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魔王に再び挑みたい!  作者: kiruhi
目指せ、Level.50![ 下 ]
37/77

【01】

「貴様、『聖王樹』を狙ってきたシュトレンの部下か!?」


 ん……?

 どうやら俺の考えていた事と、この老人の考えている事が違うらしいな……


「違います。俺はただの冒険者です」

「ほぉ〜ならばなぜ、聖王樹の事を知っておる? ただ(・・)の冒険者は普通知らないはずじゃ?」


 えっ? そうなの!?


「答えよ」

「……」

「その前に一つ質問してもいいですか?」

「質問に質問で返すとは、失礼な奴じゃ……」

 俺を囲っている赤く光輝く円形は、更に光輝き始めていた。

 どうやら、老人の警戒心は更に強くしてしまったようだ。


 でも、俺は確認したかった。

 目の前に座っているこの老人は、本当にミトロヴァス族なのか?

 もしミトロヴァス族だとしたら……


「まぁよい、最後の質問になるかもしれんからのぉ〜心して聞いてくるが良いじゃろ……」

「……」


 もう……脅しまくらないでよ………


 一呼吸起き、俺は老人の目を見ながら聞いて見た。

「……貴方は、ひょっとしてミトロヴァス族ですか?」

「!?」


 俺の一言に老人は目を丸くし、一瞬硬直していた。


「お主……ヒューマンなのか!?」

「!!!」


 今度は俺が驚いてしまった。

 なぜ、ミトロヴァス族なのか? と聞いただけで、ヒューマンとバレてしまったのか……

 さっぱりわからなかった。


 いや、まだ誤魔化せる……


 そう最初は、なんとかして誤魔化そうと思っていた。

 だが、俺は老人の姿を見て諦めた。


 警戒心も既に消え失せ、俺を囲っていた赤く光輝く円形も消えていた。

 そして、老人は俺に対して深々と頭を下げていたのだ。


「あっあの……何故俺がヒューマンと……?」

「儂は確かにミトロヴァス族。だから貴方がヒューマンだと言う事が理解出来た」


 んっ?

 たったそれだけで??


「……何故それだけで理解する事が……」

「ヒューマンが滅亡し魔王の世界になった今日(こんにち)我々の事をミトロヴァス族とは呼ばんのじゃよ。ミトロヴァス族は今、ミヴァス族と呼ばれておる」

「ミヴァス族??」

「そうじゃ」

「なぜミヴァス族と呼ばれるように……?」

「……ミトロヴァス族もエルフやドワーフと同じ亜人間だというのに、我々不遇だった」

「……」

「その姿形のせいで……」

「あっ!!」


 確かにミトロヴァス族は耳が少しだけ尖っている事と背の小さい事を除けば、俺たちヒューマンと似ている種だ。

 この事を言っているのかな?


 老人は語り出す……

 不遇の扱いをされ続けた、ミトロヴァス族の行く末を……




 魔王の世界になった時、ミトロヴァス族はヒューマンと似ていた為よく間違えられていた。

 その為、元々少なかったミトロヴァス族は僅か十人と……

 (まさ)に絶滅に瀕していた。

 このままでは種族の存亡に関わると感じた、九名は魔王に直訴しに行ったのであった。


「魔王様、我々はヒューマンではございません。

 ここに参上した九名を、全魔族にそう通達して頂けませんか?」

 と……


 だが、魔王は同じ亜人間でも中立の立場をとっている、ミトロヴァス族の事を実は気に入らなかったのである。

 認める代わりに魔王は、幾つかの条件を出したのであった。


『今後、中立の立場ではなく魔王に忠誠を誓う事』

『ミトロヴァス族は消滅し、新たにミヴァス族と名乗る事』

『ミヴァス族は、聖王樹から撤退しその幅広い知識を世に広める事』


 彼らにとってヒューマンが滅亡した以上、中立を守る必要は全くなかったのである。

 更に、聖王樹を護り続けなければならないと言う使命から解放される。

 と、なれば……

 九人は喜んで魔王に忠誠を誓ったのであった。


 こうしてミトロヴァス族と言う種族は消滅し、新たにミヴァス族として正式に魔族と認められたのであった。


「じゃあなたも、魔王の……?」

「いや、儂はあくまでもミトロヴァス族じゃ」

「えっ?? どう言う事ですか?」

「儂は最後まで反対をした十人のうちの一人じゃ……」


 ミトロヴァス族十人のうち九人は、聖王樹を見放し魔王に忠誠を誓ってしまったが、最後の一人は反対意見を繰り返し『あくまでも中立の立場を……』と言い、聖王樹を今でも護り続けていたのだ。


 それが、今俺の目の前に座っている老人……


 だが、いくらミトロヴァス族だと言っていたとしても、時代の流れに乗らなければならなかった。

 老人は風の噂でミトロヴァス族から、ミヴァス族名称が変わった事を聞きつけ本当はミトロヴァス族だけどミヴァス族として名乗る事にしたのである。



 俺はシステムメニューを開きながら、老人のステータスを確認する。

 確かに、老人の種族はミトロヴァス族と表示されていた。

 更に驚く事に大魔導師とも表示されていたのだ。


 えっと、この人の名前は……


 慌てて閉じかけていたシステムメニューを開き出し、老人のステータスを確認して行く……


 ベーレと言うのか。


「ベーレさんはミトロヴァス族だけど、他のミトロヴァス族は全てミヴァス族になってしまい、魔王に忠誠を誓っている。そういう事なのですね?」

「そうじゃ……」


 なるほど……

 ミヴァス族か……

 覚えておかなくてはな……


 でもまだ分からない事もいくつかある。


「どうやらその顔は、まだ疑問に思っておる所がありそうじゃな」

「えぇ……まぁ確かに」


 鋭いな……

 年の功っていう奴か?


「なぜベーレさんは、今もここで聖王樹を護っているのですか?」

「……ヒューマンである、あなたには理解出来るはずじゃ」

「俺なら……?」


 どういう事だ?


「なぜ、ミトロヴァス族が誕生したのか……その真の意味を……」

「真の意味……?」


 えっと………

 聖王樹は、確か《剣と魔法と魔王》がまだオンラインゲームのだった頃、実装されていたな。

 時期は確か……

 オープンβを経て正式サービス開始時の大型アップデートで、苗木の状態で導入されていたんだった。

 聖王樹を成長させる為には専用クエストがあって、次回のアップデートまでにそのクエストを達成していないと成長をしない、プレイヤー参加型のクエストだったな。

 聖王樹はアップデートを繰り返して行くうちに徐々に成長して行く。

 そして、ある日のアップデートで、聖王樹を護る者として誕生したのがミトロヴァス族……

 

 あぁ……そうか。

 ベーレは、今もなお聖王樹を護っているのか……

 たった一人で……


 これが真の意味なのか?


 いや、違うな……

 これは公式サイトに記載されていた事だ。

 他に何かあるのかな……?

 う〜ん……


「……聖王樹を護る為だけに誕生した……ですか?」

「半分正解じゃな」


 やはり半分か……

 

「……わかりません」


 素直に俺は答えた。

 だってわからない物は、わからないのだ。

 別に開き直っているわけでもない、ただ素直に聞いた方がいいだろ?

 答えてくれるかは、ベーレ次第だけどね……


「……最初に儂は、お主がシュトレンの回し者かと勘違いしてしまった」

 そういえば、そんな事言っていたな……


「実は今、聖王樹は死にかけておる」

「へぇ!?」


 なんでまた??


「ヒューマンが滅亡し、その栄養が供給されなくなったのが主な原因なのじゃが……」

「供給……??」

「ヒューマンたちは、聖王樹を成長させる為に足を運び色々な事をしてくれたじゃろ?」


 あぁ、要するにクエストの事か……


「更に、シュトレンを初めとした魔族たちの侵入じゃ。

 ここは元々聖地……

 魔族たちが侵入していい場所ではないのじゃ。

 なのに、奴らは容赦無く侵入して来よる。

 その結果……魔族の魔力で聖王樹は益々弱ってきてしまっているのじゃ……」

「……」

「立派に成長を遂げ、これから真の聖王樹としての進化を遂げようとした矢先にヒューマンの滅亡、そして魔族たちの侵入……

 生き残ったミトロヴァス族は、徐々に弱って行く聖王樹を見たくなかったのかもしれんな……」

「ベーレさんは?」

「儂は諦めん! 最後の一人になろうとも、聖王樹は見守り続ける!」

「……俺も見る事は可能ですか?」

「良かろう、そのうち見せてやろう……」


 いやいや、そんな長居する気は……


 あっ!? そうだ、大事な事を忘れてた!!


「あの……」

「なんじゃ?」

「なぜ俺はここに………?」

「あぁ……お主は、タゥーナ樹海の湖のほとりで倒れておった。たまたま子供たちがお主を見つけて、ここに運んだのじゃ」

「……子供たちとは先程、表にいた?」

「そうじゃ」


 う〜ん、なんかおかしいな……

 あの時、俺は確かに誰かに担がれている感じがした。

 でもそれは、俺と同じぐらいの背丈か、背の高い人物だと思うんだけどな……


「お主を運んできた者は今、タゥーナ樹海を巡回しておる。時期に戻るじゃろ」


 あっ今いないのね、納得……


「巡回??」

「そうじゃ、シュトレンが懲りずに上空で待機しながら聖王樹を狙い部下をよこしてくるからのぉ。

 返り討ちにしておるのじゃ……」

「返り討ち……」


 返り討ちって随分物騒だな……


「そもそも、なぜシュトレンは枯れかけていると言うのに聖王樹を狙っているのですか?」

「聖王樹は……枯れかけても『聖王の樹液』は健在なのだよ」

「……でも、無作為に採取していればいつか必ず聖王の樹液も尽きてしまう……」

「そうじゃ!」


 そうなれば、栄養なんて行き通らないから益々弱ってしまう……

 だから……ベーレは護り続けているのか……

 これはもう、使命感だけじゃないだろ?


「聖王樹を護り続ける……これは表向きじゃ」

「……はい」

「真の目的とは、冒険者……」


 んっ? 冒険者……??


「来るべく日に訪れるであろう、たった一人のヒューマンを成長させる」

「!?」

「つまり、お主の事じゃよ。リュウイ……」

「えっえっえっ!?」


 ちょ……ちょっと待て……!?

 ミトロヴァス族は、基本中立の立場のはずだ。

 なのになぜ!?

 こんな風になるんだ????


「最も儂がその事を自覚したのは、つい最近の事なんじゃがな……」

「どう言う事ですか??」

「ん〜『ヒューマンが滅亡し、これからは魔族の……魔王の世界になる』と全世界に伝わった時……

 我々十人の目の前に白いフワフワとした天使の羽を生やした謎の人物が現れたのじゃよ」

「???」


 ちょっ!?

 話が………なぜそうなる??

 そもそも、それつい最近じゃないし!!

 あっ、でもミトロヴァス族は長寿だから、つい最近の出来事になるのかな?

 俺には大昔の出来事なんだけど……


「そして天の声は、我々の脳裏に話しかけてきたのじゃ」


『魔王の手によりヒューマンは、経った一人の者を除き全員クリスタルに封印されてしまいました。

 生き残ったその一人も、今はまだ目覚めてはおりません。

 ですが、いつの日か必ず目覚め魔王を倒す事でしょう。

 その為にも、貴方たちミトロヴァス族はその者を導き力を授けて下さい』


 オイオイ………

 この無理矢理仕様変更。

 間違いなく運営の仕業だよな。

 なんで、俺を直接強くしてくれないんだよ!!


「と……まぁ結局九人は出て行ってしまい、今どこにいるのか儂にはわからん」

「ちょっと待ってください……」

「なんじゃ?」

「その話、信じた根拠は? 普通信じないですよね?」

「確かに最初は信じなかった」


 うんうん、そうだよね……

 普通に考えて嘘くさいよね!


「じゃが、天の声はヒューマンに知られていない、ミトロヴァス族のみが知っている秘密を事細かく指摘してきたのじゃ。それも一人ずつ!」

「たっ例えば……?」

「ある者は、お尻に蒙古斑がいまだにあるとか!!」

「!?」

「またある者は、幼き日は魔法総量が絶望的だったのに……

 成人するのと同時に、魔法総量が大幅に上昇したとか!!」

「ほぉ?」


 確かに俺たちは、ミトロヴァス族個々の情報は知らない。

 聖王樹に訪れた時にクエストを受けるNPCぐらいにしか、思っていなかったし……

 確かに、運営……

 ミトロヴァス族を、誕生させた者にしか解らない情報ではあるよな。


「儂はずっと待っていた」

「……」


 う〜ん、なんか嘘くさくなってきた!!

 ウォルガフ、助けてぇ〜


 いや、待て!

 ウォルガフだと『ぼく、わかんにゃいでちゅ!』と絶対言うはずだ!


 はぁ……ウォルガフ、今頃何処で何しているのかな……

 ご飯にはちゃんと食べているのかな?




 ◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎



 一方、ウォルガフは離れ離れになってしまったリュウイを探す為、ロジェとグゥと共にタゥーナ樹海を彷徨っていた。


 当てもなく先頭を突き進むウォルガフ……

 ロジェとグゥは、ついて行くのに精一杯だった。


「ウォルガフちゃん……はぁはぁ……当てもなく歩き続けても意味ないのでは?」


 樹海に飛び降りてから既に半日経っており三人は、ずっと歩き続けていたのだ。

 太陽の光を指さない樹海は方向を狂わせ今、自分たちが今どこに向かっているのか?

 どこを歩いているのかすら、わからなくなっていたのである。

「少し休もう。ウォルガフ」

 そう問いかけるロジェに、くるっと後ろを振り返るウォルガフであった。


「ロジェたんとグゥたんは、ここは初めて来るのでちゅか?」

「あぁ」

「えぇ……」


 タゥーナ樹海は、許可した者以外の立ち入りを禁止されている場所であった。

 表向きは、亡きヒューマンが多く携わっている聖王樹があるから。

 聖王樹から放たれる、気に触れてはいけない……

 との事だが、実際はデューンキーパー族のシュトレンが聖王の樹液を独り占めしようとしていたからである。


 その為に、ロジェやグゥもこの樹海は未知の場所であった。

 ウォルガフ自身も初めて入る樹海だった。

 だが、少しだけ違った事もある。


 それはゲーム時代での体験……

 ウォルガフはLevel.30代と低Levelではあったが、仲の良い仲間と共に良くこの樹海に足を踏み入れ聖王樹のクエストを行っていたのだ。

 だから、自然とウォルガフの足は聖王樹へと向かっていた。


 と、ロジェやグゥに説明した所で理解してもらえるはずもなく……


「リュウイたんの匂いが、こっちからちぃまちゅ」

「なんで、そんな事が解るの? ウォルガフちゃん?」

「うんとぉ〜実は……」


 ウォルガフは口元に両手を塞ぎながらププププッと機嫌良く笑い始めた。

「リュウイたんのポケットの中には、ぼくの大好物。アップルパイが入っていまちゅ」

「……」

「はぁ?」

 もう言わなくても理解出来たロジェは、半分呆れ果て……

 何を言っているのか理解出来ない、グゥの姿がそこにあった。


「アップルパイの匂いは、もうちょっと先の方からしてきまちゅ!」

 ウォルガフの指差す方向にグゥはクンクンと匂いを嗅いで見たが、アップルパイの匂いなど当然する筈もなく、樹の匂いしかしなかったのである。

(わたくし)には全然わからないわ。ウォルガフちゃん、すっすごいわね……」

「えへへへへ、褒められちゃった♪」


 等と言いながら歩いてはいるが、ロジェは上空で起こったウォルガフが放ったオーラについて、考え込んでいた。


 きっかけは、リュウイが樹海に落ちてウォルガフと離れ離れになってしまった事だと言うのは、容易に理解出来るが。

 だが、なぜあれ程のオーラをウォルガフは隠し持っているのか?

 シュトレンは、『フォス族、種族王後継者と呼ばれる事はあるな』とは言っていたが、普通に考えてウォルガフのあのオーラは魔族四天王を遥かに超えた物だった。

 他にもウォルガフには隠された秘密があるのではないか?

 とロジェは考えずにはいられなかったのである。


 ガサガサ……


 草の揺れる音に、三人は警戒体制へと変わる。

 ロジェも疑問を胸の奥にしまい込む事にしたのであった。


「……」

 草を焼き尽くしながらフレアボールが、三人を襲い掛かる。

 だが、攻撃がくるとわかっていた三人は余裕でフレアボールをかわす。

 地面に当たったフレアボールは焦げてプスプス……と黒煙をあげていたのである。


「奇襲は不発だよ……出て来い」

 ロジェの低い言葉に、三人を攻撃してきた者はゆっくりとその姿を現す。



 それは、漆黒肌に先は少し折れていたが、エルフよりも長く伸びた耳。

 腰まで長く伸びた青みがかった銀髪。


 三人はその姿を見ただけですぐにわかった。

 この男はダークエルフだって事を……



 三人は警戒を緩めない、エルフとは違ってダークエルフは好戦的だ。

 男は、三人を睨みつけていた。

「……出て行け……」

「関係ないでちょ!!」

「この樹海は、あるお方が長年ずっと護り続けている聖なる場所……お前たちが来る場所ではない……」

「嫌だよぉ〜だあっ!!」


 男は口数は少なかった。

 だが、忠告を聴かないとなれば実力行使をするしかなかったのである。

 片手をウォルガフに向けながら放たれる魔法は、フレアボール。

いくら近距離からとはいえ、ウォルガフなら簡単に攻撃を避ける事が出来たはずだ。


「あっちぃ! あっちぃ!!」


 自業自得だろ?


 と思いながらもロジェは、ウォルガフの身体を纏わり付く火を消しながら『なぜ、よけきれなかった?』と疑問が頭をよぎっていた。


「こにょやろぉ〜!!」

「待って、ウォルガフこの人に聞きたい事があるんだ」

「そんなのないでちゅょ!! この(ちぃと)はいきなりぼくたちに、魔法をぶつけてきたんでちゅよ!」

「まぁ、落ち着け……ひょっとしたらリュウイさんの事、知っているのかもしれないんだから」

「ぶちゅ?」

 反撃しようとしていたウォルガフは、ロジェに静止された事で少しイラついていたが、リュウイの事を知っているのかもしれない。

 と言うロジェの言葉に渋々反撃する事を諦めたであった。


「質問が……あります。

 俺たちは今、離れ離れになった仲間を探しています。

 ご存知ありませんか?」

「……仲間?」

(わたくし)たちの仲間は、その時に上空から樹海に落ちてしまいましたの」

「……確かに、俺は樹海で気絶していた……一人の青年を見つけ保護した」

「!!!」


 ロジェの考えていた通りビンゴだった。

 この男はリュウイの事を知っている!

 となれば、連れて行ってもらうしかないだろう。とロジェは即座に判断していた。


「案内して頂けますか?」

「仲間……と言う証拠は?」

「しょ……証拠……」

 リュウイと仲間の証拠。

 そんな物、三人は持っていなかった。


「信用するわけには行かない……」

 沈黙が流れる中、ダークエルフの男は早々に立ち去れ。と言い背中を見せ林の奥へと歩もうとした時。

「ごめんなちゃい!!」

 ウォルガフの声が、男の足を止めたのだ。


「リュウイたんを知っているなら……教ちぇて下ちゃい……」

 深々とウォルガフは頭を下げ、男に懇願したのだ。

「ダメだ。証拠を……みせ。貴様、うわっ何をする!?」

 ウォルガフは、リュウイよりも背の高い男の背中に無理矢理よじ登り肩車状態になったのだ。


「貴様……!!」

「証拠は、(たちぃ)かにないでちゅ。でもぼくは(ちん)じまちゅよ?」

「!??」

 困惑する男だった。

「ウォルガフちゃん、どう言う事かしら?」

「この(ちぃと)から、リュウイたんの匂いがちぃまちゅ!!」


 なるほどっ!!


 アップルパイの匂いがすると言っていただけに、普通ならば納得しないはずなのにロジェやグゥは思わず納得してしまった。


「降りろ……!!」

 ウォルガフを掴んで降ろそうとしている所で、ウォルガフはそっと男の首に両手を触り始めた。

 そしてボソリと男にだけ聞こえるように呟く……

「連れて行かないと、ぼくは首絞めまちゅよぉ?」

 もう脅しにしかなっていなかったのである。


 男は渋々、ウォルガフたちを案内する事にしたのである。


「よちぃ、リュウイたんの所に出発ちゅ〜!!」






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