【11】
全てを見終わった俺は、その場で涙を流していた。
ウォルガフの気持ち、確かに伝わってきた。
俺は、やはりウォルガフに会って互いを意志を再確認しなければならない。とそう感じたのであった。
「……理解できたかい? リュウイさん」
「あぁ……」
ロジェの言葉に俺は涙を拭きながら答えるのである。
「他に聞きたい事はあるかい?」
「そうだな……」
まず、なぜ俺が怪しい人物だと認識されたのか?
この事についてから聞いて見ることにした。
ロジェの話し曰く、どうやらドリームゼロの入り口ある二つの門。これが仕掛けとなっているらしい。
まず、一つはフォス族専用の門。
これは当然フォス族しか通れない三頭身ぐらいの高さになっており、他の種族たちが通り抜ける事はまず不可能である。
同じフォス族をフォス族は疑う事をしない。
そして、もう一つの門。
これは、初めてドリームゼロに訪れた時にのみ、装置は自動的に起動しその者の種族、冒険者ランクなどをで調べる仕組みになっており、その中でSランク冒険者や重要人物だと判明分かれば監視の目が密かに走るのである。
更に、屋根付き階段を通るとそこから先はフォス族の兵士が現れ連隊長であるロジェの元へと案内されるのであった。
その後、ロジェ自らが面談。
身元を確認した後は、自由に街中を探索していいそうだ。
俺もこの話が終われば、自由に今後もドリームゼロを歩いていいとの事だった。
この装置自体はヒューマン特定装置ではなく、Sランク冒険者とこの魔族は重要人物である。とウォルガフが設定している魔族にのみ作動する仕組みになっているそうだ。
そして、ウォルガフは俺も設定していたらしい。
ウォルガフは自分がいつか封印を解きたいと願っていた
だが、その前に俺自らが封印を解き、ドリームゼロに訪れる可能性を考慮して……
すぐにわかるように……としていたとの事だ。
「他にはあるかい?」
「あぁ、まだあるな」
次に、重要な事は魔王の事だ。
俺がクリスタルの封印を解き今こうして自由に歩いている事を、魔王は知っているのだろうか?
とロジェに聞いた所、当然魔王は既に気づいており魔族四天王を集めて状況を説明した後に、好きにさせてやれと通達したらしい。
当然、今すぐにでも魔王に刃向かう可能性も考えられたが、魔王はクリスタルに封印した時に見せたヒューマンの顔を思い出しそれはない。と言っていたらしい。
逆に覚悟が出来たのならいつでも、挑んでこい。との事だ。
そして、最大の理由として魔王の目的はクリスタルに全てのヒューマンを封印する事であって、その状態を長い間維持する事ではないらしい。
俺が最後のヒューマンの一人として封印した事で、魔王の目的は達成されたとの事だ。
その目的は最後までロジェは、口を閉ざし教えてくれる事はなかった。
これに関しては、素直にロジェの言葉を信じていいのかどうか謎だなと思った。
「自由に生きろか……」
まるで、魔族の世界を生き延びられる物なら生き延びてみろ。と言われているようだな。
「じゃ俺はもう、ヒューマンだって隠さなくていいって事か?」
「そうだね。まぁ最初に聞いたら警戒心は持たれるとは思うけど、いきなり無差別に剣は向けてこないと思うよ」
「……」
「現に魔王様は一昨日、全魔族に対して通達を出したからね」
「どんな?」
「えっと……『転生ハイヒューマンでもあるリュウイと名乗る者をクリスタルより解放した。それは十年と言う期間をへて我々の仲間の意志を見せたのである。よって我は可の者をクリスタルの封印より解放したのである』と言っていたよ」
まぁなんと言うか……
都合のいいように言ってくれた物だな。
魔王の言葉の真意も謎だな。
俺は一度も仲間意識とやら思った事はないのだが……
まぁいい……
魔王の障害もなく自由に動けるようだし、感謝しつつ力をつけてぶっ倒してやる。
その為にもまずはLevelを……そうだよ、Level上げないとな。
いつまでもLevel.50のままで言い訳がないし。
しかし、困った事に魔王の呪いがLevel上げを邪魔している。
なんとかして、この魔王の呪いを解かないとな。
「ロジェは、魔王の呪い解く事が出来る?」
「あぁ……そう言えばそうだったね。忘れていたよ。でも残念だけど俺は解除する事は出来ないよ」
やはり、無理か。
魔王の呪いを特には魔王、もしくは魔族四天王様でなれければ解除する事は出来ない。
となると……
「やはり俺は、ウォルガフに会うしかないだろ? 魔王の呪いを解いてもらう為にも」
「それは出来ないよ。リュウイさんも知っているとは思うけど……」
種族王との面談は、余程の事がない限り許されず冒険者ランクがSSでなければ許されない。とロジェは実に融通の効かない言葉を並べ立てるのである。
と言うか、なにかに理由をつけてでもロジェは、俺にウォルガフを合わせたくないように思えるよな。
確か、魔王の呪いは誤解だと分かればすぐに解除してくれるはずだ。
まぁ、誤解ではないのだけど……魔王は俺に興味はないらしいからな。
魔王の呪いを解除したって問題ないと思うんだけど……
その事を再三ロジェに伝えたのだが、首を縦に振る事はなかった。
当然そんなの俺に納得できる筈がない。
ロジェがウォルガフに会わせてくれないとなると、必然的に偶然を装うしかなくなる。
それもロジェが知らない所で、そして尚且つ誰にもわからないように。
……うん、難しいな。
それでもどうにかしてウォルガフと再会を果たさないとな。
先ずは今、ウォルガフがどこに居て何をしているかだよな。
「なぁリュウイさん。なんか悪巧みしていないか?」
「ロジェが会わせてくれないって言うからな、俺だって色々と策を考えねばならないさ」
「……無理矢理ウォルガフの部屋に侵入とかかい?」
「うん。それもありだな」
「おいおい、やめてくれよ……」
冗談交じりで言ったのだが、ロジェは真剣に制止してくるのであった。
それは、俺が仮にウォルガフの部屋に誰にも見つからずに侵入を果たしたとしても、それはすぐに感知出来瞬く間にウォルガフの部屋に武器を持って駆けつけるとの事だ。
そして、それはどんな重要人物であろうと、如何なる理由があろうと問答無用でロジェは連隊長として侵入して来た者を処断しなければならないらしい。
「頼むから俺にリュウイさんを殺させないでくれ。取り敢えず今は……」
今はって、言葉がかなりひっひかかるな。
だが、ロジェの忠告は素直に聞いた方がいいだろうな。
ウォルガフの部屋に侵入は諦めるかしかないか。
……となると、どうするかなぁ。
「ロジェ、チラッとでいいんだよ」
「またチラッとかい……」
そう言えば、魔王に会いに行く言った時も俺はそんな事言っていたな。
「うーん……」
暫く考え込んだロジェは、俺に一つだけ提案をしてきたのであった。
それは、会話も出来ないしウォルガフは気づかない可能性もある。
それでも良ければって話しだった。
俺は『それだけで十分』と答え、大体の概要を聞き聞き終えその日が来るまでの間、ドリームゼロに滞在する事となった。
「ロジェ、俺たちは自由に街中を歩いていいんだよな?」
「あぁそれは構わないけど……ドリームゼロの名物、洞窟探検は出来ないよ」
「なんでだ?」
「洞窟探検は危険だからね。冒険者ランクは最低Bランクからだよ」
「また、冒険者ランクかよ」
どこに行っても冒険者ランク。流石に嫌気がさしそうになってしまった。
「まぁ、安全性を考慮しての配慮だから勘弁してくれよ」
「……わかった」
「後、ドラゴさんも冒険者登録していないよね?」
「うふっ」
うふっじゃねぇよっ!?
「これを機会に冒険者登録していくといいよ」
「ありがとう。そうするわ」
ロジェに向かってウィンクしながらドラゴは、答えているのであった。
見る見る内に頬を赤くするロジェの姿を見ながら、俺は頼むから魔性の女にだけはならないでくれよ。と願わずにはいられなかった。
ロジェの部屋を後にした俺たちは一階へと降り、真っ直ぐ受付カウンターに行きドラゴの冒険者登録を行う事にした。
必要事項を書き終え一日後か。と思っていたらドリームゼロは、ムーンフェイズとは違い手続きに一日かからないそうだ。
掲示板の依頼を見ながら待つ事数分。再び受付に行くとドラゴの冒険者カードを手に入れパーティを再結成させようと思ったのだけども……
ドラゴの方が俺よりもLevelは高く当然リーダーにならなければならないのだが、受付のフォス族の話しをあまり理解出来ていないらしく、困り果てていたので俺がリーダーとなる事で『剣と魔法と魔王』を再結成する事が出来たのである。
冒険者ギルド本部でやるべき事を済ませた俺たちは、洞窟探検が出来ない以上この場にいる理由もなくさっさとこの場を後にするのであった。
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次に向かった場所は、宝石屋である。
武器はマイホームに戻れば宝石を作成する事は出来るが、鉱石を磨いての宝石にはやはり限界があるようにも思えた。
確かに何百個も磨けば『X』の宝石は出て来るのかも? しれないが、今は取り敢えず宝石自体がないので『V』ぐらいの魔法攻撃力を購入しようと思っていた。
相場も知る事が出来るしな。
「可愛い宝石買ってくれるのぉ〜」
ドラゴは、俺の腕を組みながらわざとらしい愛らしさをアピールをしてくる。
えぇぃ!!
こんなの、俺が望んでいたおしとやかさじゃないし。
ったくどこで、道を間違ったのだろう?
「いらっしゃいませ〜隣にいる方へのプレゼントですか?」
カウンター越しにいるフォス族の店員は、足台に登りながらもそんな事を言ってきたのであった。
……これが、フォス族でなければ怒っていたところだ。
「いや、ただのおまけです。魔法攻撃力『V』の宝石はありますか?」
「魔法攻撃力『V』の宝石は、あちらのカゴの中です」
指差す方向にあるカゴを見てみれば、そこにはカゴいっぱいに宝石が敷き詰められ『一個金貨一枚。転売不可』と値札が置かれていたのである。
って転売不可とはいえ、安すぎじゃねぇ?
ムーンフェイズでは確か魔法攻撃力『V』が金貨70枚で、『VI』は白金貨一枚だったぞ!?
信じたくはないけど、武器屋の親父がぼったくっていたのかな?
「ねぇ、なんで魔法攻撃力『V』の宝石はあんなに安いの?」
「質問の意味がわからない」
「いや、ムーンフェイズでは金貨一枚で買えないからさっ……」
「おにぃさん。ドリームゼロは、初めて?」
「そうだけど……?」
それなら納得。と言ってフォス族の店員は親切に教えてくれたのである。
ここはドリームゼロ。
魔王の膨大な魔力によって作り出された洞窟は、最下層に行けば行く程レアな宝石『X』が取れる場合もある。しかし、それはあくまでも取れる場合であって確実性は皆無であった。
連日のように、『X』を手にする事を夢見て手練れの冒険者たちは洞窟の内部へと突き進んで行く。
アイテムを豊富に持ち帰り鑑定する中『X』が出るのは、一握り出来事であり、『X』を目的としていた冒険者にとってその他の宝石は不要なアイテムとされ、売りに出されるのである。
そして売ったお金を元手に更なる装備の充実を図っているとの事だ。
その結果ドリームゼロの市場には、大量の宝石が並べられて行くのであった。
なるほどな、ドリームゼロ……またの名を、夢と絶望の街と言われる理由がわかるな。
「ドリームゼロで安いのはわかったけど、なんで他の街。例えばムーンフェイズとかでは高いの?」
「あまり、供給がないからねぇ。大抵の魔族たちは、ここにくれば安く手に入るって事知っているし」
「……」
要するに、ウォルガフはドリームゼロにいたけどそんな事を全然知らない。いわゆる無知だったって事か……
うん、そう言う事にしとこ……
「じゃさっ『X』は幾らするの?」
「残念だけど『X』を売りに来る魔族は殆どいないよ」
「……!?」
やはりそう簡単に手に入れる事は出来ないか……
魔法攻撃力『X』の宝石を諦めた俺は、無難に魔法攻撃力『VII』の宝石を金貨10枚で三つ購入したのである。
「またきてねぇ〜」
フォス族の店員が両手を振っている姿に思わず口元を緩めながらも、俺は店を出ようとしたのだが……
何故かドラゴが後をついて来なかったのである。
「ドラゴ……?」
ドラゴはショーケースの中にある宝石をジッと見つめたまま動かずにいた。
「美人のお姉さん、目の付け所が実にいいねっ!」
「……」
既にドラゴには、店員の言葉など耳に入ってはいなかった。
それくらいドラゴは、宝石に夢中になっていたのである。
「ドラゴ……悪いけど、買わないよ」
それだけ言って、ドラゴの首根っこを掴みズルズルを引っ張り店先を出た所でドラゴは、漸く口を開くのであった。
「リュウイ。我にあの宝石を買ってはくれぬか?」
「……買わないって」
「いや、一先ず我の話しを聞いてくれ」
「?」
ドラゴが見ていた宝石は『竜貴石』と呼ばれ、竜族にとってそれはそれは大変貴重な物だそうだ。
全部で五個あり、一つ手にする事により能力が解放されるとの事だ。
ドラゴにどうしても買ってほしい。と言う言葉に負けた俺は、再び店に戻り白金貨一枚で購入竜貴石をしたのである。
これが、安いのか高いのか? 俺にはわからないが、ドラゴは大変喜んでいた。
だからそれでいいや。と思う事にした。
因みに『竜貴石』を手に入れた事により、ドラゴは新たな能力に目覚めたみたいだ。
火のブレスの他に、氷のブレスも吐き出せるようになったらしい……
次は風のブレスか……?
などと考えながら、夕食を済ませた俺たちは宿屋の二階にある客室で眠りに着くのであった。




