【06】
物価の街サンライズには、各街に並べられている高額なアイテムも安く手に入る事や、普段滅多に手に入らないアイテムも簡単に手に入れる事が出来ると街として言われていた。
ドラゴに何度も『一度は行きたいのじゃ』と言われ続けていたが、当初の俺としては苦い思い出もある事から、あまりシュトレンとは関わりたくなかった故に物価の街サンライズに行く事は拒否し続けていた。
そんなある日、物価の街サンライズで年に一度、簡単な手続きを行えば誰でも開く事が出来る大規模な露店フェスティバルで、その三日間の間に最高金額の売り上げを叩き出した者には、魔族四天王の一人デューンキーパー族のシュトレンから、希少価値の高い『星くずの鉱石』が直接授与される名誉ある催し物が開催されるのであった。
星くずの鉱石は、魔王からの頂き物として純度の高い魔力を秘めている鉱石であり、生産系を主にしている魔族ならば誰もが一生のうち一度は手にし加工したいと思う程の代物である。
そして、星くずの鉱石を材料として作り上げられた武具一式は、純度の高い魔力を帯びているが故に、その性能を存分に扱う魔族は魔族四天王のみであった。完成された武具一式は魔族四天王の誰かに納められ、己が作った武具を魔族の種族王が装備してくれる。
生産系の生業としている魔族ならば名誉ある事として、語り継がれていた。
そんな話しをドラゴから聞かされた時、闘技場の景品に引き続き興味は湧かなかった。
せっかく手に入れた希少価値の高い鉱石とやらを手に入れ加工した所で、自分の物にならないのであっては何も意味はない。
それに、歴代の生産系の魔族たちに名を連ねるつもりもないし、百歩譲って掘り出し物目当てで行くのは構わないが、出店する気は更々なかったのだが……
何を思ったのか、突然ドラゴは俺に出店しろと言い出したのだ。
「ーーと言う事じゃ。リュウイよ、出店して見ようではないか!? 我も微力ながら力を貸すぞ!」
「えぇ……面倒ぉ〜」
「何を言うっ!? お主の持っておるアイテムボックスとやらには、沢山のアイテムがあり正に宝の山と言うではないか!?」
「確かにゲーム時代のアイテムは大量にあるし、今では殆ど手に入らない代物ばかりだな……」
「ならば、整理する意味を込めて売ろうではないか!!」
「何をそんなにムキになっているんだょ……」
「……」
「今、俺たちは生活するのに困っているか?」
「……困ってはおらぬな……」
「冒険に必要とする武器・防具に不自由しているか?」
「……満足じゃ……」
「行くのは構わないが、無理に目立つ必要性はないと俺は思うんだけど? 俺の言い分に何か間違っているか?」
「間違ってはおらぬ。だがな……」
「んっ?」
「……ムーンフェイズにおる冒険者ギルドの受付嬢に竜貴石の手がかりを求む依頼を出しておるじゃろ?」
「あぁ……忘れていたけど、確かに出していたな」
「今回の露店フェスティバルで売られると話しを聞いたのじゃ……」
「おぉ〜よかったじゃん!!!」
「だが、だがの……我は買うお金は持ち合わせてはおらぬ。だから、お主のアイテムを売ってじゃ……な?」
「おいっ!! ドラゴ、お前も俺と世界各地色々な所に行っているから、それなりにアイテムはあるはずだろ! それを売れよっ!!」
「いや、これらを売ったとしてもまだ足りぬのじゃ。リュウイよ、頼む!!」
と、ドラゴの目的がわかった俺は再三『このとお〜り、頼むのじゃ!!』と頭を下げられ続け、結局折れたのは俺の方だった。
始まった露店フェスティバル三日間は、ドラゴのおしとやかさ? と言うか、お色気作戦によって魔族たちは長蛇の列を生み出し、竜奇石代だけ稼ぎたかった俺の意思とは裏腹に気がつけば最高金額を叩き出してしまったのだ。そして、その売り上げの半分は竜貴石を購入資金として、消え去って行った。
星くずの鉱石の受け取りの時だ、シュトレンと再会したのは。
「お前は……あの時の……?」
「……」
シュトレンはどうやら俺の事を、覚えていたらしい。
「あの電磁波は、もう勘弁して下さいね」
皮肉を込めながら、超強烈だったヒューマン特定装置の事を脳裏に浮かび上がらせていた。
あれは、凄く痛かった。出来れば二度と味わいたくない物だ。
「ふっ、今は無用の産物だろ」
その後、少しだけたわいのない会話をしながらシュトレンとの再会は、簡単に終わったのである。
身構えていただけに、あっさりと終わって俺は胸をなでおろしていた。初対面が悪い印象しかなく、シュトレンはいい魔族なのかもしれないが、俺としてはもう関わりたいとは思わなかった。
そして、星くずの鉱石を俺は受け取らなかった。
「勿体無いのぉ〜」
とドラゴは言っていたし、審査員たちも目を丸くしていた。
だが、どうせ作った所で俺には使いこなせないみたいだし、魔族四天王に納めなくてはならない。
仮に最高の武具作り上げ納めた所でいざ戦いとなった場合、それが障害になる事だって十分考えられた。
俺の次に最高金額を出した魔族にあげて欲しいと伝え、さっさとマイホームに戻ったのである。
結局の所、ドラゴは目的であった竜貴石を手に入れる事が出来、凄く喜んではいたが俺には何かいい事があったのだろうか? アイテムの半分は減り、あまり必要としていないお金が増えてしまった。
それは、何か腑に落ちない結末だった。
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「「メギドフレアキャノン!!」」
俺とルブシューニェが放った業火の炎の塊は中央で衝突。互いに一歩も引かぬ炎の塊は、やがて一つ大きな塊となって爆発。辺りには熱風が巻き起こっていた。
流石、魔力を扱う魔族の中で誰もが憧れの人物。最強の魔導師、ルブシューニェだ。
メギドへレアキャノンは、ギェクサグラマ・フレアキャノンよりも上位の魔法であり魔導師の中では、かなり破壊力を持っている魔法だ。
この一撃で倒せるとは思っていなかったが、どうやらルブシューニェを倒すにはかなり骨が折れそうだな……
「ねぇ……この程度の魔力なの? それとも小手調べ?」
「少しだけ本気だったかな……?」
「だとしたら正直期待外れね。私、あなたと戦うの実は凄く楽しみにしていたのに……」
「理由を聞いても……?」
「……生と死。どちらが勝つかわからない、魔力の拮抗。互いが限界まで高めた魔力のぶつかり合い戦い一度はして見たいと思わなくて?」
「……」
「転生ハイヒューマンであるあなたなら……と思ったんだけど、この程度の魔力の練り方では魔王様は愚か、私を倒す事すら不可能よ」
「……」
言われなくともわかっていた。
生半可な魔力の練り方では魔王はおろか、ルブシューニェすら倒せないと言う事は……
そもそもペディリヴァを倒せたのは、力が拮抗している中に俺だけが驚異的な魔力を流し込んだお陰の勝利だ。サブ職業が選択出来ない今、魔導師のみ。即ち己の魔力のみで倒さなくてはならない。
もっともサブ職業を選択出来たとしても、おれはルブシューニェとの対決は魔導師のみの選択をしていたと思う。
魔法を教えてもらい、俺ならば全力を出せるかもしれないと言うルブシューニェの思いに答える為にも……
「ならば、ルブシューニェ。俺はあなたを超える為にも、もっともっと魔力を練り上げていくまでだ」
「期待しているわ」
杖を地面に突き刺した俺は、両の手に魔力を練り上げていく。
この魔法は、MP消費量が普段の倍以上かかり発動直後には、MPは半分以上消費してしまうからあまりやりたくはないのだが、ルブシューニェに俺の魔力を見せつける為には、そうも言っていられない。
MPポットはまだまだ沢山あるんだ、減ったMPはアイテムで回復だな。
「へぇ〜魔力総量自体は、私を超えているようね。でも総量が多くても、魔力の練り方が甘かったら宝の持ち腐れ……この場合魔力の持ち腐れね」
俺の魔力の練り方を見ながら、余裕の表情でルブシューニェは師匠のような口ぶりをしてくる。そして、俺が放とうとしている魔法に対してゆっくりと、余裕の表情を浮かべながら身構え始めていく。
魔力の練り方は、あれから工夫し改良している。
それに、魔力の練り方を教えてくれたベーレに太鼓判を押されたんだ。
惑わされる事はない。
両手に練りあげた魔力を、先程地面に突き刺した杖にある宝石を握りしめ叫ぶ。
「タブル、メギドフレアバーストォォォォォォォォォ!!」
二発分の威力を誇る業火の炎がうねりを上げながら、ルブシューニェを襲いかかる。だが……
「……それが、全力? だとしたらかなり拍子抜けかも」
ルブシューニェは臆する事もなく、むしろ余裕の表情に見て取れた。
「メギドアイシクルフローズンっ!!」
涼しげな冷気は辺りを飲み込んで行き、ルブシューニェの杖から絶対零度の氷の塊が放たれ、一瞬で俺の放った業火の炎はルブシューニェに直撃する前に凍りついていく。
しかし、俺の中ではそれ自体予想していた事だった。
ルブシューニェには、タブル、メギドフレアバーストでは倒せない。と……
予想していたがゆえに、俺はもう一発分の魔力を事前に練っていたのだ……それを今ここで発動させる。
「焼き付くせっ!! メギドフレアキャノンっ!!」
業火の炎は杖から高速に発射され、目の前にある氷の塊すらも瞬時に溶かしそのままルブシューニェに直撃し、炎に身を包まれて行くルブシューニェだった。
「ちぇ……そう簡単に勝てせてくれないか……」
業火の炎がルブシューニェに直撃する寸前、俺は聞き覚えのある声を聞いていた。
『マジックシールド!』 と……
「確か……戦闘が始まる前に、助太刀無用と私言った筈なんですけど……?」
「でも、今の魔法は結構ヤバかったと思うぞ」
「余裕ですわ……」
そんな会話のやり取りが、炎の中から聞こえて来ていた。
次第に炎は鎮火して行き煙だけが立ち込める中、ルブシューニェの姿と先程マジックシールドを発動した人物の姿が見えてくる。
魔族四天王の一人デューンキーパー族種族王にして、結界のスペシャリスト。
「シュトレン……」
だった……
「久しいな、転生ハイヒューマンよ」
「……」
どうやら魔王の元に行く為に倒さないといけない相手が、一気に二人になってしまった……




