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魔王に再び挑みたい!  作者: kiruhi
目指せ、Level.50![ 下 ]
38/77

【02】

「ベーレのじぃじぃ……まだ難しい話し中ぅ?」

 俺とベーレが話していると、縁側から顔だけを出し先程の短髪で少し逆立った茶色の髪型をしている、フォス族が話しかけてきたのだ。

「魔力を練ろと言う指示を出しておったじゃろ?」

「だってぇ〜飽きたぁ〜」


 なんか、このフォス族ウォルガフみたいで可愛いな……


「相変わらず、ミュッケは飽きるのが早いのぉ〜

 ふむ、リュウイお主も子供たちと共にやって見るか?」

「何をですか?」

「フォフォフォ……まぁついて参れ」

「はぁ……?」


 ベーレは腰を押さえながら立ち上がり、再び庭へと戻って行くのであった。



「あの……これから一体なにが?」

「まぁ見ておるといい」


 なんなんだょ……


「メルクリ!」

「はい、先生!」

 メルクリと呼ばれ返事をしてきたのは、先程俺を怒ってきた後頭部の高い位置で一つにまとめて垂らしている、ムーンサン族の女の子だった。

「儂の指示通り魔力を練っておったか?」

「はい!」


 魔力を……練る??

 なにそれ?


「うむ……それではフレアボールを……」

「はい、先生」


 ベーレに言われるがまま三m程距離をあけたメルクリは杖を構え詠唱を開始し始めた。

「大気に満ちし大いなる炎の塊よ……」

「!?」


 えっ!?

 なにその魔力っ!!


 メルクリが詠唱を開始した途端、杖に宿る魔力が急上昇したと言う事はすぐにわかった。

 例えるなら10だったのが、突然100になった。そんな感じだ。

 でも、なぜ急上昇したのか? その疑問は俺には理解不能だった。


「我の言葉に従え、フレアボール!!」

 言葉の通りメルクリが放つフレアボールは、ベーレに向けられていた。


 どう考えても、やばいでしょ??


 と思ったのだが、ベーレは人差し指だけでフレアボールを抑え込み、親指を使いパチンッと音を鳴らし消し去ったのだ。



 メリクリの魔力も凄かったが、ベーレはもっと凄かった!

 俺もこれが出来るようになりたい!

 と言う思いに満ち溢れ『魔力を練る』と言う方法に俄然興味が湧いてきた。


「まだまだ、魔力の練りが足りんようじゃの。メルクリ」

「はい……余計な雑念が入っていました」

「それは、お主の弱さじゃの」

「だって……先生! こいつなんなんですか!?」


 メルクリは俺を思いっきり指、指してこいつ呼ばわり……

 殆ど初対面に近い人に流石にこいつ呼ばわりされたくないな。

 と普段の俺なら怒る所だが、怒る気なんて更々なかった。

 早く魔力を練る……

 その事を知りたかった。


「興味湧いたようじゃの? リュウイ?」

 老人の問いかけに俺は迷いなく答えた。

「思いっきり、興味ありますね」

「うむ、では今日からリュウイも儂の弟子じゃ」

「ちょ……先生!?」

「よろしくお願いします!!」


 メルクリの話などもう俺の耳には、入ってはいなかった。


 ベーレは反対するメルクリを三十分かけ説得してくれた。


 その結果渋々ではあるが、俺の事を認めてくれたのである。

 だが……

「私の方が、先生の弟子の期間は長いんだからね!!」

 と捨て台詞を言われてしまった。


 そんなの俺には関係ない。

 今、俺が興味があるのはただ一つ、魔力を練る!

 これだけだ。



 ここには、エルフやドワーフ……

 種族等関係なく沢山の魔族の子供たちが、楽しそうに魔法を教わっていた。

 弟子を取ると言う事を嫌ってはいたがベーレは、どこからともなく子供連れてくるらしい。

 もちろん誘拐とかそう言う物ではなく、行き場の失った子供たちに魔法を教え大人になった時に、困らないように力をつけさせる事が目的との事だ。


 だから、俺は異例らしい……

 周りの魔族たちは俺をあまり良く思ってはいなかったようだ。


 まぁ当然だよな……


「コホン……では、魔力を練る。と言う事を説明しよう」

「はいっ!」

「まず、魔力とは……」



「あっリュウイたん、いたぁっ!!」

「へっ!?」

 家の門から聞き慣れた声が聞こえてきた。

 そこには、何故かウォルガフは男に肩車してもらいながら現れたのである。

 後ろからロジェやグゥも俺の目の前に……


 なぜ? ……ここに??


「ウォルガフ……??」

「よいちょ……」

 男の肩から降りたウォルガフは、トコトコトコと歩いてくる。

 そして、俺の顔を見上げながら……一言。


「リュウイたん、ぼくはお腹が空き(ちゅき)まちいたぁ!」




 ウォルガフの一言で、俺たちは食事をする事になった。


 『働かざる者、食うべからず』


 とはよく言ったものだ。


 ベーレは、食事の用意をすると言い家の中へと入り、ウォルガフを肩車していたダークエルフの男は俺たちに薪割りや、水汲みなどの指示を出してきたのだ。

 グゥやロジェは男の指示通りに水を汲みに、子供たちに案内されながら家の外へと出て行った。


 だが、ウォルガフが納得するはずはなかった。

「ぶちゅ! なんでぼくが!?」


「……晩御飯出てこない……」

「!!」

 ヨロヨロと足元をフラつかせ、後退しながらウォルガフは叫んだ。

「ちょんなの、嫌でちゅっ〜〜!!」


 叫び声と共に、男はウォルガフに無言で斧と薪を渡してきたのである。

「……うぅ……やりまちゅよ……やればいいんでちょ、やれば……」

 かなりふてくされながらも、ウォルガフは自分の背よりも大きな斧を手に取り薪を割る事にしたのである。


 俺はと言うとウォルガフと共に薪割りを開始する事にしたのだ。




「ふぅ〜(ちゅか)れたでちゅ〜」


 えっ?

 もう!?

 幾ら何でも、早くない??


 ウォルガフは大きな斧を手に取り、身体を大きく使いながら……

 ジャンプしながら、一本一本気合を込めて薪を割るのだそりゃ疲れるのは早いよな……


 ……いや、待て。

 …………


 ウォルガフは元々戦闘と食べ物以外、興味を持たないはずだ。

 となれば……

 ただ単に飽きただけだな。



「リュウイたん、後は任せまちぃた」

「……わかった」


 俺の為にわざわざ探し出して来てくれたんだ。

 それくらいやってもいいだろう。


 と思うウォルガフから受け取り俺は、薪割りを再開する事にした。



「ダメだ……きちんとやれ」

 男は、振りかぶった俺の斧を手で受け止めウォルガフを、見つめていた。

「いや、俺は別に構いませんけど?」

「……甘やかすな」

「!?」


 甘やかす??

 そんなつもりは全くなかったんだけど……


「ちゃんと……やれ」

 男は再び、斧をウォルガフへと差し出す。

 ウォルガフはプイッとそっぽを向き、やらないぞっ! と態度で表していた。

「やらないんか?」

「……だってぇ〜薪割り……つまんないんでちゅもん」


 まぁ、ウォルガフにしては地味で淡々とした作業ではあるよな。


「わかった。お前だけ、晩御飯は半分……にしとく」

「えっえぇ〜〜!!」

「それが、嫌ならきちんとやれ」

 男とウォルガフの間で睨み合いが続く……


「……ぶちゅ〜」

 折れたのはウォルガフの方だった。

 斧を奪うかのように取りウォルガフは薪割りを始めた。

 疲れただの、飽きただのと文句は言い続けていたが、それでも最後まで薪割りをやり遂げたのだ。


 ……すげぇ。


 とてもではないが、俺には信じられない光景だった。


 ご飯を半分にすると言われた時点で、いつものウォルガフならジタバタと暴れる筈なのに何故か暴れなかった。

 あの睨み合いには、俺にはわからなかったが何か意味があったのだろうか?


 ともかく、我儘ウォルガフを説得させるとは凄いな。と感心してしまった。




「ふぅ〜終わったでちゅ〜」


 ウォルガフが薪を割る。その割られた薪を俺が薪置き場運ぶ……

 これを永遠と繰り返していたのだが、やっと終わった。

 薪を運ぶ方が楽そうには思えるが、実はそうではないのだ。

 ウォルガフは薪を一本一本、斧を使って割ると言う行動が嫌いだったのだろう。

 俺に薪を五、六本宙に投げるように話し、言われた通りに投げると魔王の大剣でスパパパ〜〜ン! と四分割に斬ったのだ。


 確かに効率はいいけど……

 魔王からもらった大剣を、薪割りに使っていいのだろうか??


 一回に割られる薪は約20本ぐらい……

 五回程であっという間に100本ぐらい溜まるので、俺がせっせと薪置き場運ぶ。

 その間ウォルガフは休んではいるが、流石にそれに関して男は何も言っては来なかったのである。

 薪をまとめて宙に投げたり、割られた薪を運んだりして、意外と疲れました……


 あまりにも早く終わった事に男は驚いていた。

「これで、いいでちゅか!?」

 少し威張り気味に話すウォルガフに、男はウォルガフの頭をクシャクシャと撫で回し始めながら黙って頷いていた。

 クシャクシャと撫でられた事にウォルガフは少し照れ臭そうにしている顔が俺はちょっと悔しいな。と思ってしまった。


 んっ? 悔しい??

 なぜ、そう思うんだ??


 疑問に思ったが、俺にはその答えを導き出す事は出来なかったのである。




「晩御飯はまだだ……」

「わかったでちゅ」

「その間……他の子供たちと遊んでいてくれ……」

「いいのぉでちゅか!?」

「ちゃんと、言われた事。お前はやった」

「わかったでちゅ〜リュウイたんもいこぉ〜」

「……いや、俺はこの人と話したい事があるから……ウォルガフ、気にせず行っておいで」

「は〜いでちゅ〜」




 縁側に腰掛け空を見上げるといつの間にか、太陽は沈みかかり夕日は綺麗だった。

 男も俺の隣に座ってくれた。

「……で? 話とは?」

「その前に俺は、リュウイと言います」

「……ダルト」


 沈黙が流れる……


 間が持たないので、システムメニューを開きダルトのステータスを確認する事にした。

 俺の予想通り、ダルトはダークエルフだった。

 ゲーム時代で一度も会う事が出来なかった、ダークエルフに今ここで会えるとは……


 ダークエルフは元々冒険者、プレイヤーを嫌っていた種族であまり表に出る事はなかった。

 だが、運良くダークエルフに出会う事が出来れば……

 高額の家具レアアイテムを手に入れるクエストが発生するのであった。

 高レベルモンスターを倒しながら、死に物狂いである特定の場所に行き、ダークエルフに出会う確率はたったの5%……

 いくら高額の家具レアアイテムを手に入れるとは言え、ハウジングに興味ないプレイヤーにとっては運が良ければ……暇つぶしに……

 それくらいの位置づけであった。


 しかし、ハウジングに力を入れているプレイヤーにとっては、全く真逆である。

 何としてでも手に入れ、マイホームに飾りたい!

 と思われていたのである。

 俺も何とかして手に入れたい。

 と思っていたプレイヤーの一人ではあったけどね……


 まぁ、魔王の世界になった今……高額の家具レアアイテムクエストなんて存在していないんだろうな……


「どうした……?」

 ダルトの顔を見ながら、そんな事を考えていると逆に不思議そうに見られてしまった。

「えっと……ウォルガフから聞きました。俺を見つけてここまで運んでくれたのは、あなただって事を……

 ありがとうございます」

「……気にするな」


「………」


 また沈黙が流れてしまった。


 俺はダルトに何を聞きたかったんだっけ??

 えっと……


 ………


 あっ思い出した……


「俺はウォルガフに甘いですか?」

「……甘いな」

「……」

「フォス族はあの姿のせいで、可愛く思われがちだ」


 うん、確かにウォルガフは可愛い。

 ウォルガフだけじゃない、ロジェやミクロスも俺は可愛いと思える。


「だが、可愛いから甘やかすのでは……」

「駄目だと……?」

 ダルトは俺の質問に頷いていた。


「駄目な物は駄目……とケジメは取るべき」


 ダルトの言いたい事はわかる。

 だけど……

 駄目と頭から否定するとウォルガフは、暴れる……

 それがわかっているだけに、俺は今までとウォルガフの言う事をなんでも聞いてあげた。


 だからあの時、俺はダルトとウォルガフのやり取りを見て不思議に思ったんだ。

 なぜ、ウォルガフは渋々ではあったけど薪割りを最後までやり遂げたんだ?


「フォス族は……気難しい。だがきちんと話せば理解出来る」


 きちんと……

 俺は今まで、ウォルガフの我儘に対してきちんと話ししていただろうか?


 ……

 …………


 一回だけ怒った事があったな。

 あの時のウォルガフは、いじけていた。

 だから、怒るのはダメなんだな。と思ったんだ。


 あぁ……でもきちんとウォルガフにわかるように話しした時は、我儘は言ってはいたがそれとなく言う事を聞いてくれていたな。

 ダルトの言いたい事はその事なのか?


「……どちらにせよ」

「??」

「俺は……今まで通り付き合う方が良いと……思う」


 えっ? さっきは、甘やかすなって言っといて!?


「フォス族は、自由人……束縛出来ない種族……」

「……」


「あれこれ? と考えるなって事ですか?」

「うむ……」


 甘やかすなと言ったり、今まで通りにしろっと言ったり……

 ったくどう言う事だよ。


「……他人にとやかく言われて、態度を変えるのは……良くない。

 ……それは、今までの信頼関係を失う」

「!?」


 信頼関係……

 ウォルガフとの……?


 確かに俺がダルトの言う通り甘やかさなくなったら、ウォルガフは俺を嫌いになるかもしれない。

 そうなれば、ウォルガフは俺の側からきっと離れて行ってしまう。


 そんなのは嫌だ……



 薪割りをやりたくないと言いウォルガフは俺にやらせようとし、ダルトは制止した……

 ウォルガフは渋々だけど薪割りをやり始め、この時はまだ確かに怒っていた。


 やり遂げた後、ウォルガフはダルトに対して威張っていた。

 きっと、ダルトを見返したかったんだろう。


 だが、ダルトは無言で褒めた。そして、ウォルガフのあの笑顔が生まれたんだ……


 俺には出来ない事をダルトはやって見せた。

 だから、あの時俺は悔しいと思ったんだ……


 俺も同じように出来ないかな?


 そう思ってダルトに聞いたけど、それは間違いだ。


 ダルトは俺に出来ない事をやった。

 でも、俺はダルトにはない物を持っている。


 俺とウォルガフには信頼関係……これがある。


「ありがとうございます……ダルトさんと話しして少しスッキリしました」

「……そうか」


 言葉数は少ないが、俺はダルトを気に入ってしまったかもしれない。


 ダルトみたいに俺は、ウォルガフに頭ごなしに駄目だとは言えない。

 でも、俺は俺のやり方で今までやってきたんだ。

 なにも悩む必要はなかったんだ……


 そう考えると、ダルトに嫉妬していた自分が無性に大人気なかった。と感じてしまった。




 ◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎



 大盛りの食事を平らげたウォルガフは、大変満足していた。

ご馳走(ごちちょうちゃま)でちぃた!」

 両手を合わせ頭を下げるウォルガフは、とても嬉しそうだった。


「ミュッケたん、一緒(いっちょ)に屋敷探検しまちぇんか?」

「するするぅ〜」

「ロジェたんは?」

「俺は、休憩〜するぅ」

「は〜い」

 仲良くなったフォス族のミュッケと共に広い屋敷を元気に走り回っていた。

 もはや探検ではなく、食後の運動になっていた。


 また、お腹空いたぁと言ってきそうだ。




「所で、リュウイさん」

 隣に座っていたグゥが、少し居心地悪そうに俺に話しかけてきたのであった。

「はい?」

「これから、どうなさるおつもりですか?」

「あっ!!」


 そうだ、大事な事を忘れていた。

 俺はまだ魔力を練るっていう奴を教わってはいない。

 出来る事なら、教わってから旅立ちたい……

 僧侶であるグゥだって、もしかしたら一緒にやりたいと言い出すかもしれない。


「グゥさんは、実は俺もう少しここに居たいです」

「と言いますと?」


 グゥに俺は説明した。

 魔力を練ると、普段の攻撃力とは桁外れの魔法を発動する事が出来る事を……


「僧侶にも関係してくるのかしら?」

 グゥにとって素朴な疑問なんだと思う。


 力……

 力がなければ攻撃力は生み出されない。

 そして、生み出された力は剣を使いその破壊力を表したり、己の拳で表して行くんだ。


 ならば、魔力も同じはず。


 魔力を使い、後は魔法攻撃したり回復魔法、結界とか色々と発動する事が出来る。

 だから、『魔力を練る』という事はその基本にあるものだと思う……

 俺の考えが間違っていなければ、グゥの回復魔法も向上するはずだ。


「俺は、関係してくると思います」

「ふぅ〜ん」

 いまいち信じてもらえなかった。

 でもこの考えは、間違っていないはず。


「じゃ、やってみようかしら? リュウイさん、(わたくし)も参加出来るように話ししておいて下さいね」

「はい、わかりました」


 ベーレに話したら二つ返事で了承してもらえた。

 なんなら、前衛系のウォルガフやロジェも参加していいそうだ。


 前衛系は元々魔力は低い。あまり効果はないかも知れないが二人に話したら……

「興味ないでちゅ……」

「俺はいいよ」

 と返事されたが、ベーレが少ない魔力を有効に使えるようになると話すと途端に二人は目をキラキラさせながら、やると言い出し俄然とやる気を出してくれたのであった。






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