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魔王に再び挑みたい!  作者: kiruhi
目指せ、Level.50![ 上 ]
26/77

【10】

 ジグ山脈……

 ゲーム時代は、『シヴァルドラ山脈』と呼ばれていたらしい。


 シヴァルドラ山脈なら俺も知っている。


 シヴァルドラ山脈とは、標高7000mとかなり高く、長さ2400kmと言うと巨大な山脈であり、出てくる魔物も、Level.50〜80ぐらいと言った所である。

 そしてLevel上げに必要とされる経験値も多く、巨大な山脈が故に無数の洞窟がある事から魔物の取り合いという事も少なく超人気狩場であった。

 このシヴァルドラ山脈を超えるとグゥがいるゲーブングに到着する事が出来る。


 良くハグとシヴァルドラ山脈に二人で来たな……


 朝日が昇り始めた頃……

 俺は目を覚まし小屋から出て、眼下そびえ立つシヴァルドラ山脈を見上げていた。


「リュウイさん、随分早いね」

 ロジェは、身体を屈伸させながらそう俺に話しかけてきた。

「まぁね……」


 腹ペコの二人の為にも、そろそろ朝ご飯を用意しておかないと朝から騒がしそうだしな。

「そろそろご飯用意するから、ウォルガフ起こしてきてくれる?」

「わかった」

 ロジェにウォルガフを起こして来てもらう間に、俺はアイテムボックスから朝ごはんを取り出す。

 まさかロジェと合流するとは思わなかったが、かなり多めに用意しておいたのが良かった……


「おはようでちゅ〜」

 まだ眠たい目をこすりながらウォルガフは起きてきた。

「おはよう、ウォルガフ。顔を洗ったら朝ごはんをご飯食べるぞ」


 まぁその一言で、ウォルガフの眠気が吹き飛んでいったのは言うまでもなかった。



 食事を終えた俺たちは、早速出発する事にした。

 上手く行けば今日中にゲーブングに着く事が出来るかもしれない。


 騎獣貸出屋の店員さんの説明曰くグリフォンこと、騎竜は夜になると何処かに行き自由に過ごしているらしい。

 寝どころを自ら探し疲れを癒すそうだ。

 オカリナの音を聞くと、どこにいたとしても俺たちの前に戻って来てくれるのだ。

 実によく調教されている。


 オカリナを取り出し、騎竜を呼び出そうとすると……

「あぁっ〜ん!! 待ってでちゅ〜」

 ウォルガフは両手をパタパタと挙げながら俺を制止してきたのだ。

「どうした?」

「ぼくが吹きたいでちゅ〜」

「……」


 俺も吹きたかったのに……


 渋々ウォルガフにオカリナを渡すと、えへへへへっと笑顔で実に嬉しそうな顔をしていた。

 ウォルガフはオカリナを口にくわえ、大きく息を吹き込んだ。


 ブォォォォォッ!!


 音は鳴らなかったが、息が漏れる音だけが思いっきり鳴り響いたのであった。


「ふへぇ……」


 息を吐きすぎたらしい……

 相変わらず、加減というものを知らないようだ。

 常に直球! 実にウォルガフらしい。


 暫くするとバサッバサッと羽ばたき音と風が辺りを取り巻く中、騎竜は俺たちの前に現れたのである。

「今日も一日頼むな」

 騎竜の頭を優しく撫で回していると、既にウォルガフは乗り込んでいた。

「特等席でちゅ!!」

 一番前に座り込み今日も朝から実に元気だ。


 ロジェは少し元気がなかった。

「どうした? ロジェ?」

「いや、なんでもないよ……」


 ふむ……


 俺はロジェの頭をくしゃくしゃと撫で回し始めた。

「ちょっ! リュウイさん!?」

 そしてロジェの身体を持ち上げ肩車をしてあげた。

「リュウイさん??」

「今度はロジェがオカリナを吹いて、騎竜を呼んでね」

「なっ! なっ!?」


 やはり、図星だった。

 ロジェもウォルガフ同様、騎竜を呼びたかったんだ。


「おっ俺は別に……」

「いいなぁロジェたん……」


 照れるロジェに、羨ましがるウォルガフであった。


 気を取り直して、騎竜に乗り俺は『ジグ山脈を越えてゲーブングへ』と念じると、バサッバサッと騎竜は羽ばたきジグ山脈へと向かう事にしたのであった。




 ◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎



 順調に騎竜は高度を上げ山脈を越えようとしていたのだが、突然俺の命令を無視して高度を下げ始めたのである。

「どうした??」

 と聞いても当然答えてくれるはずもなく、山脈の中腹ぐらいで騎竜は大地に降りてしまったのである。

 そして、俺たちを無理矢理降ろし何処かへと飛び立って行くのであった。


「あら? ありゃりゃ?」

「ふむ、どうしたんだろ?」

「あれを見て!」

 そう叫ぶのはロジェだった。

 ロジェの指差す方向を見ると、上空には大量のケツァルコアトルスが飛んでいたのだ。

 騎竜が高度を下げずに飛んでいたとしたら、きっとケツァルコアトルスと戦闘になっていた事だろう。

 まぁ戦闘になったとしても、ウォルガフとロジェの事だから軽く一捻りしてしまうそうだがな。


「近くに巣があり(ちょ)うでちゅね!」

「大量のケツァルコアトルスを見る限りそうだろうね」

「……巣って、ケツァルコアトルスの?」

「うんっ!」


 張り切って、うんっ! と言われてしまったな。



「リュウイたん」

「なんだい? ウォルガフ?」

「ケツァルコアトルスを退治ちぃない限り、騎竜たんは飛んでくれないと思いまちゅ」

「なんで?」

「勘でちゅ!!」

「ふむ……勘ねぇ〜」


 確かにウォルガフの言う通りなのかもしれない。

 騎竜は、ケツァルコアトルスが来る事を感づき高度を下げたのだとしたら……

 そして、騎竜……グリフォンの天敵がケツァルコアトルスだとしたら?

 安全と感じない限りオカリナを吹いても、迎えには来てくれないだろうな……


「………つまりウォルガフとしては、ケツァルコアトルスを退治したいと?」

「そういう事だね」

 ってウォルガフではなくロジェに冷静に言われてしまった……


 まぁいい、ウォルガフの強さもロジェの強さも俺は知っている。

 苦戦する事はないだろう。

 俺は俺のやれる事をやるだけだ……


 ジグ山脈は石がゴロゴロと落ちていて、かなり道が悪かった。だが、美しい山並や絵画のような峡谷が続いており、疲れを吹き飛ばしてくれそうだった。

 この美しさは、上空からでは見る事は出来なかった事だと思う。



 山頂を目指して歩く事三十分……

 ゲームの時は疲れるということ事態なかったから、どれだけ歩いても平気だったが、少し疲れてきた。

 前を歩く二人は何故か疲れを見せる事はなかった。


 なぜっ!?


「退治〜」

「ケツァルコアトルス退治ちぃ〜」


 どうやら、これからの戦闘をとても楽しみにしているようだ……


 そして、遂にケツァルコアトルスの巣へと到着したのであった。

 その数、約50匹ぐらい……Levelも200.150.187とかなりバラツキが見えた。


「ちゃてと……」

「いつものやるか?」

「はいでちゅ」

「へっ? いつものって?」

「決まってまちゅ、ロジェたんとぼくでどちらが多く倒せるかの競争(きょうちょう)でちゅ!!」

「うむ……」


 そう言って二人ともケツァルコアトルスに向かって、攻撃を開始したのである。


 ってマジかよ…… 君たちには作戦とか、そういうものはないのっ!?


 あっという間だった……

 ほんの五分ほどで、巣にいたケツァルコアトルス50匹は全滅したのであった。

「あははははっ……」


 無茶苦茶だぁ〜


「25匹でちゅ〜!!」

「俺も25匹〜」

「ぬぬっ、引き分けでちゅか!?」

「そうみたいだね」

「……ったくあっさりと普通倒すかなぁ〜」

「だって、弱いでちゅもん」

「ねぇ〜」


 その自信が、いつか過信に変わらないように祈るよ……


「さてと……」

 巣を見渡し、ケツァルコアトルスは全滅した事を再度確認する。

「騎竜呼んでも大丈夫かな?」

「そうでちゅね……多分、大丈夫だと思いまちゅ」

 ウォルガフの大丈夫を聞いた俺は、オカリナを取り出すロジェに渡す。

「……」

 ロジェは暫くオカリナを見つめた後、俺の顔を見てきた。

「ロジェ、オカリナ吹いてくれるかな?」

「わっわかった」

 冷静に返事を返してはいたが、ロジェの口元は少し緩んでいた。

 やはり、あの時吹きたかったんだろう……


 ブォォォォォッ!!


 ロジェは思いっきりオカリナに息を吹き付け、空気の摩擦音だけ聞こえてきた。

 しかし、すぐ来てくれるはずの騎竜は来ず、代わりに別なのが俺たちの上空に現れたのである。


「なにこいつ!?」

「うひょでちゅ〜」

「こいつは……」


『キング・ケツァルコアトルス』Level.300


 ゲーム時代にはキング・ケツァルコアトルスなんて言う魔物はいなかったが、その名の通りのケツァルコアトルスの上位種だとは思う……

 そして巣でロジェがオカリナを吹いてしまった事から、その音に反応しキング・ケツァルコアトルスを呼び出してしまった……

 そんな所かな。


 だけど、こいつ……ウォルガフよりLevel高いし……


「ふみゅ」

 バサッバサッと羽ばたけば、暴風が俺たちを襲いかかってくる。

 吹き飛ばされないように立っているだけで俺は精一杯だった。

 ウォルガフはかっこ良くふみゅ。

 とか言っているが、俺の足元に隠れ風よけにしながらロジェと上空を飛んでいるキング・ケツァルコアトルスを見つめていた。

 そして、二人でコチョコチョと話をしていた。


 こんな時に、一体何を……


「よしっ! リュウイたん!!」

「んっ、なに?」


 頼むから、こんな時にお腹空いた……はやめてくれよ。


「リュウイたん、まずあの魔物に魔法攻撃をして下ちゃい!」

「はぁいぃぃ?」


 そんな事したら、俺にタゲ……いや、標的になってしまうじゃないか!?


「思いっきりやって下ちゃい!」

「いや、あの……ウォルガフ……?」

「ぼくを(ちん)じてくださゃい」

「……」


 戦闘においては確かにウォルガフの方が上だ……

 そのウォルガフが、そう言うんだからやるしかないだろ?


 キング・ケツァルコアトルスに杖を構える。

 そして……

「フレアストライク!!」

 フレアボールより大きな高温の火の球が、キング・ケツァルコアトルスに向かって放たれて行く。

 だが、突風により俺のフレアストライクは届く事はなかった。

「……」


 ありゃ……


 じとぉ〜とウォルガフからの白い目が俺を襲う。

「つっ……次はちゃんと当てるよ」

「うちゅ!」

 再び杖を構えフレアストライクを唱えようとすると、ロジェがそれを制止してきたのであった。

「さっきの同じ方法をやるつもりなら、それは何度やっても同じだよ」

「えっ?」

「魔法詠唱省略していたら、その威力は半減だよ」

「えっ? えっ?」


 どう言う事??


「説明は後でしてあげるからさッ、とりあえず省略しないで魔法唱えてよ」

「省略って……つまり発動呪文って事?」

「そういう事だね」

「わかった」


「赤く燃え盛る緋色の力……」

 俺の身体から杖に魔力が注がれて先端にある宝石へと集められ行くのがわかる。

「炎は荒ぶる紅蓮の塊と化し……」

 一点に集められた魔力は、早く解放しろ。

 と、今にも飛び出してきそうな勢いを、俺は押さえつけるので精一杯だった。


 もうちょっと……で詠唱が完了するから、待てよっ!!


「我が前の敵を焼き払え……フレアストライク!!!」

 俺の言葉と共に杖から巨大な火の球が出来上がり、キング・ケツァルコアトルスに向かって放たれて行く。


「なっ!!」

 それはいつも俺が放っていた、フレアストライクよりも高濃度の高圧縮で凄まじい威力だというのは、見てすぐにわかった。


 キングケツァルコアトルは、雄叫びをあげフレアストライクを消滅させようとしていた。

 だが、ウォルガフとロジェの攻撃により多大なダメージを受けていたのだ。

 瀕死で身動き出来ぬまま、フレアストライクを直撃したキングケツァルコアトルは消滅して行ったのである。


 Levelアップ音が響き渡る中……


 いつの間にあの二人は……ったく、敵わないなぁ〜


「上手く行ったでちゅ〜」

「うんうん、出来たねぇ〜」

「今、なにやったの?」

 一人だけわからない俺は二人に質問してみた。

「うん(ちょ)ねぇ〜」


 俺がフレアストライクの詠唱中に二人は、隙を伺っていた。

 キングケツァルコアトルは、俺が放とうとしている魔力に一瞬……そうほんの一瞬たじろんだのだ。

 その隙を、ウォルガフとロジェは見逃さなかったのである。

「ロジェたん!!」

「おうっ!!」

 掛け声をかけ、アイコンタクトを交わした二人は、ウォルガフは空を飛びロジェは地面を駆け抜けて行く。

 その瞬間、俺の杖からフレアストライクが発射されたのと同時に、ウォルガフは上から大剣を振り下ろし、ロジェは高速の拳を繰り出していたのである。

 まさに刹那の一瞬で、キングケツァルコアトルは瀕死の状態となり俺の魔法が、トドメとなり消滅して行ったのである。


「そんな攻撃、いつの間に……」

「えへへっ、こんなのいつもやっていまちゅよねぇ〜」

「うんうん、余裕〜余裕〜」

「すごいやぁ〜」

 と感心しているのは、俺だけだった。

 二人の興味は、もう別な物に移っていたのである。

「リュウイたん、リュウイたん!!」

「んっ?」


 今度はなにさっ……お腹空いた。か?


「えっとでちゅね。この石を魔法で温めて下ちゃい!」

 そう言って指差してくるのは、平べったい石で五m四方ぐらいの大きさであった。

「何するの?」

「いいからぁ、早くぅ〜」

 訳のわからぬまま俺はウォルガフとロジェに急かされつつ、フレアボールを発動し石を高温まで温めた始めた。


 そろ〜り、とウォルガフは高温に熱せられた石をちょんと触り始めた。

「あっち!!」


 そりゃ……熱いよ……


「ロジェたん、そろそろいい感じでちゅよ〜」

「わかったぁ」

 そう言ってロジェは自分の身体よりも大きな卵を一つ持ってきたきたのだ。

「……」


 熱せられた平らな石……そして、ロジェが持ってきた卵……

 まさか……!?


「その卵って……?」

「決まっていまちゅ、ケツァルコアトルの卵でちゅよ」

「……もしかして?」

「いひっ……なつかちぃでちょ?」

 ウォルガフの笑みはニヤニヤと、可愛いとはとてもではないが思えず強いて言うのならクソ生意気な悪ガキ……

 そうな感じの顔をしていた。


「ウォルガフ、行くよぉ〜」

「いいでちゅよぉ〜ん」

 ロジェは卵を宙へと放りだし、それをウォルガフが手刀で殻だけを綺麗に割る。

 殻からは卵白、卵黄が飛び出し高温に熱せられた石へと落ちていく……

 ジュワァ〜と音と共に煙が上がり、黄身と白身が共に平円状となり見た目は目玉のようになって行く。

 あっという間に懐かしい目玉焼きが完成したのだ。


「……」

 ケツァルコアトルの卵食べれるんだ……

 ウォルガフとロジェは食べ慣れているのだろうか、とても美味しそうに食べている。

 いや、この二人はそもそも食事と言う物は大抵いつも美味しそうに食べているではないか……


「リュウイたん、食べないのでちゅか?」

「天然の、しかも採りたてのケツァルコアトルの卵は美味しいよ、リュウイさん」

「……」

 恐る恐る一口食べて見た……

「!!」


 白身は、黄身を優しく包み込んでいたが俺の口の中で、黄身はトロリと溶け出して行く……

 こっこれは……!? 思わず醤油!!

 と叫びたい程、美味かった。


「リュウイたん、もう一個食べまちゅか?」

「……いや、もうお腹一杯だよ」

「そうでちゅか? じゃ、ロジェたんもう一個たべまちゅかぁ〜」

 ウォルガフとロジェが再び目玉焼きを食べるのに夢中になっている頃、アイテムボックスにコッソリと俺はケツァルコアトルの卵をしまい込んだのである。


「ふぅ〜」


 俺は、満腹になったお腹をさすりながら、崖の淵まで歩いて行き壮大な景色を堪能する。

 眼下数十メートルに見える切り立った無数の崖の麓……


 ここを超えると、ゲーブングに着くのかな?


 満腹になった二人に声をかけ、俺たちは再び騎竜に乗り込んだのである。


 そして、騎竜に乗りながら俺は、ロジェに先程の魔法について聞いて見た。

「ねぇ、ロジェ」

「なんだい?」

「キング・ケツァルコアトルスとの戦いの時に、魔法詠唱を省略すると威力が半減って言っていたけど、どういう事?」

「俺は魔法使いじゃないから、詳しい事はわからないんだけど……魔法には三種類あるんだよね」

「ほほぉ〜それは?」

「詠唱、無詠唱、省略……」

「んっ? 無詠唱と省略って同じじゃないの?」

「全然違うよ」


 へぇ〜そうなのか……


 ロジェは知っている限りの魔法の事について教えてくれた。

 そもそも魔法には、詠唱、無詠唱、省略ってのがある。

 詠唱は、魔力を練り上げる為に長い発動呪文を詠唱し、そこで初めて魔法を発動する事が出来る。

 無詠唱は、文字通りに魔力を練り上げるのに必要とされる詠唱をせずに、魔法を発動するもの。

 しかし、詠唱をする事なく直ちに魔法を発動するようには見えるが、実際はその魔法の(ことわり)を理解しなければ、魔力を練り上げる事も出来ず無詠唱など出来るはずもないのである。

 そして、省略……

 (ことわり)を理解していない時に発動するものであって、魔力を練らずに発動する為当然威力は半減するが、メリットとして長い詠唱を唱えなくても魔法を発動する事が出来るのだ。


 俺は今までと無詠唱だと思っていたのだが、実はそうではなく省略(・・)の方だったらしい。


「それで、その(ことわり)ってどうすれば……?」

「……最初に言ったよね? 俺は魔法使いじゃないって……」

「……」


 要するに、ロジェはわからないって事か……


「まぁ、先程のみたいな大きな魔物との戦闘の時は、俺とウォルガフを信じて省略ではなく詠唱した方がいいと思うよ」

「なるほどね……」


「あっあともう一つ質問なんだけど……

 俺と北の洞窟で初めて会った時、ロジェは俺の魔法を遅いと言っていたよね? あれはなんで?」

「あれは……」


 省略は詠唱しなくとも魔法を発動する事ができる。

 これは無詠唱と同じなのだが、無詠唱は何度も言うようだが、その(ことわり)を理解した上で発動と同時に最高火力を発揮する事が出来る。

 しかし、省略は発動してから魔力を練り上げる訳であって威力は半減……

 更に数秒の時間を必要とし、そこで無詠唱と大きな差が出てくるのである。

 その僅か数秒の違いは、歴戦の手練れたちにとって大きな隙となるのであった……


「だから、リュウイさんの魔法が遅いと感じたんだ」

「……」


 要するに避けながら、魔力を練りあげろって事か……?


「でも、リュウイさんのその杖、常に魔力を溜め込みやすいようになっているようだから特注品だよね?」

「あっ……そうだけど??」


 なぜ、そこまでわかる!?


「やっぱりね。リュウイさんの魔法攻撃が省略にしても、随分と魔力は練りこまれているなと思っていたんだ」

「えっ?」

「威力がさ、省略より強かったよ」


 ふむふむ。

 なんか……今、ヒントを貰ったような気がするんだけど……



「あっリュウイたんっ! 見て! 見て!!」

 随分と大人しいなと思っていたウォルガフは、遠くの方を指差していた。

 どうせ、俺とロジェの会話について来れなかっただけだとは思うけど。



 ウォルガフが指差す方向に目を向けると、眼下には円形状に作られた変わった街並みが見えてきた。

 丸く高い城壁で囲まれており、城壁をそのまま家の壁にして建てているのも幾つかあり、中央には教会らしき物が建っており、そこから街並みが全て手に取るかのように眺められそうなぐらい高かった。

 どこか中世のヨーロッパっぽい建物は、海外旅行など行った事のない俺にとって興奮と興味が尽きないほど、魅力的だった。


 ムーンフェイズも森林が多く住みやすい、いい街だった。

 ここに来る前、何度か戦闘も行った……

 Levelも上がるようになった……

 でもそれは、何処と無く今までやって来たゲームの延長戦上のような、そんな気がしてならなかった。


「あれが……」

「ゲーブングでちゅね」


 俺はゲーブングの街にを見て、本当にここが俺にとって今の現実世界(リアル)なんだな……

 と、今更ながら実感していた……






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