第12話 名脇役
キーンコーン、カーンコーン……
「なぁ、久々だし……」
「ねぇ、夏休みでさー……」
ガヤガヤ
ザワザワ
や、やっと終わった。今日は流石に疲れたぞ? 久々ってのもあったけど、マジ疲れたわ。
「はぁ、疲れた……もう、授業、したく、ねぇ」
今日はたしかに始業式だった筈だ。もちろん始業式はあった。
だが授業もあった。実際、授業は昼過ぎで終わったんだけどな?
「俺、なんで優等生キャラなんだよ……」
何故か周りの目がそういう風になってる。自慢じゃないが、元々勉強は出来る方だぞ?ちゃんと授業も出席してたし、テストも上位組だ。
見た目が悪かったからかそうは思われてなかったが。
だけど今日は扱いが全然違った。先生の目が、クラスメイトの目が、違ぇんだよ。それにやたらと話しかけてくる。ニコニコ、ヘラヘラ、ご機嫌を取るかの様に。なんでこうも変わっちまうんだよ? そんなに見た目で変わるモンなのか? 俺は俺だろ? 何を見てんだよ?
「ウ゛ゥ゛ア゛ァ゛ァ゛ーーッ」
俺は机に突っ伏して呻いた。気を張り詰めていた反動だ。
マジで嫌だ。もういつも通りの俺に戻りたい。優等生なんて演じたくない。ありのままでいたい。
だけど俺の目的の為には演じるしかない。男に戻る為に自然な女を演じなきゃいけねぇんだ。
はぁ。マジで溜息しか出ねぇよ。
「日々埜さん? どうしたの?」
「お? どったの?」
「元気ないですぅ?」
横目でチラっと見たら加賀見グループだった。こいつらは……俺の敵だ。ほっとこう。
…………。
「ふ~ん? 元気ないみたい?」
「そだね~?」
「なんででしょうかぁ?」
お前らの『逃がしま戦』が原因だろッ‼ もう関わるなよッ‼ ……休み時間はッ‼
「仕方ないね? イコうか?」(コキッ)
「え? イっちゃう感じ~?」(ペロッ)
「ほぇ? イクんですか?」(ワキワキ)
おーおー、早く行ってくれ。お前らとはもう関わりたくない。カラオケなりなんなり好きなトコ行ってくれ。
「じゃあ、……レディ・ゴーッ‼」
コチョコチョコチョコチョ
「ワッ、ちょッ!? まッ、イヒッ」
な、なんでくすぐってくんだよッ!? お前ら行くっつったじゃねーかよッ!?
「私横~♪」
「私は足がいいですぅ~」
よ、横ぉ? あ、足ぃ? ちょっ、ソコは、待っ!?
「ンヒャヒャヒャッ、待っ、ニャハハハハッ!?」
「な~にぃ? 首も欲しいのぉ?」
く、首ぃぃぃッ!? そ、ソコは……
「ち、違ッ、アヒャヒャヒャヒャッ!?」
ダメだから、首はダメだからぁぁぁッ!?
「私達を無視しようとするなんて、なんてイケない子なのかしらぁッ!?」
「バッ、おまっ、ワヒャヒャヒャヒャッ!?」
た、頼む、から、やめて、くれぇ。ぐ、苦しい……
「はぁー、はぁーっ。うん、満足!美味しかった!」(パンッ)
「いいクビレ、ゴチ♪」(パンッ)
「滑らかな足、ごちそうさまでしたですぅ」(パンッ)
お、お前ら、俺を何だと思ってんだよッ!? メシじゃねぇっつーのッ‼
「ハァーッ、ハァーッ、ぅんッ、はぁ」
あ、暑ぃ、汗かいてきたじゃねぇかよ。何してくれてんだよコイツ等。
「な、何でかしら? 日比埜さんが色っぽく見える」(ゴクッ)
「何かもっとイジリたくなってきたかも?」(ペロッ)
「な、何か興奮してきちゃいますぅ~」(ワキワキ)
は、はぁぁっ!? 何言ってんだコイツ等はぁッ!?
「か、加賀見さん達ぃッ、御用時は無いんですかぁッ!?」
「「「今、でしょ?」」」
プロブレム。イエス、プロブレムだ。ふざけんな馬鹿野郎共ッ!?
コンコンッ
あ? 何だ? 誰だ?
「お前ら始業初日からなにやってんだよ?」
「リ、リヒトぉぉッッッ‼」
音の正体はリヒトだった。教室の入り口をノックして注意を逸らしてくれたみたいだ。マジ助かったぁ。なんか服脱がされそうな勢いだったんだよ。
「チッ、いいトコで王子が来やがった」
か、加賀見ぃ?お前そんなキャラじゃなかっただろって。……優等生だと思ってたけど猫被ってたのか?
「残念~こりゃまた、だね?」
「そうですね~また、ですねぇ?」
だからお前らのまた、はねぇってのッ‼ ……いや、ありそうだな。今後は特別警戒しておこうか。
「別にお前らが仲良くしようと勝手だが、場所をわきまえろよ? ここは学ぶ所だ」
「え、えぇそうね? 高橋君の言う通りだわ。ごめんね、日比埜さん? なんだか可愛くてちょっかい出しちゃった」
「わりーな、日比埜っち♪」(ペロッ)
「ごめんなさいですぅ」(ワキワキ)
「べ、別にいいよ。その、過激じゃなかったら」
特にお前ら2人なッ‼ 口と手が隠せてねぇからなッ!? 絶対また触ってくるつもりだろッ!?
「もういいか? 終わったなら行くぞ? アユミ」
「あ、オイ待てよッ? えっと、加賀見さん達またッ‼ ……おい、リヒトッ?」
俺は早々に立ち去ったリヒトを追いかける為に、急いで学生バッグを持って走った。
ったく、なんでそんなに自己中なんだか。
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「ねぇ、聞いた?」
「聞いたねぇ~♪」
「デキてますぅ~」
「あの感じ、日比埜さんの方が寄ってんね?」
「あ~たしかに?」
「キュンキュンですぅ」
「私達が、愛のキューピットを演じちゃう?」
「ビビッとバンビでブーは?」
「マジカルラブリーンがいいですぅ」
「なんでもいいけど『名脇役』、演じてみない?」
「賛成♪」
「異議なし、ですぅ」
アユムの知らない所で、
別物語の『役』が増えていくのであった。




