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涙の流星群  作者: 最上優矢
第七章 最後の夏、キセキを起こせ、涙の流星群

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流星嵐

 流星の数の変化に、ぼくらはどよめいた。

 河川敷広場にいた人々もどよめき、さらには歓声を上げたりもしていた。


 今や、夜空は流星で埋め尽くされ、どこを見ても流星、たまに火球が現れ、と思えば大量の流星……。


 そのとき、河川敷広場にいた誰かが「流星嵐だ!」と叫んだ。

 瞬く間に「流星嵐」という言葉が河川敷広場に広まり、誰もが「流星嵐」とつぶやいていた。


 流星嵐……。


 …………。


 これは願い事をかなえるには、千載一遇のチャンスだ。


 言葉はいらない。

 ぼくらは寝転ぶのをやめ、力強く立ち上がった。

 誰を見ても、その顔には「覚悟」の文字が浮かんでいた。


 ……よし。


 ぼくは流星嵐と化した夜空を見上げる。

 そして――。

「『彼女』を元通りに、『彼女』を元通りに、『彼女』を元通りに!」

 ぼくらは願い事を三回唱えた。

 いや、叫んだ。


 ぼくらはすべての想いを、ペルセウス座流星群にぶつけた。

 すべてをペルセウス座流星群に託した。


 けれど……いや、待て。

 待て。


 …………。


 そのとき、一際強い風がぼくらの頬をなでた。

 強い風……いや、優しく強い風だ。


 ぼくはハッとする。

 すべてを思い出した……思い出した。


 ぼくは恐る恐る「彼女」を――夏奈さんを見つめた。

 その顔には見覚えがある、見覚えがある……!


「……夏奈、さん。夏奈さん!」


 ぼくは夏奈さんに抱きつこうとした――が、遙香さんに押しのけられ、ぼくはレジャーシートの上に倒れた。


 そんなバカな。


 ぼくがショックを受けているあいだに、遙香さんは夏奈さんに抱きついていた。


「夏奈、夏奈……夏奈ぁ」

「苦しいってば、遙香ぁ」


 そのまま、二人は泣き出してしまう。

 ほかのみんなもそうだったが、ぼくはもらい泣きし、自分もまた泣きじゃくった。


 ひとしきり泣いたあと、急に二人は静かになった。

 どうしたんだろう、とぼくは二人に声をかけようとした。

 それよりも前に、遙香さんが口を開いた。


「わたしね、夏奈に言わなくちゃいけないことがあるの」


 ……まさか。

 そのまさか、か?


 ぼくの心の準備ができていないうちに、遙香さんは「わたし……」と口に出した。


 やはり、そうなのか。

 遙香さん……。


 だが――。

「ストップ!」

 と夏奈さんは遙香さんの話を遮った。


「あのさ、遙香の“それ”も含めてなんだけど……わたしたち、本音を言い合わない?」

「……本音?」


 遙香さんは首をかしげたが、すぐに真剣な顔付きになる。

 そして彼女は「……いいよ。本音、言い合おうよ」とこくりとうなずいた。


 夏奈さんは満足そうにうなずき、それから遙香さん以外のぼくたちに向かって「本音を言い合うのは、わたしと遙香だけじゃない。この場にいるみんなだよ。みんなさ、本音を言い合おう」と力強く言った。


「わたしには分かっている……人を観察することが好きなわたしには、全部お見通し。

 心のどこかで、みんなは本音を言い合いたいはずだよ。ね、そうでしょう?」


 夏奈さんの言葉を聞いて、ぼくはみんなの様子を窺おうとしたが、すぐに思いとどまった。

 なぜなら、それは野暮なことだったからだ。


 今の夏奈さんの言葉で、ぼくは……ぼくらは気付いた。

 自分だけじゃなく、みんな本音を言い合いたいのだと。

 気付いたのだ。

 はっきりと気付かされた。


 ぼくは覚悟した。

 これより先、お互いを傷つける言葉が飛び交うことを……ぼくは覚悟した。


 最初の本音――それは夏奈さんが口にした。


「どうしてずっとわたしにウソをつき続けるの? みんな鬼だよ、鬼。

 わたしじゃなくて、みんなが死ねばいいのに……よりによって、どうしてわたしなの?

 答えてよ、殺人鬼!」


 それは世界で一番ぼくらを傷つけるとともに、ぼくらを本音合戦へといざなう言葉だった。


 今、本音合戦の幕が上がる。

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