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魔王に再び挑みたい!  作者: kiruhi
決戦!魔王城!!
73/77

【08】

 あぁ……この暖かさ……ポカポカしていて凄く心地よい。ずっと包まれいたいな。とさえ思っていた。


『転生者II(ツゥ)』発動。


 突如視界に入ってきたのは、そんな警告文だった。

 これはクリスタルから解放されて以降、頻回に出てきたシステムメッセージは全く表示されなくなり、代わりに警告文として右上に現れるようになっていた。


 やばっ、あのまま太陽の光に身を委ねて死ぬ所だった。


 『転生者II(ツゥ)』の発動条件は俺のHPが五分の一まで減少した時に、一時的にゲーム時代の能力以上の力が解放されると言うスキルだ。

 サブ職業が使えない今、扱えるかどうか不安だったが真・聖王剣を取り出し装備する事が出来た。どうやら、『転生者II(ツゥ)』の発動時間内のみゲーム時代剣士だった俺は剣のみ扱えるようだ。

 HPが徐々にすり減っていくのを自覚しなから俺は、真・聖王剣を構えながらルブシューニェへと詰め寄ろり始める。


 一歩……


 足を踏み入れただけで肌が瞬時に焦げつき、焦げた匂いが鼻につきまう。これ以上進むものならば、残りのHP2000と少しあったとしても瞬く間に0となり俺の身体は焼き尽くされる事だろう。

 そんな熱気が取り巻く中央にルブシューニェは、不死鳥と共に立っている。


 アルモタヘルシャラーラ(太陽の熱気)


 わかった事と言えば、この魔法は効果が持続する魔法のようだ。範囲は広範囲、対象は無差別。多分術者も道ズレ。

 効果持続魔法は魔法使いにも魔導師にも存在するが、あまり使う事はない。それは広範囲と言えども瞬時に与えるダメージが極端に少ないのだ。同じダメージを与える場合、フレアボールを数発放った方が遥かに早く与える事が出来る。

 だが、この破壊力は流石魔王が扱う事の出来る魔法と言うべきなのだろうな。


 止める方法は、発動者の意思。即ちルブシューニェの意思に寄って発動は止まるのだが、身の丈以上の魔法を放ったルブシューニェに意識はあるのだろうか……? 疑問である。


「先ずはこの熱気をどうにかしないと、ルブシューニェの元に行く事すら出来ないな……」


 真・聖王剣の柄を握りしめ、魔力を送り込んでいく。

 迷宮を破壊した一撃は必要ない。必要なのは、この熱気を吹き飛ばす事が出来る剣圧のみ……


 心を落ち着かせながら流れるように鋭く、そして力強く真・聖王剣を振り下ろす。

「うおぉぉぉぉぉりゃ!!」

 剣圧は魔力を帯びながら、俺の意図していた通り熱気を一瞬で吹き飛ばしてくれた。拡散させるのには至らなかったが、ルブシューニェの元に行くには十分な一撃だった。

「よしっ!!」

 再び、熱気が充満し近づけなくなってしまう前に、俺はルブシューニェの元へと詰め寄って行くのであった。




「ルッ……ルブシューニェ………」

 俺の予想通りルブシューニェに、魔王が操る魔力を扱えてはいなかった。

 扱えるからこそ、最強の魔族の王なのだから……

 それを魔族の一人、幾ら魔族四天王とは言え発動しようとする事自体が土台無理な話なのだ。だが、俺の魔力とルブシューニェの魔力が合わさった時、感づいたんだろうな。


 もしかしたら、扱えるかもしれない……と。


 俺だってルブシューニェと同じ立場でこの状況に直面したら、試したい衝動に駆られていた。そして、間違いなく発動していた事だろう。同じ魔法を使う者として、今まで発動する事すら出来なかった憧れとも言える最強の魔法があるきっかけで、一回だけ発動出来るとなれば俺もやっていただろうな。


 ルブシューニェの今の状態は言うならば、俺の姿とも言える。だから、ルブシューニェの今の姿は俺には見てはいられない。

 転生者II(ツゥ)が発動時間内に、責めて早くルブシューニェを俺は楽にさせてやりたかった。


「今、楽にしてやるよ………」

 ルブシューニェと不死鳥諸共斬り伏せるつもりで、魔力を練り上げ真・聖王剣を振り下ろしていくのだが……

「ソード……シールドっ!!」

「!?」

 ルブシューニェと真・聖王剣の間に結界が出来上がり、俺の攻撃を阻むのであった。

 邪魔をしてきたのは、当然シュトレンだ。

「シュトレン!?」

「ぐっ……ルブシューニェは、倒させない……」

 アルモタヘルシャラーラはシュトレンも焼き殺そうとしたのだろう。辛うじて結界に守られてはいたが、既にシュトレンの下半身は消え失せていた。それでもシュトレンは、最後の力を振り絞りルブシューニェだけでも守り切ろうとしていた。

 うつ伏せに倒れこんだまま動けないシュトレンは、俺を睨みつけながら見上げている。

「シュトレン。俺はルブシューニェの変わり果てた姿、いつまでも見てはいられないよ」

「貴様が死んだ後、魔王様にお願いしルブシューニェを治してもらうまでだ!」

「……悪いが死ぬわけには行かない。シュトレン、お前が誇るこの結界壊させてもらう」

「好きにするがいい。だが……俺の結界は、そう簡単には……や…ぶれ……ない……ぞ」

 シュトレンは、力尽きたかのように見上げていた顔を地面に落としていくのであった。




 ------



 ガキィーーン!!

 ガキィーーン!!


 剣を幾度となく振り下ろすも結界は攻撃を防ぎ、ルブシューニェに届く事はなかった。

「はぁはぁ……くっくそ……限界か……」

 転生者II(ツゥ)の発動時間が切れたのと同時に、真・聖王剣は装備出来なくなってしまった。


 どうすればいい……どうすれば……?


「そういえば……」

 ベーレはあの時なんと言っていた……

『武器を用いて攻撃するのと、魔法を使って攻撃する時の結界の種類を分けておるようじゃ。その使い分けに多少の歪みが生じておるようじゃな』だったな。


 ……歪み……歪み……


「っ!!」

 諦めるのはまだ早い、最後一か八かやってみるか。


「まっ……魔力最大、メギドフレアストライク!!」

 杖から魔法を発動させるのではなく、右拳一点にメギドフレアストライクを纏わせ結界目がけて、思いっきり振り下ろしていく。

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」


 シュトレンの結界は、二種類存在する。

 一つは、近接攻撃に強く魔法攻撃に弱い結界。

 もう一つが、魔法攻撃に強く、近接攻撃に弱い結界。

 これが、ベーレの感じていた歪みだとしたら……


 先程俺は、真・聖王剣でルブシューニェを攻撃した。

 そしてシュトレンはルブシューニェを守る為、結界を発動。そのままシュトレンは死に新たな結界は形成されていない。だとすれば、今ルブシューニェに貼られている結界は近接攻撃に強く魔法攻撃に弱い結界。ならば、メギドフレアストライクでこの結界は破れる筈だ。


「壊れぇぇぇろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」


 予想通りピシッピシッと結界にヒビは入ってきたが、先程吹き飛ばした太陽の熱気は再びこの空間を満遍なく充満させていく。

 満足に息が出来ない状態の中で俺がルブシューニェを攻撃出来たのは、魔力を身体の外側に発生させバリアみたいに展開させていたおかげなのだが、流石に全てを防ぐのは無理。俺が出来たのは少しでも酸欠状態を防ぐ事のみであり、HPは徐々に減っていくのであった。


 ルブシューニェを守る結界はもう少しで完全に破壊する事が出来るだろう。しかし、その前に俺のHPは1000を切ったのだろう、赤く点滅し始めている。

「もっもうちょっと……なのに……くっくそぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 使うしかないのか……?


「……」




 ……本来ならば、魔王と対峙した時に使いたかったのだが……

 死んでしまっては元もこうもないな。




「『ラグナロク(神々の黄昏)II(ツゥ)』発動ぉぉぉぉぉぉ!!」

 体内から、普段は封印されている力が溢れ出てくるのを感じ取っていく。


 よし、これで結界は破壊出来るぞっ


 と思っていたのと同時だった。ペディリヴァとの戦いの最中にも起こった、防御不可能な空から電撃が直撃。

「………………ぐっ?!」


 またっ!?


 ビリビリと身体は痺れ残りのHPをさらに減らしていく、ラグナロク(神々の黄昏)II(ツゥ)を発動していたおかげで辛うじてHPは0にはならなかったみたいだ。

「くはっ……」

 電撃の余波で上半身が後ろに下がり倒れそうになるのを、踵に力を込め辛うじて一歩だけ後ろに下がるのみで踏みとどまる。なんとか体制を整え、痺れる身体を無視して再び拳を結界へとぶつけていく。

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!! 壊れろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 回避不可能の高速八連撃が壊れる筈のない結界を破壊し、ルブシューニェの姿を捉えていた。




 ------



 ルブシューニェの身体に直撃したメギドフレアストライクは、ルブシューニェを焼き殺さんと激しく燃え広がり、太陽の熱気も同調するかのように一気にルブシューニェに集まりだしていた。

 広場を取り巻いていた太陽の熱気は、ルブシューニェに集まり内部を焼き尽くした事により完全に消滅したのだろう、徐々にすり減らしていた俺のHPの減少は止まっていた。


 不死鳥は消え去り、ルブシューニェは辛うじて原形を保っていた。

 その姿は、ドラゴに見習って欲しかったあの惚れ惚れするぐらいの美しい姿もなく、最早立つ事も出来ず戦う魔力などないに等しかった。


 ルブシューニェに見下ろしながら、気がつけば俺は杖を構えていた。

「……」

「なっ……なぜ、こんな無茶苦茶な事をした……?」

 意識はあるのかどうか知らなかった。でもそれでも俺は言葉をかけずにはいられなかったのだ。


 こんな無謀な……

 扱えるかわからない魔法を使わなくても、ルブシューニェは俺に勝てた筈だ。

 俺が生き残る事が出来たのはルブシューニェが、魔王の魔法を使ってみたいと言う誘惑に負けたせいだ。

「はぁはぁ……」

 ルブシューニェは俺よりも遥かに凄い魔力と想像もつかない経験の持ち主であり、魔法を俺に教えてくれた尊敬出来る師匠だ。アルモタヘルシャラーラさえ発動しなければ、あそこで倒れているのは間違いなく俺だった。


「……簡単な事よ……」


 ルブシューニェは消え入りそうな言葉でゆっくりと口を開き始める。


「最強魔導師と言われ続けると、誰も私の相手をしてくれる魔族はいなくなっていくわ。唯一互角に、そして全力で戦えると思えたのがリュウイ。貴方だった」

「……」

「私は……全力で戦う事が出来、あまつさえ魔王様の力の片鱗の片隅を垣間見る事が出来て……満足よ」

「くそっ……」

「頼み……があるわ…………最後は、炎でお願いね……」

「……」

 それ以上ルブシューニェは、目をつぶったまま何も言わなかった。

 気絶したのか? それとも意識はあるが話す力がないだけなのか? それはわからなかった。

 何とかして、ルブシューニェを助ける方法はないかと考えるのだが、回復アイテムを使用すれば確かにルブシューニェを回復させる事は出来る。だがそれは回復アイテムでは追いつかない程のダメージを負っているルブシューニェには効果はなく焼け石に水、無駄に苦しませるだけだった。

 回復魔法の発動。回復魔法さえ発動すればルブシューニェは確実に救う事が出来る。だが、現在サブ職業が選択出来ない為、発動自体が不可能である。


 俺はルブシューニェを救う術を、持ち合わせてはいなかった。

 今、俺が出来る事と言えば、師匠最後の意を汲み取る事のみだった。


 魔力を一気に杖に集中させていく中、ルブシューニェの思い出が蘇ってくる。

 ゲーム時代に培ってきた常識を遥かに上回る、豊富な知識は俺に新たな魔法を授けてくれた。更に、嬉しい事にドラゴにも女らしさを親切丁寧に諭してくれた。


 そんなルブシューニェを俺はこの手で……


「……メギドフレアショックっ!!」


 ルブシューニェは最後にニコリと笑っていたのかもしれない。満足そうな顔をしながら、炎に身を包まれ光の粒ととなって消え去る。ルブシューニェの倒れていた場所には焦げ跡だけを残し煙が舞い上がる。煙は俺の目を刺激し涙を浮かべあがらせていた。


「ルブシューニェ……」


 いつまでもルブシューニェの事で後悔している訳にはいかなかった。俺には時間は残されていないのだから……

 気を取り直した俺は、その場から立ち去り再び螺旋階段を登り始める。



 これで魔族四天王の内、ガルヴァルデ族のぺディリヴァ。ムーンサン族のルブシューニェ。デューンキーパー族のシュトレンの三人を倒した事になる。



 残りの魔族四天王は、フォス族のみ……





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