【13】
戦闘は相変わらず難しいものです……
自分の意図は関係なしに動いて行きますよね……
赤く光輝く物体は急速に小さくなり、瞬く間に海は荒れ始める。
晴天だった空も一気に雲に覆われ薄暗くなっていく。
そんな異常事態だと言うのに俺とウォルガフは今だ乗る、乗らない。の言い合いをしていた。
「リュウイたん、ぼくとドライブしてくれないのでちゅか?」
ウォルガフは得意技でもあるウルウル攻撃で俺を見つめてくるのだが、目を合わせてしまうとウルウル攻撃に負けてしまい乗ると約束してしまう事は分かり切っていた。
だから、心苦しいが目を合わさずに乗らない事を告げようとしたのだが……
目を逸らすとウォルガフは無理矢理にでも目を合わせようと移動してくる。
何度も視線を外すのだが、その旅にウォルガフは移動してくるのだ。
「ねぇねぇリュウイたん?」
「くっ……わかった。今度な」
結局、俺はウォルガフのウルウル攻撃に負けてしまった。
「わーい!! やったでちゅ〜!!」
よっぽど俺とのドライブが楽しみなのか、ウォルガフは灯台の麓で元気良く飛び跳ねはしゃぎ回っている。
「……」
ウォルガフが喜んでくれている事だし。
まっいっか……
俺が車酔いに耐えればいいだけの事……
「くるぞっっ!!」
ロジェの叫び声と共に、ハッと我に変える。
灯台から海のに向かって赤く光輝く所から魔物たちが大量出現し俺たちに向かって襲いかかってきた。
『サハギュイン』Level.250
サハギュインは、海に棲む半魚人の魔物で鋭く尖った槍を持つ雑魚モンスターなのだが……
Level.250は高Levelの部類に入ると思う。
おふざけはこれまで、気を引き締めなければ……
「グゥさんっ!!」
「わかっているわ!!」
ロジェの言葉と共にグゥは魔法を詠唱。
「オーロラシールド X!!」
オーロラシールドによって、俺たちの周りに淡く光輝くドーム型の防護壁が展開されて行く中、ロジェとウォルガフは武器を手に取りサハギュインへと攻撃を開始するのであった。
そして、俺もライトニングの詠唱を開始。
「ーー雷よ、稲妻の如く降り注げ!! ライトニングストリーム!!」
杖から無数のライトニングが灯台に上陸したサハギュインに直撃。
「ギッギッ……」
サハギュインの動きが一瞬止まる。
その隙を突き、ウォルガフとロジェはサハギュインを次々に倒して行くのである。
「ぶん回し!!」
その名の通り、剣を円形状に回すウォルガフ。
魔力を帯びた攻撃は、以前の攻撃よりもより広範囲で高威力なのは見てすぐにわかった。
一気に半数近くがウォルガフの一撃で、倒されて行く。
更に負け時と攻撃を繰り出すのはロジェだ。
「波っ!!」
気合いと共に前に繰り出された拳は、次々サハギュインを殴り倒して行く。
広範囲攻撃を得意とするウォルガフに、接近戦を得意とするロジェ。
二人にかかれば、大量のサハギュインと言えども歯が立たないのだろう。
瞬く間に倒されて行く。
全てを倒し終えるとサハギュインは、光の粒となって消えて行く……
快勝だった。
しかし、Level50まで上がるはずなのだが……Levelアップ音は響き渡らなかったのである。
「リュウイたん、どうちぃたのでちゅか?」
「いや、大量にサハギュインを倒したのにLevelが上がっていない。経験値が入っていないようだ」
Levelが上がらない新たな問題でも増えたのだろうか? と思っていたのだが、実はそうではないらしい。
本当の戦いはこれから……
どうやら、大量のサハギュインは前哨戦のようだった。
「リュウイさんに説明しておくね」
「なにを?」
「俺たちの目的はサハギュインの討伐じゃない。今にもから出てくる魔物の討伐だ」
「ほぉっ?」
そもそもカルヴァ地域は、ここにある灯台が魔物を出現させないように結界の役目を果たしているのであった。
海に面した綺麗な砂浜は、魔物が出現しないという安全面から海水浴として訪れる有名な場所の一つである。
だが、二十年に一度だけ灯台は効力を失い海は大荒れとなる。
当然この時だけ周辺は立ち入り禁止区域とされ、灯台を破壊しようと海の中からサハギュインを率いて魔物が現れるのである。
灯台が破壊されると、カルヴァ地域の綺麗な砂浜は一気に汚染されて行きサハギュインは近隣の村を壊滅的なまでに徹底的に破壊して行くのであった。
満足するまで破壊し尽くすと、サハギュインは何事もなく静かに海へと戻って行く。
それが、二十年周期で定期的に起こる『魔物たちの逆襲」と呼ばれている。
サハギュインに襲われた近隣の村には、再び復旧作業へと取り掛かるのである。
だが、落ちいた頃再び『魔物たちの逆襲』が勃発、サハギュインは襲来するのであった。
しかし、サハギュインとその魔物を討伐すればいい事も訪れる。
一番乗りに魔物討伐した者には、その報奨が与えられ一週間程この場に滞在する事が許されるのである。
「ここに滞在するのがいい事なのか?」
俺の素朴な質問にロジェは、爽やかな笑みを浮かべいた。
「勿論とっておきだよ」
と……
「ぼくも今から楽しみでちゅ」
クルクルと踊りながら話ししてくるウォルガフ。
「私は、この戦闘が終わり次第一度フェィオンに戻るわ」
冷静に言葉を返すグゥ。
「??」
何が起こるのかはさっぱり理解出来なかったが、三人がとても楽しみにしている。
それだけは理解する事が出来た。
「リュウイたん。本当の戦いはこれからでちゅ。気を抜かないで下ちゃいね」
「おっ……おうっ。わかった」
ウォルガフ、お前も海に落ちるなよ。
言葉にすると本当に落そうだから心の中で警告する事にした。
「ギャァァァァァァァァァスッ!!」
叫び声と共に俺たちの目の前現れたのは、なんと電柱よりも高く。そして、大きいリヴァイアサンであった。
『リヴァイアサン』Level.580
「なっ!?」
「今回のリヴァイアサンは結構大きいな」
「みたいね。その分期間が長いのかしら」
「ワクワク……」
ロジェの話しをまとめるとリヴァイアサンの目的は灯台の破壊。
俺たちは灯台を守りつつ、リヴァイアサンを討伐する。
だった。
よしっ!! やるぞっ!!
リヴァイアサンの登場で出来た水しぶきが、雨のように俺たちに降り注ぐ。
その水の雫はやがて硬い雹へと変わり、一粒一粒が地面に食い込む威力を持ちながら襲いかかってくる。
先ほどグゥが俺たちにオーロラシールドをかけてくれたお陰で、ダメージは殆どないに等しいが効果が切れた時、継続的なダメージを受けそうだった。
それを察したのか、グゥはすぐさまオーロラシールドを掛け直してくるのである。
「これで暫く持つわ!! 今のうちにっ!!」
「うちゅゅゅゅゅゅっ!! 突進!!」
剣を正眼に構えたウォルガフは、リヴァイアサンに突撃していく。
ロジェもまた、空高く飛び上がり破壊力抜群の拳を振り落としていく。
スチャッ!!
攻撃を終え二人は海に落ちる事なく、着地したのだが……
「硬いでちゅっ〜〜」
「鱗、硬っ!!」
リヴァイアサンはウォルガフやロジェの再三の攻撃を受けているのにも関わらず、その硬い鱗に寄ってダメージを受け付けてはいなかったのだ。
再び二人が、攻撃を繰り出している間に俺も出来る事をやり始める。
二つの魔法石にライトニングボールを溜め込み、更に詠唱を開始。
これで三発分の魔法攻撃の準備が出来た。
「ウォルガフ、ロジェ!!」
俺の叫び声に二人は攻撃中なのにも関わらず、直ぐにリヴァイアサンから離れていく。
「ライトニングキャノン!!」
これは、以前ヒュドラに向かって放ったフレアバーストと同じ原理で放った。
どうやら、同じ系統の魔法を三発分貯め込み更に魔力を一つに纏めて圧縮させると上位の魔法。
すなわち魔導師の魔法を放てるようだ。
しかし、俺はまだ魔法使いな訳で杖の中で魔力が暴れ暴発しないように、無理矢理押し込めなければならない。
きっと魔導師になれば魔力が暴れる事もなくなるし、三発分の魔力を必要とはしなくなるんだと思う。
上位の魔法と言う事だけあって、魔力消費量が半端ない。
一気に使い果たしてしまう勢いだ。
だが、俺にはMPポットが大量にアイテムボックスの中にストックされている。
そう簡単にMP切れになる事はない。
しかし、俺の放ったライトニングキャノンはリヴァイアサンに目の前で光の粒となって弾け飛んで行くのである。
「なっ……!?」
ヒュドラに向かって放ったフレアバーストと明らかに威力が低い。
フレアバーストの方がもっと破壊力はあったぞ?
属性の違いか?
ならば、フレアバーストで……
再度魔法を詠唱し始めるのだが、リヴァイアサンは俺をギロリと睨みウォルガフとロジェを今までターゲットにしていたのを、俺に切り替えて襲いかかってくる。
俺のすぐ後ろには、後方支援魔法を詠唱中のグゥがいる。
このまま俺が、ここにいればグゥにも攻撃が向いてしまう。
グゥは俺たちをパーティの生命線……
回復職が倒されて、パーティ全体が全滅した。
なんて話しはよく聞く。
それだけは、避けなければならない。
「フレアボール!!」
リヴァイアサンに効かないとわかっていながらも、フレアボールを数発発動させながらグゥがターゲットにならないように距離を置こうと試みる。
だが、リヴァイアサンは俺を追いかけ回しながらも両眼に魔力を溜め込み始めた。
そして、溜め込んだ魔力を一気に開放するかのように、口から氷の息を俺目掛けて吐き出してくるのであった。
「フレアストライクっ!!」
フレアボールよりも大きな火の球を目の前に展開させ、氷の息を防ごうと思った。
だが、ブレスに対して有効的手段ではなかったのだろう。
フレアストライクは一瞬にして凍りついていく。
今の俺には、戦士並みの体力もなければ防御力もないし、ジャンプ力もない。
それでも氷の息に対して咄嗟にジャンプをしながら回避していくのだが……
俺がいた場所は氷の息に寄ってカチンコチンに凍つき、ジャンプしてよけなければ氷像が出来上がっていた思う。
だから、ジャンプして避けたのは正解だった。
しかし……
リヴァイアサンの次の攻撃に対して俺は避け方を知らない。
当然、無抵抗のまま直撃するしかなかった。
大きく口を開いたリヴァイアサンが、俺の落下地点で背中から丸呑みにしようと待ち構えているではないか。
「くっ!!」
殺られる!!
素直にそう思った。
「リュウイたん!!」
「!!」
ウォルガフの叫び声に、目線だけを動かしウォルガフを探し出していた。
目線の先には灯台近くでグゥの回復を受けているウォルガフがいた。
既に傷だらけなのに、ウォルガフは心配そうな顔をしながら俺を見つめている。
「そんな顔するなよ……」
無意識に発した言葉だった。
俺が不甲斐ないからウォルガフにあんな顔をさせている。
そう思うと、空中で身を反転させリヴァイアサンと真正面から向きあい迎撃体制に入っていた。
最後まで足掻いてやる。
現在リヴァイアサンは、俺が落ちてくるのを口を大きく広げ待ち構えている。
当然いつも通りに詠唱を唱える事は可能だが、そうなれば魔法発動準備が出来たのと同時に俺はリヴァイアサンの腹の中だ。
となれば、詠唱も省略も却下。
破壊力はないが俺には、無詠唱しか残されていなかった。
無詠唱だが、魔力をありったけ杖に流し込みながらリヴァイアサンの口元に杖を向け叫んだ。
「ライトニングストライク!!」
ライトニングストライクはフレアストライクと同様で、ライトニングボールよりも大きな雷の球を作り出す魔法だ。
リヴァイアサンの口の中でライトニングストライクは爆発。
その爆風によって俺は、リヴァイアサンに食べられる事なく弾き飛ばされるのではあるが、弾き飛ばされる方向がまずい。
眼下には広大な青い海が広がっていた。
このままでは果てしない場所に落ちてしまいそうだった。
「くっフレアボール」
苦肉の策ではあったが、前方にフレアボールを発動。
フレアボールの爆風を利用して、灯台に着地しようと考えていたのだが甘かった。
勢いは若干足りず、リヴァイアサンのすぐ後方の海に落ちてしまうのである。
「ぐおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
今まで攻撃が効いていなかった筈なのに、ライトニングストライクによってリヴァイアサンはダメージを受けているようにも見えた。
要するにだ……
どんなに硬い鱗に囲まれていたとしても、内部は電撃に弱いって事か。
となれば……
「ロジェ!!」
海の中から叫ぶ俺の呼び声にロジェは迷わず海に飛び込んできた。
「なんだい?」
両手両足をジタバタと動かしながらもロジェは、俺には近づいてきたのである。
「擦り傷程度でもなんでも言いから、リヴァイアサンの尻尾を攻撃してくれっ!!」
「わかった!!」
ロジェは理由も聞かずに、息を思いっきり吸い込み海の中へと潜水していく。
その間に俺も、魔法の準備を始める。
陸地でもある灯台では、ウォルガフがグゥを懸命に守りながら応戦している。
ウォルガフ、すまん。もう少しだけ耐えてくれ。
「大気に満ちし漂う雷の粒子。魔力の元に集まりしその力を示せ……」
よし、俺の準備は万端だ。
後はロジェ次第だな。
ロジェが海中に潜水した水面からプクプクと泡状の物を確認したのと同時に、ロジェは浮上してきた。
「はぁはぁ……」
かなり無理してくれたんだと思う。
呼吸を整えるのに精一杯のロジェは何も言わず、俺の顔を見て力強く頷くだけだった。
「ウォルガフ!!」
準備万端な状態になり、ウォルガフの名を呼ぶ。
「狙いは頭だっ!!」
「うちゅっ?」
「ブラックルナボールを倒した時みたいに雷を全身に纏って突撃しろぉぉぉ!!」
ウォルガフの返事を聞かぬままそれだけ言って、今度は俺が海の中へと潜水していく。
海の中は激流だった。
流れに身を任せれば、とんでもない方向に流れてしまいそうだ。
流れに逆らいながらも、俺はロジェが傷つけた尻尾を探し出していた。
ーーーーーー
俺が海の中に潜った後、ウォルガフは少し膨れ気味に言葉を漏らしていた。
「凄疲かれるから使いたくないでちゅ。って前に言っちゃのに……」
「ウォルガフちゃん?」
「ぶちゅゅゅ!!」
と言いながらもウォルガフは、パチパチと雷を帯び始める。
「むーーーんっ!!」
両手を空高く突き出し更に雷を集め始める。
その間、当然リヴァイアサンが黙って見ているはずがない。
ウォルガフとグゥ目掛けて、鋭い牙で攻撃を仕掛けようとしていたのだが……
リヴァイアサンはその動きを一瞬硬直させたのである。
「いまでちゅっ!!」
俺が海の中で潜った後、呼吸を整えたロジェは再び海の中へと潜りはじめていた。
狙いをつけたロジェは、力の限りリヴァイアサンの胴体に突進。
硬い鱗で阻まれダメージなどは殆ど与えてはいなかったが、一瞬その動きを止める事に成功したのである。
一方俺はと言うと、水中でロジェが微かに傷つけた尻尾を見つけだし杖を構えタイミングを見計らっていた。
尻尾はゆらゆらと不規則な動きをしており、このまま魔法で放ったとして果たして命中するのか? と言う疑問が脳裏を巡っていた。
そして、ロジェが海中に再びその姿を確認。
何をするのだろうか? と見上げているとリヴァイアサンの胴体に突進していくではないか?
無謀な事を……
と思ったが、ロジェの一撃によってリヴァイアサンはその動きを止めたのである。
「今だ!! ライトニングストライク!!」
ライトニングストライクは俺の狙った通り、ロジェの傷つけた尻尾に直撃。
それと同時に地上では、電撃を帯びたウォルガフが空高く飛び上がり自慢の魔王の大剣をリヴァイアサンの口の中深く突き刺していた。
「大放電!!」
狙い通り同時攻撃だった。
内部から電撃攻撃を受けたリヴァイアサンは、なす術がなかったのだろう。
全身くまなく回る雷によって、リヴァイアサンは全ての行動を停止させていく。
そして、ゆっくりとリヴァイアサンの姿は光の粒へと変化していくのであった……




