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魔王に再び挑みたい!  作者: kiruhi
目指せ、Level.50![ 下 ]
52/77

【15】

 待ちに待った次の日……


 灯台からの映し出されているカウントはゼロになり、それと同時に砂浜に大量のサハギュインが湧き出してくるのである。

 十日間と言う事で灯台にあるカウントの数字は一秒ずつ減らしていき、これがゼロになると経験値三倍期間は終わりを告げるようだ。

 その後も俺たちはここに居てレベル上げを続行してもいいらしいが、他の冒険者たちが来るので効率はかなり悪くなるとの事だ。

 まぁ、残るか滞在するかどうかは、この三倍期間が終わってから考える事にした。



 まず、作戦としてLevel.1のグゥを俺が守りつつウォルガフとロジェが、サハギュインを倒す事となった。


 サフギュインはLevel.250からLevel.300とかなりLevelのばらつきはあったが、ウォルガフやロジェが苦戦する相手ではなかった。

 次々倒していく中、グゥのLevelは瞬く間に上がり続けるのである。


「面白いぐらい上がるわ」

 グゥは、俺に守られながらもそんな事を言っている。

 幾らLevelの上がりが早いとは言え、今はまだLevel.100未満。

 当然サハギュインの攻撃を受ければ、一撃で倒されてしまうグゥ。

 そんな緊張感をまといながらも、ウォルガフやロジェの死角を付いて湧いてくるサハギュインに対して俺も魔法を発動し倒し続けるのであった。




 三倍期間と言う恩恵は実にありがたかった。

 開始して僅か一日。


 陽が暮れる頃には俺のLevelは38まで上がり、グゥに至ってはLevel.50と一気にレベルアップしていくのである。


「ちょっと待って? なんでグゥさんの方が、Levelの上がりいいんだ?」

(わたくし)にそんな事聞かれても……わからないわ」


 この疑問に対して、ロジェもウォルガフも何故かなのはわからないとの事だった。

 わからないが、仮説としてロジェは俺がヒューマンだからLevelの上がりが悪いのではないだろうか? と言っていた。


 確かに俺はヒューマンには違いはないが、転生ハイヒューマンだ。

 元々ゲームの仕様で転生ハイヒューマンはLevelを上げるのに必要な経験値は膨大に必要とされている。

 その一方、能力値はヒューマンと比べると高く設定されているのである。

 だから、Level.40未満の俺がLevel.250のサハギュインにダメージを負わせる事が出来るのだとは思う。

 それでも極端過ぎやしないか?


 最終的な目標。

 即ち魔王を倒す為の仕様として、俺は割り切るしかないのだろうか?


 まぁ早く上がったとしても魔王の呪いがある以上、今の俺はLevel.50までしか上がらないのはわかりきっていた。だから、この十日間で、魔法Levelを上げつつLevel.50を目指そうと思った。



 陽も暮れ始め辺りは薄暗くなり始めた頃、ロジェはサハギュインを倒し切りのいい所で俺たちに話しかけてきたのである。

「よし、今日はこれくらいにして明日に備えようか?」

 ロジェの提案にウォルガフは不満そうだった。

「ロジェたん。ぼくはまだ、戦えまちゅよ!?」

「いや……俺とウォルガフは大丈夫だけど、リュウイさんのMPそろそろ尽きる頃だろ?」


 確かに、休み休み自然回復を待ちながら戦闘を行ってはいたが、俺のMPはそろそろゼロになりそうにはなっていた。

 でも、大量にあるMPポットを使えばいいと思っていたのだ。


「ロジェ、気にする事はないよ。MP尽きたとしても俺、MPポット使うし」

「いや、MPポットは稀少価値が高いから温存しておいた方がいい。いざ大事な局面で足りませんでした。じゃ困るからね」


 確かにロジェの言う通りではあるな。

 砂浜は元々足場が悪い。

 砂に足を取られながらもグゥを守ったり、魔法を発動していたから腰を据えてゆっくりと休息を取りたいとは思っていた所だ。


「わかった。じゃ今日はこの辺にしておこうか」


 それに、MPポットは稀少価値が高いのか……

 今までの経緯から、やはりゲーム時代から存在しているほぼ全てのアイテムは、レア度が高いと見ていいのかもしれないな。


「ぶちゅ……まだ、戦い足りないでちゅ……」

「まだ始まったばかりだよ。ウォルガフ」

「でもぉ〜」

「ウォルガフちゃん、明日も張り切ってLevelあげしましょ?」

「うちゅ……」

「ウォルガフ、休める時に休むよ」

 俺たち三人の言葉に名残惜しそうな顔をしながら、ウォルガフは納得しようとしていた。

 だが、やはり暴れ足りなかったようだ。

 俺たちが晩御飯の支度をしている間もウォルガフだけ戦い続けていた。


 大量の湧き出すサハギュインに囲まれても、臆する事なく戦い続けられるウォルガフ。

 剣士ウォルガフは、Level以外にも違った更なる強さをここで手に入れるんだろうな。と思いながらも、その日の戦闘を終えるのであった。




 サハギュインは夜になっても休む事なく湧き上がり続けていた。

 ウォルガフは、晩御飯を食べ終え食後の運動と言いサハギュインを倒しに行きたい。と張り切っていたが、流石に今は明日の為にも体力回復に専念する為。と、三人で静止したのだが……

 ウォルガフが言う事を聞いてくれる筈もなく、俺も付き合う事になってしまった。


 夜の砂浜は当然灯りもなく、星明かりのみでの戦闘で危険が一杯だった。

「リュウイたん、(うちぃ)ろでちゅ!」

「おうっ! フレアボール!!」

 杖から迸る炎の塊がサハギュインを直撃。

「ぐぎゃぁぁぁぁ……」

 と言いながら、消滅して行くのである。


「次、右斜め前に五匹いまちゅ!」

「わかった! フレアストライク!!」

 と、ウォルガフの指示した場所に魔法を発動しながらサハギュインを倒していく。

 暗闇の中でも、ウォルガフは星明かりのみで敵の動きを手に取るかのように状況を把握し、的確に俺にサハギュインがいる場所を教えてくれる。

 そして、そのお陰もあって俺がウォルガフの足を引っ張る事は少なくなっているような気がした。

 俺の魔法攻撃でサハギュインは一撃死。もしくは瀕死状態になり、ウォルガフが最後の一撃を入れサハギュインは、消滅していく。


 ウォルガフと出会った当初は、俺の攻撃を受けても魔物たちはかすり傷も受ける事はなかった。

 なのに今……俺の魔法はダメージを与える事が出来ている。


 少しは俺も強くなってきたみたいだな。


「ふぅ〜ウォルガフ。そろそろテントに戻ろうか?」

「まだやるでちゅ!」

「えっ!?」


 なんかLevel上げに固執していないか?


「何そんなに急いでいるんだ? まだ九日間もあるんだぞ?」

「あと九日間(・・・)しか残されていまちぇん」

「……?」

「リュウイたん。ぼくは、もっともっと強くならにゃいといけまちぇん」


 何をそんなに焦って、強くなろうとしているのか俺にはわからなかった。

 でも、少しでも早く強くなりたい。と言うウォルガフの気持ちわかる気がする。


 ゲーム時代にも、取得経験値アップ期間と言うのは短い間ではあったが存在していた。

 その時は、俺も今のウォルガフと同様寝る間も惜しんでLevel上げしていたのを覚えている。

 しかし、今はゲームの時代じゃない。

 寝ないでまで、Levelをl上げる事に固執する必要はないと思う。


「とりあえず、灯台に戻ろう」

「ここにいまちゅ」

 ブンブンと首を横に振り回し否定するウォルガフを、半ば強引に灯台へと連れて行くのであった。

「リュウイた……ん」

「ったく、今日はもう寝るぞ?」

「嫌でちゅ」

「嫌でちゅって……」


 灯台に戻ると既にロジェとグゥは、テントの中に入り明日の為に早めに就寝していた。

 何時もの時間ならウォルガフも既に寝ている筈なのだが、寝る間も惜しいぐらいLevel上げをしたいようだ。


 海の方向に椅子を向けたウォルガフは座り込み、地面に着かない足をブラブラと揺らしその背中は明らかにいじけていた。


 ヤレヤレ……


 俺も椅子をウォルガフの隣に置き、ドカッと座り込む。


「リュウイたん、早く寝てくだちゃい」

「俺が寝たら、一人で行くんだろ?」

「……」


 どうやら図星のようだ。


「さっきも言いまちぃたけどぼくは、強くならない(にゃらにゃい)といけまちぇん」

「なんで?」

「……だって、リュウイたん。イブルカルフ(たぁま)を倒ちぃたいんでちょ?」

「!!」

「でちゅよね?」

「……あっうっ」


 意外な言葉に、何も言えなかった。


 だけど、これでウォルガフがなぜ焦っているのかがわかったぞ。

 なるほど、イブルカルフか……


 確かにイブルカルフは倒したい相手ではあるけど……

 倒したいと、倒さなければならない。とでは明らかに意味合いが変わってくる。

 イブルカルフが再び現れた時、俺を殺そうとしてくるのならば倒さなくてはならない。

 だが、魔王は違う。

 現実の世界に戻る為にも俺は、魔王をいつか必ず倒さなくてはならない相手だ。

 俺的に魔王とイブルカルフとでは、意味合いが違うのだけど……

 ウォルガフは、そこらへん説明したとして理解してくれるのだろうか?


 確かに、強くなろうと言う向上心はいい事だとは思う。

 でもウォルガフやロジェ。それにグゥ。いや全ての魔族たちは、魔王にもイブルカルフにも歯向かう事は出来ない筈。

 俺だけが唯一の……


「リュウイたん?」

「あっあぁ……悪い」


 そうだよな……

 歯向かう事は、出来ずとも一緒に赴く事は出来る。

 その為のLevel上げは大事だ。

 ウォルガフは間違ってはいない。

 ただ、加減を知らないだけだ。

 やはり昔の俺みたいだな。

 そして、それを俺にわからせてくれたのがハグであって、ウォルガフには俺がいる。


 うん、止める役割は俺しか出来ないんだろうな。

 だから、ロジェやグゥは既に眠りについている。

 人任せな感は、大いにあるけど……


「寝るぞ、ウォルガフ」

「嫌でちゅ、時間がもったいないでちゅから」


 意外に頑固者なんだな……


 と新たな発見に感心しつつも、ウォルガフがどうすれば寝てくれるのか考えてみる。

 寝ないと、明日の戦いに差し支えがある。と言った所でウォルガフは、頑なに拒否するだろうし難しい話はタブーだ。

 それに、理屈を言った所で理解してくれる筈がないんだ。

 ならばどうするかな……

 さり気なく、寝る気にさせるか……



「そう言えば、ウォルガフもロジェもグゥさんみたいにランクアップしなくていいのか?」

「……うんちょ、よく知らにゃいですけどフォス族は他の種族(ちゅぞょく)の人たちと違うみたいでちゅ」

「ほぉ?」

詳しく(くわちぃ)事はロジェたんに聞いてくだちゃい」

「わかった」


 やっばっ!

 かっ会話が終わってしまうっ!!


「しっかしこの三倍期間って言うのは実に美味しいよな」

「はいでちゅ!! ぼくもLevelが上がって嬉ちぃでちゅ」

「あっ美味しいと言えば、宿屋汐音(しおね)にも最近行ってないよな」

「そうでちゅね、汐音(しおね)のご飯は美味ちぃのでまた行きたいでちゅ!」

「この三倍期間が終わったら、お疲れ様会と題して汐音(しおね)のアップルパイを食べに行くのもいいかもしれないな」

「……」


 ピクッ!!


 そう無言ではあったがウォルガフは、大好物のアップルパイと言う単語を無視する事は出来なかったようだ。

「でも、ウォルガフは寝ないで戦い続けるようだから、終わってもアップルパイ食べる元気ないかもな」

「ぶちゅ〜〜!!」


 ウォルガフは一生懸命考えていた。

 Levelは上げたい。でもアップルパイも食べたい。

 そんな葛藤の中、ウォルガフが導き出した答えは………


「寝るでちゅ!! リュウイたん、明日は早起きしまちゅよ!!」


 ピョンと座っていた椅子から飛び降りたウォルガフは、タタタタッと駆け足でテントの中に入って行ってしまうのである。


「……プッ」

 椅子を片付けながらも、思わず思い出し笑いをしていた。


 ウォルガフは頑固者かもしれないけど、やはり基本は可愛く単純な奴だ。

 切り札でもあったアップルパイの話は正解だったな。

 そう自分に言い聞かせながらも、俺も寝る為テントの中に入るのであったが……


「ぐごぉ〜ぐごぉ〜……むにゃむにゃ……」

「……ロジェ、イビキ煩い……」




 ◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎



 ロジェの提案通り、灯台周辺にテントを建てたのは正解だった。

 灯台周辺は結界に守られており、サハギュインは灯台まで侵入してくる事なく真夜中だろうがお構いなしに湧き上がり徘徊している。

 波の音と、サハギュインの徘徊する音に少し寝不足気味になりながらも、ウォルガフの元気な声に起こされるのであった。

 テントから顔を出し砂浜を見た俺は、目を丸くする事しか出来なかった。


 砂浜には大量のサハギュインで溢れかえっていたのである。


「すげ……」

「よちぃ!! 今日も頑張りまちゅ!」

 睡眠たっぷりとったウォルガフは元気一杯だ。

 朝食を一番乗りに食べ終えたウォルガフを先頭に、二日目の戦いが始まったのである。




 昨日以来、ウォルガフは無理をしてまでLevelを上げようとする事はなくなった。

 アップルパイ。と言うご馳走が待っていると言うのも理由にはあると思うが、倒しても倒さなくてもサハギュインは遠慮知らずに大量に湧き上がるのである。


 経験値的に全く変わりはないと言う事がわかると、夜から次の日朝まで倒さないでサハギュインを湧かせておいて一気に倒す。これがまた、Levelが一気に上がり続けるから結構楽しかった。


 そんな感じで俺たちは、この十日間みっちりとLevel上げに専念するのである。


 ウォルガフはLevel.300。

 ロジェもLevel.290。

 と、かなり三倍経験値の恩恵を受けていた。

 しかしグゥだけは、Level.100。と、思っていたよりLevelの伸びは見込めなかった。

 これは、僧侶の上級職である聖職者にランクアップ。Level50までは上がりやすいが、それ以上は上がりずらいとの事だ。


 俺はと言うと……

 今唱える事が出来る三系統全ての魔法がLevel.MAXとなりLevelも49まで上がる事が出来た。


 灯台にあるカウントはもうすぐゼロになってしまう。

 それまでにLevel.50にしたいなと思っていた矢先に、ウォルガフの一撃で倒れたサハギュインは目の前で消え去ったのと同時に脳内でLevelアップ音が鳴り響くのであった。


「おっLevel.50になった!!」

「リュウイたん、おめでとでちゅ!」

「ギリギリ目標達成だね」

「間に合って良かったわ」

 三人におめでとう。と言われ少し照れ臭そうにありがとう。と言っていると再び脳内でシステムメッセージが鳴り響くのである。


『Level.50達成しました。新たな能力が付与されます』

『転生者及び、ラグナロク(神々の黄昏)がLevelアップしII(ツゥ)になりました』

『新たな能力としてヒューマンの誇り、解放タフリールに目覚めました』

『メイン職業、魔法使いから魔導師にランクアップしました』

『サブ職業①剣士から剣闘士にランクアップしました』

『サブ職業②設定していませんので、ランクアップ出来ませんでした』


 うわっ、なんだなんだ?

 色々沢山出てきたぞ?!



「リュウイたん? どうちぃたのでちゅうか?」

「いや、Level.50になったら色々な能力が解放されたみたい」

「おぉぉ、凄い(ちゅごい)でちゅね!! どんなのでちゅか?」

「えっとぉ〜」

「リュウイさん。取り敢えず、能力の確認は後からにマイホームに戻ってからにしよう」

「ん?」

「確かにロジェちゃんの言う通りね」


 ロジェやグゥの言葉には、ちゃんと意味があった。

 十日間と言う三倍経験値を終えた今……

 僅か数分しか経っていないと言うのに、砂浜には既に他の冒険者たちで埋め尽くされていたのである。


 とてもではないが、腰を据えて確認する雰囲気もなく今まで散々Level上げを堪能していた俺たちに、これ以上ここで戦い続けるのは野暮と言わざる得なかった。


 テントを早々と片付けた俺たちは、早々にマイホームへと戻る事にしたのである。




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