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涙の流星群  作者: 最上優矢
第七章 最後の夏、キセキを起こせ、涙の流星群

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十一人目のメンバー

 八月十二日、木曜日。

 時刻は午後七時過ぎ。


 奈蔵川河川敷に行くメンバーを発表する。

 ぼく、遙香さん、「彼女」、徹、環奈、茜、詩織さん、勇人、姉、海堂さん。

 計十名。


 そして今、ぼくらは大浦家のリビングに集まっていた。


 と、そのとき、

「同行者ですが、実はあともう一人います」

 そのように詩織さんはおずおずと言ったが、この場に集まっているのはこれだけの人数。


 ほかに同行者といえば、誰だろうか。

 龍司さん?

 それとも梓さん?


 そのとき、家のドアチャイムが鳴り響いた。

 すぐさまぼくは動いた。

 玄関の様子が分かるモニターを見ると、そこには――。


「小暮先生?」


 ぼくら二年一組の担任教師、小暮舞先生がモニターに映っていたのだ。


「ひえっ、どうしてここに小暮先生がいるんですかね」


 勇人の狼狽する声が聞こえるが、それをぼくは無視。

 すぐにぼくは土間のほうに行き、玄関扉を開けてあげた。


 玄関ポーチにいた小暮先生は口を一文字に結ぶと、「こんばんは、大浦くん。月山さんから聞きました。どうやらあなたたち、起こせるはずのないキセキを起こすため、奈蔵川河川敷まで行き、今夜のペルセウス座流星群を見上げるそうですね。無論、担任教師であるわたしもそれに同行します」と言うなり、ずいと土間に入ってきた。


 小暮先生は運動靴を脱ぐと、みんなが集まるリビングにずかずかと入った。

 彼女はメンバー全員の顔を見てから、大きなため息をつく。


「こんなにも教え子が悪戦苦闘しているというのに、このわたしは一体何をしていたの? あぁ、不甲斐ないわ」


 小暮先生は唇を噛み締め、手で胸を押さえる。


「……どうして小暮先生がここにいるんですか?」


 遙香さんは上目遣いになって、小暮先生に訊く。

 しかし、その質問は詩織さんが答えた。


「わたくしが呼んだのですよ、遙香さん。

 ここはわたくしたちの担任教師である小暮先生がふさわしい……そう思い、呼んだのです。

 それにですね、小暮先生は車を運転します。

 どちらにせよ、わたくしたちには二台目の車を運転する人物が必要不可欠なのですから、一石二鳥というわけですよ」

「……それもそうね」


 遙香さんは納得する。


 訂正しよう。

 今回、奈蔵川河川敷でペルセウス座流星群を見上げるのは、ぼく、遙香さん、「彼女」、徹、環奈、茜、詩織さん、勇人、姉、海堂さん、それに小暮先生。

 計十一名だ。


「さて、そろそろ行かないとね。場所取りも大事だ。みんな、行こう」


 海堂さんが促したことで、ぼくらは動いた。

 各々、荷物を持ち、ぞろぞろとリビングから出る。


 いや、待て。

 一人、まだ動いていない人物がいる。

 それは今回の主役である「彼女」だった。


 ぼくはリビングのソファに座る「彼女」に声をかけた。


「……大丈夫、ですか?」


 すると、「彼女」は悲しそうにうつむいてしまった。

 ぼくはあたふたとしたが、うつむいている「彼女」はピクリとも動かない。


 やがて、「彼女」は顔を上げた。

 その「彼女」の目には、とてもきれいな涙が浮かんでいた。


「……わたしのこと、みんな忘れたんだね。忘れてしまったんだね。

 わたしさ、ちょっぴり信じていたんだ。みんなはわたしのことを忘れない……そう信じていたの。

 でも、それは違った。みんな、みんなみんな、みーんな、倉木夏奈を忘れてしまった。

 ふふふ……全部、もう終わりなんだね。だったらさ、もう終わりにしようよ、翔くん」


「彼女」は絶望したように言い、ソファから立ち上がった。

 その覚悟が決まったような顔付きを見て、思わずぼくはあとずさった。


 しまった。

 これでは「彼女」が悲しむ。


 だが、「彼女」は悲嘆に暮れることもなく、そのままリビングから出た。


 そのとき、なぜだかぼくは胸が痛むのを感じた。


「彼女」を忘れてしまったから?

「彼女」が仲間だったから?

「彼女」にウソをついていたから?


 ……分からない。


 ぼくは深呼吸をしてからリビングをあとにし、夏の割には比較的涼しい夜の外に出るのだった。

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