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第三十五話 作戦について


「予想通りというべきか、少年院は警戒態勢に入ったよ」


 ノイズ混じりのボイスの声が拠点に響く。


「交代で見回りをしているし、なにかあればすぐに加西繁文に伝わるようになっている。連中も暇を持て余しているから喜んで見回りをしているよ」

「それも計画のうちなんだろ?」

「あぁ、そうだ。嬉しい誤算もあったけど、おおむね計画通りに事が運んでいる。そこで更に作戦を推し進めるためにキミ達にやってもらいたいことがあるんだ」


 以前は協力者とまとまりを作るための食糧調達だった。

 まぁ、結果的に少年院の戦力の一角を削ることになったんだけれど。


「本来、このタイミングでイミテーションを打倒する計画だったんだが、キミ達の活躍で前倒しになった。今回は協力者たちと共に、少年院のスキルホルダーをまた一人削ってもらう」


 内容は予想していた通り、スキルホルダーの打倒だった。


「でも、少年院は警戒態勢なのよね? そう都合良く貴重な戦力が壁の外に出てくるのかしら?」

「その点は問題ない。向こうは大所帯だ。必然的に消費する食糧も多いし、食糧庫も空になりかけているらしい」

「それは聞いたの? それとも聞き出した?」

「前者であり後者でもある。たしかな情報だ。少年院側は警戒態勢であろうとなかろうと、魔物を狩りに壁の外へ出ざるを得なくなる。僕たちはそこを攻めればいい」


 以前、真央のスキルで少年院を覗いた際に見た光景が過ぎる。

 カーストの下位に属する人たちは満足に食事も取れていなかった。

 あれは食糧不足もあってのことだったか。


「わかったわ。それで私たちはなにをすればいいのかしら」

「協力者たちと共にスキルホルダーを捕縛しスキルを奪ってほしい。作戦の詳細は協力者たちから教えてもらうといい。音声のみよりよほどわかりやすいはずだ。場所は――」


 ボイスに集合地点を教えてもらい、俺たちは準備を進めた。


§


「やあ、この前ぶり」

「あぁ」


 集合場所の廃工場にて、筆崎と再会する。

 隣にはスキルを譲渡した相坂がいて、その後ろにも数名の協力者たちがいた。


「そっちも」

「は、はい」


 相坂は相変わらずか細い声をしている。


「作戦は? ボイスが聞けって」

「あぁ、今から説明する。こっちだ」


 錆び付いたテーブルに広げられた地図。

 印の書かれた地点を筆崎が示す。


「ここ数日、標的のスキルホルダー――木船きふねがここで魔物を狩ってる。所謂、狩り場って奴だ」

「随分と少年院から近いところですね」

「あぁ、警戒態勢だからな。あまり少年院から離れたくないんだろう。木船を落とすにしても、ここじゃなにかと都合が悪い。そこで予めこの狩り場の魔物を一掃しておこうと思う」

「狩りを出来なくさせてほかの場所に誘導しようって腹かぁ」

「そう。具体的にはここまでだ」


 地図に書かれた道がなぞられ、次の印の地点で止まる。


「誘導役は相坂がやる。イミテーションを使えば楽に誘導できるはずだ」

「誘導が成功した後はどうするんですかー?」

「僕たち全員で囲んで降伏を促す。従わなかった場合は少々気を失ってもらう」


 この作戦で戦闘になるか否かは相手側に掛かっている。

 大人しく降伏してもらいたいところだけど、戦うことも念頭に置いておかないとだな。

 こんな世界だ、なにが起こるかわからないし、なにが起こっても不思議じゃない。


「作戦はだいたいわかった、次はその木船のスキルを教えてくれ」

「あぁ、それは――」


 それからスキルの詳細を聞き、もう一度作戦内容を確認する。

 細かな所を突き詰めていき、現場の下見も行った。

 あとは狩り場の魔物を殲滅すれば作戦を決行できる。

 それは俺たちと筆崎で行うことになった。

 決行は早朝、素早く静かに行わなければならない。

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