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涙の流星群  作者: 最上優矢
第五章 思い出の夏、後戻りはできない夏、ひび割れた夏

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予定の確認

 スタッフとともに、ぼくらはエレベーターで十二階まで昇ると、一二〇七号室と一二〇八号室付近で、スタッフの説明を受けた。

 スタッフの説明を終えたぼくらは、いざ男性と女性に分かれて部屋に入ろうとした。


 だがしかし、

「ちょっと待ちな」

 と、ぼくらは梓さんから呼び止められてしまった。


 龍司さんはコミカルにずっこけ、そのはずみで彼は壁にぶつかった。

 これは痛い(イタい)。


「ちょっと、一体あんたは何をしているんだい? 本当、あきれたねぇ」


 あきれたというよりは、龍司さんに殺意を向ける梓さん。

 いかにも情けなさそうに、龍司さんは右手を頭の後ろに当て、「とほほ」と口にした。


 この現場をホテルのスタッフに目撃されなくて、本当によかった。

 仲間のぼくでも、これはちょっと恥ずかしい。


 龍司さんは気を取り直すように咳払いをし、それから梓さんに元気よく訊いた。


「で、どうしておれたちを引き止めるんだよ、梓。あれか、そんなにおれと一緒にいたいのか?」


 そんなことを訊いた龍司さんは、すぐさま梓さんからゲンコツを頭に食らい、さらに靴の底で太ももを蹴られる。


 ぼ、暴力反対……。


 そんなことを思ったぼくは、すぐさま梓さんからにらまれる。

 あわてて、ぼくは梓さんから目をそらした。


 ごめんよ、師匠。


 つまらなさそうに梓さんもぼくから視線を外すと、肝心の用件をぼくらに伝えた。


「冗談はさておき……きょうとあすの予定がどうなっているのか、一応確認しておきたいのさ。

 あたいがあんたから色々と聞いたとき、あたいは仕事の真っ最中だったからね。

 そう、だから念のためだ。もう一度、あたいに教えてくれるかい?」

「任せなさい」


 龍司さんはいやに偉ぶると、きょうとあすの予定をぼくらに伝えた。


 きょうはこのリゾートホテル内で好きなように過ごし、夕食はバイキング形式の料理を好きなだけ食べる。

 あすは朝食バイキングを堪能したあと、しばしの休憩をしてから、ホテルのチェックアウトを済ませ、観光地へと向かう。


 そんなところだろう、と龍司さんは話をまとめた。


「チェックアウト後、梓は観光地の案内役で大変になると思うが、まあ最後まで協力してくれや。

 なんだかんだ言っても、ガキどものうれしそうな顔を見るのは悪くないだろう?」


 この龍司さんの天真爛漫な発言を聞いた梓さんは、ふっと笑った。


「そうだね、悪くないよ。何せ、仲間のための思い出作りの旅行だ。

 もしもそれに“不純物”が混じっていたとしたら、このあたいが許さないよ」


 だろう? とこちらを振り向く梓さんの笑顔が、ぼくの心を針のように突き刺した。

 どうやらそれは遙香さんと徹も同じらしい。

 ぼくらは揃いも揃って、気まずそうにしていた。


 心が痛い。


 そんなぼくらの気持ちなど露知らず、さらに梓さんはぼくらの心を大きな針で傷つけた。

 正確には、ぼくと遙香さんの心を。


「そういやあんたたち、カップルだったね。

 地味なカップルといえども、今回の旅行であんたたち二人を一緒の部屋にいさせることは、あたいたち大人が許さないよ。

 ほら、イチャイチャしすぎて、いつの間にか赤ん坊ができたら、それはそれでまずいだろう?

 悪いけど、恨むのなら未成年の自分たちを恨むんだね」


 梓さんはそう言うと、カラカラと笑った。

 ぼくと遙香さんはというと、曖昧にほほ笑むことしかできなかった。


 すると、ここぞとばかり、夏奈さんが「よっ、このバカップル」と茶々を入れてきた。

 すかさず、遙香さんは夏奈さんの足を踏みつけ、それにより夏奈さんはもだえる。


「遙香……あんた、あとで覚えていなさいよ」


 恨めしそうな目で夏奈さんは遙香さんをにらむが、一方の遙香さんは「それじゃあ、とりあえずは解散ですね」と満面の笑みで、一二〇八号室の中に入っていった。


 夏奈さんは獣のようにうなると、それから猫が威嚇するような声を上げ、身体をブルブル震わせた。


 いや、お前は猫か。


 徹は咳払いをすると、「遙香の言うとおり、とりあえずは解散にしましょうか。それではみなさん、また夕食のときに会いましょう」と優雅に一二〇七号室の中に消えていった。


「どれ、おれたちも部屋に入るとするか」

「そうですね、師匠」


 ぼくと龍司さんは夏奈さんと梓さんに軽く別れの挨拶をしてから、一二〇七号室のドアを開け、そそくさと中に入った。

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