【06】
ウォルガフと再開を果たすのはいいとして、今俺がいる場所はどこだろうか?
現在、俺がいる場所は広大な草原にただ一人立っている状態だ。
「……ふむ」
わかっているのは、明らかに先程までいた魔王城ではない。ただそれだけだった。
ヒューマンを解放した事で目覚めたヒューマンの誇りLevel.9。
この中にある『Level.4 現在地を地図で表示 ※ゲーム時代の地理は()で表示』との事なので早速システムメニューから地図を呼び出し現在地を確認する事にした。
どうやらここは、ピース草原。ゲーム時代ではパークス草原だ。
パークス草原なら記憶にあるぞ。
チーターやライオン。要するに肉食系で凶暴な魔物が生息する場所で、推定Levelは70〜だ。
ヒューマンの誇りでステータス強化されているとは言え、今は戦闘をしている場合ではない。
一刻も早くウォルガフたちと合流しなくてはな。
パークス草原ならここから近いのは、魔法都市フェイオンだが今の俺にあそこに敢えて行く必要性を感じられないな。
「あっそうだ!!」
確かムーンフェイズのお姉さんの話しでは、パーティを組んでいれば別行動を行っていても冒険者カードに、その所在地は表示されるんだったよな。
冒険者カードを取り出しウォルガフたちが、いる現在地を確認して見る事にしたのである。
パーティ名:未設定
リュウイ:現在地…ピース草原
「……」
どういう事だ? パーティが解散されている。
あっでもマイホームに戻っている可能性もあるよな。
「よしっマイホームに一度戻ってみるかな……」
帰還の葉を取り出し、俺はマイホームに戻る事にしたのであった。
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「なにこれ……」
マイホームの中は埃だらけだった。
何年も手入れがされていない。と言うのは見てすぐに理解する事が出来た。
未完成だった魔物部屋も完成していたが、内部には魔物は住み着いている事はなかった。
更に、孵化中だった卵は殻だけ残しその本体は、この場にはなかったのである。
何がなんだがさっぱりわからない。
俺がクリスタルに封印されている間に一体何が……
まるで何年も時間が経っているかのような変わりようだぞ……
「何年も経っている……?」
まさか……
俺がクリスタルに封印されている間に、時間が流れてしまったのだろうか? だが、そう考えれば考える程目の前にある現実を納得する事が出来る。
「……あはははは」
暫くその場に立ち尽くし途方にくれてしまった。
パンッパンッ!!
思いっきり両の頬を叩き、考えを切り替える事にした。
でなければ、永遠に立ち尽くしていそうだった。
「先ずは、情報収集だな!!」
独り言のようにブツブツといいながら、これからやるべき事を整理して見る事にした。
先ずは、魔王城に行った後俺の身に何があったのか?
更に、ウォルガフたちの行方。
魔王城までは確かに一緒にいたんだ。
なぜパーティが解散されているのか?
なぜマイホームが誇りだらけなのか?
ウォルガフを探し出す事が出来れば、殆どの俺の疑問は解決する事だろう。
たが、パーティが解散されてしまった以上、俺にはウォルガフがどこにいるのかはわからない。
「さて、困ったな……」
俺がヒューマンである。と言う事は既に魔族たちにばれているんだろうな。
そうなると、今魔王がヒューマンである俺に対してなんと命令を出しているのかはわからないが、一番行きやすいムーンフェイズの冒険者ギルドに行ったとしても、街に足を踏み入れた瞬間捕まる。もしくは殺される可能性だって否定は出来ないよな。
「どうするかなぁ〜」
マイホームを目の前にして、俺は中にある入る事なく考えこんでしまっていた。
ピクンッ!! 肌がヒリヒリと電気が走ったような違和感を感じたのである。
なんだこの感覚は?
その違和感は上空を見上げる事ですぐに解決する事が出来た。
「なっ!?」
俺の上空には大きな翼を持った謎の飛行物体が、バッサバッサと羽ばたかせていたのである。
『ドラゴニュート』Level.???
Levelが???ってどういう事さっ。
めっちゃ強いって事か!?
ドラゴニュートと荒々しく俺の目の前の大地に降り立ち、その赤く光輝く瞳でギロリと睨みつけているのであった。
いつでも反撃できるように身構え、ドラゴニュートの出方を観察し始めた。
ドラゴニュートは、炎のようなたてがみに鋭い牙。
中々ダメージが与えられそうにない丈夫な鱗。
当にドラゴンその物だった。
赤系が多い所から、レッドドラゴン系の派生なのはすぐに理解する事が出来、いつでもアイシクル系の魔法で迎撃できる体制を整えるのである。
「我は竜族の王になる者なり」
「!!」
ドラゴンが、しゃ……喋ったぞ!!
ウォルガフが聞いたら驚いて、喜んで大はしゃぎになるんだろうな。
んっ竜族の王……? 何処かで聞いた言葉だな。
……
………
「あっ!!」
「どうやら思い出したようだな……」
確かに俺は、聖王樹の頂上でヒュドラと対峙。その時に『竜族の王をお主に託す』とか言って卵を預かりマイホームで孵化器に設置していたな。
そして今現在、卵は殻になっている。と言う事はだ。
目の前にいる、ドラゴニュートはあの時の卵かっ!!
「お主、今は亡き転生ハイヒューマンであろう?」
「あっあぁ……」
「我が種族は、誇り高き者。お主が我と共に歩むのに等しい人物なのか試させてらう」
「ぇっ!!」
なっなぜいきなりそうなる!?
問答無用と言わんばかりに、ドラゴニュートの口から放たれる火焔のブレス。
灼熱とも言える火焔のブレスは、俺めがけて吐き出されるのである。
最初は回避しようと思った。
だけど、この火焔のブレス。攻撃力だけ見れば上位に入るはず。
これを防ぎきれなけば、魔王討伐など不可能に近い。そんな気がした。
俺は回避せずに、その場で魔法力を全開に開放させ火焔のブレスを受け止める事にしたのであった。
プスプス……
と魔導師のロープから黒煙を出してはいたが、火焔のブレスが俺の肌にまで直接届く事はなかった。
高い防御力と魔導師のロープの性能のお陰とも言える。
俺が防ぐと言う事をドラゴニュートは察知していたのだろうか? 攻撃の手を休める事なく、鋭利な爪が俺を切り裂こうと襲いかかってくるのである。
これも片手で難なく抑え込み、反撃に魔法を一発。発動してみようと思ったのだが、俺の愛用していた木の杖がどこにもない事に今更ながら気がついてしまった。
杖がなくとも、なんとかなりそうなそんな気がした。
だから構わずドラゴニュート向かって魔法を発動して見る事にしたのである。
「アイシクルランス!」
アイシクルランスは魔導師で発動する事が出来る魔法の一つで、その名の通り矢よりも大きな槍のような形でドラゴニュート一直線に轟音を上げながら放たれるのであった。
ドラゴニュートは火焔のブレスでアイシクルランスを蒸発させ諸共俺すらも焼き殺そうとしたのだが、既に俺の姿はそこにはおらず、頭上に飛び上がり更なる魔法を繰り出す。
「ギェクサグラマ・アイシクル!!」
ウォルガフたちが取って来てくれた、魔導師が使う魔法の中で最強の魔法を無詠唱で発動。
一瞬にしてドラゴニュートは凍りつくのであった。
「ふぅ……」
着地した俺は、カチンコチンに凍りついているドラゴニュートを見上げていた。
ドラゴンの末裔と言うだけあって強かった。
だが、Level.50の俺でも充分に高Levelの魔物に対して一人で戦う事が出来る事に胸が高まったのである。
それと同時に、ギェクサグラマの魔導書を取りに行ってくれたウォルガフたちに俺は感謝していた。
「んっ?」
ドラゴニュートがいる地面が少し黒っぽく濡れているのに気がつき、視線をドラゴニュートへと向けると凍っていた氷は次第に溶け始め水へと変化していくのであった。
「うわっすげぇっ!!」
流石一筋縄では倒せないか。
って杖がない状態だから、仕方ないか。
完全に溶け切ったドラゴニュートは、赤く光輝く瞳は穏やかな瞳へと変化し最早戦闘意志は持ち合わせていないようにも見えた。
油断した所で後ろからズドンっという可能性も考え、いつでも魔法を発動出来る状態にしつつ様子を伺う事にしたのである。
「降参じゃっ。我はお主と共に征く事を決めた」
「……ドラゴンは誇り高いんじゃないのか?」
「うむ、誇り高いのは間違いない。だが、率いるドラゴンが一匹もいなければどうにもなるまい」
「……どう言う事だ? 確かに俺たちヒューマンはゲーム時代、ドラゴンと言う名のモンスターは倒し続けていた。でもヒューマンもいなくなり、魔王の世界になったのだろう? ドラゴンだって復活したのではないのか?」
「魔王は、ゴブリンなどと言った下等生物は復活させたが、ドラゴンだけは復活させる事はなかった」
「なぜ?」
「我らドラゴンが、魔王に変わって王となる可能性を秘めているからだ。元々この世界は我らが納めていたしな」
「……」
確かに、魔王が復活するまではドラゴンをこのゲームの中では一番強い魔物ではあった。
魔王はドラゴンが王に返り咲くのを恐れている?
だからドラゴンだけは復活させなかった?
あの魔王がか……?
だが、今現存するのが目の前にいるドラゴニュートだけ、と考えるとあながち嘘だとは思えないな。
「共に魔王を滅ぼそうではないか。転生ハイヒューマンよ……」
「魔王を倒した時、お前はどうするんだ? 新たな王にでもなるつもりか?」
「いや。一族を復活させた後、我は隠居する」
「信じられないな。そんな話し……」
「信じなくても良い。お主にとって不都合と感じた時には魔王を倒し、後に我も倒せば済み事なのではないか?」
「……」
嘘をついているようには思えない。だが、信じていいものなのだろうか?
ウォルガフなら信じるんだろうな。
だが、今はいない。
俺一人で結論を導き出さなければ……
互いに目線を逸らさずに沈黙が流れる中、先にドラゴニュートが提案を持ちかけたのであった。
「そんなに我が信じられぬか?」
「本心を言えば嘘をついているようには思えない。でも仮に俺がお前を信じた、その矢先に裏切られ殺されでもしたら死んでも死にきれないんだよな」
「ならば、魔王を倒すまでと言う期間契約をしないか?」
「契約だと?」
「あぁ、我はお主を裏切らない。と言う契約だ」
契約ねぇ……
確か召喚士の上位に精霊士と言う職業があったな。
精霊士はその名の通り精霊と契約する事によって、術者が唱えれば精霊はその呼び声を応えその姿を現す。
この場合、精霊士の契約とは違うような気がするのだが……
でも確かにドラゴニュートが仲間になれば、移動にも戦闘にも幅は広がる。
先程の戦い、俺もドラゴニュートも本気で戦った訳でもない。
裏切られた時、俺はこいつを撃退する事が出来るのだろうか?
……その為にも、ドラゴニュートの話しに乗るか。
「わかった、契約をしよう」
「うむ」
ドラゴニュートが魔法陣を描き終えると早速契約儀式が始まった。
『我が名は竜族の王ドラゴニュート。我は転生ハイヒューマンと契約を今ここで結ぶ者也……』
ドラゴニュートの言葉と共に魔法陣は青白く光り輝き始め、事前の打ち合わせ通りに俺も契約内容を発するのであった。
『以下の契約をドラゴニュートと共に結ぶ。
一、魔王討伐まで互いに裏切らない。
一、嘘偽りのない言葉で接する。
一、主従関係ではなく、同志として共に歩む。
以上の三項目を契約条件とし、守られなかった場合は死をもって謝罪する者也』
ドラゴニュートと俺が同時に魔法陣の中に入ると、光は一層辺りを照らし静かに消え去って行くのである。
「これで契約は完了だ」
「あまり変化は見られないけど?」
『ドラゴニュートと契約が完了しました。新たな能力が目覚めました。ステータス画面を確認して下さい』
突如脳内でシステムメッセージが流れて来たのである。
早速ステータス画面を表示させ確認してみると、一番下の方に『ドラゴニュートと契約中』と表示されていた。
更に新たな能力として『竜の加護』と言うのが追加されていた。
竜の加護はどうやら、ブレス系の攻撃が全く効かなくなるスキルのようだ。
これは意外と使えるスキルだと思う。
「どうした?」
「んっあぁ……」
なんでもない。と言いかけ言葉を紡いだ。
契約したばかりだと言うのに、早速契約を破りそうになってしまった。
「理解出来ないかもしれないが、俺には一部ゲーム時代の名残が残っている」
「なんだそれは?」
「例えるならシステムメニューとかメッセージだな」
「……お主の話し、我にはさっぱり理解出来ぬな」
だからそう言ったのに……
これはうまく説明するのに時間がかかりそうだな。
「要するにだ。目に見えて契約したと言う変化は見られないが、ちゃんとお前と契約している。と言う事が確認出来たって事だよ」
「ふむ、嘘はつけぬようになっておるからな。お主のその言葉信じよう。だが、時間がある時詳しく説明してもらうぞ」
「あぁ、わかったよ」
こうして俺は、ドラゴニュートと言う新たな仲間に出会うのであった。




