【01】
ウォルガフと離れてからこの五年間、長いようで短かった月日は俺をかなり成長させてくれた。
最初の二年間、俺はひたすらドラゴと共にLevel上げばかり行い、Levelはカンスト。ステータスも普通のオンラインゲームでは考えられない数字になっていた。これは、ヒューマンの誇りと言うスキルの賜物だと思う。他の魔族からブーイングが起こりそうだが、俺には関係ない。
なんてった俺は転生ハイヒューマン。他の魔族とは違うのだから……
残りの三年間は『強くてニューゲーム』の醍醐味を味わうかのようドラゴと共に俺は世界各地、様々な場所を巡り知識と経験を身につけていく事にした。冒険者ランクもSランクまで上げ、今では五年前には行けなかった場所も、普通に入る事が出来るようになっていた。
そんな五年経ったある日、俺はマイホームに戻りアイテムを取り出そうと何気なくシステムメニューを開いた時だった。いつもとは違った物を発見したのは……
それは画面下の部分にある、ログアウトボタンだった。
ログアウトボタンはこの世界に来てから表示される事はなく、当然今も尚ログアウトは不可能だったのだが、そのログアウトボタンの所には数字が表示されており、一秒ずつに数字は減って行き約三日後にはゼロになりそうな感じだった。
ドラゴに聞いてみたが首を傾げられ、他の魔族たちに聞いても『転生ハイヒューマンは、特殊だからなぁ』との事で、結局分からずじまいであった。
ログアウトボタンにあったカウントダウンを見ながら、俺はある仮説を立ててみた。
「これってタイムリミットじゃないのか?」
俺がこの世界に滞在する事が出来る残りの数字……
ゼロになれば、有無を言わさず強制退出させられ現実世界に戻ってしまう。のだと考えてみた。
次に俺が考えたのは、このゲームについて。つまり、MMORPG《剣と魔法と魔王》というオンラインゲームそのものについてだった。
現在、魔王の力によってGMは、現在この世界に完全に介入出来なくなったのではないだろうか?
そして、GMが介入出来なくなった要因は、俺たちヒューマンがクリスタル封印されてしまった事。
そもそも、あの時……
MMORPG《剣と魔法と魔王》は、バージョンアップを行った結果、魔王は復活を遂げ俺たちプレイヤーはゲームの世界がリアルの世界になってしまった。と言うのが事の発端だと思う。
魔族たちが自我を持っていたように、復活した魔王も俺たちプレイヤーと同じように自我を持ちGMに介入させまいと企み、毎日空に向かって魔力を放ち結界を張り続けながらGMの介入を阻止していたのではないだろうか? そして、ヒューマンはクリスタルに封印され、結界は完成。GMは、完全にこの世界に介入出来なくなってしまった……
その効果は、ヒューマンが解放された今も継続中なんだと思う。
現実世界で何年時間が経過しているのか俺にはわからないが、GMは最後の手段。
MMORPG《剣と魔法と魔王》というオンラインゲームを、その物を消し去ろうとしているのではないだろうか?
仮説にしかすぎないが、そう考えれば考える程なんか辻褄があっているような気がしてしまった。
仮に俺の仮説が正しかったとして、このカウントダウンがゼロになれば俺は魔王を倒さずとも現実世界に戻れるのだとは思う。だが、ウォルガフは、一体どうなるのだろうか? ロジェやグゥには悪いが、彼らはこの《剣と魔法と魔王》の為に作られしキャラクターである。しかし、ウォルガフは違う。元プレイヤーであり、そして今は魔族の一員だ。俺とは違う立ち位置にある。
このままカウントダウンがゼロを迎えた時、ウォルガフはもしかしたら現実世界には戻れず消えてしまう。そうなれば、現実世界のウォルガフは死んでしまうのではないだろうか? 当然この世界に存在する全ての魔族だって……
もう一つ疑問がある。それは俺が魔王を倒し現実世界に戻れるとして、このゲーム自体はどうなるんだろうか? カウントがゼロを向かえなくとも魔王を倒した時点で、この世界も消えてしまう可能性だってある。
でも、それでも……
カウントがゼロになって強制退出よりも、俺は最後のヒューマンとして魔王を倒しゲームクリアとして終わらせるべきだと思う。
強制退出なんて、勘弁ならん!!
だから……
ステータス画面を見ながら調整を行う。そして、装備を整えた俺は呟いていた。
「ふぅ……魔王、倒しに行くか……」
そう決意したのであった。
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「さて、リュウイ。今日はどこに行くのかのぉ?」
ドラゴは俺を背に乗せながら、空高く飛翔。ドラゴの問いかけに俺は大地を眺めながら、魔王討伐の意を伝えていた。
「ほぉ……漸く決心がついたと言うことじゃな?」
「あぁ、あまり気は乗らないけど、カウントダウンが始まってしまった以上そうも言っていられなくなったからな」
「うむ。道中の雑魚は全て我に任せろ。お主は魔王を目指せ」
「わかった」
「それと……わかってはおると思うが、魔王にたどり着く前に当然妨害してくる魔族もおるじゃろうな」
「……魔族四天王の事だな」
「そうじゃ。お主はそやつらを倒さねば魔王の元には行けぬぞ?」
「……」
「魔王を倒すと言う事はじゃ、お主はその者たちと戦う覚悟があると我は認識良いと言う事じゃな?」
「あぁ……大丈夫だ」
「わかった。お主のその覚悟信じよう……」
ドラゴの心配している意味を俺はわかっていた。
『昨日まで友と思っていた者たちをお前は敵として倒す事が出来るのか?』
と言う事だ。
確かに、あの時ロジェが言っていたようにヒューマンと言う俺の存在を、魔族の皆は冷たい目線で見る事はなく、この世界に生きるたった一人の種族として認識してくれていた。
この五年間、色々な場所を巡っていた俺とドラゴは様々な魔族たちと出会い、共にダンジョンに行く事もあったし、魔物の共闘討伐も行ったりもしていた。当然、その後の打ち上げをマイホームに招待して宴会を開いた事だってある。
それに、いつの間にか魔族四天王とも気心しれた仲になる事が出来ていた。
この五年間、俺は魔族から一切の迫害を受ける事もなく生活を送り、実はとても居心地良かったのも事実だった。
願わくはこのまま……
と俺は本当に思っていた。
しかし、俺にはこの世界から現実の世界に戻ると言う決心をついさっきしたばかりだ。
魔王の元に行くのを妨害する魔族たちを、俺は倒して行かなければならない。
彼らは俺の事を裏切り者と、呼んでくるのだろうか?
それでも、このカウントダウンの真の意味を知る為にも、俺は立ち塞がる魔族たちを倒す。そして、魔王の元に行く。
玉座に座って待っているのが、あいつだろうが……
「……して、今すぐ魔王城に向かっても良いのか?」
「あぁ。構わない。準備はもう既に万端だ」
「わかった。では向かおう……」
ドラゴは急旋回しながら、更に空高く飛翔していく。
厚い雲を抜け、突風を物怖じする事なくドラゴは突き進み魔王城を目指し、立派に成長を遂げた羽を広げていく。




