【14】
海中にいる俺とロジェは、水面に上がろうと浮上しているとウォルガフが沈んできた。
どうやら先程の攻撃により、勢い余って海に落ちてしまったようだ。
泳げないウォルガフとロジェを引き上げつつ浮上していくのであった。
「ぷはぁぁぁぁっ!!」
海面に顔を出すと、灯台のすぐ側ではグゥがウォルガフの事だけを心配しそっと手を差し伸べていた。
俺たちは放置ですか……!?
しかし、ウォルガフは差し出された手を受け取らなかったのだ。
俺の右脇に抱えられながらも屈託のない笑顔を見せながら、喜んでいたのだ。
「リュウイたん、やったでちゅっ!!」
と……
まぁ嬉しい気持ちはわかるが、沈まない内にグゥさんの手を早く受け取って欲しいものだ。
そして、俺たちも陸地にあげてもらいたい。
グゥさんの差し伸べられている手をウォルガフの代わりに俺が受け取ろうとしたら、容赦無くもう一度海に突き落とすんだろうな……
などと思いながらも、俺は抱えているロジェを見つめ髪の毛をワシャワシャと撫で回すのである。
「なっなんだよ?」
「……ってかのロジェ体当たりのお陰で一瞬リヴァイアサンが怯んでくれた。だから絶妙なタイミングでウォルガフと合わせる事が出来たよ」
「……おぅっ」
少しばかり嬉しそうなロジェだった。
「リュウイたん、ぼくは? ぼくは?」
「……」
ウォルガフにもロジェと同様に髪の毛をワシャワシャと撫で回す。
「言いたい事全て言わなくても通じる事が出来た。それだけで十分だ」
「うちゅっ!! 褒められたでちゅぅぅ〜」
と喜びながら、ジタバタしたせいで俺の手の中からスルリと離れていくウォルガフ。
「あっ!?」
と思った時にはウォルガフは再び海に沈んで行った。
慌てて海に潜り引き上げるのであった。
そんな一連の流れを差し伸べた手を戻す事も出来ず、只々呆れかえっているグゥの姿がそこにあった……
結局ウォルガフは、再三差し伸べられているグゥの手を受け取る事はなかった。
なぜ? と聞いたら、ウォルガフは小声で『ぶちゅゅゅゅ!!』と言って俺に水をぶっかけてきた。
なんなんだよ。一体……
また沈むから暴れないでほしいのだが……
「ふぅ……」
俺たちは、自力で足場にしていた場所へとよじ登り、消えゆくリヴァイアサン光の粒を見つめていた。
ライオネットワイバーンの時みたいに、魔王後継者候補が現れませんように……
と念じながら眺めていた。
もう少しで完全に消え去るそんな時だった。
今まで反応していなかった灯台は突如起動を開始し、先端は光の粒をひとつ残らず吸収していくのである。
それはまるで灯台が、リヴァイアサンを封印しているように俺には見えた。
全ての光の粒を吸収し終えた灯台には、俺には読めない文字が刻まれているのである。
「ウォルガフ。これはなんて刻まれているんだ?」
「うんちょぉ〜」
『24時間後、魔物活性化一ヶ月。絶好機期間十日間』
「要するに、どう言う事?」
「ようちゅるにでちゅね……敵さんがいっぱぁぁぁぁぃ出て、経験値もいっぱぁぁぁぁぃくれまちゅ!!」
「んっ?
リヴァイアサンを倒して平和なカルヴァ地域に戻ったんだろ? なんで、魔物が沢山出てくるんだ?」
「それはでちゅね……」
ウォルガフは俺に説明を終えた後、ウンウンと満足したかのような素振りをみせてはいたが、相変わらずウォルガフの説明は俺は理解出来ていない。
「……ロジェ説明を頼む」
「今説明ちぃたのにっ!!」
ゲシゲシっと俺の足を蹴り飛ばしながら、ウォルガフはいじけていた。
いじけるぐらいなら、頼むからもう少し分かり易い説明を頼むよ。
ヤレヤレ漫才コンビだな。と言う顔をしながらロジェは再度俺に説明をしてくれたのである。
カルヴァ地域は、二十年に一度リヴァイアサンは復活を遂げる。
その時にリヴァイアサンを倒す事が出来れば、期間限定ではあるが経験値と言う名の報酬が与えられ、失敗すれば魔物たちが侵略を開始する。
そして……今回俺たちはリヴァイアサンを討伐する事に成功した。
よって今から24時間後に、この砂浜の範囲内で大量にサハギュインが発生。
そして、その大量発生は一ヶ月間続き得られる経験値は普段の倍であり、その中でも絶好機と言われている期間の十日間はなんと経験値が三倍得られるのである。
その十日間は、リヴァイアサンを倒した者のみに与えられる報酬みたいなもので、その期間内は他の者たちは立ち入る事が出来ず俺たちの貸切状態。
倒し放題との事だ。
絶好機が過ぎると他の冒険者たちも立ち入る事が出来、魔族が溢れかえる超人気狩場へと移り変わる。
綺麗な砂浜もこの時だけは、荒れる果ててしまう。
だが、冒険者で溢れかえると言う事は……
食事もしなければならないし、身体を休める為の宿も必要となっていく。
冒険者は割高状態であったとしてもお金を使う。
こうして、一ヶ月後カルヴァ地域に住む魔族たちは、約十年分の財産を手に入れる事が出来るのである。
「なるほどね。ロジェの行動やなぜラルダさんが、ここに俺たちを向かわせたのかやっと理解出来たよ」
ラルダさんに『今より強くなりたい』と言った俺たちに何も言わずこの依頼を渡してきた。
要は、リヴァイアサンを倒し俺たちに、ここでLevel上げをしろ。とそういう事か。
更にロジェが、経験値アップの防具を俺に買わせた理由も納得できる。
グゥさんが、またフェィオンに戻る。と言ったのも理解出来る。
経験値が三倍の時にランクアップして一気に、Levelを上げる。
その方が飛躍的に成長出来るし俺も、Level.50になれるだろう。
あっ魔法Levelも対象なのかな?
「ロジェ、魔法Level経験値も三倍?」
「勿論!!」
ロジェの返答に、頑張るぞ! ガッツポーズを取る一方で、それならそうと最初から教えて欲しかったと言う思いもあった。
「ロジェ、次からはちゃんと教えてくれよ」
「わかった」
その言葉だけ言ってロジェをそれ以上追求するのはやめた。
きっと俺を喜ばそうと思ったに違いないから。
このシチュエーション、確かにやる気が出る。
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その後俺たちは、カルヴァ地域に戻る事が出来るポータルの石を各自一個ずつ購入。
魔物が出現するまで時間がある事と、各自でやりたい事や準備しておきたい事があった為別行動を取る事にした。
当然グゥは魔法都市フェイオンに戻りランクアップしてくると話していた。
「ウォルガフちゃんも一緒に行きましょ?」
「ぼくはここに、いまちゅ」
ここに残ると言っているウォルガフをグゥは聞き入れなかった。
有無言わさず、問答無用でフェィオンへと連れていくのであった。
俺はと言うと……現在マイホームにいる。
十日間過ごすと言う事で、俺は当然宿屋で寝泊まりする物とばかり思っていた。
だが、ロジェはそうではなかった。
「宿屋で泊まるのは、移動距離がかかり過ぎて実は効率が悪い。だから、灯台にテントを張り十日間ここで生活をしようと思う」
「へっ?」
そう言い出したのだ。
やる気になってくれるのは構わないが、極端過ぎないか?
「まぁ効率は、いいから。リュウイさん、テントの用意しにマイホームに行ってきてくれよ」
「……わかった」
と言うわけで俺は、食料やらテントになる材料やらと取りにマイホームに戻ってきたのである。
「おっリュウイさんじゃねぇか?」
俺の姿を見て、そう話しかけてきたのはルシュガだった。
ルシュガには、俺は職人専用の家と魔物部屋を建設してもらうように依頼したのだ。
職人専用の家は俺が武器や防具・宝石の加工をする為に必要な設備を置く為には、どうしても広い部屋が欲しかった。
マイホームに不満がある。と言うわけではない。
ただ、マイホームは心休める場所。仲間たちと談笑する場所として俺は使いたかった。
だから、マイホームを増築するのではなく、新たに土地を購入し職人専用を……
更に、ヒュドラから授かった卵を安全に育てるのであれば、それなりの建物が必要だと感じた俺はルシュガに魔物部屋の建設も同時に依頼したのである。
新たに土地を購入する事にはなったが、現在土地を必要とするヒューマンは俺しかいない。
それに山奥で誰もこない秘境。
自由に勝手にやらせてもらおうと思った。
ルシュガの仕事は実に早い。
俺がルシュガに依頼してからまだ数日間しか経っていないと言うのに、既に職人専用の家は骨組み状態まで出来上がっていた。
これは、俺たちが帰ってくるまでに出来上がるのではないか? と期待してしまいそうだった。
「順調そうですね」
職人専用の家が出来るであろう方向を見つめながらルシュガに話しかけたのだが、ルシュガは実に申し訳なさそうな顔をしているのだ。
「どうかしましたか?」
「……いや……それがよぉ、実は材料が足りないだ」
どうやらルシュガの話し曰く職人専用の家の骨組み自体は、木材で十分なのだが外壁は木材ではなく石造りで作った方が、丈夫で湿気も篭り辛く職人専用にするのなら当然石造りに……
更に魔物部屋に関しては、木材での建設は可能ではあるが俺が渡した木材よりも更に硬く丈夫な木材にした方が、良いとの話しだった。
「どうせ建てるなら、妥協はしたくないよな?」
「まぁ確かに……」
どの道、俺はそう言った物には疎い。
ルシュガが必要と言うのなら、用意したいと思う。
でも、ルシュガが満足するようなアイテムあるかな……
「大量の石と、硬い木材ねぇ……」
アイテムボックスを開きながら、目星い物を探していくのだが……
これと言ってルシュガが、満足しそうな物は見つけられなかった。
でも前回と同様俺ならなんとかしてくれるのではないか? と言う期待に応えたく、適当に石らしきアイテム名を言って見る事にした。
「う〜ん……黒曜石なら大量にありますけど……?」
「何!!」
黒曜石の言葉にルシュガは食いついてきた。
そして、ぜひ使わせてくれとの事だ。
別に断る理由もない。
黒曜石は、ゲーム開始直後の魔物がよく落とすアイテムでゴミアイテムの一種だ。
なぜそんなゴミアイテムを俺が持っているのかと言うと……
ゲーム時代、ハグが後からログインするとの事で一人でいる事がたまにあった。
そんな時は決まって何もやる事がない。
臨時PT場所では、人気狩場はすぐに埋まってしまい回復職の募集待ちが殆どで前衛職である俺にとって競争率が激しくなっておりハグが来るまでの間俺は暇つぶし程度によくやっていたのが、ゴミアイテム集めだった。
千個集めるぞっ。とか目標個数を勝手に決めてよく集めていた。
集めた物は当然売らないでアイテムボックスの中で保管。
自己満足で集めた物は誰にも自慢出来なかったが、俺の中では立派なコレクションの一部へとなっていった。
魔王の世界となった今、俺たちが倒してきた魔物たちは殆どアイテムを落とさないらしい。
だから黒曜石もレアアイテムの部類に入っているようだ。
まぁ最も今となって……ゴミアイテムが俺の為に役立ってくれるとは思いもしなかった。
と言うわけでルシュガに黒曜石を半分だけ渡す事にした。
まだあるから、足りなくなったら教えてほしいと伝えると、十分だと言われてしまった。
加減が難しいものだ。
「後は硬い木材か……」
再びアイテムボックスの中から探し出す。
無難に硬い木材となると……
「サルブ木材なら結構ありますよ」
「おぉぉぉ、十分だっ!!」
サルブ木材を渡すとルシュガはご満悦となり、全て任せろと言ってくれた。
実に頼もしい限りだ。
軽い足取りになったルシュガの後ろ姿を見つめながら、俺はルシュガに感謝していた。
ティンシミングと言う訳のわからない種族の上に、他言無用とお願いし。更にはレアアイテムを大量に保持している俺をルシュガは当然不思議に思っているはずだ。
なのに……
ルシュガは、あれ以来何も聞いてこない。
自分の身を守る為とは言え、俺の事を信じてくれるルシュガに本当の事を言えず……
後ろめたさと共に、俺はやるべき準備を終えマイホームを後にするのであった。
俺が再びカルヴァ地域にある灯台に戻り、ロジェと共にこれから十日間お世話になるテントの準備を終えた頃には既に陽が暮れそうになっていた。
「そろそろ晩御飯だね」
さりげなく俺に準備しろっと言っているのだろうか? 聞いてしまえば、うん、そうだよ。と言われそうなので聞かないようにしていたのだが、ロジェからの目線が痛い。
作ってぇ〜と言われているようだった。
俺は料理人じゃないぞ? と言いたいな。
「……」
空いた口が思っている事を発しようとしていたが、空いた口は別の言葉を発していた。
「なんで宿屋にしなかったのさっ?」
「宿屋は、ここから遠いって話ししたろ」
「確かに聞いたけどさ……」
この灯台から、宿屋があるカルヴァの街まで真っ直ぐ突き進めば徒歩で三十分程で辿り着く事が出来る距離にあった。
随分短い距離だな? と思っていたが、ロジェの言葉には含みがあった。
そう……『真っ直ぐ突き進めば……』である。
灯台の後ろには海が広がり、反対方向には綺麗な砂浜がある。
更にその奥には、深い山があり通称『迷いの山』と呼ばれているそうだ。
そんな危険な山を好んで突き進むのはウォルガフだけであって、俺は行きたくない。
ロジェも同様との事だ。となれば、迂回するしかないそうだ。
迂回するとなるとやはり、三十分以上時間はかかり折角の経験値三倍がもったいない。
と言う事でロジェは、ここでテントを張って生活した方が効率いいと結論を出したそうだ。
まぁ納得は出来るが俺が、食事の用意をするのもどうかと思うのだが……
等とロジェとたわいもない話をしながら、結局火をおこし四人分の夕食を準備し始めようかとしていると……
フェイオンに行きランクアップ手続きをしてきた、ウォルガフとグゥが戻ってきたのである。
「たっだいまでちゅ〜!!」
元気よく帰ってきたウォルガフに、装備が薄い白いローブに身を包まれているグゥ。
どうやらランクアップは、無事成功し聖職者になる事が出来たらしい。
当然Levelは1だ。
装備が変わっていたのは、Levelが低く今まで装備していた物が出来なくなったからだろう。
「安心して、ちゃんと経験値アップの宝石付加しているからあっという間に上がるわ」
との事だ。
白いローブ代を支払おうとしたら、ランクアップ手続きをする際装備する物を用意され付加代のみかかったが、いらないと言われてしまった。
更に、晩御飯は用意していないだろうとの事でフェィオンで食事を大量に購入してくれていた。
それを美味しそうに食べるウォルガフとロジェの姿を見ながら俺も食事を開始。
明日からLevel上げとの事で俺たちは早めに就寝するのであった。




