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涙の流星群  作者: 最上優矢
第六章 ピンチはチャンス、信じるのはペルセウス座流星群

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おもちゃ花火

 時刻は午後八時過ぎ。


 ぼくらは星空公園にやってきた。

 最初に虫除けスプレーを体にかけてから、水入れバケツを公園の中央あたりに置き、周囲の地面に燃えるものがないか懐中電灯で確かめたのち、ぼくらはおもちゃ花火を始めた。


 まずぼくが選んだのは定番のススキ花火だった。

 缶に立てたロウソクで、ぼくはおもちゃ花火に火を付ける。

 すると、ススキ花火は爽快な音とともに火を噴き出し始め、見る見るうちに火を強めていった。


 地味だが、それでいて優美な花火だ。


 みんなの様子をちらりと窺うと、彼らは花火を存分に楽しんでいるようで、きゃっきゃっとはしゃいでいた。

 当然、それは父や母も同じだった。


 皆、子どもになって楽しんでいるのだ。

 それは悪いことではない。

 むしろ、よいことだ。


 やがて、一本目のススキ花火の火が消えた。


 さてさて。


 次にぼくが選んだのは、スパーク花火だった。

 スパーク花火に火を付けると、これまた豪快な音がし、縦や横に火が噴き出した。


 …………。

 これぞ、夏の風物詩。


 ぼくは満足げにうなずいた。


 スパーク花火の火が消えたあと、ぼくは再びみんなの様子を窺った。

 それで気付いたのだが、どうやらみんなは二人一組になり、花火を楽しんでいた。

 遙香さんと夏奈さん、姉と海堂さん、父と母。


 ……あれ、ぼくは?


 そう、ぼくは独りぼっちだった。


「……いいだろう」


 ぼくは一人寂しく線香花火を始めようと、ロウソクのあるほうに近付く。

 そのとき、不意に遙香さんと夏奈さんの会話が聞こえてしまった。

 二人の声は小声だったが、それでも聞こえてしまった。


「え、じゃあ夏奈は徹くんのこと……」

「うん、好きかも」

「……そっか」

「うん」

「告白は?」

「えっと……うん、した」

「いつ?」

「ほら、あのときだってば。美楽湖のとき、わたしがあんたとケンカをしたでしょう? で、そのあとに……」

「したの?」

「まあね」

「で、どうだったの?」

「うん、それがね……」


 そのとき、ぼくは誰かから頭を叩かれた――かと思えば、口を塞がれた。


 こんな仕業をするのは姉しかいない。


 姉はぼくの耳元でささやいた。


「こら、翔。乙女の会話を盗み聞きするなんて、漢らしくないわよ。

 二人のこと、そっとしておいてあげて。ね?」


 ぼくは小さくこくりとうなずく。

 それでようやく、口は自由になった。


 ぼくは後ろを振り返る。

 案の定、そこには姉がいた。


 姉はぼくの手を引き、遙香さんと夏奈さんのいる場所から離れる。

 もうひとつのロウソクと缶を使い、そこでぼくらは線香花火に火を付けた。


 パチパチ、パチパチ……。


 なんて上品な花火なのだろう。

 そんな線香花火には、何がなんでも生きようという意志が感じられた。

 まるでそれは必死に生きようとする夏奈さんみたいで……ぼくは涙した。


 そのとき、線香花火の火が消えた。


「……あ」


 つまり、それは夏奈さんの命の火が消えたということ。


 ぼくはたまらなく恐ろしくなった。

 恐ろしさのあまり、ぼくは泣き出しそうになった。


 しかし、

「……そんなことにはならない。ええ、絶対ね」

 という姉の力強い言葉を聞き、ぼくは我に返った。


「信じましょう、キセキを。流れ星のキセキを……!」


 ぼくは流れ落ちる涙をそのままに、「うん」と力強くうなずいた。

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