【10】
ムーンサン族の種族王がいるルブシューニェがいる街、魔法都市フェィオン。
フェィオンから半日程、乗り物に乗ればカルヴァ地域に着く事が出来る。
更にマイホームから魔法都市フェィオンまでは数時間で着く道と、五日程かかる道が存在している。
と俺に教えてくれたのは、ウォルガフだった。
半日程で辿り着く事が出来る道は、魔物ですら通らない獣道だ。
獣道を通るぐらいなら、時間はかかってもいいから安全な道で行きたい。
……そう思っていたのだが、俺はまだまだ甘かった。
そもそもマイホームは、山奥の中腹に存在し滅多に人? 魔族たちは足を踏み入れる事のない未開の地である。
だから、今後も見つかる事はないだろうとロジェは言っていた。
山奥の中腹に存在しているマイホームは、一度下山しなければならない。
「下山ちぃて遠回りするなんて面倒いでちゅ!! 近道ちまちゅ!!」
そう言ったのは、当然ウォルガフだ。
ウォルガフの言葉にグゥが反対する訳でもなく。
ロジェもどちらかと言えば、ウォルガフよりの意見。
多数決で、真っ直ぐ……
そう獣道を通ろうと言う結論に至ったのである。
確かにマイホームを出てから僅か数時間。
魔法都市フェィオンに辿り着く事が出来た。
道ゆく途中魔物に出くわし、既にLevel.35になっていた。
城門は一つしかなく、低いレンガのような物で作られた壁で全体を囲い所々に穴が空いていた。
そこから魔法を発動する事が出来そうだった。
これはゲームの時に、そんなような設定の街があったのを覚えていた。
未実装だった為、名前は覚えてはいないけど。
確か、魔法を使う物が防御するのに一番適している優れた街と言われていたな。
城門には長蛇の列がズラリと並び、見張りの兵士が確認作業に追われていた。
だが、ウォルガフはそんなのはお構いなしにズンズンと進んでいく。
声をかけようかと思ったが、どうやら長蛇の列は俺たちは別件らしい。
見張りの兵士に冒険者カードを提示すると、すんなりと街に入る事が出来た。
冒険者や商人。いわゆる身分を提示出来れば、長蛇の列に並ばずにすんなり入る事が出来るようだ。
田舎者丸出し全開で辺りをキョロキョロと見渡すと、どうやらフェィオンの街の広さはムーンフェイズとほぼ変わらないように感じた。
だが、目的地までの行く道のりは、フェィオンの方がわかりやすかった。
赤いレンガで作られた道は、魔法学校や魔導学校へと続き。
青いレンガは、商店街や職人街方面に。
黄いレンガは、民家街、宿舎に続く道だと言うのは見てすぐにわかった。
魔法学校には一度行って見たい。
どんな魔法を教えてくれるのか、体験してはみたいと思っていた。
だが、今回の目的はここではない。
フェィオンには、ただ立ち寄っただけだ。
マイホームから数時間で着く事が出来るとわかったから、時間ある時に来てみようと思う。
獣道を歩きながら、俺たちは話し合っていた。
フェィオンに到着したらまずはそこで一泊。
明日の朝にカルヴァ地域を目指す。
と言うわけで、俺たちは宿を探す事にしたのであった。
他にも、杖を掲げている武器屋。
高級そうなローブを展示している防具屋。
ウォルガフが好きそうなお菓子屋さんなどなど様々な物が揃っていた。
空飛ぶ絨毯は流石になかったが、魔法が主流なだけに魔法都市と言われるだけあるな。と感じずにはいられなかった。
「リュウイたんっ、ぼくはここの宿屋さんがいいでちゅ!!」
一際大きい宿屋にウォルガフは一、目散に走り抜けて行くのであった。
一泊幾らするのだろうか……?
そんな事を考えながら、俺もウォルガフの後に続くのである。
宿屋と言うよりは高層高級ホテルのような建物だった。
外壁は白く均一に塗装されたレンガ風のタイル。
入り口のドアには、指紋が一つもなく磨き抜かれた綺麗なガラス窓が特徴的だった。
ウォルガフがペタペタと触りまくるんじゃないかとハラハラしてしまった。
きっと何時間もかけて磨いているんだろうな。
「いらっしゃいませ。当宿屋へようこそ……」
ホールに入ると色白の耳がとんがっている男。
瞳の色が左右違っており一目でムーンサン族だと言う事がわかった。
ムーンサン族の男は、俺たちの姿也を見ながら場違いでは? という雰囲気を醸し出しながらも、営業トークを始めるのである。
「最低お一人様一泊金貨一枚からご案内させて頂いております」
随分と高いな。
宿屋汐音は朝食付きで一泊銀貨三枚だぞ。
金貨四枚……
懐事情に大打撃と言う訳ではない。
ライオネットワイバーンでの報奨金を受け取っているから別に払えない額じゃない。
だが、俺たちはそんなに見窄らしいのだろうか?
確かに三十代の装備の俺に、フォス族が二人。
とうぜんこの時点で金はないように思われるんだろうな。
グゥさんはLevelに見合った装備をしているが、俺のせいで霞んで目の前のムーンサン族の男には見えてしまうんだろうなぁ。
ムーンフェイズでも、一度こう言う態度をして来た店があったな。
確か……料亭欽天。
あそこにいた男と同じ態度を目の前にいるムーンサン族の男はして来ている。
そう思うと段々腹が立ってきた。
「この宿で一番高い部屋は幾らですか?」
「はぁ?」
払えるのか? と言わんばかりの顔をしながらムーンサン族の男は、俺の足元から全身を見渡す。
そして、無理だろうと言う結論を出したんだろうな。
「お客様には、金貨一枚が妥当かと思いましたのですか?」
少し大人げないとは思うが、人を見かけて判断しないで頂き者だ。
「これくらい立派な宿屋ですから、一人白金貨一枚の部屋もありますよね?」
「確かにございますが、それは当宿屋では最高のおもてなしとなっております」
見かけて判断しておいて、おもてなし。
……とは、よく言ったものだ。
「じゃその部屋を二つと、極上の料理を頼みます」
「……」
白金貨五枚男に見せながら、そう言うと男は呆然と立ち尽くし対応に困り果ててしまったようだ
慌てて、宿屋の一番偉い支配人みたいな男が出て来て平謝り。
俺たちを部屋へと案内してくれたのであった。
部屋は取り敢えず二つ。
俺とウォルガフ、それにロジェ。
グゥには一人で寝てもらおうと思う。
ウォルガフは部屋についた途端大喜び。
俺だってビックリだ。
案内された最上階の部屋は、宿屋汐音の客室と比べるのは悪いが全てが最高位だと言うのは見てすぐにわかった。
流石にシャンデリアはなかったが、レアアイテムの家具が盛り沢山だ。
思わず、ウォルガフに走り回って割るなよ。
と言ってしまった。
後は、三人で川の字になって転がり回っても落ちない大きく広いベット。
更には広いお風呂。
また、ウォルガフがはしゃぎ回るな。
疲れるから入りたくないのだが……
そして、何よりも一番の見所は全面ガラス張り出窓。
フェィオンを一望出来、絶景だ。
と思ってしまう程見晴らしは良かった。
「ってかなんで、こんな部屋にしたんだい?」
「広すぎて一人でなんて、私寝られないわよ。ウォルガフちゃん一緒に寝ましょ」
「ぼくは、リュウイたんと一緒に寝まちゅよ」
ウォルガフは喜んでいたが、ロジェやグゥには不満が残りそうだった。
再び、支配人を呼び出し部屋を移動したい事を告げた。
支配人の顔を真っ青にしながら、ビクビクと俺たちの顔を見ていた。
「部屋にご不満でもございましたか?」
「いや、そうじゃなくて。落ち着かないので、スタンダードな部屋に……」
そもそも俺が、怒ったのはムーンサン族の男の態度についてだ。
再度支配人に、人を見かけて判断して欲しくない事を告げる。
そして、白金貨五枚支払うのでスタンダードの部屋に変えてもらう事をお願いした。
俺たちが支払い過ぎるとの事で支配人は一度は拒否したが、沢山ご飯を食べてしまう者たちが二人もいるので満足するまで食べさせてあげて欲しい事お願いした。
「左様でございますか……?」
まぁ支配人は、この二人がどれくらい食べるかわからないから儲けた。と思っているだろう。
俺の予想では、多分宿屋側は黒字にはならないと思うな……
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「ふぅ〜」
スタンダードの部屋は、白い壁にベットが三つ。
これは三人部屋と一人部屋を頼んだからだ。
更にテーブルと椅子が用意され、どこにでもある宿屋の雰囲気になった。
少し変わっていたのは空調だった。
暖かくもなく、寒くもない。
快適な温度調整であった。
流石に高級宿屋と言った所だろう。
ひと段落した俺は、ソファで寛いでいた。
ウォルガフは、剣を取り出し手入れをし始めた。
「うちゅっうちゅっうちゅっ」
と言いながら……
ロジェもウォルガフ同様、自らの武器を磨いていた。
その二人の姿は普段は幼稚園児にしか見えない癖に、この時だけは真剣な眼差しだった。
でも流石に、怪我をしたら危ないと思い声をかけておこうと思う。
「ウォルガフ、怪我するなよぉ〜」
「……」
その言葉が気に入らなかったのだろう。
ウォルガフはキリッとした目で俺を睨みつけてくる。
「リュウイたん。ぼくを甘く見ないで下ちゃい!! これでも毎日剣の手入れはしているんでちゅよ!!」
「そうなのか?」
一度も見た事がないぞっ?!
「……俺が、知らなかっただけか?」
「ぶちゅっ!!」
得意顔になり力強く頷くウォルガフであった。
「そうかわるかったな……」
得意顏で言われてしまったらそれ以上、何も言えなかった……
暫くソファで仮眠を取っていると、いきなり叫び声が聞こえてきた。
「どっどうした!?」
飛び起きるかのようにソファから身を乗り出し、二人に話しかける。
すると……
「指きったぁぁぁぁ!! 痛いでちゅ〜〜!!」
「……」
なんとまぁ……お約束的な事を……
ウォルガフの幼く小さな親指からポタポタと血が少しだけ滴り落ちていた。
「手慣れているのではないのか……?」
「うちゅ〜〜ひっく……」
今にも泣き出しそうな顔をしながらウォルガフは、俺を見つめていた。
ロジェもどうしょぉぉぉぉと部屋の中を走り回っている。
仕方がないなぁ〜
アイテムボックスの中から、薬草を取り出す。
そして、傷ついた親指に薬草を擦り込んでいく。
血は止まったが、傷は完全に塞がる事はなかった。
所詮薬草だから、気休め程度と言う事だ。
「今度から気をつけろよ」
「ひっく……まだ、痛いでちゅ」
ウルウルと両目に涙を溜めながら、痛みを懇願してくるウォルガフ。
「大丈夫か? ウォルガフ?」
更に物凄く心配そうに見つめるロジェの姿があった。
かすり傷ぐらいで……
君たち戦闘中はもっと大きな傷を負っているんだぞ……
まぁ、この二人は戦闘中となると人? が変わったかのように頼りなると言うのに。
相変わらず、ギャップが激しいな。
「俺は回復魔法は使えないし、薬草で血は止まった。すぐに痛みも緩和していくよ」
「……でも、まだヒリヒリして痛いでちゅよ……」
「リュウイさん、なんとかしてやってくれよっ!!」
ダメだ。全然話しを聞いちゃいない。
「これでも食べて、気分を紛らわせるといい」
ウォルガフとロジェにおやつを渡しそう言うと、二人は喜んでその場に座り込み仲良く食べ出したのであった。
そんなやり取りをしていると、荷物を置いたグゥが俺たちの部屋に赴いたのである。
グゥをソファに座るように促し、今後の事について話しをする事にした。
「……で、これからどうするつもりなのかしら?」
「うーん」
今後の予定は何も入ってはいなかった。
フェィオンを街を晩御飯になるまで観光しても良かったが、観光するとなると半日では回りきれないらしい。
「特に予定はないですけど、グゥさん行きたい所でもあるのですか?」
「私は、ランクアップ出来るかどうか試したいわ」
「ランクアップ??」
グゥの言うランクアップとは、どうやら僧侶から聖職者へ。
聖職者から賢者へと階級を上げる事の総称らしい。
ベーレの元で魔力を練る事が出来るようになったグゥは、聖職者にランクアップ出来るかどうか試したいとの事だった。
「リュウイさんも、魔導師になれるかどうか試してみるといいわよ」
「えっ? でも前聞いた話では……」
魔導師になる為には、Level.200である事。
そして、上級魔法を極めている事……
これで、魔道士になれるかどうかの試練を受けられる条件を満たす。
試練を受けるには、フェィオンに赴かなければならない。
だったな。
「グゥさん……俺、条件満たしていませんよ?」
「それは魔族の条件であって、ヒューマンである貴方にも当てはまる事なのかしら?」
「?!」
確かにグゥの言うとおりかもしれない。
魔王の世界であっても俺だけは違う種族。
もしかしたら、魔導師に……なれるかもしれない!!
「ダメ元で行って見ます」
ランクアップ出来ない可能性もある。
程々の期待を込め、俺は早速行く準備をするのであった。
すると、お菓子を食べ終わり気分が紛れたウォルガフもワクワクしながら、期待の眼差しを俺に向けていた。
「ぼくも付いて行きまちゅ!! おやつ買いに行くんでちゅよね?」
話を聞いていないウォルガフは相変わらずだった。




