【04】
現在俺は無事、魔王城に侵入を果たしていた。
どうやって魔王城に来たのかと言うと……
ガルヴァルデ族のぺディリヴァがいる、闘技場の街ムーンフェイズ。
ムーンサン族のルブシューニェがいる、魔法都市フェィオン。
デューンキーパー族のシュトレンがいる、物価の街サンライズ。
フォス族のミクロスがいる、洞窟探検の街ドリームゼロ。
この各街には、種族王が住み統治しており魔王に突如呼び出されてもすぐに駆けつけられるよう、魔王城直通のワープゲートが存在しているのである。
そして、各街にいる種族王が使用許可した魔族のみ、ワープゲートを使用し魔王城に行く事が出来るのであった。
ワープゲートを使用しないで魔王城に行く事も可能ではあるが、伝説級の魔物が徘徊する山道、深い谷、幻惑の森と様々な難関を潜り抜けなければ魔王城に到着する事は出来ず、種族王たちですら好んで足を運ぶ事は滅多にない場所であった。
ウォルガフですら『行きたい』の言わなかった以上とんでもなく危険地域だと言う事は、話を聞いてすぐに理解出来た。
四つの街の中で比較的ワープゲートを使用しやすいのは、ムーンフェイズのいるガルヴァルデ族の種族王、ぺディリヴァだった。
彼は面倒な許可を嫌い、書類を見ただけで破り捨てるような種族王である。他の三人の種族王の反対を押し切りながらもペディリヴァが書類を必要としない打開策として、公約しているのが、『冒険者ランクがA以上の者なら手続きは不要、自由に魔王城に赴いても可』であった。
ーーーと言うわけで俺は今だにDランクだが、ウォルガフたちは立派なSランク冒険者だ。
後ろからこっそりとついていき、ムーンフェイズのワープゲートを通った俺は怪しまれる事なく魔王城に侵入する事が出来たのである。
「ふぅ……」
流石に見つかるのではないかとハラハラしてしまったが、無事に魔王城に来る事が出来て良かった。
まずは第一関門突破だな。
魔王城は、俺があの時に来た頃とは全く異なっていた。
あの時は確かにダンジョンだった筈だ。
魔物は所々に徘徊。それをハグと共に倒しながら進み最下層では、鉄で出来た重厚な扉の向こう側に魔王は玉座に座っていた。
「……」
長い年月をかけ魔王は、立派な城を作り上げたようだな。
ワープゲートを通ってきたから外見はわからないが、内部はどこか中世の要塞のような感じだった。
そして、ロジェの話では魔王が普段いる場所は塔の最上階。なのだが、最上階に行くことが許されているのは魔族四天王と魔王後継者候補のみで、許可されていない者が一歩でも足を踏み入れると一瞬で反逆と見なされて殺されてしまうらしい。
最もチラ見目的の俺には、無縁の話しである。
ではどうやって目的としている魔王をチラ見するのか?
魔王は一日に一回決まった時間に最上階のテラスに姿を現し、膨大な魔力を空に向かって放っているそうだ。
なぜ、そんなような事をしているのかは魔王以外明かされてはいないらしいが、毎日欠かさず魔王はその儀式を行っているのである。
一説では己の魔力を配下である魔族たちに知らしめている。とも言われ、魔族の王でもある魔王に一目だけでも見たいと言う魔族たちは、最上階が見える庭へと自然に集まり出しているとの事だった。
更に、魔王が空に向かって魔力を放つ時、その威力は絶大でありLevel.50未満の魔族がその儀式に参加すると、未熟な魔族は消滅してしまうのである。
だから、ウォルガフは俺にLevel.50と言っていたんだな……
聞けば聞く程、果てしない力の差を感じながらも俺はウォルガフの後ろをビクビクしながら、庭を目指して歩いて行くのであった。
魔王城には、魔王に一目見たいと言う思いで様々な種族の魔族たちがおり幾度となくすれ違っていく。
その度にヒューマンとバレるのではないか? とビクビクしていると、ロジェに『もっと堂々としていた方がいい』と注意されてしまった。
ーーーーーー
魔王後継者候補イブルカルフは、魔王の側に立ち『いまだに己は魔王の足元にも及ばない』と感じ取りながらも三十六番目の息子として、今日も儀式に立ち合うのであった。
最上階のテラスに魔王の姿が、現れただけで魔族たちは拍手喝采の嵐。
そんな風景をイブルカルフは、半分呆れながらも見降ろしていたのである。
「バカな配下共だな……」
「……」
魔王は敢えて何も言わなかった。
その代わりに『悔しかったら、我を超える魔力を手にして見よ』そう言わんばかりに放出される魔力を、イブルカルフに放っていたのであった。
ちっ……化け物めっ!
圧倒されたイブルカルフは、自分でも知らないうちに魔王から離れるかのように数歩後退していくのであった。
魔王から放たれる魔力に圧倒されながらも、イブルカルフの目線は眼下へと見下ろされていく。そして、大勢の魔族たちの中から見覚えのある四人組の姿を見つけたのであった。
あいつらは……確か?
イブルカルフは四人組の姿を見るなり、思考をフル回転で巡らせる。その結果、思わずニヤリと笑うのであった。
そんな、イブルカルフの珍しく見せる姿を魔王が見逃す筈がなかったのである。
「イブルカルフよ、どうした?」
「魔王様……どうやら今日は、儀式の他にも面白い物が見れそうですよ」
「……と言うと?」
「探し人……来たり」
それだけ言ってイブルカルフは、儀式が始めようとしている魔王の元からその姿を消したのであった。
◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎
魔王の儀式を見る為に俺たちは、大勢いる魔族たちの中に紛れ込み庭に立っていた。
この中から、俺がヒューマンだって事はわかる筈はないな。
その安心感から、俺は気を許してしまったのだと思う。
「ウォルガフ、見えるかい?」
「うちゅ、見えないでちゅ……」
ウォルガフには周りにいる魔族の足元しか見えてはおらず、踏み潰されるのではないかとハラハラしてしまい思わず肩車をするのであった。
「リュウイたん。ありがとでちゅ! よく見えるようになりまちぃたぁ〜」
「おうっ!」
肩車をしながら待つ事数分後。突如、周りにいた魔族たちが興奮し始めたのだ。
「魔王様っ!!」
「魔王様っ!!」
「魔王様っ!!」
と叫び声と共に最上階のテラスより魔王がその身を表すのである。
「……」
遠くすぎて、はっきりとわからなかった。
魔族には、はっきりとその姿は見えているのだろうか??
テラスに立った魔王は、空に向かって両手を掲げ魔力を溜め始めるのと同時に先程まで大興奮していた周りの魔族たちは、その事の成り行きを静かに見守り始めるのである。
高鳴る心臓を、抑え込みながらも俺も魔王がこれからやる儀式に息を呑み見守る中、魔法は上空へと放たれたのと同時に視界は突如として暗転。
何が何だかわからないまま、俺は気を失っていたのであった……。
ーーーーーー
「ーーーーっ」
「ーーー!!」
何やら理解出来ない言葉が飛び交い、鎧の擦れる音が遠くなっていくの理解出来た時、俺は目を覚ましたのである。
僅か数歩の場所に赤色の目をし右頬から右目にかけて大きなタトゥーみたいな痣のある魔族の姿が視界に飛び込んで来たのである。
「なっ!?」
こいつは……歯が立たなかったイブルカルフっ!?
更に驚く事にイブルカルフの隣には、玉座がありそこには見覚えのある不気味な赤黒い目が俺を睨みつけていたのである。
間違いない……魔王だ。
「ーーーっ」
言葉にならず、咄嗟に出した結論は逃げ出す事だった。
しかし、身体は縛られている訳でもないのに、俺の意思とは裏腹に満足に身体を動かす事も出来ずにいた。
最早逃げ出す事も不可能であった。
「これか? イブルカルフ……お前が言っていた探し人来たりとは?」
「えぇ。魔王様は確か生き残りの最後の一人、ヒューマンを探していたのですよね?」
「……確かにな」
そう言いながら魔王は、玉座からゆっくりと立ち上がり俺の元へと歩み寄ってくるのである。
その距離、僅か数歩。
やばいやばいっ……
どうする、どうする!?
逃げるのは不可能。
身体が動かない!
残る道は……
歯が立たないとわかっていながらも、最後まで刃向かう事か?
だが、負けは目に見えて明らかだ。
あの時よりも魔王は遥かに強くなっている。
今の俺が……
Level.50の俺が倒すとかまず無理。
魔王の目的は、ヒューマンである俺をクリスタルに封印する事。
殺されはしないが、大人しくクリスタルに封印されるしかないのか?
嫌だ……
そんなの嫌だ!!
「……」
落ち着け……
先ずは、ここをなんとか切り抜けてウォルガフたちと合流しよう。
その後は魔王城から脱出して、力をつけて再戦だっ!
再戦?
本当に再戦する時、俺は魔王に勝てるのか?
……
魔王に会って感じた事は、Level.以外にもなにか決定的な物がなければ、永遠に勝てないような気がする。
なんだ?
決定的な物とはなんだ?
なんだ?
くそっ来るなっ。
思考をまとめさせろっ。
魔王の魔力溢れた右手が俺の頭を鷲掴みして来た時、今までの思考全てが停止し頭が真っ白へと変化して行く。
「さらばだ、最後のヒューマンよ。これでこの世界は完全に我の物となる」
どっどういう意味だ?
魔王から放たれた光に包まれ、思考は無理矢理停止させられた……




