを見て共に頷いた。
「「イェス! シルディア!」」
ヤケクソ気味にクヌート、エルンストが答える。
幕僚の中で忍び笑いが広がる。
(平和で良い空気の幕僚会議で心が癒される。とてもいい事ね)
クロスロード大公国は北は海に面しているので、ちゃんと竜骨を備えた外洋帆船も持っています。
ですが、タマ河は大河とはいっても所詮は河なので用意したのは、船ではなく平底の舟です。
全長は20メートル、最大幅は3メートル、舳先から艫(船尾)まで真っすぐな舟というよりは箱と言った方がピッタリな舟です。




