戦いのあと6
わくわくするお姉様の活躍を描いてみたい。
そんな作者の願望から始めた物語です。
この物語のメインテーマは、『格好のいい男前なお嬢様』の物語。
皆が応援したく成る『お姉様』を書きたいと思います。
火曜日と金曜日に更新を行います。
短編の外伝を作成しました。
こうれからも不定期で作成してまいります。
『主人公じゃないけど頑張ります』
40話から45話のお話です。
『帝国の崩壊』
本文で語られている「先の大敗」のお話です。
「おはよう、シルディア」
次の朝、個人用テントで寝ている私は、ブルックの声に起こされた。
「戦場でいくら婚約者でも、いきなり寝顔を覗くとか、刺されても文句は言えないと思うけど」
戦場での習いとして傍に置いているサーベルの切っ先をブルックの顔に向けながら文句を付ける。
「今更、寝顔を見られたとしても問題は無いだろう。
誰かを連れ込んでいたら少し問題だけど」
そのサーベルの切っ先を自分の首筋に修正してブルックが言う。
「誰かを連れ込んでいても『少し』の問題なのね。
覚えておくわ」
私はブルックの指にケガをさせないようにゆっくりとサーベルを鞘に戻す。
「ああ、流石にヒルダ殿の思い人にアクセレイやカチアの思い人のベルンはダメだけどね」
(何か私はベルンに酷い誤解をされているのではないだろうか。公式な私の婚約者はまだブルックとフローラだけなんだけど)
「着替えるのでテントの番人をしていてもらえますか」
何時までもテントの中に首を突っ込んでテントの中に籠った私の香りを堪能しているブルックに言う。
「身支度を手伝おうか? 背中とか拭くの」
そう言う事を真面目な顔で言う余裕が憎ったらしい。
「一人で出来るので結構です。
テントの外で誰も近づかない様に護衛していて下さい」
私のテントの前に突っ立って、学園の子達の晒し物になるがよいわ。
(いくら私でも大勢の目があるこの宿営地でブルックをテントに引き込む度胸は無い。と言うかそれをしてはダメだろう)
「わかった、そうする。誰も近づけないから安心して着替えて良いよ」
本当に真面目な顔のまま、ブルックが顔をテントから引き抜く。
「それで、随分早かったじゃない。本隊の到着は何時になりそう?」
私は体を拭く為に服を下着も含めてワザと音を立てて全部脱いで全裸になる。
(音と気配でブルックには今の私の状況が判るだろう。私の姿を想像して悶えなさい)
「うん、本隊は夕方の到着になるだろうね。
ここからウノシルディスの間の宿営地を整備して来た建設の専門職が多いから、要塞建築は丸投げで任せていいよ」
勤めて冷静な口調を装いながらブルックが答える。
(ふふ、想像している、想像してる)
「取りあえず難民5000人の体力が戻ったら一度はウノシルディスに退避させるべきよね」
私はわざと体を拭く布を音を立てて、洗面器で洗う。
「そうだね。
カロッサ村の修復も必要だろうし。
それと、カロッサ男爵にここに来てもらう様に連絡を入れた。
君としては、この丘と温泉、丘からタマ河に接する地域は直轄地にしたいのだろう」
「本当は替地にしたいけど、これだけ条件のいい土地と替地に出来る場所がないわ。賃貸でまとまるかしら」
今日の下着は何時もの黒じゃなく何となく赤。
気分的に何か盛り上がるから。
「ここからウノシルディスまでの街道の整備、丘が要塞となる事によるカロッサ村への経済効果、加えてタカツ地方との交易の発展や将来の架橋工事などを考えれば賃料も不要だろう。
ただ、要塞の城主はクララ・フォン・カロッサを男爵から子爵に陞爵させて任せるのが良いと思う」
陞爵は貴族にとって大事な話。
それを婚約者が全裸になってタオルで全身を乾拭きしている最中に言い出すブルック。
(どこまでそのポーカーフェイスがもつかしら。しかし、この話は後で皆の前で同じ事を喋って芝居を打たないと不謹慎過ぎるわよね)
「そうね、温泉近くの区画だけは私の別荘も建てるし学園の所有地にする必要があります。
しかし、要塞自体はカロッサ男爵の所有としても良いのだけれど、男爵を私は知らないのよね。
でもクララが城主になるのであれば問題ないわね」
黒いストッキングをガータベルトに止めながら納得する。
「それと、アキム族には引き続き要塞の建築をしてもらうとして、この駐屯地の整備は俺が連れて来た者に急ぎやらせる。
あと十日もすればブルマイスターからヒルダ達も到着するだろうから、それまでにテント暮らしは終らせる」
「守るのには高台の要塞は便利だけど、攻撃拠点としては平地の方が便利だものね。
思うのだけど、タカツ地方の攻略でも攻撃拠点は平地で良いと思うの。
通信連絡手段さえ確立しておけば、騎兵の機動力で敵の排除は可能だし、水の便も物資の輸送も平地の方が断然楽だもの」
黒いブラウスのボタンを留めながら、全く新しい拠点についての考えを言う。
「それは又、君しか思い付かないよ斬新な考えだけど、これからアーレイの要塞運用と騎兵運用を考えたら高台に防御拠点置く必要も無くなるし、大きさもこの宿営地の様にあまり大きくない方が良いだろうね。
腕木通信の運用と合わせて検討の余地があるか・・・・」
「少数の騎兵であれば、この規模の防御拠点は攻略は出来ないし、大規模な攻城兵の移動であれば騎兵の運用で対応出来るわ」
スカートとブレザーを着てブーツを履いたら身支度は完了。
今日は何時ものストレートでは無くて、頭の後ろの上の方を紐で括って、項が良く見える様にしてみた。
(何か馬のシッポみたいな髪型ね)
「お待たせ」
テントから私がヒョッコリと顔をだす。
「おはよう、見たことの無い髪型だね。
何か馬のシッポみたいな感じで可愛い、それきっと流行るよ。
今日は細かい仕事は俺に任せて、学園の子達を労ってあげればいい」
ブルックが爽やかな笑顔でそう言いながら、私の白い項に目立つキスマークを付ける。
それを見た学園の仔達が、『キャ』っと黄色い声を小さく上げる。
「ブルック~~~」
恨みがましく半目で睨むと。
「君の為に夜通し必死に馬を飛ばして駆けつけた婚約者を朝から精神的に痛めつけたお礼だ」
とさっきの爽やかな笑顔を瞬時に仕舞い込んで真顔で言う。
「そう・・・それはごめんなさい。ブルック、来てくれてありがとう」
とブルックの唇にキスを返した。
再び上がる『キャ』っと言う黄色い声。
(この情報は10分後にはエリーに伝わり私とブルックは朝食の席でエリーに弄られる。これは予言では無く確定した未来。でも平和な朝でとても良い事だわ)
私にとっては割と平和な朝が来た。
いくらシルデイでも準備なしにタカツ地方に攻め込む事は出来ません。
先ずは攻め込む為の拠点作りです。
本当であれば架橋もしたい所ですが、今回の戦争で多額な支払いが発生しているので、流石のシルディの財布もスッカラカンです。
この後は、タカツ地方に拠点を作りながら、クロスロードの他の貴族の対応と帝国との対応に追われる事となるでしょう。
学園とシルディ機関を作って悠々自適の生活のはずがご苦労様なことです。




