第11話 答えるまで逃がしま戦
「お、おい……あれって?」
「だ、誰なんだ? あんなのいたか!?」
「あの制服……ウチの、2年かッ!?」
「なッ!? マ、マジかッ!?」
おーおー、聞こえてんぞ? ったく、見た目が変わるだけでこんなに変わんのかよ。ふざけんなっつーのッ!
「あ、あの子……ヤバッ」
「あ、あんな先輩が、いた、なんてッ!?」
「あんな可愛い子がウチの制服を!?」
「えッ!? さ、撮影じゃないのッ!?」
あーあー、女子もかよ? ったく、たしかに見た目は芸能人レベルだもんな? だけど中身は男だっつーのッ‼
今日は2学期初の登校日。俺はただ、女子用の制服を着て登校しているだけ。それだけなのに周りの反応が変わり過ぎてる。昔は必要以上に避けられてたんだけどな?
原因はあの神様童女なんだが。アイツのポカが原因で女になっちまった。しかも美少女ときたもんだ。溜息しか出ねぇよ、まったくよぉ。周りの反応はある意味変わっちゃいねぇんだけどな? 無駄に群がられないだけ助かるよ。はぁ~っ
「おいおい、幸せという『何か』が飛んでいくらしいぞ?」
後ろから声を掛けられた。と言ってもこの喋り方はどうせリヒトだろ。
「それなら気にしないでいいだろ? 『気』のせいだ。つーかお前歩くの早ぇな? ちゃんと遅れて出たのか?」
横目で確認したけど正解。
ちなみになんだが、周りの目を気にしてリヒトには俺の後で家を出てもらった。だってそうだろ? その、同じ家から、出るなんて、さぁ?
……勘違い、されるだろ?
「3分程待ったぞ? どうした? 俺の顔に何か付いてるのか?」
「う、うるせぇっ! 離れて歩けボケッ‼」
はぁ? なんでこんなに顔がアチぃーんだよっ!? こいつは俺のただの親友だっつーのッ‼ この夏休みの間で特に何もなかっただろッ!?
「なんでお前耳赤いんだよ? 風邪じゃねぇだろうな?」
「わっ、バッ、おまッ! 見んなッ! 近付くなッ‼ ……ボケェッ‼」
俺はいてもたってもいられずにその場から走り出した。もちろん行き先はリヒトと同じ学校なんだけどな? 何かが我慢できなかったんだよ。マジでなんなんだっつーのッ‼ 分っかんねぇよ、俺には。
~2年A組~
「日々埜さん? ご飯一緒にどうですか?」
声を掛けられた方を見たら、ショートボブの黒髪美人系女子が俺を見て微笑んでいた。
あ? えーと、加賀見、だっけ? たしか学級委員とかやってる真面目チャンだった気がする。なんで俺に? 今まで話した事ねぇのに?
「わ、私もいいですかぁ?」
「じゃ、私も~♪」
ついでな感じに2人入ってきた。
1人は小せぇ三つ編み文学少女。名前は……知らね。……三女にしよう。
もう1人はサイドポニーテールのヤンキー女子。名前は……忘れた。……サニーにしよう。
「えっ? あ、ちょっ、はぁ~。どうぞ?」
リヒトの奴と屋上で食べようと思ってたんだけどな。女子の強引さはすげぇわ。何気に逃げ道すら塞がれてるし。
俺、女子と話すの得意じゃないんだけどなぁ。
「ねぇ、日々埜さ~ん?」(ニヤニヤ)
「な、何かな? 加賀見さん?」
んだよ、その含みのある笑みは? 女子ってこんな顔すんのかよっ。怖っ。
「好きな人って、いるかな?」
「あ、気になる~♪」
「わ、私も気になりますぅ!」
「は、はぁぁぁっ?」
す、好きな人ぉぉッ!? なんでそんな気軽に聞いてくんだよっ!? プ、プライバシーってもんが、
ガシッ
ちょ、ちょっと? なんで腕を掴んでんだよ?
「答えるまで逃がしま戦」
か、加賀見ぃーッ!? お前そんな女だったのかっ!? お前、優等生キャラじゃねぇのかよッ!? なにが『逃がしま戦』だよ!? 戦いにしてんじゃねぇよッ!?
「ほら早くぅ~♪」(モグモグ)
「そうですよぉ?」(パクパク)
お前らもお前らで呑気に食ってんじゃねぇよッ‼ テレビ感覚かよ!?
「はぁ……いない。今はいないからッ‼」
いないいない。ほら、いいだろ? 答えたぞ? もういいだろぉ?
「ふぅむ? ウソの匂いが漂うぞぉ?」
なんだよそのウソの匂いってよぉッ!? 絶対ただのカマかけだろうがッ!? 絶対お前らには答えねぇからなッ!?
「加賀見さ~ん。あ、アユミ! 久しぶりー! お祭りぶりだね?」
シ、シオリッ!? 何故ここに? ってクラス隣だからか。というかタイミング悪いな。だって今は、
「ねぇ~シオリぃ~? 日々埜さんが好きな人はいないってウソつくのー。どう思う?」(チラッ)
「ちょ、ちょっとタイムッ! あー、トイレが行きたい。あー、あー」
「却下。確保」
ガシッ(モグモグ)
ガシッ(パクパク)
なんだそのチームワークはよぉ!? 足と腰押さえてじゃねぇよッ!? 食いながら押さえてんじゃねぇよッ!?
逃げれねぇじゃねぇかッ‼
「ふむふむ、シオリが来た途端に反応が出たぞぉ~? ほうほう、カギはシオリが握っている様だねぇ~?」
顎に手を当てて名探偵気取りかよッ! ……いや、シオリは何も知らない筈だ。
大丈夫、大丈夫な筈だ。落ち着け、変な態度は裏目に出る。大人になれ、元の俺を思い出すんだ。
「か、加賀見さん? お茶をいただいてもいいですか?」
「いいでしょう。この『おい!?お茶!?』をどうぞ?」
どこから出したのか加賀見が俺にペットボトルをくれた。それにしても変な名前のお茶だよな? 何があったんだよって名前。だっせぇ。ネームセンスクソだよな。ま、味は美味いんだけどな?
ゴクゴクッ……
「で? シオリは誰か知ってる?」
「え? 高橋くんじゃないの?」
「ヴウェッ!? カハッ、コホッゴホッ」
やべッ、吐きかけた。いやいやいやいや、シオリ? なにがどうなったらそんな答えになるのでしょうか?
「ほほう? そう、あんな根暗がお好みなのぉ? ま、顔はいいものねぇ? なるほどぉ?」
「ちょ、ちょっと、シオリさ~ん? 私はリヒトの事そんな風に思ってなんかいないからね? アイツはただの親ユ……幼馴染だからね?」
勘違いにも程があるって。俺が好きなのは、シオリだけだっての。今は男じゃなくなったんだけどさ?いつ(モミモミ)か(サワサワ)き(ナデナデ)っと(スリスリ)……おい?
「大人しいと思ってたんだけどさ、その、揉むのとかは、ヤメて、くれないかな?」
「んん? だっていい身体してるからさ~」
「そうですぅ~足がスベスベで気持ちいぃですぅ~」
サニーと三女の触り方がヤバい。なんか痴漢みたいなんだけど?
「触り方が、その、嫌なのッ‼ もう相手しないぞッ!?」
「はいは~い、また今度の機会だな」
「ごめんなさいですぅ。また、ですぅ」
また、じゃないっての。はぁ、まぁ離してくれたから今はいいよ。
ちゃんと落ち着かせてくれよ、まったく。こっちは修羅場だっての。
ゴクゴク……
「ん~、私もそっちが良かったなぁ。で、シオリ? 根拠は何かな? 何かなぁ?」
ったく、何がそんなに面白いんだよ? 女子って分っかんねぇなぁ?
「え? ……だって、お祭りで抱き合ってたし……」
「ブァバァッッッ!?」
「ちょ、ちょっとッ!?」
「だ、大丈夫ですかぁッ!?」
ウソ、だろぉぉぉぉッ!? 見てたのかッ!? あの時近くにいたのかッ!?
「あ、は~ん? そうそうそうそう? ふ~ん? へ~ぇ? 先、行ってるぅ~♪」(ニヤニヤ)
「ち、違うからッ‼ そんなんじゃないからッ‼」
「え? でも……『お前が、ナントカで幸せ』だって……?」
ブンッ!
「オイッ!? お茶ぁッ!? なんかマズいぞぉッッ!?」
「ちょ、ちょっとぉ? 今投げたでしょ?」
「あ~教室ビチャビチャですぅ~」
「……進んでるわね。まさか、そこまでとは……いいわ、私達はアナタの味方よ! フォローは任せてッ‼」
ちげぇよ。馬鹿。はぁ……もういいよ。好きにしてくれよ。
俺は拒否するがな?
「アユミの恋、私も応援するからね?」
「シ、シオリぃーッ!?」
「な、なにも泣く事ないじゃん!? 大丈夫だって! ファイト♪」
マズいよー、マズいよー。なんで俺の好きな相手が違う奴くっつけようとしてんだよ?
誰か助けてくれよぉ。
だけど俺達の周りには鼻の下を伸ばした野郎しかいなかった……




