戦いのあと3
わくわくするお姉様の活躍を描いてみたい。
そんな作者の願望から始めた物語です。
この物語のメインテーマは、『格好のいい男前なお嬢様』の物語。
皆が応援したく成る『お姉様』を書きたいと思います。
火曜日と金曜日に更新を行います。
短編の外伝を作成しました。
こうれからも不定期で作成してまいります。
『主人公じゃないけど頑張ります』
40話から45話のお話です。
『帝国の崩壊』
本文で語られている「先の大敗」のお話です。
私は本陣の移動をクヌートに任せると、エリーとバルタザール殿と直衛の槍騎兵100騎を連れて、カロッサ村の郊外に発見された温泉まで一気に駆け抜ける。
「クララ、発見した温泉は何処?」
下馬する時間も惜しんで、温泉の周りを調査中のクララとエルンストに声を掛ける。
私達がこれ程早くに駆けつけるのは予定外であったらしく、クララとエルンストが慌てて駆け寄る。
「シルディア様、さすがにお早い。こちらです」
エルンストが先頭に立って案内を買って出た。
「この辺りは丘なので、水の便が悪く、畑には不向きです」
クララの指さす方向は、村とは10メートル程の段差がある崖があり、その上は比較的平らな平地が広がっている。
「その丘の麓にウノ族が井戸を掘ったら、温泉が出たって事?」
温泉発見の喜びに私の声は興奮して大きくなるが、騎乗しながらの会話だから、良しとしよう。
「どうもその様です。
ウノ族は丘の上に1万人規模の駐屯基地を作るつもりだった様ですね。
まだ小屋位の建物しかありませんが、縄張りは結構広い範囲に行っていて、一部林を切り開き造成もしています」
ざっと丘の上も偵察して来たらしいエルンストが淀みなく答える。
「クララ、この辺りに自然に温泉が湧き出している泉みたいなものはある?」
(水を得る為の浅い井戸を掘っていたら温泉にぶち当たるなんて偶然では有り得ない)
「泉はありませんが、この丘の向こう側に冬でも凍らない川があります」
私はバルタザール殿をみると頷いておられる。
「ウノシルディスの近くにも凍らない川がある。
それと良く似た感じじゃな」
(ウノ族に浴場での入浴の習慣は無いから本当に偶然の結果の様ね)
「この池です」
湯気が湧き上がる20メートル位の池がそこにあった。
「これは凄い、派手に勝手に噴き出していますね」
私は馬から降りて温泉に慎重にゆっくりと手を入れてみる。
バルタザール殿もエリーも同じように下馬して手を漬けて見る。
「「「熱い」」」
そう言いながらも3人で顔も見合わせ笑いあった。
「ですが、いきなり人が使うのは危険ですぞ。
危険な温泉の可能性もあります。
先ずは家畜を入れてみて暫くは様子見ですな」
バルタザール殿が今にも浴場を作り出しそうな私とエリーに釘を刺す。
「・・・もちろんです。
先ずは様子を見てからよ、エリー」
私はエリーに全責任を押し付ける。
「そうですね、バルタザール殿の言われる通りに様子見。
シルディ様が使うのは、私達が確認してからになりますね」
エリーがすかさず私に意地悪をしてくる。
悔しそうな私を見てバルタザール殿とエリーがしてやったりと笑うのが憎らしい。
(ここに私の別荘を建てても最初はバルタザール殿とエリーは呼んであげない)
せめてもの負け惜しみを誓う私であった。
◆ ◆ ◆ ◆
「温泉は何時枯れるか判らないけど、温泉が有ろうと無かろうと、この丘は城砦を作るのに丁度良い」
何か悔しいので、少し意地悪く言う。
「タカツ地方に攻め込むのに、ウノシルディス側の補給拠点としても最適です。
ウノシルディスではタマ河まで距離が有りますし、川幅も広すぎます。
ブルマイスターではウノシルディスから遠すぎます」
そんな私の意図を無視してエリーは極めて戦略的な考察を述べる。
「ここなら、川幅も500メートル程度であるし、舟での渡河も容易じゃな。
ウノ族でもやっていた事であるし、架橋せずとも何とかなるじゃろう」
バルタザール殿も同じ意見の様だ。
「決まりですね。
早速アキム族をここに呼んで丘の上の林を切り倒して宿営地を作らせましょう。
今日中にカロッサ村にいる2000人の負傷者をここに移送。
入れ替わりにカロッサ村には難民5000人を収容します。
私達の宿営地はカロッサ村とこの丘の間に設けます」
(これはこの地を私の直轄地にした方が良さそうだけど、カロッサ男爵と早めに交渉しましょう)
「アレクセイ、参りました」
(そういえば、アレクセイは騎乗しているけど、何処で馬を手にいれたのかしら)
「ご苦労、早速であるが、状況が変わってきたので、仕事の割り振りを変えたい」
「かしこまりました。
やはり、カロッサ村に負傷者がいましたか」
(察しが早くて助かる。この程度の事は説明の必要がないようね。ヒルダが惚れる訳ね)
「ええ、カロッサ村にウノ族の負傷者が2000人程見つかりました」
「2000人ですか」
2000人を多いと思ったのか少ないと思ったのかは、アレクセイの表情から読み取れなかった。
(だけど、こういう掛け合いは楽しい、ブルックと遊んでいる感じね)
「それでアキム族の中で500人程をこの負傷者の世話に回してもらいたい。
それと、この丘の上を造成して負傷者の収容施設を設営に、2000人程を回して欲しい」
私はタマ河の水面からは15メートル程の高さがある丘の指さす。
「2000人の収容施設ですか」
さすがに収容施設の建築は時間的に難しいと思ったらしい。
「そうだ、カロッサ村には難民5000人を収容するので、彼らと負傷者を一緒にしたくない」
無理をしてでも収容施設を作る理由を説明する。
「・・・確かにそれは宜しく無いですね。
分かりました」
負傷者と言えども敵であったウノ族が屋根も壁もある村に収容され、自分達が野宿では難民の不満が負傷者に向く可能性を理解してくれたらしい。
「収容設備の建築指揮は、このエリーが行う。
造成と柱に使う木の伐採、建築などを受け持ってもらいたい」
「かしこまりました、宜しくお願い致します。
2000人を手配致します」
エリーが軽く頷く。
「残る人員は戦死者の埋葬作業を続けて欲しい。
但し、作業は日没の1時間前まで、その時になったら一番最初に本陣を置いた地点で食糧の支給を行うので今日の作業は終わりとし、丘の上に野営して明日の作業に備えて欲しい」
「かしこまりました。それでは失礼致します」
アクセレイは帝国式の敬礼を決めて、エリーと共に部隊に向かう。
「クヌート、エルンスト、貴方達はウノシルディスの騎兵隊を率いてアキム族が初めに構築していた馬防柵を解体して私達の宿営地の防御装置として設営して下さい。
一キロ四方の方陣で構いません」
「「かしこまりました」」
「カタリナ、ハイデ、貴方達は宿営地に宿営の用意と、アキム族、難民、負傷者を含めた者達への食糧と酒の配布をお願いします。
食糧は、カロッサ村に6000、丘の上に11000、酒については一人2杯程度で良い。
あと、アーレイは当然として発射装置も宿営地で管理する様に」
「「かしこまりました」」
カタリナ、ハイデはクロスロード式の敬礼を行い部隊に向かう。
「コンラート、貴方は士官候補生達を使って、難民をカロッサ村に集めて下さい。
その上で、余力があればだけど、家畜をカロッサ村近くに集めて下さい」
「かしこまりました」
「さて、私達は本陣を宿営地の予定場所に移します。
日没まで5時間程ありますが何とか形になるでしょう」
私の長い一日もようやく先が見えて来たと思う。
この時代に地下深くまでボーリングする技術はないので、自然に湧き出す源泉が無ければ温泉は存在しません。
ですが、温泉入浴の習慣の無いカロッサ村では凍らない川があっても、開発する気が無かったので全く開発されていませんでした。
もっとも温泉入浴の設備があるのは、ウノシルディスとブルマイスターだけで、天然温泉に頼らない本格的な入浴施設があるのは、シルデイが開発した学園だけです。
何故学園に入浴施設があるかと言うと、ウノシルディスに遊びに行ったシルディが気に入ったからと言う我儘です。




