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魔王に再び挑みたい!  作者: kiruhi
目指せ、Level.50![ 下 ]
42/77

【06】

 ウォルガフの言う通り聖王樹の内部は一本道だった。

 ゲーム自体とは異なり、道ゆく途中スタート位置に戻ってしまうトラップもなければ、魔物に遭遇する事もなかった。

 ただひたすら、枯れかけた幹を歩き続けていた。



「あっここでちゅ。ここでちゅ!」

 ウォルガフは以前ここに来た時、結界を前にして足止めをした事を俺に教えてくれていた。

「ふむ、ここか……」


 確かに、この結界を何とかすれば頂上に行けそうな雰囲気だ。

 目の前にある結界には触れず四方見渡してみるが、俺には解除方法などわかるはずもなかった。


「ふむ……ちょっと触って見るかな」

 聖王樹の麓に戻される可能性はゼロではないが、俺の予想では大丈夫なはず。

 そう思いながら、結界に触れていくと次第に視界は真っ白に変わっていくーーーーー




 ……これは聖王樹の記憶なのだろうか?


 魔王によってヒューマンがいなくなり、魔族のみの世界。

 魔族のみの世界において、聖王樹は行き続けるのは至難の技だったようだ。

 俺たち……プレイヤー。

 ヒューマンのクエストによる需要はなくなり、聖王樹の成長は止まる。

 それでも辛うじて現状維持を保つ事が出来たのは、ミトロヴァス族のおかげ。

 しかし、ミトロヴァス族は己の保身の為魔王の配下となり聖王樹の力は失わられていく……

 やがて……

 幹は白くなり葉は、落ちていく。

 神々しかった聖王樹は、何百年と言う年月をかけ見るもの無残な枯れ木へと変わって行くのである。



 ある日聖王樹の頂上に一つの影が現れた。

 影は、中央に立ち七色に輝く雫を一滴。

 垂らしていく。

 そして、その姿を消していく。


 影が消えた後、聖王樹は再び息を吹き返したかのように、本来の姿を取り戻していくのであったーーー




 パリーーーーーン!!


 音共に結界が壊れていく。


「リュウイたん?」

 ウォルガフの言葉に、我に返った。

「大丈夫か? リュウイさん?」

 ロジェも心配してくれているようだ。

「あっあぁ……」

「どうかしたの?」

 グゥも結界に触れ立ち尽くした俺を心配してくれていた。

「うん、大丈夫。聖王樹の想い……受け取る事が出来たから」

「??」

 三人して俺の顔を見ながら?マークを出していた。


 まぁこれは詳しく説明するより、実際にやってみた方が早いんだろうな。


 とにかくこれは、俺の予想通りだった。


 結界は、ヒューマンである俺にしか反応しない。

 ヒューマンでない者が、結界に触れると聖王樹の麓に戻される。

 元ヒューマンとは言え、今ウォルガフはフォス族だ。

 だから、結界はウォルガフを拒否し麓に戻した。


 なるほどね。


 聖王樹が先ほど俺に見せた物は、ヒューマンの俺にしか反応しない。

 そして、最後にいたあの影。

 あれはヒューマンだ。


 七色に輝く雫……

 まず七色に輝く雫を手に入れるのには結構手間暇がかかる。

 月の欠片、星の欠片、太陽の欠片……と言って欠片シリーズがあり、7つ全て集めると七色に輝く宝石、鉱石、雫。どれか一つだけアイテムと交換してくれるのである。

 鉱石は、武器防具の材料に。

 宝石は、武器防具の強化に。

 雫は、回復アイテムに用いられていた。


 雫は殆ど需要などあまりなかったが、俺のアイテムボックスの中にある。

 そして、今アイテムボックス自体を使える者は俺しかいない。

 聖王樹の願いを叶えるのは、俺の役目なんだろうな。



「ウォルガフ、ロジェ、グゥさん。結界は解けた、頂上に行こう」

 俺の声に三人は頷き、頂上に辿りつく事が出来たのであった。


 ピュュュュュュュュュュュュュン!!


 と突風が吹き荒れる中、聖王樹に巣食っていた魔物が俺たちの目の前に現れるのであった。


 こいつを倒さない限り、聖王樹は復活しない。


『ヒュドラ』Level.450


 Level的に見れば、ライオネットワイバーンと同等か……

 ちょっと待て!! ゲーム時代のヒュドラの頭は、精々多くて九本だったぞ。

 なぜ、目の前にいるヒュドラの頭は、十五本ぐらい頭があるんだ!?


 ヒュドラは、俺たちの存在にまだ気がついていないのか、その十五本の頭を床に起き静かに眠っていた。

 よしっ、ゆっくり近づいて先制攻撃だな。


 などと考えていると、二人のフォス族は少年のように目を輝かせ、伝説の生き物に出会えた事を喜んでいるかのように、はしゃぎ始めた。


「うわぁぁぁぁぁぁぁ!! かっ……カッコイイ〜〜でちゅ!!」

「かっこいぃぃぃぃぃっ!!」

「へっ?!」

「二人とも、不用意に近づくと危ないわよ〜」

 グゥの制止も聴かず二人は、ヒュドラの頭に乗り込んで行く。


 ヒュドラはギロリと睨みつけてはいたものの、ウォルガフやロジェの遊びに黙って従っていた。

 十五本ある頭を利用して二人は滑り台にしてみたり、かくれんぼしたり、鬼ごっこしたりと。

 まぁ、怖いもの知らずに遊んでいるのである。


 これが親ならハラハラしながら、見守るのだろうか?

 ……いや、違うな。

 親なら最初からこんな危険な場所には連れてこないよな……


「おーい、ウォルガフ〜ロジェ。戻ってこぉーい」

 俺の呼びかけに、ウォルガフはうちゅっ? とヒュドラの頭と頭の間から特徴的なツンツン頭を出してきた。

「もうちょっと遊びたいでちゅ〜リュウイたんとグゥたんも一緒(いっちょ)にあちょぼぉ〜〜」

「そうだぜ、おいでよ」

 二人の呼びかけに俺はグゥの顔を見ながら話しかけてみた。

「ーーと言っているけど、どうする?」

「いっいゃっ」


 ……だよねぇ〜


 グゥは、顔色を真っ青にしながら否定。

 俺もはっきり言って、行きたくない。

 いつヒュドラが、本性を表して牙を向くかわからないし……

 ウォルガフやロジェは、高Levelだからかすり傷程度かもしれないが……

 間違いなく即死Levelだろ ……


「リュウイた〜〜ん!! 全然怖くないでちゅよぉぉ」

 とウォルガフは俺だけでもヒュドラと一緒に遊ぼう。

 と言っているかのように話しかけてくるのだ。


 ったく……

 確かに遊んではみたいけど。

 本当に近づいても大丈夫なのか?


「……」

 ウォルガフの期待の眼差しを無視出来なかった。

 ため息を尽きながらもゆっくりとヒュドラに近づいて行く事にした。


「グルゥゥゥゥゥゥゥ」

 ヒュドラの唸り声を聞きながら、ウォルガフ近くに立った俺は恐る恐るヒュドラの頭を拒否一本だけ触れようと手を伸ばしていく……


「……グルゥゥゥゥゥゥゥ」

 再び腹まで響き渡る唸り声に思わず手を引っ込めたくなった。

 でも、ウォルガフの俺を見つめる目が……

「……」

「リュウイたん。あのね、ヒュドラたん唸っていまちゅけど、大丈夫でちゅよ」

「……」


 本当かよ!?


 と思いながらも唸り声をあげているヒュドラの頭を触れようとした瞬間。

 指先に電気が迸った。

「!!」

 びっくりして後ろに飛びのいてしまった。

「うちゅ?」

「どうした、ヒュドラ?」

 ウォルガフとロジェが不思議そうな顔をししている。

 それもそのはずだ。

 先程まで大人しかったヒュドラの目の色が、青から赤へと変わって行く。


「ギャァァァァァァァァァァァァァスッ!!」


 叫び声と共に十五本の頭は動き出し、俺を殺そうと襲いかかってきた。

「くっ!!」


 結局は、こうなるのかよっ!!


 十五本の頭の攻撃を避けながらも、ヒュドラと距離を取り交戦準備に入る。


「ウォルガフ!! ロジェ!! 下がるんだ!!」

 俺の叫び声に二人は無視しヒュドラの側にから離れる事はなかった。


「どうしたの? 二人共?」

 グゥの質問にウォルガフが答えてくれた。

「うんちょねぇ〜ヒュドラたんが『お前ヒューマンだっ(ちゃ)(きゃ)。ヒューマンは絶対(ぜっちゃい)に許(ちゃ)ない。殺(ちゅ)っ!!』って言っていまちゅよ?」

「……」

「更に『今まで殺されてきた、我々の仲間の仇打つ!!』って言っているぞ」

「……」


 まぁ、ゲーム時代プレイヤーはヒュドラを散々倒しまくってきたから、恨まれるのはわかるが……

 ……ってかゲームなんだから、仕様だろ?


「なんで、二人ヒュドラが何を言っているのかわかるんだ?」

「今、友達になっちゃからでちゅよ。だからヒュドラたんがね、教えてくれまちぃたよ」

「うんうん」

「……」


 ウォルガフとロジェがすごいのか、ヒュドラがすごいのかわからんな。

 しかし、ヒュドラをどうにかしない限りここから脱出する事は出来ない。

 そうなれば、シュトレンが俺を捕まえに……

 グゥもやる気なさそうだし……

 ウォルガフやロジェは友達とか言い出すし。

 俺一人でやるしかないんだろうな。


 ヒュドラに向かって杖を構え、魔法詠唱しようとすると……


「ダメでちゅ!!」

「ダメだよ!!」

 ウォルガフとロジェにダメだしされてしまった。

 二人は、ヒュドラを庇うかのように俺の目の前に立ち塞がるのであった。


 オイオイ……


「ウォルガフ……? ロジェ?」

「リュウイたんヒュドラたんを倒ちぃたらダメでちゅよ?」

「おい!! リュウイさんそんな事したらダメだぞ?」


 勘弁してくれよぉぉぉぉ……


「……因みになんで倒したらダメなの?」


 俺の質問に、ウォルガフとロジェは一斉に言い放った。

「ヒュドラたんとは、もう友達でちゅ!」

「ヒュドラは、友達になった!」

「……」


 予想はしていたけど、友達って……



「グゥさん……どっ、どうしたらいいと思う?」

「……」

 グゥは、今まで我関せず状態だったが、俺が無理矢理巻き込む事しにしたのだが……

 俺の質問に無言で答え言葉を発する事はなかった。

 どうやら、俺と同様にどうしたらいいのか困惑しているようだな。


 ったく思わぬ伏兵だ。

 それもかなり手強いぞ……


「じゃ俺はどうすればいいんだ? このままここにいれば、俺を捕まえにシュトレンが来るんだぞ? そうなれば……」

「ヒュドラたんと一緒(いっちょ)に戦いまちゅ!!」


 これまた無理な注文言うし……

 俺を殺したいヒュドラが、一緒にシュトレンを倒す為に戦ってくれる訳がないだろ……


「ウォルガフ、ロジェ……あのね……」

「なんと言われようが、ヒュドラたんを倒ちぃたらダメでちゅよ!!」

「そうだっそうだっ!!」

「ウォルガフ〜〜」


 もう勘弁してくれよぉ〜


 俺が困り果てていると、ウォルガフとロジェはヒュドラとなにやら二人と一匹? で話し始めたのである。


 なにを話しているのかは、全くもってわからない。

 ウォルガフは時には、悲しい顔をしてはいるがこれだけはわかる。


 どう見ても、これは異様な光景だと言う事!!


 案の定グゥは、何も言わずに固まっているしな。



 話し終えたのか、ウォルガフとロジェはヒュドラから離れトコトコと俺の側に来て顔を見上げ始めた。

「……どうした?」

「うんちょねぇ〜ヒュドラたんが、条件付きで見逃してくれるって!」


 条件付きって……

 どれだけ上から目線なんだよ……


「……その条件って?」


 ウォルガフはロジェの肩にポンっと手を置き、微笑んでいる。

 どうやら、理解は出来るが説明するには言葉が思い浮かばないないらしい。


 コホンっと咳払いをしながら、ロジェは俺にはヒュドラが言っていた条件と言うのに教えてくれたのだ。

「ヒュドラは、今までたくさん同士たちを殺してきたヒューマンを許したくはないらしい。でも、ヒューマンは今、現在リュウイさんしかいない事話したら、『ざまみろっ』だって」

「……」

「それで、自分も唯一匹の生き残りのヒュドラなんだって。そして、自分の寿命ももう長くはないからここは一つ試したいんだって」

「試す? 何を?」


 質問の答えを聞く前にヒュドラは、二つの頭交互に揺らしながら炎のブレスを俺だけ(・・)狙って吐き出してくる。

「うわっ!!」

 横に避ける事で直撃を免れ、ウォルガフたちに慌てて叫び声をあげていた。

「ちょっ……どういう事だよ?」

「うんちょねぇ〜ヒュドラたんの話し曰くぅ……」

「リュウイさんが、託すのに値する人物なのか。それを示せだって」

「託すって何をだよ?!」


 ウォルガフの話しも、ロジェの話しもまったくわからんっ。


 だが、ヒュドラは待ってはくれなかった。

 様々なブレスが俺を襲いかかる。

 炎や氷、雷。 更には、毒のブレスだ。

 それを、なんとか避けてはいるのだが……


「リュウイたん。ヒュドラたんが、反撃して来い。だってぇ〜」

 ウォルガフは呑気にヒュドラの言葉を通訳してくれている。


 有難い事なんだろうけど……


「反撃って……」


 俺はそもそも魔法使いだぞ?

 前衛が敵を引きつけている間に、破壊力抜群の魔法をぶつける。

 それが常識だろ?


「あぁ、そうだリュウイさん。因みに俺もウォルガフも手伝わないからな」

「……」


 俺の考えを見透かしたかのようにロジェは言い放つ。

 ふと、グゥの姿が気になった。


 グゥは先程立っていた場所には既にいなく、ウォルガフの後ろに隠れていたのである。

「……」


 確かに、ウォルガフの側が一番安全な場所なのはわかるけど……


「くそっ……」


 三人が俺に丸投げ状態となると……

 一人でどうにかするしかないよな……


 取り敢えずヒュドラの動きをよく観察するんだ。

 前衛で培ってきた洞察力を生かすんだっ!!

 何処か隙がある筈だ。


 そう思いながらも、ヒュドラの攻撃をひたすら避け続けていた。




 ーーーーーー



 暫く一人でヒュドラの攻撃を避けて見て、幾つかわかった事がある。

 まず、ヒュドラは手加減している。

 普通に考えてLevel.450もあるヒュドラの攻撃を、Level.30の俺が避け切れる筈がないのだ。

 そう考えると本当に俺を試そうとしているんだな。と思わずにはいられなかった。

 後、ヒュドラの癖はゲーム時代となに一つ変わってはいなかった。


 ヒュドラは頭を使って攻撃を繰り出した後、必ず攻撃をしてきた頭を下げインターバル状態になる。

 頭を下げるとそこには、弱点とも呼べる胴体をさらけ出す。

 だから、ヒュドラの攻撃を避けた後すかさず胴体に攻撃を与えれば倒せる。


 攻略法は見つかった。

 後は、俺の攻撃力次第だな。


 ゲーム時代、前衛職の俺にとってヒュドラは軽く倒す事が出来た。

 だが、今は違う。


 俺の魔法力でヒュドラに傷つける事が果たして出来るのだろうか……?


 シュトレンもそろそろここに来そうだし。

 最大魔力を込めてやるしかないよな……


 杖を構え、魔法を詠唱し始める。

「赤く燃え盛る緋色の力……炎は荒ぶる紅蓮の塊と化し……我が前の敵を焼き払え……」

 二つある宝石、それぞれに魔力溜め込んでいく。

 そして、三つ目の詠唱を唱えている時、俺の中で何か違和感を感じた。


 なんだろう……

 フレアストライクよりも強い魔法を発動出来そうな気がしてするんだけど……


 このまま魔法を発動すれば、ただのフレアストライク三発分。

 そうではなくて、三つの魔力を一つに纏めて圧縮させる。

 杖の中で魔力が暴れているのを感じながらも、無理矢理押し込め一つに纏め上げていく。


 これはもう俺の知っているフレアストライクではないな。


「フレアバースト!!!」

 魔法名が存在してるかは知らない。

 ただ頭の中で浮かび上がって来た、単語を並び替えて唱えて見ただけだ。


 杖から、拳台ぐらいの大きさのフレアバーストが、ヒュドラに向かって螺旋を描きながら一直線に飛んでいく。

 ヒュドラの頭の一部が防御本能が働いたのだろう。

 五つの頭が胴体を守るかのように立ち塞がる。

 だが、フレアバーストは五本の頭を一瞬にして蒸発させ胴体の中に消えていくのであった。


「……弾けろ!!」

 俺の言葉と共に押し込めせれた魔力は解放された。

 ヒュドラの体内でフレアバーストは、火柱を上げ爆発したのであった。


「……すっげぇ」

 プスプスと黒煙を上げ動かないヒュドラを見つめながら、こんな破壊力を秘めた魔法攻撃が出来るようになったのかさっぱりわからなかった。



 そして、脳内にLevelアップ音が響き渡った……






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