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第三十六話 乱入者


 日が昇るのを待って、俺たちは作戦を開始した。

 筆崎の案内で狩り場へと到着すると、すぐに物陰に身を隠して様子を窺う。

 狩り場の中央には何体かの魔物がいて、檻を突いているのが見える。


「中にはなにが?」

「餌だってさ。ネズミとか、鳥の魔物とかの肉」

「それで誘き寄せてるのか」

「あぁ、賢いやり方だ」


 檻に群がっている魔物の数を数えていく。

 数えている間にも一体増え、合計して十二体の魔物が集まっていた。


「いいか? 静かに目立たず行こう」


 物陰から飛び出し、駆けながら得物を引き抜く。

 魔物へと肉薄し、帯電させた刀身で焼き切った。


「吼えさせるな!」


 空を見上げた魔物に帯電刀を投げて刺し殺し、発生させた磁力で手元に引き戻す。

 その間にも筆崎がスキルを使い、魔物の足下に暗い沼を作った。

 筆崎のスキルは墨。定めた位置に墨溜まりを作り、そこから絵を描くように攻撃をする。

 今回は墨溜まりから槍が生え、いくつかの魔物を串刺しにする。

 時を同じくして水の弾丸が放たれ、血の結晶片が飛ぶ。

 あっと言う間に十二いた魔物はすべて死体に変わり、血の海が形成された。


「殲滅完了だ、よくやってくれた」

「二人とも後始末は頼む」

「はい!」

「任せて」


 凜々と詩穂に後片付けを任せ、俺たちは檻の回収へ。

 死体が水球の中に捕らわれ、血が吸い上げられる中、俺たちは檻を運びに掛かる。

 道路に打ち付けられた杭に、三つの檻をまとめるために巻き付けられた鎖。

 それらを杭ごと磁力で浮かせて引っこ抜く。

 振り返ると後片付けも済んでいた。

 あとは撤収するだけとなり、けれど筆崎から渡されていた無線機から音が鳴る。


「咲希、真央、どうした?」

「人型の魔物が一体、そっちに向かってるって真央が。かなり速いみたいだ。すぐ付くぞ」


 そう聞いたすぐのことだった。

 建物の屋根から何かが真っ直ぐ落ちてきたのは。


「見たことない奴だな。そっちは? 神鳴」

「いいや、こっちも」


 立ち上がったその人型は鎧を身に纏っているようだった。

 流線型で風の流れを制御するかのような形状の外骨格。

 朝陽を浴びて鈍く輝くそれは騎士のようでもあった。


「ここで戦うのは色々と不味い」


 派手にやれば少年院の誰かに気付かれるかも。


「凜々、詩穂」

「わかってます」

「いつでも移動できるわ」


 それを聞いて筆崎と顔を見あわせる。


「逃げるぞ!」


 一斉に踵を返し、狩り場からの離脱を計った。

 しかし。


「なっ!?」


 影が俺たちを追い越して目の前に現れる。

 先ほどまで後ろにいたのに、目にも止まらぬ速さで回り込まれた。


「逃がしてくれそうにないわね」

「どうしますか?」


 凜々がライフルを構え、詩穂の右手から血液が溢れる。


「戦うしかないか」


 筆崎も続いてスキルを発動しようとした。


「いや、待った」


 それに待ったを掛け、浮かせた檻を手前に持ってくる。


「狩り場に来たなら餌が欲しいはずだ」


 浮遊させたまま差し出すように押し出すと、予想通り人型は興味を引かれている様子だった。


「こいつを手放せば俺たちに用はなくなるかも」

「あぁ、そうかもだが、そいつを食いおわったら次はこっちの番だぞ。あれだけ速いんだ、きっと飯を食うのも速いぞ」

「だからただでは渡さない。遠くに飛ばすんだ」


 一塊にした檻を振り回し、空の彼方へと投げ飛ばす。

 三方向に分かれたそれを人型は直ぐさま追い掛ける。

 あっという間に姿が見えなくなり、ひとまずは上手く遠ざけられたみたいだ。


「餌に釣られてよかった」

「あぁ、今のうちに撤収しよう」


 事なきを得て、俺たちは改めてこの場を離れた。

 作戦はとりあえずまだ上手く行っている。

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