【15】
まず、最初にウォルガフが飛び降りロジェも後に続く。
更にグゥと俺が同時に騎竜から飛び降り始めた。
ライオネットワイバーンは、俺たちの存在に気づき大きな口を開け、着地予定地点に炎の息を吐き出した。
しかし、その炎はグゥの魔法でもある『オーロラシールド』によってダメージを受ける事は、なかったのであった。
グゥは、騎竜から飛び降りたのと同時にオーロラシールドの詠唱を開始。
俺もそれに吊られて、雷撃系の魔法を開始した。
着地と同時にオーロラシールド展開し無傷のまま俺は杖をライオネットワイバーンに向ける。
「ライトニングストリーム!!」
雷撃の渦が直撃。
一瞬ライオネットワイバーンの怯んでいる間に、ウォルガフとロジェによる連携攻撃。
やったか?
と思えた奇襲攻撃だが、ライオネットワイバーンは傷一つつかず無傷であった。
どんだけ硬いんだよ。
「リュウイさん、気持ち切らさないで!」
「あっ! はい!」
グゥの掛け声に、俺は再び詠唱を始める。
今度は、電撃系の四コンボだ。
まず最初に、[ライトニングストライク]と詠唱を始め、発動段階までになったら一旦止める。
そして、次は[ライトニングストリーム]の詠唱だ。これも一旦止める。
これで、準備万端いつでも魔法が発動できる。
「ウォルガフ!!」
俺はウォルガフに合図を送ると、ウォルガフは頷いてくれた。
「ライトニングアロー!!」
杖から省略によって発動された電撃は、ライオネットワイバーンに襲いかかる。
それをライオネットワイバーンはいとも簡単によけたのだ。
予想の範囲内だった。
元々省略で発動したから防がれる事は分かっていた。
俺は本の一瞬……極々僅かな隙が欲しかっただけなのだ。
次の魔法を直撃させる隙を……
すかさず、先ほど詠唱完了しているライトニングストリームを発動。
ライオネットワイバーンの動きを一瞬だけ封じる。
「ライトニングストライク!!」
すぐ様、二発目の魔法を発動。
雷は複数の球になりライオネットワイバーンに向けられる。
クラクラ……
急速に魔法力が減って行くのがわかった。
だが、俺の度本命は次なのだ。
案の定ライオネットワイバーンは、俺の三連コンボも耐え殆ど無傷であった。
そこに、俺はライトニングボールを発動する。
狙いのはウォルガフの魔王の大剣だ。
魔王の大剣は、ライトニングボールを受け止め電撃を纏い始める。
「うおっりゃぁぁぁぁっ!!!」
ウォルガフは叫び声と共にライオネットワイバーンを、斜めに斬り降ろしたのである。
黄金に光り輝く鱗から壊れた音が鳴り響いた。
「よしっ!!」
と……思ったのだが、ウォルガフの攻撃は胸の辺りに一欠片だけ小さな小さなヒビをいれたのみだった。
俺の顔をチラリと見てきたロジェは、無言でアイコンタクトを送ってくる。
そのまま、ロジェはライオネットワイバーンのヒビに追撃しようと急接近していたのだ。
「フレアボール!」
咄嗟に発動した火の球を、ロジェの拳目がけて放つ。
たちまちロジェの拳は炎を纏い、渾身の一撃。
「はぁっ!!」
凄まじい衝撃波と音が、響き渡った。
「いってぇ〜」
ライオネットワイバーンを殴った拳の手首をフリフリしならせながらと、ロジェは痛そうな顔をしていた。
「硬すぎでちゅね」
「あぁ……」
どうやら、火炎系より雷撃系の方が効果があるようだな……
「リュウイさん! 火炎系ではなく、俺にも雷撃系を!!」
ロジェも俺と同じ事を考えていたようだ。
おれは黙ってそれに頷き、ライトニングストライクの詠唱を始めた。
一方的な展開には、当然ならなかった。
ライオネットワイバーンも反撃してくるのは当然の事である。
翼を大きく広げ突風を起こし、俺たちが怯んだ隙に前衛であるウォルガフとロジェに鋭く尖った爪が襲いかかる。
「くっ……アイシクルアロー!!」
咄嗟に省略の魔法で援護射撃。
爪目掛けて放ったのだが、突風に負けてライオネットワイバーンに届く前に割れて粉々に散ってしまう。
くそっ! 省略じゃダメか。
やはり詠唱じゃないと威力がない!
鋭い爪は、ウォルガフとロジェを掻きむしるように直撃。
「うわっ!!」
血吹雪をあげ宙を舞う二人に、ライオネットワイバーンの尖った尾が突き刺さろうと襲いかかる。
「ーー精霊の息吹。可の者を回復せよ……ヒール!!」
グゥの回復魔法は、ウォルガフとロジェをたちまち回復させて行く。
「つぅ……」
回復なぞお構いなしにライオネットワイバーンの尾は、ウォルガフの右胸を捉え貫こうとしていた。
突風が巻き起こる中、宙に浮いているウォルガフに回避は不可能であった。
そんなウォルガフの窮地を知っているはずのロジェは、ウォルガフを助けようとはせずに次の攻撃体制に入っていた。
「うんちょ……」
ウォルガフは身体を捻り、大剣の刃を滑らせるかのようにライオネットワイバーンの攻撃を避け、その間にロジェは尾に一撃! を与えたのだが……
これまた無傷であった。
ウォルガフとロジェは結構高い戦闘能力を持っているとは思うんのだが、なぜこうもダメージが通らない……
ふと、ゲーブングの冒険者ギルドで会ったヴァリエートの言葉を思い出す。
『フォス族は弱い……』
だからか!?
いやいや、そんな事はない。
最終的にヴァリエートは、ウォルガフの力を認めてくれた。
だから、ヴァリエートは俺たちにライオネットワイバーンの居場所を教えてくれたのだ。
ウォルガフを疑うなんて俺は、大馬鹿者だ。
偉そうにウォルガフにウォルガフらしくしろ。なんてよく言えたものだ……
俺は、ウォルガフ。そしてロジェを信じて、今出来る事を最大限に発揮して魔法を発動する。
それだけだろ!!
一瞬の迷いは時には、残酷だった。
グゥに『気持ち切らすな』と言わればかりだったのに。
俺を狙って放たれたライオネットワイバーンの炎の塊を、避ける事は出来なかった。
殺られた!!
と思ったが、俺の身体は無傷だった。
ウォルガフが後方まで下がり大剣を地面に刺し俺の前に立ちふさがり、攻撃を庇ってくれたんだ。
「……ウォルガフ?」
「あちゅい! あちゅゅゅゅゅゅいぃぃぃ!!」
グゥの回復魔法で、ウォルガフの体力は全快。
「ふぅ、ありがとでちゅグゥたん」
「がんばって、ウォルガフ君」
「ウォルガフ……その……あの……ごめん……」
「大丈夫でちゅ! リュウイたんが無事で良かったでちゅ!!」
なぜそこまでして、ウォルガフ……お前は俺を守る?
下手したら今の攻撃でお前、死んでいたかもしれないんだぞ?
死んだら、美味しいご飯も……
大好物のアップルパイも食べれなくなるんだぞ!?
「よちぃ!! リュウイたん、反撃のチャンス作って下ちゃいね!」
ウォルガフはそう言って、再びライオネットワイバーンに向かっていく。
そして、ロジェもライオネットワイバーンの攻撃を避けつつ、攻撃をしながら……
「次はないぞ! リュウイさん!」
と低い声が俺の腹に響いた。
俺がライオネットワイバーンを倒すチャンスを作り出す……??
出来るのか?
ーーーーーー
戦闘を開始してから、どれくらい経っただろうか?
既にMPポットは三本使っていた。
グゥにも俺は二本のMPポットを使用している……
俺のMPは約500近くある。
一回の回復に満タンになる魔力を使ったと言うのに、ライオネットワイバーンは殆ど無傷に近い状態であった。
流石に精神的に疲労感が否めない状況に陥っていた。
さてと、どうするかな……
俺のMPポットが尽きない限り、グゥさんの回復は尽きる事はない。
持久戦になるのだろうか?
いや、ちょっと待て!?
何かがおかしいぞ……
ガルシアさんたちは俺たちよりも、もっと高LevelPTのはずだ。
ガルシアさんがまず、ライオネットワイバーンの標的となり鉄壁の防御を繰り出す。
その間に、俺よりも遥かに高い火力のある魔導師のミラージュさんによる魔法攻撃……
いくら、火炎系が効きづらいからと言った所でそれは俺に当てはまった事であって、ミラージュさんに当てはまるとは到底思えない。
それにPTは基本5人だ。もう一人同じぐらいの火力がいるはずだ……
だとしたら、ガルシアさんたちは本当にライオネットワイバーンに殺されたのだろうか……?
いかんっ!
余計な疑問は、また足手まといになってしまう。
ただでさえ戦力になっているのか、かなり微妙なのだから……
「叩いても叩いても、効いているようには思えない硬さだな」
「ええっ、そうでちゅね」
グゥは休まずに回復と補助魔法を交互にやってきてくれている。
記憶もなく三日間で魔法は覚えたと言ってはいたが実際ボス戦闘となるの、使い勝手は悪いはずだ。
なのに、一言も文句を言わずに後方支援に徹していてくれている。
そろそろ決着つけないとな……
今の段階で、俺の魔法が効くのは電撃系の魔法だ。
ライトニングボールの詠唱は約二秒……二回溜め込むとなると四秒……
剣に纏っていられる時間は、約十秒足らず……
移動距離とかを考えると、ギリギリか……
そして、俺の考えでは上手くいけば倒せる……はず。
でも失敗すればロジェが、一番危険になってしまう。
ロジェが危険になれば、ウォルガフも当然危険になる……
二人なら『迷うくらいならやってよ!!』と言うのだろうな……
よし、決めた!
「グゥさん、あの二人の回復を、後……」
その他にも俺はグゥにお願いした。
「わかったわ」
無茶難題をグゥは、了承してくれたのだ。それだけで俺はやってみようと思った。
「上手くできるかわかりませんが、これで終わらせます!!」
俺は言い切った。
ライトニングボールを詠唱し二回分先に杖に溜め込む。
「ロジェ、行くよっ!!」
ライオネットワイバーンの攻撃を避けつつも、反撃しているロジェに俺は合図を送る。
「いつでもっ!!」
「雷鳴よ轟け、雷の如く敵を貫けっ……ライトニングボール!!」
杖から詠唱した分と先に溜め込んでおいた分。計、二回分のライトニングボールが、ロジェを包み込む。
「いってぇ!!」
痛がるロジェにすまんっ。と思いながらもすかさず詠唱を再開。
電撃を帯びたロジェの全身は、パチパチと電気を帯びていた。
「ったく、無茶しすぎじゃない?」
ロジェは俺の方を向きながら一言……そう言いながらライオネットワイバーンに回転しながら、ヒビの所に思いっきり体当たりして行く。
「ーー敵を貫けっ……ライトニングボール!!
先程のロジェ同様に二回分のライトニングボールを、今度はウォルガフの大剣に直撃させる。
「うわっ! ビリビリでちゅ!!」
ブルブル……と身体を震わせながらウォルガフも同様に全身に雷を纏う。
ロジェの体当たりによって、ヒビは漸くウォルガフの大剣で貫けるぐらいの急所と言う名の攻撃箇所となって行く。
そんな絶好の好機を、ウォルガフは見逃すはずはなかった。
「うおっりゃぁぁぁぁっ!!!」
大地を思いっきり蹴り、稲妻の如く突撃しウォルガフはロジェがこじ開けた急所に剣を突き刺していく。
大剣からライオネットワイバーンに電撃がほとばしる!
よしっ! やっただろう!!
確信はまだもてないが、倒すには十分な一撃だったと思う。
「ぐおぉぉぉぉぉぉぉおっ!!」
ライオネットワイバーンは雄叫びを挙げその場に倒れこみ、やがてその身体は尾の方からゆっくり光の粒へと変わっていった……
そんな姿を、俺とグゥはウォルガフやロジェの近くにまで行き見守る事にした。
やっと倒せた……鱗硬すぎだよなぁ〜
「リュウイたん! やりまちいたねぇ!!」
「ああっ、なんと倒せてよかったよ」
「でも最後の電撃は、キツかったなぁ〜」
「うんうん、ビリビリしすぎまちぃた」
「ごめん、手加減したらダメなような気がして……」
「元々手加減なんて出来ない癖に!」
「あっ! ひっでぇな。ロジェはっ!」
「あはははははっ!!」
と笑い声が響き渡る中、ライオネットワイバーンの身体は完全に光の粒へと変わっていく……
ふぅ……勝てたぁ……
空を見上げ、達成感に浸る。
「リュウイたん?」
不思議そうな顔をしながらウォルガフは俺の顔を見上げていた。
「あっ、ごめん。さてと頑張って帰ろうか……」
と俺が言った瞬間だった。
本来、倒され完全に光の粒へと変わってしまえば、後は消え去るのみなのだ。
なのに……
光の粒は、消え去る事なく再集合し始めた。
更に信じられない事に光の粒は、なにか別な形へと変えようと光り輝き始めている。
「なっ……!」
この場にいる誰もが信じられない光景に呆然と立ち尽くし見守る中、光の粒は再構築を果たしたのあった。
「ふぅ……」
男だ……
ため息と共に男は、ゆっくりと俺たちに近づいてくる。
禍々しい魔の波動を纏いながら一歩……
蒼白い皮膚に、鋭く尖った手足、白色に少し金髪が混じったような逆毛。
赤色の目は不気味に光り輝き、右頬から右目にかけて大きなタトゥーみたいな痣。
背中には、黒い羽を小さく生やしていた。
その姿形は四種族のどこにも当てはまらず……
更に、エルフやドワーフとは到底思えなかった。
溢れんばかりの膨大な底のしれない程の魔力……
俺はこの魔力を、身を持って味わっている……
あの時、何もできないまま殺された……
そう、目の前にいるわけのわからぬ男は、魔王そっくりな魔力を持っていた。
なっなに……こいつ……!?
後退りしながら、俺は逃げ出したくなった。
なんとか隙をつき、全速力で逃げ出したかった。
だが、もうそれは手遅れだった。
足が大地に根を下ろしたかのように動かないのだ……ピクリとも……
「ふむ、風は心地よいな……」
男は、静かに俺たちに目線を向ける……
それと同時に男の頭上から漆黒の闇の球が大きく膨らんでいく。
男は何も言わず漆黒の闇を俺たち放つ。
まるで、この世から消し去ろうとしているかのように……
嫌だ……俺は、こんな所で死にたくない……
「みんな逃げるんでちゅ!!」
ウォルガフの言葉に、大地に根を下ろしていた足は急に動き出した。
ロジェを引っ張りながら漆黒の闇の球を避け、またウォルガフもグゥと一緒に避けたのであった。
「ウォルガフ、何が何だが俺にはさっぱりわからないよ? 俺たちに確かにライオネットワイバーン倒したよな? なのに、なんでライオネットワイバーンは別な者に姿形が変わるんだよ!?」
「ちょんなの、ぼくにもわかりまちぇんよ!」
俺もウォルガフもテンパっていた。
どうしたらいいのかわからなかいのだ。
グゥは、既に呆然と立ち尽くし困惑している。
いつも冷静陣着なロジェは、男に対して跪いているし……
一体どうなっているんだよ!
「とっとりあえず……ウォルガフ。逃げの一択でいいかい?」
「………」
「ウォルガフ?」
なぜそこで、無言になる?
まさか倒そうなんて思っていないよな?
それとも、お腹が空いたとか言うのか??
「リュウイたん……ぼくもう限界でちゅ……」
「……なにが?」
やはり……ご飯か??
ウォルガフはそれ以降何も言わず、ロジェと同様に男に対して跪いたのだ。
「!?」
「ふむ……フォス族のガキ共は、我の事を理解しているようだな……」
「りっ……理解している?」
声を出すのも勇気がいりそうなぐらいだ。
そう、これは恐怖だ。
怯えて声も出せない状態の中、なんとかしなきゃいけない。
そう思うと、声を震わせながらも発する事が出来た。
「なぜ、貴様とそこのムーンサン族の女は我に跪かない? 跪けっ!! 頭が高いぞ我を誰と思っている」
怒気と言う名の覇気に、蹴落とされ跪きそうになる。
グゥは、ガタガタと身体を震わせながら跪き始めた。
「なぜ、貴様は跪かない……?」
なんで、見ず知らずの男に俺は跪かないといけない?
怖いけど……
すっごく跪きたいけど……
なんだろうか?
……ヒューマンとしてのプライドが、そうさせてくれなかった。
というのが一番しっくりしそうだった。
「我は、魔王の後継者候補なり……」
「!!」
こっ後継者候補!?
「そして、三十六番目の子成り……」
子供!!! 三十六番目のご子息!!
「この世は全て魔王により支配されている、魔族は皆我に付き従うものだ」
「……」
なるほど、俺がなぜ跪かないのか良くわかったよ。
ヒューマンとして、俺は跪かない! そう跪いたらダメなんだ。
「まぁ、良い」
良いのかよ!!
「お前たち皆、我の血となり……そして力の源となれ!」
男は再び漆黒の闇の球を、作り出していく。
だが、それは先ほどの比ではなかった。
でかく、とてつもなくでかい……
今いるこの場所、全てを覆い尽くすぐらい大きな漆黒の闇だった。
なんとかしないと……
「ウォルガフ! ロジェ!! グゥさん!! 俺を置いて逃げろ!!!」
無意識に叫んでいた。
勝算など全くなかったが、このままここにいれば全滅するのは明白だ。
それこそガルシアたちの二の舞になってしまう。
そう思ったら咄嗟に逃げろ。と俺は三人の前に立ち叫び声を上げていた。
漆黒の闇の球は、ゆっくりと近づいてくる。その距離約三メートル……
『血となり、力の源になれ……』と言う言葉……
もしかしたら、ガルシアたちはこの男に消されたのでは?
そう……この漆黒の闇の球に……
俺もあの漆黒の闇の球に触れたら、消されるのだろうか?
そんなの嫌だよ。
俺はまだ魔王に会ってすらいない。
家だってあと少しで完成だ。それも見たい。
ウォルガフと、色んな所を見て周りたい。
もっと強くなりたい……
クリスタルに封じられているヒューマンの皆を助け出したい……
やりたい事、やり残した事はまだまだ沢山あるんだ。
こんな所で俺は、消え去りたくないよ………
だが、そう思っていた所で実際この状況どうする?
……なにか手があるはずだ?
そう、例えばまだ未設定の俺のサブ職業とか?
いやいや……サブ職業を設定するにしても、何にする……?
守護剣士か?
……
いやいや、ダメだろ。
最強の盾使いであるガルシアが本当に消されたのだとしたら、俺の頑張りでなんとかなる相手ではない。
あの漆黒の闇の球から逃れる方法……
結界か?
結界士は、確かに結界を作る事でその攻撃をLevelに応じて防ぐ事が出来る。
ゴクリ……
ダメだ……漆黒の闇を防ぎ切る程、俺は高Levelじゃない……
くそくそくそくそ……
どうする、どうすればいい!?
漆黒の球は、もう目前に迫ってきている。
チラリとウォルガフたちの方を俺は見つめた。
ウォルガフとロジェは、俺の逃げろと言う言葉を聞いたはずなのに逃げずに跪き、この状況を受け入れようとしている。
くそっ、魔族の忠誠心って言う奴か……
結界……結界士でなんとか打破出来るか……
いや、結界士はダメだ……
そもそも俺は結界士の魔法なに一つ覚えていない……
発動出来るはずないだろ。
どうする……
どうする……
剣でぶった斬る?
ウォルガフじゃあるまいし……
魔法で消し去る?
……無理だな。
「ガルシア……あなたはこうなる事を予想していたの……?」
ブツブツとグゥは独り言を、言っている。
んっ? グゥさん。
今、ガルシアさんの名前を……?
もしかして記憶が……?
足先から俺の身体はゆっくりと消えていく……
くそっ! くそっ!
嫌だ、嫌だよ……こんなの……
「ごめん……ハグ……」
完全に漆黒の闇に包まれたのと同時に『転生者』を発動する事なく俺のHPは、ゼロと表示されてしまった。




