【08】
マイホームの中に入ってきたフォス族の二人が、大はしゃぎだったのは言うまでもなかった。
予想通り二階から飛び降りたり、広い大広間で走り回り、挙げ句の果てには庭にも飛び出し元気良く動き回っていた。
食後の運動には十分すぎる運動量だと思う。
グゥは外に飛び出した二人を見ている。そう言って外に出て行った。
だが、きっと食べ過ぎたのだろう。
もの凄く気持ち悪そうだった。
「ふぅ〜こんなものかな……」
アイテムボックスの中にある家具を取り出し、最低限生活に困らない物だけを出し置いていく。
二階の各部屋には、ベットと収納棚を設置。
不揃いだが、今はこれで勘弁してもらおう。
大広間には、これもアイテムボックスにある物を適当に出してみた。
ソファーに椅子、そしてテーブル。
見栄えはかなり悪いが、これもまた我慢してもらおう。
ふむ……
倉庫にある物の方が、かなりいい物が揃っているんだよな……
どうにかして、使えるようにならないものかな……
さてとお次は、食事の準備だな。
食事と言ってもウォルガフたちが、満足する程の材料は殆ど残っていない。
お菓子の家を一杯食べたのだから満足して今日はいらない。
……なんて言ってくれる訳がないよなぁ
庭で走り回っているウォルガフを呼び止める事にした。
「うちゅ? リュウイたん、どうちぃたんでちゅか?」
「いや、今日の晩御飯の事なんだけど……」
「ご馳走かい?」
ロジェのさりげない言葉にウォルガフは、期待の眼差しでキラキラさせて俺を見つめてきた。
「ご馳走もなにも、そもそも材料すらない状態だよ」
「ありゃありゃ」
「じゃ、俺とウォルガフで取って来るよ」
「へぇっ?」
「それは、名案でちゅねっ!!」
最後まで俺の言葉を聞かずに、瞬く間に二人は『期待していてねぇ』と言って庭から飛び出し何処かへ行ってしまうのである。
何を取ってくるのか全然想像つかないが、取り敢えず二人が帰ってくるのを待つ事にした。
「ん〜何しようかな……あっ忘れてた!!」
思い出したかのように、ヒュドラから受け取った卵をアイテムボックスから取り出し、孵化器に設置。
孵化器は孵化する時間を刻んでくれていた。
見る限りでは、約一ヶ月ぐらいで孵化するようだった。
思っていたより長いな。
ゲーム時代では、簡単だった。
孵化器にセットし後は放置すれば良いのだ。
だが、やはり今は違う。
卵がセットされた孵化器は、何故かアイテムボックスに戻す事は不可能だった。
大きくて邪魔臭く、ウォルガフたちが暴れて割れてしまってもなんなので、『触れるな危険』と書いて庭の片隅に置いておく事にした。
後、庭の周りはとにかくなにもない。
塀もなければ木もない。
芝生が生えているぐらいだった。
一ヶ月で出来ると言うのに俺がすぐに来なかったから、ルシュガが庭の生地をしてくれていたようだ。
更に来るのが遅かったら、もっと手入れの行き通った庭になっていたのかもな。
「取り敢えず、花見ぐらいはしたいよな……」
ブツブツと言いながら、アイテムボックスの中から桜の苗木をあるだけ植えていく。
苗木なので成長するのには、時間はかかりそうだ。
「後は、塀ぐらい欲しいよな」
再びアイテムボックスを開き、塀になりそうな物を探してみるのだが流石になかった……
「まぁ材料がないし塀は、ルシュガさんに頼むかまた今度にするか」
ウォルガフたちはまだ、戻って来ないようだ。
グゥもいつの間にか、いない。
どこに行ったんだ? あの人は……?
まぁいい、いなのならやりたい事を先にやっておこう。
ここはプレイヤーがマイホームを建てる為の専用区域なのだが、ゲーム時代には利便性を考慮されていて倉庫や金庫、プレイヤー同志のメール送信、アイテム取引などと言った専用のNPCが一箇所に集まっていた場所がある。
そこに行けば、倉庫使えるようなるかな? と思ったのだが、考え自体が甘かった……
長い年月誰もおらず、自然と風化しここも廃墟と化し何もない。
そう、土しかなかった。
やはり倉庫は使えないか。
しかし、倉庫が使えないとなると、色々と困るんだよなぁ〜
保管してある物色々使えそうだし……
何とかして使えるようにならないかな。
しばらくその場で考え込んでしまった。
うーん、うーん。
と悩んでいると、ある事可能性の一つに辿り着く事が出来た。
あっ!!
もしかしたらっ……
急いでマイホームに戻り二階へと駆け抜けて行く。
階段を登り最初の部屋に入ろうとすると、何故かドアが開けっ放し状態であった。
ベットでグゥが気持ち良く寝ていたのだ。
「……」
いないと思ったらここにいたのか……
起こしたら悪いので、グゥが寝ている部屋には入らず隣の部屋に入る事にした。
頼むっ期待通りであってくれっ!!
祈るかのように収納棚に手を掛け勢い良く引いてみる。
……
収納棚の中には何も入っていない。空っぽのただの棚であった。
違うっ!!
確かに収納棚は空っぽだ。
たが、まだ諦めるのは早い。
システムメニューを開きながら、目の前にある収納棚を【調べる】と選択する。
すると……
今まで、倉庫に預けていたアイテムが数百種類ズラリと表示されてきたのである。
よしゃぁぁぁぁっ!! 予想通りっ!!
ゲーム時代では、倉庫とマイホームにある収納棚はシステム状一つにに繋がっている。
だから、プレイヤーは一回一回倉庫を取り扱っているNPCの所まで行かなくても済む、便利システムなのである。
よしよし!! システムから魔法が発動出来たのを思い出して、もしかしたらと思っていたのだが、本当に繋がっていて良かった。
これで、結構いい装備が出来るぞ。
まぁもっとも俺はLevelが低いから装備出来ない物が殆どだ。
でも、ウォルガフやロジェが装備出来る物もあるはずだ。
「さてと、次はどうするかな……」
倉庫が利用出来ようになった。
そうなるといよいよ職人の再設定が必要になってきた。
職人とは、職業とは違い主に生産系の事を職人と呼び、プレイヤーは一つだけ職人になる事が出来る。
そして、職人には大きくわけて三種類存在している。
戦闘中に使用すると能力が向上する料理人。
武器や防具などを作成する鍛治士。
道具や宝石、アイテムなど作成する加工師。
その中で三種類の中から更に組分けされていて、十種類ぐらい職人は存在している。
俺もゲーム時代は鍛治士の武器作成職人として、生計を立てていた。
「また鍛治士を設定するのもいいけど、どうするかな……」
攻撃力の高い武器や防御力の多い防具は確かに重要だ。
だが、今この時代宝石の付加能力が大きく影響しているような気がする。
弱い武器でも希少価値は高い宝石のXを付加すれば、それは最強装備に近いものになるのではないだろうか?
まぁ、Xを使いこなせる程の能力が必要なのは確かだけど。
それに、武器や防具はムーンフェイズの街で見た限り結構いい物が揃っていた。
値段は高かったけどな。
更にオーダーメイドと言う物も存在しているし、鍛治士はなる必要はないだろう。
次に料理人……
料理人になったらウォルガフは毎日のように喜ぶだろう。
俺が料理人? 柄じゃないよ。
料理人は却下だな。
となれば、やはり加工師だろうか。
メルクリの話曰く、鉱石から宝石に加工する事も出来るらしいからな。
もしかしら、倉庫に眠っている鉱石のうち何個かXになる可能性だってある。
よし、職人は加工師にしよう。
決めたら行動は早かった。
早速、システムメニューを開きながら職人の項目を選択。
現在職人は未設定だから、当然『ーーーー』感じになっている。
そこに加工師を選び、設定を選択する。
ブブブブーーー!!
脳内にエラー音と共に『職人は選択出来ません。よくある質問、強くてニューゲームについてを参照して下さい』と出てきたのであった。
「……」
なんなんだよ……
ちょっとムッとなりながらも、よくある質問『強くてニューゲームについて』を開いて行く。
今までも見た事のある部分は、指でスライドさせながら進めていく。
[職人]
これだな……
『職人は、ゲーム時代とは異なり全ての職人を使用する事が出来ます』
おっ、全ての職人出来るのか。
すげぇな。
やっと強くてニューゲームっぽい感じがしてきたぞ。
んっ? まだ続きがありそうだ。
『ですが、職人Level経験値は高めに設定されておりますので、経験値が多く取得出来る道具を用意する事をお勧めします』
「……」
前言撤回、なんじゃそりゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!
「はぁぁ……」
落ち込んでいてもしゃぁないよな。
全ての職人が使えるようだから専用の職人部屋を用意しておいた方がいいかもな。
今のマイホームじゃぁ場所がないし、ルシュガさんに建ててもらうか。
後、ついでに卵が孵化した時の為に魔物部屋も建ててもらわないとな。
Level上げに魔法Level、更に職人Levelやりたい事が沢山増えてきたぞ。
一通り今後の方針を決めた後、アイテムボックスの中から料理人に必要なのは道具、フライパンとか包丁などを取り出し、一階にある台所へと向かったのであった。
「たっだいまぁぁぁでちゅ〜〜!!」
「ただいまぁ〜」
庭の方から元気な声が聞こえてきた。
どうやら、タイミングよくウォルガフとロジェが帰って来たようだな。
「おぅっおかえり」
ドアを開けながら二人を出迎えたのだが……
お前たち随分とでかい物を持って帰って来たな……
「リュウイたん、はいこれっ!!」
ウォルガフが渡して来たのは、最高級品のブラックベアの肉を大量にお土産に持ち帰って来たのである。
「一体何匹倒して来たんだ?」
「うんちょねぇ〜沢山でちゅ〜〜」
「うんうん沢山〜」
「そかそか、よく頑張ったな」
ウォルガフとロジェの頭を撫で回しながら、二人を褒めるとにへらぁぁと嬉しそうに笑っていた。
しかし、これだけ大量にあるとフライパンでは焼ききれないよな。
外で早速バーベキューか。
肉しかないけど……
あぁ、やはり登録地点がマイホームだけと言うのは、結構辛いな。
今後ここを中心にして活動するのはいいとして。
やはり、どこか大きな街……ムーンフェイズあたりで必要な物を買えるようにしないと。
まさかここで、畑を植えて自給自足の農業する訳にもいかないしな。
これも今後の課題の一つだな。
「どうかちぃたんでちゅか?」
「あっ悪い」
考えごとをしていたらウォルガフに心配そうな顔をさせてしまった。
まぁロジェやグゥが今後どうするかはわからないが、ウォルガフはずっと一緒にいるわけだし。
後で相談するか。
ん? 普通にずっといると思ったけど、本当にウォルガフは俺の側にいてくれるんだよな??
「リュウイたん?」
「あぁ、ごめんごめん。今からバーベキューセット用意するから、ロジェと一緒に皿を割らないように持って来てくれるか?」
「はーいでちゅ〜!!」
「任せておけっ!!」
ウォルガフがマイホームに入って行く後ろ姿を見ながら、コツンと自分の頭を叩き気持ちを切り替える。
……ったくなに変な事を考えているんだ俺は。
ウォルガフは、ずっと俺と一緒にいる。
不安になる事は何もない。
「よしっやるか!!」
先ほど収納棚を整理した時に、アイテムボックスに移動させたバーベキューセットを早速取り出し、庭に広げていく。
バーベキューセットはゲーム時代だと、ただの家具アイテムオブジェのみしか意味をなさなかったのだが、現実世界となった今は違う。
俺たち四人が食べれるぐらい大きな、バーベキューグリルに焼き網。
既に蒔きには火がついており、いつでも焼ける状態になっている。
早速四人分の椅子を取り出し並べる。
そして、二人が採って来たブラックベアの肉を豪快に焼いて行く。
ジュワワワワワッ!!
と音と共に煙、そして美味しそうな匂いが辺りを立ち込めて来た。
「いい匂いでちゅねぇ〜」
「美味しそうだ」
匂いに釣られて、皿を四枚持って食いしん坊二人がやって来たぞ。
「おいちぃご飯はまぁだぁかぁなぁ〜」
「まぁだぁかなぁ」
「ぼきゅは〜もう腹ペコでちゅよぉ〜」
「でちゅょぉ〜」
久しぶりにこの歌聞いたな。
それだけ、緊迫した状況から抜け出したって事なんだろうな。
焼きあがったブラックベアの肉を、待ちくたびれている二人の皿に乗せると物凄い勢いで食べ尽くそうとしているではないか。
流石に、味わって食べなさいと言ってしまった。
そして、もう一人……
俺は二階で寝ているグゥの存在を忘れていた。
何故、声を掛けてくれなかったの?
言わんばかりに、いつの間にかウォルガフの隣に座りヌンッと俺の目の前に皿を突き出していたのであった。
◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎
ブラックベアでのバーベキューも終わり腹いっぱいになった頃、俺たちはマイホームの中へと入り大広間に集まっていた。
ウォルガフは既にお腹一杯でお眠むモードだ。
眠たい目をこすりながら、一生懸命起きていた。
「ウォルガフ眠いなら、二階にベッドを用意して置いたからもう寝てもいいんだぞ?」
「いゃでちゅ……」
「ウォルガフは、リュウイさんとお風呂に入りたいだよ」
「うちゅうちゅ」
それまでは、我慢して起きているらしい。
ってか俺は、疲れるから一緒には入りたくないぞ?!
「ウォルガフちゃん、私と入りましょ?」
「……」
グゥの言葉にウォルガフは一瞬固まり目を逸らした。
そして、耳まで赤くしながら……
「グゥたんは女の人でちゅから、一緒に入れまちぇん」
「あら、残念だわ」
一応ウォルガフにも男の子として恥ずかしさがあったらしい。
お子ちゃまな癖に……
「さてと、真面目な話なんだけど……」
ロジェとグゥの方を向きながら話しを進める事にした。
二人も何を話しするのか察しているのか、僅かばかり目が真剣になっていた。
「ぶっちゃけロジェとグゥさんは、これからどうするつもりなの?」
「……」
二人共黙り込んでしまった。
触れてはならない話題だったのだろうか?
しかし、いつまでも二人はここにはいないだろうし。
二人には二人のやりたい事がある、無理して引き止める訳には……
「俺は、リュウイさんとウォルガフが嫌でないのなら、もう少し一緒にいたいと思っているよ」
「えっ?!」
以外な答えが飛び出して来た。
ロジェの事だから明日には、出て行くと言い出すと思っていた。
「ミクロスさんの護衛はいいの?」
そう、忘れちゃいけない。
ロジェは、元々ミクロスの護衛でムーンフェイズに来た。
そして、俺たちと出会い一度は別れた。
まぁすぐに再会して今に至るのだけど……
「ミクロスのじぃじぃなんて放っておけばいいでゅ」
いやいや、普通そういう訳にはいかないだろ?
「うん、俺もそう思う」
えっ!! いいのかよっ!?
「ロジェがいなくなったら、護衛困るんじゃないの?」
「いや、他にも護衛する人は沢山いるから、俺がいなくても平気だよ。だから、暫く行動を共にするよ。よろしくね、リュウイさん」
よろしくって……
それは、食事の事か?!
「あっあぁ……わかった。ロジェがいいなら俺も断る理由はないしな」
よし!! 食費代、徴収する事にしよう!!
「ロジェの件はこれでいいとして。グゥさんは、これからどうするつもりですか?」
「そうねぇ〜ガルシアたちがいなくなってしまった以上……扱いはフリーの僧侶。という事になってしまいましたわね。今から他の人たちを探すのも時間がかかりますし……」
グゥはウォルガフの顔ばかりチラチラと見て、俺に察しろと言わんばかりにの態度をとっていた。
要するに、ウォルガフと一緒にいたのね。
グゥとロジェの戦力は確かに大きい、ここで無下にするのも悪いし受け入れるか。
「わかりました。ではこれからもよろしくお願いします」
「はい」
「任せておけ」
「仲間が一杯でちゅ〜〜」
こうして、俺は新たにロジェとグゥと言う仲間に正式に巡り合う事が出来たのであった。




