【09】
忘れちゃいけない依頼の報告……
Sランク限定の依頼でもある、ライオネットワイバーン討伐。
巣は破壊出来なかったが、原因は報告出来る。
一応完了したと俺は思っていた。
後、冒険者ギルドに行った時、正式に申請しないとならない。
新たにロジェとグゥを俺たちのバーティー『剣と魔法と魔王』に加入してもらう。
その為にも俺たちは、久しぶりのムーンフェイズに赴く必要があった。
いつまでもマイホームで、はしゃぎ回っているわけにも行かないのだ。
マイホームから騎竜を呼び出し、ムーンフェイズを目指そうと思ったのだが……
契約期間が過ぎてしまったらしい。
オカリナはアイテムボックスの中には、消えていたのである。
仕方がなく、ウォルガフに最初に案内してもらった近道をひたすら歩く事になってしまった。
あの時は、右も左も分からない状態でムーンフェイズにつ着いたのだが。
今、ここを通ってみて改めて思う。
随分と険しい山道じゃないか!?
今にも壊れそうな吊橋に、急な斜面と細い崖道。
良く無事に俺はたどり着く事が出来た物だ。
マイホームに戻るのは一瞬。
だが、街に行くのには時間がかかる。
そろそろ本格的に移動手段を考えなければ、後々面倒な事になりそうだ。
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ムーンフェイズに着き、まずは騎獣貸出屋に顔を出す事にしたのである。
オカリナは消えてしまったが、俺たちが乗っていた騎竜は本当に無事に戻ってきたのか……
ウォルガフが心配でどうしても確認したいとの事だ。
騎獣貸出屋の前まで行くと、先に俺たちに騎竜を貸してくれた定員さんが気がついたのである。
「あっ兄さんたちじゃないか?」
「先日はどうも」
「騎竜だけが帰ってきたから、何かあったのかな? と思っていたが、無事で良かったよ」
「まぁ色々ありまして……返しに来れなくて申し訳なかったです」
「ねぇねぇ」
ウォルガフは定員さんの足の裾をひっぱり見上げていた。
「なんだい?」
「うんちょね。騎竜たんは、無事なんでちゅか?」
「次の仕事が来るまでの間、ゆっくりと羽を休めている所だよ」
「そうでちゅか、良かったでちゅ」
次の仕事ねぇ〜
また、俺に借りれと言わんばかりの目線が妙に痛かったが気にしない事にした。
一匹の騎竜では、俺たちは乗れない。
安くはない貸出料に二匹借りるのは現実的にきつい。
安心した顔をしたウォルガフは、騎竜の方に手を振りながら……
「おぃちぃ食べ物を一杯食べてくだちゃいね」
そう言っていた。
それは、少し淋しそうな面影を残していたのであった。
騎竜の安否を確認した俺たちは、冒険者ギルドへと向かうのである。
冒険者ギルド内ついた途端、全ての者たちはグゥの顔を見て凍りついていた。
「……グゥさん……!?」
皆が皆、なんと声を掛けたらいいのかわからず困惑していたのだ。
「無事、戻ってこれてよかったわ」
「なんとかですけどね」
重い雰囲気の中、平気で話しかけてきたのは受付のお姉さんだった。
「取り敢えず、詳しい話を聞きたい所なんだけど……」
「うん?」
お姉さんは、また言いづらそうな顔をしている。
まだ何かあるのだろうか? ……勘弁してほしいのだけど。
「今回の依頼、結構大事件の部類の依頼なのよね」
「……」
「お姉たん、そうなんでちゅか?」
「あら、ウォルガフ。元気そうね♫」
「勿論でちゅ!」
「大事件か……確かにそうだね」
ロジェ、冷静に返答しないでくれよ。
「うん、だから貴方たちには冒険者ギルド長に会って直接説明して欲しいのよね」
「えっ!?」
「えぇ〜またむずゅかちぃ話ちぃでちゅかぁ〜」
「だって貴方たちの話をまとめて、報告書にして提出する私の身にもなってよ」
よーするに面倒いのか?
「面倒いとかそういうのじゃなくて、詳しい内容は当事者しかわからない部分もあるわけよ。それに質問されたら答えられないのよねぇ〜」
「……」
本当だろうか……?
ちょっと怪しいなぁ〜
そもそも、冒険者ギルドに長がいたとは知らなかった。
んっ!? まぁ、普通はいるか??
「というわけで、会って来てね!」
「は〜いでちゅ!」
ウォルガフはトコトコ……と酒場の方へと歩いて行く。
んっ?? ウォルガフ、ご飯じゃないぞ!?
その後に続いてロジェとグゥも酒場の方に……
なんだ? なんだぁ!?
「おっちゃん!!」
ウォルガフは酒場のカウンターの奥で、汗水流しながら料理を作っているガルヴァルデ族の男に話掛けていた。
「おうっ! お前ら帰ってきたのか!?」
「はいでちゅ!!」
「そうか、そうか。おいっ少し任せるぞ!」
「はーい」
他の厨房で料理を作っている人たちに、声をかけたのちにガルヴァルデ族の男は似合わないエプロン姿で俺の目の前に現れたのである。
「……」
「ここでは、ちょっと話しづらいな。俺の部屋に行くか」
促されるがまま、流されるがまま俺は最後尾で後をついて行く。
厨房の奥のドアを通り廊下を歩き一番奥の部屋を開けると書斎だった。
料理の本から始まり、歴史書等幅広く様々な本が置いてあり、机の上は綺麗に整理されていた。
黒皮の立派な椅子も置いてあり、応接間にもなっていた。
「まぁ、座れ」
言われるがまま座る……
なんか、悪いことして来たわけじゃないのに緊張してしまう。
「わーい♪ フカフカの椅子でちゅ!!」
「うんうん、ここはいつ来てもいいね!」
「壊したら弁償になってしまうわよ。ウォルガフちゃん♪」
「その時は、リュウイたんお願いしま〜ちゅ!」
「嫌だよ……」
「ぶちゅ〜!!!」
そんな俺たちのやり取りをガルヴァルデ族の男は、大笑いしていた。
「さて……まずお前さんとは初対面だな」
ガルヴァルデ族の男は俺の目を見ながら、ドカッ! と椅子に座り話しかけてきた。
「あっ……はい。そうでしたね、俺のな名はリュウイと言います。よろしくお願いします……」
「俺の名は、ラルダ。普段は料理長をやっている」
「はぁ……?」
「冒険者ギルド長ってのはよぉ、暇でさっ。長っと聞いただけで大抵の人間は身構えてしまい、巣の自分見せる事はあまりない。だから料理長として現場に立ち冒険者たちを見守っているんだな。この事を知っているのはごく僅かな者しかしらないから、黙っててくれ。ウォルガフみたいにおっちゃんと呼んでくれではいい」
いやいや、そんな事言えるのはウォルガフだけですからっ!!
「積もる話は色々あるんだが、まずはお前たちから詳しい事の次第を聞こうか……」
ラルダの話に誰が説明するのだろうか?
と当然のように他人事のように考えていたら、ウォルガフとロジェ、グゥは俺にアイコンタクトを送ってくるのだ。
まぁ、結局はそうなるのか……
ウォルガフは、説明下手だし。
ロジェだってあまり詳しく知らない。
グゥに至っては記憶喪失だったからな。
俺は、ラルダにヒューマンな事は伏せて掻い摘んで報告する事にした。
ーーーーーー
全てを話し終えると、ラルダは頭を抱えていた。
何か余計な事、話しただろうか?
「まさか、ライオネットワイバーンがイブルカルフ様だとは思っても見なかったな……よくお前たち無事に生き延びる事が出来たな……」
「それはでちゅね……リュウイたんが、むごっ!?」
ウォルガフが俺は実はヒューマンであるって言う事を思いっきりバラしそうで、思わず口を押さえ込んで黙らせてしまった。
「どうした?」
ラルダの不思議そうに見つめる顔に俺は、慌ててなんでもない事を告げたのである。
結構不振に思われたかもしれない。
「それでグゥは、記憶戻る事が出来たんだな」
「えぇ、ウォルガフちゃんたちのおかげで」
「そうか。それでこれからどうするつもりだ?」
俺と同じ事を聞くラルダだったが、グゥは再度説明したのである。
ガルシアたちがいなくなった以上、それに囚われるつもりはない。
今後は、ウォルガフと共にいると言う事を話ししたのであった。
それに関してラルダは、何も言わなかった。
ただ、わかった。とだけ言っていた。
そして、その話に紛れ込むかのようにロジェも俺たちと共にいる事をラルダに告げていたのであった。
ラルダは苦笑いしながら頷いていた。
「確かウォルガフがリーダーだったな」
「そうでちゅ!! ぼくがリーダァでちゅよ!!」
「帰りに忘れずにパーティ加入設定しておけよ」
「うちゅ!!」
「まぁ話す事もこれくらいかな。で? これからどうするつもりだ?」
ウォルガフにではなく、ラルダは俺の方に顔を向けながらそう聞いてきたのである。
「パーティのリーダーはウォルガフだが、今まではリュウイお前が今後の方針とか考えていたんだろ?」
「はい、確かに……」
「ブーブー」
ウォルガフは、どうやら不満らしい。
今まで俺とウォルガフの目標は、早くLevel.50になって魔王と対面する。
それだけだった。
ウォルガフは俺に歩幅を合わせてくれていた。
身の丈より高難易度なSランク依頼も、ウォルガフがいたおかけだ。
だから、今まで俺はあーしたい。こうしたい。
と言って決めてきた。
でも……
ウォルガフやロジェ、それにグゥ。
皆がやりたい事があるなら俺はそれを優先させたい。
Level以外……
もっと別な物が大事な事を学ぶ事が出来そうな気がするからだ。
「大きな目的は特にありませんけど、Level上げをしながら依頼をこなそうかと思っています。ですが、ウォルガフやロジェ、グゥさんがやりたい事があるのならそれもやりたいと思っています」
「ふむ。と言うリュウイの意見だが、お前たちはどうなんだ?」
俺の出した答えにラルダは変わりに聞いてくれた。
これが俺にはないリーダーシップと言う奴なのだろうか?
話しを振られたウォルガフは元気よく手を上げながら話し始める。
「うんかちょねぇ〜ぼくはねぇ〜もっと強くなりたいでちゅ!!」
今でも十分強いのに更なる強さを求めるのかっ!!
「俺も特に今はやりたい事はないな。強いて言うなら、ウォルガフの強さに少しでも追いつきたいかな……」
ロジェお前もかっ!! 俺がドンドン追いつかなくなるではないかっ!?
「私は、更なる回復を極めたいわね」
グゥさんの回復は役に立ちしねっ!!
「それに……いつまたイブルカル様が来るかわからないからね」
その言葉に、シーンと静まり返るのであった。
グゥの言う通りだ。
イブルカルは、必ずまた俺たちの目の前に現れる。
それまでに、俺だけでも最低限追い払えるぐらいの力は身につけておかなければな……
「どうやら、目的は同じようだな」
言われて見ればその通りだな。
ラルダは椅子から立ち上がると、書類の山から一枚の紙を取り出しそれを俺たちに話ししてくるのであった。
それは一つの依頼であった。
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目的地:カルヴァ地域
依頼達成条件:現地で確認
報酬:金貨十枚
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「これは?」
「まぁ行けばわかる。今後のお前たちの成長になるから受けてはくれないか?」
「はぁ?」
はっきり言って突拍子もなく返答に困ってしまった。
ウォルガフとロジェは小声で、ボソボソと話ししている。
そして、ラルダに確認するかのようにロジェは話しかけていくのであった。
「なぁ、ここってもしかして……あれか?」
「そうだ」
ラルダの言葉にちびっ子二人は、にへらぁ〜と笑だす。
そして、直立不動にビシッと敬礼しながら二人は叫ぶ。
「行かせて頂きます!!」
「行くでちゅ〜!!」
可愛い仕草にグゥはメロメロとなり、当然行くと言い出す。
相変わらず、ウォルガフには惚の字なグゥであった。
「リュウイたん、いこぉ〜」
「行こうって報酬が、一人たったの金貨十枚だぞ?」
四人で金貨40枚。
滞在費、そしてウォルガフやロジェの食費代。
これだけで赤字状態だ。
行く理由が俺には見つからない。
それならば、もっと報酬の多い依頼がある筈だ。
「リュウイさん。報酬よりも、カルヴァ地域にはもっといい物があるぞ」
「そうなのか?」
「そうでちゅ! だから行こぉ〜」
「私はウォルガフちゃんが行く所に赴くわ」
「……」
グゥの返答に引きつつも、ウォルガフやロジェが行きたい。と言うのだ。
俺だけ行かないと我を張る訳にも行かず、結局は行く事にしたのであった。
その後は、受付に戻り正式にロジェとグゥをパーティに加入してもらい、次に依頼の手続きをしてもらうのであった。
「お姉たん、この依頼受けまちゅ!」
「はいはい♪」
ウォルガフから依頼書を受け取ると、お姉さんは困惑した顔を見せたのである。
「何かありまして?」
やはり何か、あるのだろうかと? と思い、お姉さんに思わず聞いてしまった。
「いえ、依頼自体は何も問題はないわ。あなたたちならむしろ、簡単過ぎる依頼よ。ただ……」
「……ただ? なんですか?」
「行くのに、一ヶ月半近くかかるわよ」
「へっ!?」
そんなに遠いのか!?
往復で三ヶ月。
更に滞在期間を考えると四ヶ月ぐらいかかるって事か。
また、騎竜を借りて短縮させるとして……
それでもどれだけかかるのかな。
などと考えていると、ウォルガフは俺とお姉さんの話しの間に入ってくる。
「うんちょね。それは、大丈夫でちゅ!」
「あら? そうなの?」
「うちゅ!」
「ロジェ、どう言う事だ?」
「まぁまぁ、ウォルガフを信じて。大丈夫だから」
思わず、ロジェに聞いてみたが曖昧な返答しか返っては来なかった。
「リュウイさんが用意するのは、俺たちの経験値アップの装備だよ」
「???」
何故……!?
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ロジェの話し曰く、今装備している防具の防御力が落ちてもいいから経験値アップの装備を用意してほしいとの事だった。
と言うわけで、冒険者ギルドを後にした俺たちは防具屋へと赴いていた。
「俺は、よくわからないから交渉はロジェに任せてもいいか?」
「あぁわかった」
「ぼくも! ぼくもぉぉ!!」
ウォルガフは、難しい話し苦手だろうに……
ロジェはカウンター越しにある、フォス族専用の足踏み台に立ち防具屋のおっちゃんと話しを進めてもらう。
ウォルガフには交渉が上手く行くようある場所で見守ってもらう事にした。
足踏み台に立つロジェ。
その後ろ姿は、微妙に身体全体が横に揺れていた。
無意識なんだけど愛おしい。と思った瞬間だった。
グゥがなぜウォルガフを好きなのか。
なんとなくわかる気がする。
ミュッケも性格は難だったけどあれはあれで可愛かった。
フォス族は全般的に可愛い種族だな。
何故かガルヴァルデ族はフォス族を見下し、毛嫌いしている。
まぁ、それは種族間の問題だな。
「リュウイさん」
おっちゃんとの交渉が終わったのだろうか?
ロジェは俺を手招きしながら呼んできたのである。
「どうした?」
「うんとね……」
どうやら、交渉は上手く行ったらしい。
カウンターの上にウォルガフを座らせ、難しい話だけどにへらぁと笑っていてほしい。と言っておいたのが効果あったのかもしれない。
ロジェは俺に、四人分の装備代と付加する経験値アップXの宝石代。
合計で金貨一枚必要と伝えてきてのである。
何故そんなに高いのか聞いてみると、俺を覗いて最低でもLevel.100ぐらいの防具が必要。
更に普通は付加出来るのは2個なのだが、稀に3個付加出来る防具をロジェは欲したのだ。
その場所に経験値アップXの宝石を3個セットする。
と言うのが、ロジェがおっちゃんに話しした内容だった。
おっちゃんは、ロジェが交渉してきた防具を提示。
それにロジェは納得したのである。
俺の防具はと言えば……
Levelが低すぎて3個付加する防具自体がないらしい。
だから、無料で今装備している黒のローブに経験値アップXの宝石を、二個セットしてもらうよう交渉。
半分以上脅していたけど、おっちゃんは金貨一枚支払うのならそれでいいと告げてきたらしい。
支払い段階になりロジェは、俺に交渉を託したいようだ。
「兄ちゃんに俺が、フォス族好きって言ったか?」
おっちゃんの値段の話しではなく、第一声はこれだった。
「あははは、聞いていません」
「……ったくフォス族二人に囲まれて交渉されたら、俺は強気に出られないじゃないか!」
おっちゃんはフォス族が大好き。と……また、来るだろうしこの手は意外と使えそうだな。
「まぁ、いい金貨一枚でロジェが言っていた物、揃えてやる。だが、程々にしてくれよ」
「……わかりました」
トホホホホッ……
おっちゃんのそんな顔を見たら、この手はもう使えそうにない事を悟らされた。
防具屋自体が潰れたら困るし、意外に使えると思ったが程々にしておこう。
金貨一枚支払い、防具を受け取った俺たちはマイホームに戻る事にした。
カルヴァ地域は、ムーンフェイズから行けば遠い。
しかし、マイホームから行った方が、かなり近いとロジェは言っていた。




