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魔王に再び挑みたい!  作者: kiruhi
目指せ、Level.50![ 下 ]
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【07】

 いつの間にか、シャイターン・ポイントが溜りきっていたようだ。

 最近、ウォルガフが大喜びさせた覚えはないのだが……

 まぁ少しずつ溜まっていたのだろう。


 これでLevel.40まで成長する事が出来る。

 あと一回シャイターン・ポイントが溜まれば……

 目標だったLevel.50になる。


 長い道のりだったが、あと少しだな。



 ヒュドラは、もう戦う意思はないのだろう。

 先程とは目の色が明らかに違う。

 赤から青へと瞳の色を変化させていた。


 ウォルガフとロジェは、動かないヒュドラに心配そうに駆けつけ俺を睨みつけていた。

「リュウイさん、ちょっとやりすぎだよ……」

「ヒュドラたん……大丈夫でちゅか?」

「……」


 おいっ!! 反撃しろと言っておきながら……


 再びヒュドラとウォルガフ、ロジェは語り始める。

「グルルルルルル………」

「……ふみゅふみゅ」

「うんうん」

 その光景は、やはり俺には理解出来なかった事は言うまでもない。


 俺も動かないヒュドラの元へと近づいていく。

 もう攻撃はしてこないしな。


「それで……ヒュドラはなんて言っているんだい?」

「あっリュウイたん!?」

 俺の声にウォルガフは、漸く気づいてくれたようだ。

「うんちょねぇ〜」

「俺が代弁するよ……」

 ウォルガフではちゅが多くて解りずらいからな。

「えっと……『先程の攻撃見事であった。ヒューマンに託すのは癪だが我にはもう残された時間はない。だから……』うんうん」

「……だから?」

両手(りょうちぇ)を前に出ちぇだって」

「?」

 ウォルガフに言われるがままヒュドラの前に両手を差し出すと、ヒュドラから発せられる光が両手の中に集まり始めるのであった。


 眩い光が消えると両手には、ずっしりと重い一つの卵が手元に残されたのである。

「これは卵か?」

「みたいでちゅ」

「『竜族の王をお主に託す』だってさ」

 ロジェの言葉と共にヒュドラは真剣な眼差しで俺を見つめた後、光の粒となって消えて行ったのである。


 竜族の王の卵を俺に残して……




 ーーーーーー



 託された卵は、なんも変哲もない普通の卵にしか見えなかった。

 卵が孵った瞬間『積年の恨み、今ここで晴らす!!』とか言って、俺を食い殺そうとするんじゃないのか?

 そんな不安で一杯だった。


 ウォルガフやロジェは卵を見ながら『いつ孵るのかなぁ〜』と言い呑気に今から楽しみにしているようだ。


「取り敢えず、卵は一度しまうぞ」

「なんででちゅか?」

「持ち運び出来ないし、割れたら大変だろ?」

 アイテムボックスに授かった卵をしまい込み、ついでに七色の雫を取り出すのであった。


 七色の雫を持ち、頂上の中央に立つ。

「ここら辺かな……」

「ねぇ、何するつもりなの?」

 危険が、なくなった事を知ったグゥは途端に元気だ。

 あれだけウォルガフの影に隠れていたのにな……


「聖王樹の願いを叶えてやらないとな」

「??」


 七色の雫をポタリと落として行く……


 ……

 ………


 しかし、何も起きなかった。


「何も起きないわよ?」

「だな……」


 あれ? おかしいな。

 七色の雫で間違いないんだけど。

 それとも時期が、遅すぎたのかな?


「リュウイたーーーーん!!」

 中央で俺とグゥが聖王樹の為に七色の雫を使用している間、ウォルガフとロジェは広い枯れ木の聖王樹の周りで探検していたのである。

 その探検隊が、何か見つけたようだ。


「どうした、ウォルガフ?」

「うんちょ〜〜」

「これなんだい?」

 ウォルガフとロジェの指差す方向には、大形の剣の刃のような葉っぱが五枚だけ枯れずに生えていたのである。


「これは……」


 聖王樹の葉は、聖王の葉と呼ばれている。

 これを加工すると、戦闘不能、HP、MP、SP等と言った物全て瞬く間に回復する事が出来る聖王の息吹になる。

 まぁ簡単に言えば、エリクサーとかエリクシル剤だな。


 戦闘不能について、俺は疑問に思った事がある。

 ゲームの時代の時は、普通にアイテムを使えばその場で生き返る事が出来た。

 だが、それは今も可能なのだろうか?

 試すわけにもいかないし、戦闘不能については謎のままだな。


 話を戻そう。

 聖王の葉は、加工しなくても効果は十分に高い。

 戦闘不能は流石に出来ないが、HP、MP、SPは大幅に回復する事が出来る。


 一人一枚ずつ持つことが出きるし、ありがたく貰って行こう。


「リュウイたんこれは、なんでちゅうか?」


 なんでちゅかって……

 ウォルガフは、ゲームやっていたのに本当に何も知らないんだな。

 Level.35って言っていたから、知らないのはしょうがないか。


「これは聖王の葉と言ってーーー」

 ウォルガフにもわかるように、教えたのだが……

 理解するのには、三回ぐらい説明が必要だった。


 聖王の葉を一枚ずつ三人に渡し、受けとった三人は大事そうに懐に仕舞い込んでいた。


「これを使う日がこないといいわね……」


 確かにグゥの言う通りだな。



「それで、なぜここに来たのか。そろそろ教えてくれないかな? 俺は、リュウイさんに『ここから離れる為、聖王樹の頂上を目指す』とだけしか聞いていないんだけど……?」

「あぁ、そうだったな。悪い、説明するより体験してもらった方が早いと思ったんだ」

「何が?」

「シュトレンの手から、一気に逃げ出す方法だよ」

「だから、どうやるのさっ。ここは何もないんだよっ!!」


 少しイライラ気味になっているロジェを宥めつつ、アイテムボックスの中から帰還の葉を取り出す。


 どうやら、ベーレの言っていた通りここは転送可能なようだな。

 システムメニューが『登録してある場所に転送しますか? ▷はい・いいえ』と表示されているな。


「あっわかったでちゅ!!」

 帰還の葉を見て漸く理解出来たのか、ウォルガフは俺の頭の上に乗り肩車状態。

「ロジェたんとグゥたんも、リュウイたんにしがみつかないと置いていかれまちゅよ?」

 ウォルガフの言葉に、ロジェは慌てて俺の背中にしがみついてくる。


 しがみつかなくてもパーティを組んでいるから大丈夫なのにな……


 グゥは、なにやら恥ずかしいのか? モジモジとしていた。

 普段は周りの事なんかお構いなしに、ウォルガフに思いっきり抱きついているのにな。


「グゥさん、大丈夫ですよ」

 そっと差し出すと片手にグゥは、恐る恐る触れるのであった。


 これで準備万端だ。


「帰還!」

 そう唱えると葉の周りに光が集まりだし、景色が変わり始めて行く……

 うっすらとシュトレンの姿をみながら……


 聖王樹の頂上から、別な場所へと移動を果たしたのであった。



 うわっあっぶねぇ〜ギリギリセーフだった!!



 ◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎



 跡形もなく地面しか残されていなかったマイホームだったが、今は違う。

 俺は数ヶ月前、ルシュガに家を建ててもらうよう依頼した。

 そして、今久しぶりに戻ってきたのだ。

 ルシュガの手に寄って俺のマイホームは、画期的な変貌を遂げていた。


「おぉぉ、これは!!」

 目を丸くしているロジェ。

「……なにこれ?」

 冷ややかな目で俺を見つめるグゥ。

「……」

 そして、感動のあまりに興奮し言葉を失っているウォルガフ。


 目の前には、見上げる程高い白いケーキ。

 ドアは茶色っぽい所から予想するに、甘いカカオ系かな。

 煙突には、イチゴのような物が飾られていた。

 そう俺のマイホームは、ウォルガフの願望通りお菓子の家へと変わっていたのである。


「うおぉぉぉぉぉぉぉっでちゅゅゅゅゅゅゅゅ!!」

 ウォルガフは、大興奮。

 小さな両手をブンブンと振り回し、身体全体で喜びを表し瞬く間にウォルガフは、お菓子の屋根に登り食べ始めたのである。

「あっズルいっ!!」

 ロジェもウォルガフの行動に釣られ、白い壁にダイブして行ったのである。


 そんな光景を、俺とグゥは呆れながらも見守る事しか出来なかった。


「ねぇ……なにこれ?」

 グゥの俺を見る視線が痛い……

「なにって、ウォルガフの要望のお菓子の家だよ」

「……」


 女の人は甘い物が好きと良く聞くが、グゥは違うのかな?


「ふぅーん……」

 冷たい目で見ているから、興味ないようだな。


「グゥさん、俺は人を探してきますのでウォルガフとロジェが、食べ過ぎないように見ていて下さい」

「……わかったわ」


 グゥの元を離れた俺は、ルシュガを探し出す事にしたのである。




 ルシュガを見つけるのは実に簡単だった。

「おっリュウイか? 久しいな」

「お久しぶりです。ルシュガさん」

「どうやら、大喜びのようだな」

「えぇ……」


 お菓子の家のすぐ隣には、俺なりに考えた図面通りの家が建っていたのだ。


 そもそもここはプレイヤーがマイホームを建てる為に出来た、専用の土地区域。

 だから、俺の土地以外にもここには沢山の土地がある。

 勿論お金を払って新たに購入しなくてはならないが、ヒューマンが俺以外誰もいないので買う者はいない。

 四個程新たに土地を購入し、今現在俺は五個の土地を所有している事になる。

 五個も土地を所有するなんて事、ゲーム時代ならとても出来なかった事だ。

 お金が幾らあっても足りないやり方なのだが、今はお金の価値が変わっている。

 そのお陰とも言える。


 だから、俺はウォルガフの願いを叶える事が出来た。

 まぁ普通に考えて、甘い匂いのするお菓子の家で寝泊まりする生活はしたくなかったので、俺はルシュガに頼んだんだ。


 一つ目は、ウォルガフが食べてしまうお菓子の家。

 そして、もう一つは俺のマイホーム。

 ルシュガは二つ返事で建ててくれた。

 後の三つはまだ何にするか決めていないが、そのうち何か建てようとは思っている。


 しかし、懐は僅かばかり寂しくなってきた。

 まだまだ余裕があるとは言え、今後何にお金を使っていくかわからない。

 ないよりはあった方がいいだろう。

 今後はLevel上げもしつつ、お金も貯めないとな。


「早速兄ちゃんが頼んだ家の中、入ってみるか?」

「はい」


 ルシュガに案内されるがまま、家の中に入る事にしたのである。



 まず、外見は木造で出来た家でニ階建てで、バルコニーもちゃんとついている。

 一見どこにでもあるホテルみたいな家だった。

 勿論、広々とした庭付きだ。

 ここで焼肉とか花見とか出来そうだった。


 しかし、花見をするにはまず木を植えないとな。

 ルシュガさんに後でお願いしておこう。


「うぉっ!!」

 中に入ると、まず驚いたのは天井の広さだった。

 二階建てなのだが、吹き抜け部分が出来上がっていて天窓付きで見上げる程高かった。


 うん、ウォルガフとロジェが二階から飛び降りて遊びそうだな。


 一階は、主にワンルームだ。

 大広間と台所がくっついている感じだ。

 台所の奥には、風呂場などがあり生活に必要な物が用意されていた。


「まずは台所だな、兄ちゃんが作るのか?」

「ん〜そうなるでしょうね」


 作れるかは謎だけどな……


 台所は、大きなキッチンが用意されていてお腹が空きすぎたウォルガフが、つまみ食いに来てしまってもわからないぐらい大きかった。

 他にも食器棚などもあり色々収納出来そうであった。

 はっきり言って、宿屋汐音(しおね)よりも立派な台所だ。


「ルシュガさん……」

「なんだ?」

「俺に料理人になれと……?」


 ルシュガは俺の言葉に笑って誤魔化しながら、次の場所に案内してくれたのであった。


 台所のすぐ隣には、ヒノキで出来たお風呂場がある。

 ウォルガフ、ロジェ、それに俺が一緒に入っても十分なぐらい大きなお風呂だ。


 ウォルガフたちとは絶対入らないぞっ!!


 大広間は、家具などは何も用意されていなかった。

 ルシュガ曰く、俺がいい物持っているから用意しなかった。との事だ。


 倉庫が使えるようになったら沢山あるけどさ……


 大広間からは、吹き抜けの天井。

 更に庭が見える大きな窓が備え付けられていた。


「次は二階だな」

 二階に上がる階段は、玄関のすぐ横にある。


 二階は、寝室が主で部屋が五個つ程用意されていた。

 一人部屋ぐらいの大きさで、寝る分には十分な過ぎる大きさだった。


「流石にベットとかは、職人を紹介するからそこで買ってくれっ」

「わかった」


 二階から眺める外は絶景だった。

 澄み切った空……

 心地よい風……


 ここにベットがあったら、そのまま昼寝してしまいそうだな。


 視界にあるお菓子の家は、もう半分以上減っていたがそこは敢えて気にしない事にした。


「……と、まぁこんな感じだな」

 一通り案内してもらった俺は、大広間でルシュガと話しをしていた。

「はい、ありがとうございます」

 ルシュガにお礼をいいながら、少し多めに金貨五枚渡したのである。

「兄ちゃん、少し多いぞ?」

「いや、お菓子の家の分と多分またお願いすると思いますので……」

 そう言うとルシュガはわかったと言って金貨五枚を懐にしまうのであった。


 ルシュガは、一通りの説明を俺にした後ムーンフェイズに戻って行くのであった。



 そして、俺は今お菓子の家の前に立っていた。


 ルシュガさん本当になんでも作れるんだな……


 と感心しながら……


 何日かけて作ったのか知らないが、立派なお菓子の家は僅か数時間でウォルガフとロジェの手によって跡形もなく消え失せたのである。


「ぷはぁぁぁ満足(まんじょく)ちぃまちぃたぁ〜」

「美味しかった〜」

「……」


 おかわり!! と言わないだけまだましだな。


 因みにグゥもお菓子の家には、やはり興味があったらしい。

 端の方で誰にも見つからず美味しそうに食べていたのを、俺は知っていた……



 そして、俺の思惑通りお菓子の家のお陰でシャイターン・ポイントは次のLevelを告げていた。






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