【07】
「では、早速魔王城に乗り込もうではないか? 相棒」
俺の事を相棒と言いながらも、かなりの無茶ぶりを言い放ってきているのはドラゴニュート……改め、ドラゴである。
ドラゴニュートは種族名であって名前ではない。
毎回毎回、ドラゴニュートと呼ぶのも億劫なので、名前の事を聞いてみると『我に名などはない。好きに呼ぶが良い』との事だったので安直ではあったが、呼びやすくドラゴと名をつけたのである。
「いや、魔王城にはまだ行かない。実はやりたい事があるんだ」
「ほぉ……魔王討伐よりも優先するものなのだな? ……して、それはなんだ?」
「優先するとかそんなんじゃないけど、俺は仲間。……ウォルガフと合流したいんだ?」
「ウォルガフ? もしかして、あの小さなフォス族の事か?」
「知っているのか?」
「うむ。卵の中に我がいた時、語尾に『でちゅっでちゅ』と言いながら話しかけてきた者の事であろう?」
「うっうん。……その通りだ」
割れたら困ると思って『触れるな危険』と書いておいたのだが、どうやらあまり意味はなかったようだな。割れなくてよかったよ。
「その者にお主は会いたい。そう言う事か?」
「あぁ、でも実際今どこにいるのかわからないんだ」
「我は知っておるぞ」
「なにっ!?」
それは、ウォルガフが俺と魔王城に行った数日後までに刻遡る。
その時ドラゴは卵の状態だったが、鮮明に覚えているとの事であった。
もう少しで我は目覚める。
まずは、ここにいる者たちの助力を請い力をつける。そして願わくは魔王を倒したいものだ。
と卵の中で既に意志に目覚めていたドラゴに、殻に触れる小さな手の感触を感じたのである。
小さくとも、力強い意志を持った者をドラゴは無視する事が出来ずその者に耳を傾けるのであった。
「ごめんなちゃい。ぼくはもうここにはいられまちぇん。だから……お世話出来ないんでちゅ。でも、ヒュドラたぁんの卵は元気に育って下ちゃいね」
でちゅとは……
なんたるお子ちゃま。
我の勘はまだ、当てにならぬようだな。
等と思っていると、更に別な声が聞こえてきたのである。
「ウォルガフっそろそろ行くぞ!」
「ロジェたん、どうしても行かないとダメでちゅか?」
「あぁ、ミクロス様が待っているからな」
「うちゅ……」
「ドリームゼロ……ウォルガフちゃんやロジェちゃんみたいなフォス族がいっぱいいるのよね。私、楽しみだわ」
「グゥたん……」
「グゥさん……」
ドリームゼロ。とは街の名だろうか?
ふむ、機会があれば行って見たいものだ。
消えゆく足音を聞きながらもドラゴは、そう感じていたのであった。
ーーーとそんなやりとりがあったとの事だ。
「ドリームゼロか……」
「うむ」
行きたくないと言っていた場所に、行く事になってしまったウォルガフ。
お前の身に何が起きているんだ?
しかし、ドリームゼロに行くのはいいが、俺行き方知らないんだよな。
地図を見ながら進むか。
と考えていると、ドラゴは俺に背を向け翼を広げ始めたのである。
「?」
「リュウイよ。乗れ」
「!?」
まじ!? いいのっ!!
俺、ドラゴン騎士みたいじゃないかっ。
ドラゴの背中に乗り込み、たてがみを掴むとドラゴは翼を動かしあっという間に飛翔し始める。
マイホームが小さくなるのを見つめながら、俺とドラゴはウォルガフがいるドリームゼロへと向かうのであった。
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ドリームゼロは、マイホームから東南の位置にあり半日程空の旅を満喫した所で到着する事が出来た。
眼下には、おとぎの国のような色鮮やかな建物。
サーカステントらしき建物。更には遊園地らしき建物まで存在していた。
そして、街の中央には真っ白なお城が建っていたのである。
更に洞窟探検の街、と言われる由縁。明らかにあれは洞窟だろ。と思える景色が広がっていた。
「ドラゴ、街より少し離れた場所に降りよう」
「構わぬが、何故だ?」
「絶滅したドラゴニュートが突然街中に舞い降りたら、混乱するだろ?」
「……ふむ、確かに一理あるな」
ドラゴは急旋回しながらも、歩いて五分ぐらいで辿り着く場所へと静かに降り立つのであった。
「ありがとう」
「うむ」
さて……ドリームゼロに来たのはいいが、これからどうするかな?
俺も問題だが、ドラゴも問題だよな。
流石にドラゴニュートの姿で街中を徘徊するわけにも行かないしな。
いや、待てよ……
ドラゴニュートって確か……
人の姿に、おっとここでは魔族か。魔族の姿になれる筈だよな。
「ドラゴ。お前、魔族の姿に変身する事は出来ないのか? 流石にその姿のままでは、街中には入れないぞ」
「うむ、しばし待て」
ドラゴが魔力を溜め始めると、次第にドラゴの身体は光り輝き始める。
そして、光が消えたのと同時に、腰まで伸びている綺麗な赤髪。ドラゴはスタイル抜群の絶世の美女に変身を遂げたのである。
「なっ!?」
「これで良いか?」
「おっ……おっお前、メスだったのか!?」
「何をわからぬ事を言っておる。我に性別など存在しておらぬわ」
「……なっなっ!!」
「お主が、魔族になれと言うから、変身したまでじゃ。なのになぜそこまで驚く必要がある?」
「……」
「何か問題でもあるのか?」
大有りだよ!! 変身して欲しいとは確かに言った。
言ったけど、ドラゴの口調からしててっきり男に変身するものとばかり思っていたし……
「なぁ……男の姿になる事は出来ないのか?」
「なんじゃ気に食わないのか?」
いや、いや。美人のお姉さんでその口調は流石にマズイでしょ……
「お主が何を考えておるのかわからぬが、残念ながら一度この姿で変身してしまった以上しばらくはこの姿を変える事は叶わぬ」
「……わかった。わかったからその女の姿でいる時は、もう少し言葉を選ぼうね?!」
「なぜ、お主が我の言葉使いにこだわるのか意味がわからぬ」
「……」
ダメだ。
俺がなんとかするしかないのかよ。
ったく折角の絶世の美女が、台無しだよ。
「では、リュウイ行くぞ」
「ちょっと待った!」
「なんじゃ?」
目の前にいる絶世の美女は、『早くしてよねぇ〜』と誘惑するかのように素振りを見せながらも、その言葉とのギャップに俺は慣れる事は出来なかった。
「えっえっと……俺が街中に入っても大丈夫なのか?」
「……と言うと?」
「ほらっ俺、ヒューマンだし」
「バレたらその時考えようではないか。相棒!!」
そう言ってドラゴは、街の方へとズンズンとガニ股で歩いて行くのであった。
いやいや、だからその顔とスタイルに行動が違いすぎるってばっ!!
再びドラゴを呼び止めた俺は、不要と拒否してはいたが二時間その場でみっちりとおしとやかさと言う物レクチャーしたのである。
最も俺の中でのおしとやかさは、母親やハグぐらいしかいない認識なのでガニ股歩きと『〜じゃ』と言う言葉は使いは辞めるように伝えるだけで精一杯だった。
それでも、ドラゴは渋々俺の言った通りの事を覚え実践しようとしてくれるのであった。
二時間後……
ガニ股歩きもなくなったドラゴを先頭に俺たちは漸く、ドリームゼロの街に行く事が出来たのである。
門は二つ存在し一つはフォス族用。そしてもう一つはどこの街にでもある石作りの門になっていた。
ここら辺は流石フォス族の街と言った所だろうか。
石作りの門を潜り抜けると、円形状の大きな公園がありその中央には噴水が静かに流れて落ちており、その噴水の周りには色取り取りのお花が咲き、何処までもメルヘンチックな街並みだった。
円形状の中央には噴水。その円の外周には、酒場。宿屋。冒険者ギルド支店などがあり酒場と宿屋の間には屋根付きの階段が伸びていた。
冒険者ギルド支店って事は、本部があるって事なんだろうな?
ムーンフェイズの街よりも、ここドリームゼロの方が冒険者の事をよく考え、配慮して出来ている街のような第一印象を感じる事が出来た。
「今日はもう遅いし、食事してから宿屋に行って明日の朝ウォルガフを探そうか?」
「えぇ、いいわよ」
この言葉使いの変わりよう。
二時間かけて説得したかいがあったよ。
酒場で軽く済ませ宿屋に行こうと思っていた俺たちなのだが、酒場は既に満員御礼状態。とてもではないがゆっくりと食べれる状態ではなく途方にくれていると、小さくチマチマと歩きまくっているフォス族と目があってしまうのである。
「お客様かしら?」
「うっうん」
「ごめんなさい。あいにく満席なの。でも階段を登って左に行くと飲食店通りに出るわよ」
「なるほど、ありがとう。助かったよ」
「どういたしまして。また来てね」
頭を45度下げたフォス族の頭を無意識に撫で撫でと撫で回した俺は、酒場を後にし屋根付き階段を登る事にしたのである。
屋根付きの階段の壁面はコンクリートみたく硬く灰色で、何やら俺の読めない文字が刻まれていた。
「ほほぉ、この壁面にはこの街ドリームゼロにはどんな洞窟があって、どんな宝石がとれる可能性が秘めていると言う事がと刻まれておるな。親切じゃな。おっ更に未開の洞窟のリストもあるようじゃぞ」
「……」
折角覚えたのになぜ、言葉使いが戻るんだよ……
「どうしたのじゃ?」
「ドラゴ。言葉……」
「おっと……これは失礼いたしましたわ。おほほほほ」
どこぞの高貴なご婦人が笑うような笑みを浮かべながら、ドラゴは誤魔化すのであった。
そこまで、高飛車。俺は望んでいないぞ。
「止まれ!」
屋根付き階段を登り切り広場へ出た。と思ったら数人のフォス族に俺たちは呼び止められるのであった。
三頭心の身体に不釣り合いな武器を持ちながらも俺を睨みつけてくるのである。
「階段内に設置している装置が作動した。怪しい奴らめ、大人しく連隊長殿の所に来てもらおうか?」
「えっ怪しくないですよ? 俺たちは……」
「誤作動であれば、すぐに連隊長殿は解放してくれる筈だ。言い訳しないでついてこい」
あっという間に逃げ道を塞がれた俺たちは、仕方がなく言う通りにするしかなかったのであった。
最も俺にフォス族と事を構えるなど、無理な注文でもある。
願わくは面倒な事が起きませんように。
ただそれだけであった。
連隊長殿がいると言われる場所は、広場の階段から真っ直ぐに進むと更に長い階段がありそれを登りきると目の前には白いお城が、威厳を放ちながら俺を迎えいれていた。
まさか城の中?? と一瞬思ったが、どうやら違っていた。
城から右にある階段を降りると、上空で見ていたサーカステントらしき建物が。
更に左にある階段の下には、遊び心満載の遊園地みたいな建物があった。
どう見てもあれは、ジェットコースターだよな……
キョロキョロと辺りを見渡していると、益々怪しい奴。と言う目線を後ろから感じ取りながら先に進んでいくのである。
結局、俺たちがどこに連れて行かれたのかと言うと、洞窟の手前にある建物の中であった。
ここがドリームゼロの冒険者ギルド本部との事だ。
表にあった冒険者ギルド支店よりも強固な作りをしており、ムーンフェイズの冒険者ギルドと相違ないぐらいの大きさだった。
中に連れられ、そのまま地下牢へ。
ガチャンっと鍵をかけられるのであった。
「えっ? ちょいどう言う事だ?」
「すまないが、連隊長殿は既に就寝中だ。明日お前らに会いにくるだろう。それまでここで待っていろ」
そう言って可愛いフォス族は、地下牢から姿消して行くのであった。
ちょ……そりゃないよぉ〜〜!
「仕方がなかろう。焦って事を急いでも何もならんぞ」
「そうかもしれないけどさぁ……」
「さて……夜はまだ長い。お主の言っておった、おしとやかさとやらを存分に伝授してもらおうかの」
「……」
なぜお前までそんな余裕綽々なんだよっ!!
地下牢で眠りに着くまでの数時間。
俺はドラゴに、おしとやかさと言う物を永遠とレクチャーする羽目になってしまった。
ぐぅぅぅぅ〜とお腹の音と共に食事が出てくる筈もなく、集中力を欠いた俺は先に無理矢理眠りにつくのであった。
なんで、連隊長が就寝中なんだよっ!
責任者なんだろ?
偉いんだろ?
なら、ちゃんと仕事しろよな!
くそっ〜
早寝早起きは、ウォルガフとロジェだけかと思っていたのに、フォス族皆がそうなのかよっ!!
などとブツブツと言いながらもクリスタルから目覚めた俺の怒涛の一日は、終わりを迎えるのであった。




