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涙の流星群  作者: 最上優矢
第六章 ピンチはチャンス、信じるのはペルセウス座流星群

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ウソとは

 夕食はおいしく、そして賑やかだった。

 皆、おいしそうにハンバーグを頬張り、幸せそうにスープをすすって、満足げにサラダを食べていた。


 それでぼくは体力を最大値まで回復すると、リビングのソファに横になった。

 そしたら、それを見た母が「みっともない!」と叫んだため、ぼくはちゃんとソファに座ることにした。


 そのとき、姉がソファにやってきた。


「あのさ、今いい?」


 姉はソファに座りながら、そう訊いてきた。

 今は用事などなかったので、ぼくは姉に「うん」とうなずいた。

 姉は「それならよかった」と笑顔になる。


「たかが言葉、されど言葉……言葉の影響力を侮るなかれ。

 ――前にあたし、そう翔に言ったよね。覚えている?」


 覚えている。

 その後、姉は「この言葉を世界中に普及しなさい」とぼくに頼んだのだ。

 それでぼくは姉にうなずき、「この言葉を新鮮なまま、世界中に届けてみせる」と姉に約束したのだ。

 すべて覚えている。


「じゃあさ、翔はあたしの言葉、世界中に届けてくれた? 新鮮なまま……世界中に届けてくれた?」


 姉の言葉を聞き、ぼくは沈黙する。

 が、やがてぼくは観念したように首を横に振った。


 そうさ、ぼくはまだ何もできていない。

 できていないどころか、まだやろうともしていなかった。


 そのことを姉に伝えると、姉は吹き出した。

 その後、姉は「いいのいいの。そんなに気にしないで」と明るく笑った。


「でも……」

「でもじゃないよ、翔」


 姉はぼくの頭を優しく叩き、それから今度は真剣な表情で、

「ウソっていうのはね、そのことを実現しようとしていないから、ウソなんだよ。

 でも、翔は世界中に届けると言ってくれた。あたしと約束までした。

 だからあたしは翔の言葉を信じる。それがたとえウソでも、あたしは信じ続ける」

 と力強く言った。


 ぼくは何も言えなかった。

 いや、そもそもぼくには発言する権利がないのかもしれない。


 一方、姉はちらりと母とともに後片付けをする遙香さんと夏奈さんを見遣ってから、

「でも、時にウソは必要なんだと思う。

 今回のウソがなければ、彼女たちは再会しなかっただろうし、笑い合うこともできなかっただろうし……ううん、なんでもない。

 だって、今回のウソは夏奈ちゃんを不幸にするウソだもんね。

 あたしが夏奈ちゃんの立場だったら、怒りや悲しみや孤独で……たぶん耐えきれないと思う。

 ごめん、今のなし」

 と悲しそうにほほ笑む。


 またもや、ぼくは何も言えなかった。

 やはり、発言する権利がないのだろうか。


 そのとき、いきなり姉は立ち上がった。

 ぼくは何事かと目をみはった。


 姉は「おもちゃ花火!」と叫ぶと、ドタバタとリビングから出て行き、そのまま二階に上がってしまった。


 すると、それまでダイニングで父と話をしていた海堂さんが、ぼくのそばにやってきた。


「きみのお姉さん、どうしたのかな。おもちゃ花火、と叫んでいたけど……ひょっとして、おもちゃ花火をやりたい、とか?」

「そうだったら、楽しくなりますね」


 とかなんとか海堂さんと雑談を交わしていると、姉が騒々しい足音を立てて、ぼくらがいるリビングに戻ってきた。

 その手にはススキ花火やスパーク花火、線香花火などが入ったおもちゃ花火が何袋も。


「あらまあ。あんた、そんな大量のおもちゃ花火、いつ買ったの?」


 母は目をまん丸くした。


「おお、おもちゃ花火じゃないか。ありがたや、ありがたや……」


 なぜだか父は手を合わせ、おもちゃ花火を拝んだ。


「シンプルだけど……いいかも」

「やろうやろう、おもちゃ花火!」


 夏奈さんは微笑し、遙香さんは無邪気に喜んだ。


「ナイスだ、天音」


 海堂さんは腕組みをし、大きくうなずく。


 ぼく? ぼくは――。

「そうこなくっちゃね」

 ガッツポーズをし、子どものようにはしゃいだ。


 ぼくらの反応を見て、姉は不敵に笑う。


「時は満ちた! それでは諸君、おもちゃ花火の準備を始めようではないか」


 ぼくらは「おー!」と声をそろわせ、おもちゃ花火の準備を始めた。

 おもちゃ花火を行う場所は星空公園だ。


 …………。

 ロウソクや缶、水を入れたバケツやゴミ袋、懐中電灯に虫除けスプレー。

 よし、準備オーケー。


 いざ、出陣。

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