【04】
真・聖王剣の一撃を持ってしても魔王がいる塔はビクともしていなかった。
「流石、魔王がいる場所だな」
と見上げながら俺は、小声で呟いていた。
直線距離を走る事、数時間。漸く大きな円形状の形をした広場に出る事が出来た。
「ふぅ……意外と時間がかかったな」
広場の中央には塔が立ち、その直ぐ側では俺を待ち構えていたかのように、ガルヴァルデ族のぺディリヴァが待機していたのであった。
「ぺディリヴァ……」
「ふんっ!!」
ペディリヴァに対して俺は魔法を使うのではなく、サブ職業を剣闘士から格闘家へとチェンジさせて行くのである。
ぺディリヴァとも俺は酒を飲み交わす程の仲になる事が出来ていた。
きっかけは、ムーンフェイズにある闘技場で3年に一度行わられる武闘大会。最初は公の場に出る事を俺は嫌っていたのだが、上位2位に入賞すると手に入る竜貴石。これを欲しいとドラゴは言い出したのだ。
「自分でやりなよ……」
そうドラゴに言ったのだが、優勝賞品が攻撃力の宝石.Xと知らされた時……
前衛魔族たち誰もが、欲しがる攻撃力の宝石.X。ドリームゼロにある洞窟に幾度か行ったが、結局手に入れる事は出来なかった代物だ。俺も喉から手が出る程、欲しいと思い結局ドラゴと共に武闘大会に参加したのである。
圧倒的な力の差を見せつけ勝ち続けていくと、当然決勝戦はドラゴとだった。観客席は大会中一番の大盛り上がりを見せる中、観戦に来てくれた魔族たちには悪いが俺はドラゴは負けてくれるだろうと思っていた。
なのに……
一切の手加減をせずに本気で戦いを挑んでくるドラゴ。
後に聞いて見ると、俺と本気で戦う機会はもうないだろう。そう思ったらしい。
実にいい迷惑な話しだったが、なんとかドラゴを打ち負かした俺は、無事に攻撃力の宝石.Xを手にする事が出来た時だ、ぺディリヴァと出会ったのは……
種族王としてではなく、一個人の魔族としてぺディリヴァは俺と戦って見たかったそうだ。
観客席から見下ろす俺の戦いぶりは、武道家として手合わせしたくなる程戦いの血と言う物が疼いてしまったそうだ。特に前衛職は特に強い者を見ると、戦いたくなる衝動に駆られるらしい。
戦う事は出来ないが、酒を飲み交わすなら幾らでも……とペディリヴァに伝えると、次の日の夕方には、大量の酒を持ったガルヴァルデ族を引き連れて、ペディリヴァは俺のマイホームへと現れたのである。
何事?!
ガルヴァルデ族の襲撃!?
と思ったら、違っていた。ペディリヴァはニヤリと笑いながら、俺になみなみと注がれたコップを差し出してきたのであった。
「約束を果たしに来た!!
なにか不都合でもあるか?」
「……いえ、何もないです……」
確かに酒を飲み交わすなら幾らでも。と言ったが、まさか次の日に来るとは思ってもいなく予想外の出来事だった。訓練場に仮設テーブルと椅子を置き、次々に作る羽目になった料理にガルヴァルデ族は大喜び。
「なんで、俺が……」
そう言いながらも身体が、勝手に料理を作っていた。
一段落した頃には、夜も更け見上げれば満天の星空が見えていた。
「腹減ったぁぁぁ〜」
「うむ、お主の料理は絶品じゃの。作れば作る程美味くなっておるぞ」
「……そりゃどうも……」
ドラゴは俺の手伝いをすると言って出来上がった料理を運んでくれていたのだが、その運んでいる途中につまみ食いをし、ガルヴァルデ族の手元に届く頃には半分程しか残っていなかったらしい。
見兼ねた、ガルヴァルデ族の三人が運ぶの手伝う。との申し出に、ドラゴは喜びガルヴァルデ族に混じって沢山食べ尽くしたそうだ。
ガルヴァルデ族はお腹が一杯になったのだろう、既にその場で雑魚寝状態だった。これが、フォス族だった場合、この倍の量を平らげていただろうなと思いながら、余っていた料理を口の中に放り込んで行く。
「済まなかったな」
ペディリヴァは串に刺さった肉を俺に差し出しながら話しかけてきたのである。
「……楽しんでくれたようで、何よりですよ」
「しっかし……あの時、ムーンフェイズの北の洞窟に出会ったお前が、実は魔王様の探し人だったとはな」
「……」
「あの時俺が、その事に気がついていたら俺もお前も、この場にはいなかったんだろうな」
「でしょうね。俺はあの時、見つからないように。ただそれだけ一生懸命考えていましたよ」
「フッ……そうか」
俺とペディリヴァは夜が明けるまでずっと語り合っていた。
その殆どはペディリヴァの人生話しが殆どだったが、刺激的のある話しばかりだった。一番印象に残っていたのが、種族王の話しだった。
魔王にある日魔王城に呼ばれたペディリヴァは、『何か悪い事したかな?』と冷や汗をかいていたのだが、魔王が口にした言葉は全く違っていた。
「ペディリヴァ、お前明日から種族王になれ。不服申し立てる者がおれば、己で解決しろ」
とそう命令されたのである。
有無を言わせず状態の魔王の言葉に、ペディリヴァは不安を抱きながらも種族王にはなったのだが、ペディリヴァの予想通り最初からガルヴァルデ族はペディリヴァを種族王として認めなかったのである。
そう、俺の方がペディリヴァよりも強い!!
なのに何故魔王様はペディリヴァを種族王にしたのか!?
と思う魔族が大半であったが、魔王の決定に不服を言うわけにも行かず。だからと言って、ペディリヴァの命令を聞くのも腹立たしく感じていたのも多くペディリヴァが、ガルヴァルデ族に種族王として認めてもらうには、力が誇示が必要だった。
そこで作り出したのが、闘技場。
「俺が種族王と名乗る事を不満に思っている奴は、大勢いると思う」
「……」
「逃げも隠れもせん!!
ガルヴァルデ族らしく正々堂々と戦い、そして俺を倒す事が出来た奴が種族王だ!!」
「ペディリヴァ。お前、魔王様の決定を覆す気か?」
「ガルヴァルデ族は力を司る種族、お前も……お前も、俺より強いと思っているんじゃないのか!?」
「……」
「……図星だろ?
俺を倒す事が出来た者こそ種族王に相応しい。そう魔王様に進言し認めてもらう」
「……わかった。ペディリヴァ覚悟!!」
ペディリヴァの予想通り、ガルヴァルデ族は戦いを挑んできた。ペディリヴァを倒し種族王に。と思っていた者は、すぐに戦いを挑んで来る魔族なのにもいたり、ペディリヴァが戦いに疲れ弱ってから倒そうと考えていた魔族。
そんな魔族たちを、ペディリヴァは全て叩き伏せて行き最後に立っていたのはペディリヴァのみであり、ガルヴァルデ族の種族王として認められた時であった。
「ペディリヴァ……誰もお前に文句は言わん。お前が種族王だ!!」
更にペディリヴァは、ウォルガフの話もしてくれた。
慣れない種族王を頑張ってまとめ上げているとの事だ。
その話を聞けば聞く程、微笑ましくも思ったのと同時にある疑問が浮かび上がっていた。
確かペディリヴァは、フォス族を見下していたはずだ。なのに、ウォルガフが種族王になってから、ペディリヴァはフォス族を見下してはいないように俺には感じ取れていた。
「最初にペディリヴァさんに出会った時、俺はてっきりフォス族が嫌いなんだな。と思っていたのですが、実はそうじゃないんですね……」
「んっ……?
あぁ……あの時はミクロスが、種族王だった時だろ?」
「ですね」
「ミクロスは保身的すぎた。『フォス族はか弱いから守ってくれ。そして、ご飯頂戴♩』と言わんばかりの態度だった。同じ魔族で俺たちと同等の力を持っているのに、そう言ってきたミクロスが俺にはどうしても許せなかった」
「……」
「だが、ウォルガフは違った主張をしてきた。『僕たちは決して弱い種族ではない。確かにご飯は欲しいし大好きだから、いつでもご馳走して下さい。でもそれでも僕たちは魔王様を守る事が出来る力を、持っています。やるべき事は果たします』そう言ってきたんだ」
「……」
なるほど……実にウォルガフらしい言葉だな……
その言葉をペディリヴァは認めたんだな。
そう思っていると、ペディリヴァは思い出したかのように脇腹をさすっていた。
「……」
それだけで聞かずとも理解する事が出来た。、ウォルガフは言葉以外にも己の力を持って、ペディリヴァに認めさせたんだろうな……
「所で、リュウイよ」
「はい……?」
「お前は、色々な職業になれると聞く」
「あくまでも、魔導師がメインですけどね」
「いつしか……何年後になるかはわからないが、俺と全力で戦う時が来た時……」
「ペディリヴァ……さん?」
「魔導師としてではなく、格闘家として俺に挑んで来て欲しい」
「理由を聞いても?」
「……魔法を扱う者を馬鹿にするつもりは毛頭ないが、後ろから守られて強力な魔法を放つ。立派な戦術だとは思う。だが、俺の性格には合わないんだろうな。一歩もひかない互いの拳と拳。これこそが俺の中で一番納得が行く戦い方なんだ」
「わかりました。その時は全力でいかせてもらいます」
「返り討ちにしてやるわっ!」
その日以降、ペディリヴァはたまにマイホームに来たり、俺もペディリヴァの住む城に招待されたりと、交流を深めていった。
そして、今……いつしか友と呼べる程の仲になったのではないか?
と俺は思っている。
ウォルガフとはまた違った意味を持つ友人……
友と呼べるペディリヴァと俺は、全力で戦い。そして、叩き伏せなければならない。
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俺とペディリヴァの間で言葉を交わされる事はなく、拳と拳がぶつかり合っていくと両足は大地に足跡を残すかのように沈み込んでいった。
中央では、俺の拳とペディリヴァの拳が一歩も引かずにせめぎ合う。
俺は、格闘家として……ペディリヴァと同じ土俵で戦い勝利したかった。
このまま戦いを続けていたとしても、いずれ俺が勝利していただろう。だが、それは同時に格闘家として戦うがゆえにこう着状態の戦いを繰り広げると言う意味であり、すぐに決着をつける事は不可能であった。
ペディリヴァの他にも魔族四天王は後3人もいる。時間が限られている俺にとって、長引く戦いは不利にしかならなかった。
ペディリヴァ……ごめん……
せめぎ合って行く中、俺は拳に魔力を溜め込んで行く。
拳と拳は、力と力のぶつかり合い。
互角同士のぶつかり合いをしていたとしても、魔力と言う力が加わると……
当然、力しか持たないペディリヴァは力負けし、身体は徐々に後退して行くのである。
俺の放つ力と魔力の拳に、ペディリヴァの拳が対抗出来なくなり腕ごと弾け飛んだのと同時に、俺はペディリヴァ目掛けてそのまま拳を振り抜いて行こうとしたのだが……
【この拳を振り切れば、ペディリヴァは死んでしまう。それで本当にいいのか?】
一瞬の迷いが、俺の身体を硬直させ隙を作り上げていた。
「おいおい……最強のヒューマンと言う奴は随分と……甘いんだな」
ペディリヴァの言葉と同時だった。突如空から電撃が降り注ぎ俺の身体に直撃したのは……
「………………っ?!」
ビリビリと身体は痺れていたが、これはペディリヴァからの攻撃ではないと言うのは理解できる。
ペディリヴァは、消し飛んだ片腕を押さえるのに精一杯で俺に電撃を放つのは不可能だ。
では一体誰が……?
「おいおい……殺るべき時に殺らないで、いつ殺るんだ?」
ペディリヴァの言葉が耳に残る中、俺は再び拳をペディリヴァ目掛けて振り切っていく。




