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涙の流星群  作者: 最上優矢
第七章 最後の夏、キセキを起こせ、涙の流星群

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出発の時

 外はもう暗く、今この場でも十秒に数個の流星を観測できた。

 あと二時間もすれば、たくさんの流星が夜空を埋め尽くすだろう。


 まさに幻想的。


 ぼくが自宅前で夜空を見上げていると、誰かがぼくの頭を小突いた。

 後ろを振り返ると、それは環奈だった。

 すぐそばには茜もいた。


「しっかりなさい、翔。そんなにぼんやりとしていると、今に流れ星があなたを襲うわよ」

「え! 環奈ちゃん、それ本当? 流れ星って、実は怖いものなの?」


 相変わらずの環奈と茜のコンビネーション、炸裂の巻。

 しかし、今宵の環奈は大まじめだった。


「ええ、そうよ。今回の流れ星はね、わたしたちに牙をむくわ」

「……そっか。そうだよね」


 茜はしゅんとしたようにうつむく――が、すぐに顔を上げた。


 そして、

「だったら、わたしは立ち向かうよ」

 と茜は元気よくうなずいた。

 それを見たぼくと環奈も大きくうなずく。


 そのとき、海堂さんの車と小暮先生の車の出発準備ができたらしく、ぼくらを呼ぶ声が聞こえた。

 徹だ。


「お前たち、出発だ。

 海堂さんの車にはな、おれや環奈や茜、詩織や勇人が乗り込む。

 で、小暮先生の車だが、そこには翔や遙香やあいつ、天音さんが乗ることになった。

 それでいいか?」


 問題ない。


 ぼくらがうなずくと、徹は「だったら早く乗れ」と若干ピリピリしたようにぼくらを急かした。

 ぼくらはそそくさと自分が乗る車に乗った。


 小暮先生の車は五人乗りの軽自動車で、ボディカラーはピンクだった。

 なぜだろうか、ピンクの車とはいやらしい。

 そんなぼくの考えを読み取ったのか、運転席に座る小暮先生は後ろを振り返り、後部座席に座るぼくをにらみつけた。


「いやらしいと思うから、いやらしいのですよ、大浦くん」

「……はい、先生」


 すると、助手席に座る姉や後部座席に座る遙香さんや「彼女」は同時に吹き出した。


 あ、笑った。


 ぼくは「彼女」が笑ったことに安堵し、つい得意げになって「小暮先生、ピンクが好きなんですね。似つかわしくないと思うのは、ぼくだけでしょうか」と憎まれ口を叩いてしまった。


 直後、車内は静まり返った。

 ぼくはといえば、冷や汗が流れた。


 そのとき、正面の海堂さんの車が軽いクラクションを鳴らしたかと思えば、ゆっくりと発進した。

 それに合わせ、小暮先生も車を出した。


 こうしてぼくらは奈蔵川河川敷を目指し、車で出発した。


 そう、キセキを起こすために。

 窮地に陥った「彼女」を救うために。

 ぼくらは出発した。

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