【01】
魔王の元に行く。そう決めた俺なのだが……
赴く為には、魔導師にランクアップした俺の新たな魔法の取得。とある程度の魔法Level上げ。
更にウォルガフのランクアップ。とLevel上げ。
後は装備の充実。せめて、一撃死しない程度の防御力は必要だろうと考えこれは最低でも必要だと感じていた。
「じゃリュウイたん。今すぐ行きまちゅか」
「ちょっと待った。何が起こるか分からない以上、準備は入念に済ませたい」
「ぶちゅ〜準備でちゅかぁ〜?」
「うんうん。準備は大事だよっ!!」
魔王に特攻して、あっさりと一番乗りに殺された俺が言うのもなんだけどな……
「それに準備の他にも問題がある」
「なんでちゅか?」
「ロジェとグゥさんになんて言うんだ?」
「うちゅ?」
やはりウォルガフは、考えるのは苦手なようだ。
ロジェやグゥは俺がヒューマンだと言う事は理解しているが、ウォルガフと違って最終的な目標が魔王討伐と言う事は知らない。
これは、言うべき事なのかどうなのか?
最後まで頭を悩ませ、未だに言えずにいた。
彼ら魔族にとって、俺。ヒューマンはどう言う位置づけなのか?
敵と見なされるのか?
それとも味方になるのか?
今は、ただウォルガフがいるから二人は共にいるだけのような気がしてならなかった。
その結果どうなるのかはわからないが、俺もウォルガフもそれはキチンと話しをした上で確認する必要があると思っている。
仮にロジェが一緒に行く、行かない。どちらの結論を出したとしても、俺はウォルガフと同様にロジェもランクアップして貰いたいとの思っていた。
未来の敵を強くしてしまうのかもしれないが、今はロジェの力も俺にとっては大事な戦力の一つだ。
グゥさんは、ウォルガフの行く所に勝手について来るだろうしロジェ程難関ではないんだろうな……
「そんな難しく考える必要はないと思いまちゅよ」
「と言うと?」
「だって魔王様をチラ見だけでちゅよね?」
「うん」
「でちぃたら、見てすぐ帰りゅって事を二人に言えばいいでちゅよ」
「要するに……?」
「魔王の元に赴き今討伐する。と言いのではなく、魔王の姿を見てくるだけだけど、二人とも来るかい? と聞けばいいって事か?」
「でちゅっ!!」
いいのかな?
それで……
「でもなにかあったら困るから、準備だけは入念にしておこう」
「ぶちゅ〜〜!!」
準備すると言う事には、不満なウォルガフであったが渋々了承してくれたのであった。
次の日、朝食を四人で食べながらどうやって切り出そうかと悩んでいると、ロジェの方から俺に聞いてきてくれたのであった。
「さて、俺たちのLevel上げも終わったし……これからどうする?」
「私は、ウォルガフちゃんに合わせるわ」
「グゥさんは、ウォルガフ第一だねぇ〜」
「当然よっ!!」
ロジェとグゥの和やかな話しを割って入るかのように、俺は提案するのであった。
「まず、ムーンフェイズに行って依頼の完了を報告しようと思う」
「あぁ確かにそうだね」
「その後……」
一呼吸置き、俺はウォルガフの方に目線を向ける。
食べるのに夢中になっていたウォルガフも、流石に気がつき口の周りについたソースを手で拭った後、目をキリッとさせ真面目ムードへと切り替えていくのであった。
「ぼくとリュウイたんは、その後魔王様に会いに行ってきまちゅ」
「チラ見だけどね」
「ほぉぉぉ?」
何かを勘ぐるかのような目線を向けるロジェに、俺は目を合わせる事は出来ず話しを続ける事しか出来なかった。
「ロジェとグゥさんはどうします? チラ見したらすぐにここに帰って来ますけど……」
「勿論行くわっ」
即答したのはグゥだった。
「ウォルガフちゃんが行く所に私は着いて行くわっ」
「……」
グゥの熱狂的なウォルガフ大好きオーラは、凄まじいな……
「ロジェたんは?」
「俺か……? 俺は……そうだなぁ〜」
そう言ってロジェは考え込み。
「うーんどうするかな〜」
と唸っていたが、ロジェも一緒に行くと言う結論に至ったのである。
「まぁ、どういった意図で魔王様に会いに行くつもりなのかは、聞かない方がいいかな?」
「……あぁ。お互いの為にもな」
「わかった」
理由を言えばロジェは、ウォルガフの制止を無視してでも俺を容赦なく殺しにかかるだろう。
そうなれば、ウォルガフはロジェを黙ってみている筈がない。
グゥだって黙って見ている筈がない。
もう少し……
もう少しだけ、俺はこの四人で楽しい日々を送りたい。
ロジェが敢えてそれ以上何も聞いてこない事に俺は心から感謝していた。
「それで、準備するってリュウイたんは言っていまちぃたけど、具体的には何をちゅるんでちゅうか?」
具体的ってよくそんな難しい言葉知っているな。と言ったら怒るから言わないでおこう。
「うんと、先ずウォルガフとロジェにはランクアップしてもらおうと思う」
「ランクアップでちゅか?」
「うん」
確かにLevelは1に戻ってはしまうのだが、まだカルヴァ地域は経験値倍期間中だ。
魔族たちがいっぱいいるとの事だが、真夜中とかに行けば少しでもLevelは上がると思う。
「なぁ、リュウイさん。俺はランクアップするのは無理だって事、知っているのにそう言う事言っているのか?」
少し不機嫌君に言うロジェに俺は頭をグリグリと撫で回しながら、話しかけていく。
「まだ、カルヴァ地域は経験値倍期間中だよな?」
「おいおい、まさか……?」
ウォルガフと違って、ロジェは頭の回転が早くて本当助かる。
黙って頷く俺にウォルガフは頭に?マークを出し、ロジェは面倒くさい。そんな顔をしていた。
「魔族たちがいっぱいいるから行きたくないって言っただろ?」
「真夜中は?」
「まぁ、それなりに少なくなっているだろうけど……俺だって寝たいよ!!」
ロジェの気持ちはわかるが、ここは一つ諦めてもらおう。
「ウォルガフだって、ロジェと一緒にランクアップしたいよな?」
「うちゅっ!!」
即答してくれたウォルガフに、ロジェはもうどんな事を言っても無駄。そう……逃れる術はない。
そう感じとり、俺も一緒に行くと言う事で納得してくれたのであった。
こうして、真夜中にロジェを無理矢理叩き起こしカルヴァ地域に赴きLevel.300を、目指す事にしたのである。
ロジェは、最初は乗り気ではなかった。
だが、俺の強引な連れ回しに諦めたのか次第にやる気になり昼間は眠りにつき、真夜中になるとポータブルの石を使いカルヴァ地域に赴きサハギュインを討伐する。そんな日々を過ごすのであった。
グゥも少しでもLevel上げたいとの事で便乗する事もあった。
そして、十日後……
経験値倍期間も残す所、後五日となった頃。
無事ロジェも目標であったLevel.300になる事が出来たのである。
早速、ウォルガフとロジェを魔法都市フェィオンに赴きランクアップ。
俺も魔導師の本はグゥの知り合いの魔導師に頼み込みなんとか三系統の魔法をゲットする事が出来たのである。
Level.1には戻ったがウォルガフは、剣闘士に。
ロジェは格闘家にランクアップするのである。
そこから更に五日間は、魔族たちが多いから行きたくない。とか言っている状況ではなくなり寝る間も惜しんでサハギュインを倒す日々を過ごしたのである。
終わって見れば、ウォルガフもロジェもLevel.100となり前と変わらない強さまで引き戻す事に成功したのであった。
目標達成と共にふと疑問が、脳裏をよぎったのである。
ウォルガフと最初に出会った時に俺は何年ぐらい経っているのか?
聞いたのを覚えている。
あの時ウォルガフは確かに……
『Level.200になるまでに250年かかりまちぃた』
と言っていた筈だ。
カルヴァ地域の灯台は、二十年に一度だけ魔物の侵攻としてリヴァイアサンが復活。
討伐すると、経験値が膨大に与えられると言う出来事が起きる。
250年の間に討伐失敗は何度かあったのかもしれないが、毎回ではない筈だ。
なんで、ウォルガフは行かなかったんだ?
行けば長い年月をかけずとも早くLevelが上がっただろうに……
「うちゅ? リュウイたん、なんでちゅか?」
「いや……250年かけてLevelを上げたって前に言ったよな?」
「確かに言いまちぃたね」
「今回は、僅か五日でLevelが100になったよな? おかしいとは思わないのか?」
「……」
あら?
黙ってしまった。
聞いてはいけない事だったのだろうか?
「どうちぃても、答えないとダメでちゅか?」
「あっいや……その……言いたくないなら言わなくてもいいけど……」
意外な返答に思わず慌ててしまった。
だってウォルガフは聞いたら大抵の事は、俺が理解出来ないがきちんと教えてくれた。
なのに、この質問だけははっきりと答えたくないと言ってきたのだ。
余程言いたくないのだろう。
「ごめん。もう聞かない。だからそんな顔しないでくれ」
「……うちゅ……」
シュンと落ち込んでいるウォルガフの姿を見て、これは聞いちゃ行けない事。
そう理解させ、もう二度と聞かない事にした。
ウォルガフ自らが言ってくるまで……




