【08】
ドラゴ、絶滅した竜族の王ドラゴニュート。
ゲーム時代から存在しているドラゴンは、魔王が復活する前。
即ち大型アップデートが行わられる前までは、ヒューマンたちプレイヤーにとってドラゴンは『ゲームの中で最強の魔物』として認識されていたのである。
そして、最強と言われるが故にドラゴンは、ヒューマンたちに倒され続けるのであった。
プレイヤーにとってドラゴンを倒すと言う事は、己の力。もしくは能力の向上を図る事が出来るのである。
即ちドラゴンを倒し勝利すれば、莫大な経験値を与えられ成長を遂げる事が出来るのであった。
更に、ドラゴンに勝負を挑み実力が足りずに負けたとしても、ヒューマンは教会で復活する事が出来『次こそは、倒したい』というやる気を奮い立たせ、プレイヤーたちを成長へと誘うのである。
その結果ドラゴンはプレイヤーによって、次々と倒し続けられるのであった。
そしてドラゴンは、いつしか再出現する事がなくなり絶滅の危機に見舞われていたのである。
聖王樹の頂上にいたヒュドラ。
彼だけは魔王の世界になった今も尚生き残り続けている純粋な、唯一無二のドラゴンであった。
当初ヒュドラも、ヒューマンがいなくなり我々も魔王の魔力によってある程度の繁栄が出きると期待していたのだが、魔王は竜族の繁栄を嫌い仲間を増やす事はしなかったのである。
魔王の存在を脅かすから……
ただそれだけの理由で。
ヒュドラは諦める事は出来なかった。
しかし、ヒュドラ自身の力では魔王に手を出す事すら叶わないと言う事を知り、ヒュドラは長い年月をかけ魔王に悟られないよう密かに、魔力を蓄え未来の竜族の王の卵をその身に宿していくのであった。
長い年月をかけ卵は、ヒュドラの体内で成長を遂げその姿を現す日も遠くないと感じる事が出きるようになってきたのと同時にヒュドラは、自らの死期を感じ取っていたのであった。
卵が形となって表に出てしまえば、魔王は必ず破壊するだろうとヒュドラは思ったが自分は卵が生まれ出たのと同時に死ぬだろう。
だからヒュドラは誰かに託したいと思っていたのである。
しかし、そんな都合のよい人物が現れる筈もなくヒュドラは、聖王樹の頂上で静かに眠りにつこうとしていた時だった……
目の前には憎っくきヒューマンがいたのである。
それも、復活した転生ハイヒューマンと言うのはすぐに理解する事が出来た。
ヒュドラは同胞の仇を撃ちたいとも一瞬考えたのだが、結果的に転生ハイヒューマンを倒す事が出来たとしても己自身も無事では済まない事はわかりきっていた。
そうなれば、未来の王を委ねる時が来るまで己の自身が生き延びているとは、到底思えなかったのである。
ヒュドラ自身が消滅するというのは、寿命もあり致し方ないとは思っていた。
だが、その前にどうしてもヒュドラは未来の王を誰かに託したかったのであった。
託さずにヒュドラが消滅してしまえば、ドラゴンと言う種族は永遠失う事になる。
仇か永続か……
ヒュドラは悩んだ末、苦肉の策としてリュウイに未来の竜族の王の卵を託し自らは消滅いくのであった。
孵化器に設置されたヒュドラから託されたドラゴンの卵の中では、ドラゴニュートと言う未来の王の意志が目覚めていたのであった。
それと同時にドラゴニュートは、卵の中で限られた僅かな情報を様々に吸収し復活の刻を待ち望んでいたのである。
そして、復活の刻。
ウォルガフと言う『でちゅでちゅ』と言っていた子供が卵の中にいた時に語りかけていたいた通り、この場には誰もいなかったのである。
あるのは立派な建物が数件建ち並び、神秘的な結界に守られていると感じたのである。
ここならば、魔王に気づかれる事なく成長を遂げられる。と結論を出したドラゴニュートは迷わずにここを根城にし行動範囲を広げていくのであった。
十年……
と言う長いようで短い歳月をあっと言う間に過ぎ去っていく。
魔王に存在は気づかれても、根城がわからなければ奇襲攻撃を受ける事はなかった。
それでも、差し向けられる魔物たちを倒し続けている内に、いつしかドラゴニュートは他の魔物にも負けない力を手に入れたのである。
そんなある日、北の方へ出かけていたドラゴニュートは魔物襲撃を撃退し根城へと舞い戻っていたのである。
いつもと変わらない筈の根城に、ある変化に気がついたのであった。
大地には、絶滅したと言われていたヒューマンが立っていたのであった。
すぐ様ドラゴニュートは、絶滅の一端を担っていたヒューマンを滅ぼすべきか?
滅ぼさずにいるべきか?
どうかを悩んだのであった。
だが、ドラゴニュートは戦う事を拒んだ。
卵の中で採取した情報と今までの情報を元に、この者はヒューマンだがヒューマンではない。
転生ハイヒューマンなのではないだろうか?と答えを導き出したのである。
そして、ドラゴニュートの考え通り眼下にいる青年が転生ハイヒューマンならば、それはドラゴニュートにとって特別な存在へと変わっていくのであった。
魔王を倒すべく、ヒューマンの最後の希望。
考えれば考える程、ドラゴニュートには戦う理由はなくなり逆に手を取り合い協力関係を築き、共に魔王を討伐出来るのではないか? とドラゴニュートは結論を出したのである。
それでも、期待外れと言う可能性も考慮しドラゴニュートは実力を図る為にも転生ハイヒューマンに、勝負を挑むのであった。
更なる力をこの者が身につけた時、魔王を倒す事が出来ると身を持って体験したドラゴニュートは、転生ハイヒューマン、リュウイと契約を結び共に魔王討伐を心に決めるのであった。
だが、なぜか現在ドリームゼロの地下牢におり、ドラゴはご立腹になる事はなかった。
逆にこれもまた良い経験。
……とそう感じていたのである。
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地下牢で夜を過ごした次の日、俺たちは『連隊長殿がご起床された後に来る』と言う言葉を信じ、大人しく待っていたのだが……
昼になっても夕方になっても、その姿を表す事はなかったのである。
「お主、少しは落ち着いたらどうじゃ?」
ドラゴは、俺のレクチャーなど全く効果がないような口ぶりだった。
見た目が絶世の美女なだけに台無しである。
「……それにしても待たせすぎじゃないのか?」
「仕方がなかろう。どうやら彼らは我々に構っている暇はないようじゃからな」
「どういう事だ?」
「どうやら、新たな洞窟が発見されたようだな」
「どう言う事さ!?」
「言葉の通りじゃ」
言葉の通りって……色々聞きたい事が出来たんですけど……
「まぁ、お主が不思議に思うのも当然じゃろうな。暇つぶしに少し話でもするかのぉ」
ドラゴの話しをまとめると、どうやらドラゴには二つの能力が存在していた。
一つ目は、探知機能と言う物である。
探知能力はドラゴが意識を広げると半径5mの中では鮮明に何が起きているのかが、手に取るようにわかるとの事だ。
だから、ドラゴには新しい洞窟が発見されフォス族たちが慌ただしく動き回っていると言うのが、わかるらしい。
これは、戦闘にも使えそうだった。
探知機能があれば、奇襲攻撃の予防やこちら側から奇襲をかける事だって容易に出来る。
そう言う機会が訪れるかは、謎だけどな。
そして二つ目が、五分間だけ時間を止める事が出来るそうだ。
時間停止は、自分の他にも指定した人物以外の時間も止める事が出来るらしい。
もっとも指定した人物以外の時間を止める事は、やった事がなく要検証と言っていた。
更にドラゴと戦闘時の連携についてなどを話し合い二日目の夜は、ドラゴの能力説明を聞きながらも過ぎ去っていくのであった。
更に地下牢に連れて来られてから五日目。
連隊長は現れる事はなかった。
流石に、これは……
可愛いフォス族がいる街とはいえ、俺の我慢は限界だった。
食器を下げに来たフォス族の兵士に俺は怒りを抑えながらあくまでも冷静に、且つ優しく話しかけるのである。
「なぁ、連隊長殿ってまだ就寝中なの?」
「……連隊長殿は、今洞窟内を調査中だ。それまでの間、ここで待っていて欲しい」
ドラゴの話しの通りだな。
やはり、新しく現れた洞窟が安全かどうかを調査しているって事か。
ふむ、そもそもダンジョンと洞窟は違うのかな?
同じのような気がするのだが……
まぁそれはいい、取り敢えず洞窟からその連隊長殿が戻ってこない限り俺はここから出られないって事か。
早くウォルガフに会いたいのに……
ん? ウォルガフ……? あっ、ひょっとしたら……
「すまない。もう少しだと思うだ。待っていてくれ」
フォス族は早々に、地下牢から出て行こうとしたのを俺は鉄格子を掴みながら待って欲しい事を伝えるのである。
「なっなに?」
「あっあのさっ……ウォルガフって言うフォス族がドリームゼロにいると思うんだけど、知らないかな?」
「!?」
「俺の目的は、ウォルガフに会う事なんだよね」
「なっなぜ、ウォルガフ様の名を……呼び捨てに……?」
「ウォルガフさまぁっ!?」
「……益々、君たちが怪しく思えてきたよ」
そう言ってフォス族は、地下牢からいなくなってしまったのである。
ウォルガフの事を様付けで呼んでいるフォス族。
一体俺が、クリスタルに封印されている間に何が起きたって言うんだ? だが、それでもウォルガフの事を呼び捨てにしたのは不味かったようだな。
明らかに態度が違っていた。
「………言ってはならない名だったのかな?」
「我にはわからぬな」
「……」
そうだね。ドラゴ、君はそう言うと思っていたよ。
はぁ……俺は一体いつまで地下牢にいるんだろうか……
「確かに今は何もやるべき事はないようじゃ。だが、お主」
「んっ?」
「ウォルガフとやらと出会いその後どうするのじゃ?」
「その後……?」
「そうじゃ」
「その後か……考えていなかったな。取り敢えずあの時何があったのか? それが知りたかったから」
「ふむ……今後の展開はまぁ……仕方がない。だが、己の装備ぐらいは確認しておけ。基本じゃろ?」
「っ!!」
確かにそうだな。
ドラゴに言われるまでそんなの全然考えてもいなかった。
忘れていたとも言う。
今後、いきなり戦闘になる可能性だってあるし……
ドラゴと戦った時みたいに素手での魔法発動は勘弁だな。
ステータス画面を開き、今装備中の物を確認してみるのである。
魔導師のローブとブラックミスリルブレスレットは装備中だったが、木の杖は何故か装備欄から消えており、更にアイテムボックスの中にも木の杖は存在していなかったのである。
ふむ、木の杖は魔王と対峙した時に没収でもされたのかな?
Level.80まで使える武器を無くしたが、対してショックではなかった。
今の俺はあの時のLevel.1の俺ではない。
Level.50となれば、それなりの杖を装備出来るのである。
魔法攻撃力 Vの宝石を失った方が、ショックは大きかった。
意外と魔法攻撃力アップの宝石高いんだよなぁ……
マイホームに戻れば、武器も作れるが今はアイテムボックスにある杖で代用するしかなかったのである。
この中で一番強かったのは、鋼の杖だった。
早速装備を整えた俺は、既に眠りについている絶世の美女ドラゴに背を向けながら眠りにつくのである。
次の日、朝食を食べ終えたわいのない会話をドラゴとしている中、地下へと降りてくる足音に気づき自然とそちらの方に視線を向けていくのであった。
見覚えのある、金に近い髪の色をしている手裏剣みたいな独特のモヒカン髪型。
装備こそは見覚えのない、立派な服装に身を包まれ俺の目の前に現れた一人の魔族でもあるフォス族。
その姿を見た瞬間俺は、その名を口にしていたのである。
「ロッ……ロジェ……?」
と……
「怪しい奴を地下牢で捉えている。そう言う報告があって来てみたのだけど、リュウイさんだったのか」
以前と変わらない態度で、少し偉そうにロジェは俺に接してくるのであった。




