【07】
次の日の朝……
騒がしく朝食を食べ終えた俺たちは、散らかした部屋を片付けていた。
俺たちが出て行った後清掃に入るとは思うが、立入禁止と言われるぐらいウォルガフとロジェは散らかしていたのだ……
一通り片付けが終わると、ロジェはウォルガフにドリームゼロに帰る事を告げていた。
「えぇ〜もうちょっと一緒に居たかったでちゅ〜」
「なら、リュウイさんと一緒に来ればいいだろ?」
「それは嫌でちゅ!!」
ロジェは、舌打ちをしなからヤレヤレ……という顔をしていた。
「あっ、リュウイさん見送りはいらないよ」
「んっあぁ……」
「ロジェたんなんか、早く行ってしまぇ〜」
ウォルガフはいじけているのか、ロジェに後ろを向いたまま軽愚痴を叩いている。
素直じゃないよなぁ〜
パンパンに押し詰められたリュックを背負ったロジェは、俺に頭を下げ。
「ウォルガフ、またなぁ〜」
「ふんっ!」
「……」
返事をしてくれないウォルガフの態度にロジェは少し寂しそうだった。
……ったく、世話のかかる奴らだ。
「ロジェ」
「なんだい? リュウイさん?」
俺はウォルガフに聞こえないように耳元でロジェに話しかける。
「後、一ヶ月ぐらいしたらお菓子の家が出来るんだ」
「お菓子の家!?」
ロジェは興味津々に食いついてきた。
声がでかいな……
俺は人差し指を立て、シィーの合図を送るとロジェはコクンコクンと頷いてくれる。
やはり、フォス族はこの手の話に弱いな。
「うん、ウォルガフの熱烈な要望によりお菓子の家になったんだけど……」
「ほぉ〜」
先ほどの重い雰囲気とは全然違う……
「だからさっ、出来上がったら見においでよ」
正確には食べに? かな。
まぁ、それはどっちでもいいんだけどさっ。
「うん!! 来るっ!! 一族の皆連れてきてもいいか!?」
「えっ!?」
「やはりダメか……?」
うっ……こいつ………
短い期間ではあるが、俺が断れないポイントを正確に掴んでいやがる……
ロジェはウルウルしながら俺を見つめていた。
そんな目で見られてしまうと俺には断わり切れなかった……
「全員連れて来られても困るから、程々にね……?」
「うんっ! わかったっ!!」
ロジェは手を振りながら宿屋汐音を出て行くのであった。
ウォルガフは変わらず窓を眺めながら、何処と無く哀愁漂う背中だった。
「ウォルガフ……」
「ふみゅ?」
「寂しい?」
「さっ寂しくなんかないでちゅよ!!」
「そうか……ロジェがさっき言ってたんだけどさっ。マイホーム完成したら、また来るって言っていたぞ?」
「!!」
ウォルガフは首だけを動かし俺の方を見てくる。
まだ疑っているらしい……
「……本当でちゅか?」
「あぁ」
「えへっ……えへへへへっ」
ウォルガフの笑顔に一安心していると外から何やら聞こえてきた。
「ウ……ル……フ〜」
二人で外を見てみると。俺たちの泊まっている部屋の真下は丁度入り口である。
ロジェは、両手を挙げ手を振りながら呼んでいたのだ。
「あっロジェたんっ!」
「ウォルガフ〜」
「またねぇでちゅ〜」
「おうっ! 元気でなぁ〜」
ウォルガフはロジェの姿が見えなくなるまで間、ずっと手を振り続けていた。
そんな後ろ姿を見ながら、俺は昨日のロジェとの会話を思い出す……
ーーーーーー
「でも、なんでロジェはウォルガフが身体はフォス族だけど、心はフォス族じゃないと思うの?」
「実はさ、俺はウォルガフよりも五十年後に誕生しているんだ」
「うん?」
それで……??
と思わず返答しそうになる回答だった。
「ウォルガフの言葉おかしいとは思わないかい?」
「??」
ロジェ……質問の意味が俺にはわからないよ……
「本来ならさっ、あのちゅ言葉は十年も経てば自然と言わなくなるんだ」
「……」
確かにロジェはウォルガフみたいな言葉は使ってはいないな。
「俺も最初はウォルガフみたいに、ちゅ〜と言っていたよ」
「……ぷっ」
思わず想像してしまった。
ギロリとロジェに睨まれてしまった……
「ごめん、それで?」
「ちゅ言葉が抜けないのはやはり、心の何処かでフォス族になり切れていないではないのかな? って思う時があるんだ」
「……」
「確かに、Levelや冒険者ランクは成長を遂げていると思うよ。でも、それは外見であって……内面は……」
「お子ちゃまだね」
「うん……普通はもうちょっと……」
「なるほどねぇ〜」
「リュウイさん、ウォルガフにこんな話しないでね」
「?」
「実は、あいつ結構気にしているんだよ」
「へぇ〜」
そいつは意外だ……
「だってウォルガフだけだもん、今言っているのは」
「それは、確かに気にするな……」
「だからさっ俺としては、早く後継者として覚悟を決めれば、あの言葉も無くなるのではないかな? って思っているんだよね」
「……」
心が拒否しているか……
それはプレイヤー、ウォルガフとしての最後の意地なのかもな……
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「リュウイたん何、考え込んでいるのでちゅか?」
「あっあぁ……ごめん」
昨晩のロジェとの会話を思い出していたら、いつの間にか冒険者ギルドに到着していた。
「おねぇたぁ〜ん」
「はいはい、ウォルガフなにかしら?」
冒険者ギルドのお姉さんは、いつもウォルガフの姿を見ると笑顔を見せてくれる。
よっぽど好きなんだな。
「依頼達成ちぃまちぃたよ」
「どれどれ?」
俺は受付のお姉さんに緑色をした石を渡したのだ。
お姉さんはそれを受け取ると、光を当てながら何やら確認をし始めた。
「うん、本物のようね」
「これって何なんですか?」
「魔法石だけど?」
「魔法石??」
「あのね、あのね……」
「うん」
ウォルガフは、俺に得意そうに説明してくれた。
まず、俺の持っている木の杖には、赤い宝石がはめ込まれている。
これは魔法攻撃を二倍程高めてくれる魔法石だ。
緑色をした魔法石は、消費MPの節約の効果があるらしい。
例えるなら、[フレアボール]……
フレアボールを発動するのに必要なMPは8である。
これに緑の宝石をはめ込むと、本来はMP8必要なのがMP7で発動出来るのだ。
まぁ、魔法使いとは言わず遠距離攻撃を得意とする者は大抵MPは高めに設定されている。
それにMPがなくなれば魔力ポットで回復させればいい。
要するに緑の宝石は外れ宝石と言われ、物流もよく意外と安く手に入れる事が出来る。
まぁXは論外で希少価値は高いとの事だ。
どこの世界でも、最高位の物は外れでも高いらしい……
ここら辺の知識はウォルガフの方がかなり上だな。
「と、言う事でちゅ! わかりまちぃたか?」
「うん、分かったよ。ありがとう、ウォルガフ」
「えへへへっ……」
「それで、この宝石どうなんですか?」
「どうって……?」
「そりゃぁ、もしかしたらXの宝石とか!?」
「ぷっ……」
お姉さんは、思わず笑い出している。
俺はそんなにおかしな事を言ったのだろうか?
「あのね、北の洞窟では確かにたまに赤い宝石手に入る事はあるわよ? でもね、その殆どはIやIIが殆どなのよ。Xなんて出るわけないじゃない」
「……」
「どうしても欲しいなら……」
「うわっわっ!!」
ウォルガフはお姉さんがその続きを言わないようになぜか慌てて制止しようとしている。
だが、そんなのお姉さんに通用するはずはなかった。
「洞窟都市ドリームゼロに行く事ね」
「洞窟都市ドリームゼロぉ??」
「うちゅ……」
「ドリームゼロって、えっとフォス族のミクロスさんのいる所ですよね?」
「えぇ、ウォルガフの帰る場所ね」
「帰らないでちゅよ!!」
反応速いな……
そんなに帰りたくないのか……
「魔王様とヒューマンとの戦いに決着が付き、ヒューマン滅亡した後に魔王様は魔族四天王に各街を授けたのよね」
「うん、それは知っています」
「その時に、魔王様は一つずつの街に特徴をつけたのよ」
「ほぉ〜?」
「魔王様は膨大な魔力を使って、高Levelの洞窟と言う洞窟全てを一箇所に転移させたわ。そして出来たのがドリームゼロね。ドリームゼロに行けば数多くの洞窟が冒険者を待っているわ」
「へぇ〜」
「そして、その洞窟をクリアすると宝石を手に入れる事が出来る」
「おぉ〜」
「でもね、死にそうな目にあいながら、やっとの思いで洞窟クリアしたのにその宝石がIとかIIとかだったらどう思う?」
「ショックはでかいね」
「でしょ?? だからドリームゼロはまたの名を、夢と絶望の街と呼ばれているわ」
「うへ………」
お姉さんは他にも三つの街についても教えてくれた。
ガルヴァルデ族のぺディリヴァがいる街、ムーンフェイズは闘技場。
ムーンサン族のルブシューニェがいる街、フェィオンは魔法都市。
デューンキーパー族のシュトレンがいる街、サンライズは物価の街。
との事だ。
「さて、話は逸れたわね。北の洞窟の達成条件見たしているし、完了手続きするから二人とも冒険者カード出してくれるかしら?」
「えっ? いいの?」
「いいのよ。依頼達成条件は最下層に眠る秘宝の発掘。きちんとあなたたちは持ち帰ってきたわ。これが赤い宝石III以上とかだったらダメだけどね」
「なるほど、気をつけよう」
お姉さんに冒険者カードを渡して、手続きしてもらうとLevelアップ音がけたたましく鳴り響いてきた。
確認してみると、一気にLevel.15になっていた。
なんで??
シャイターン・ポイントまだ溜まっていないはずなのに……
いや、でもLevelが上がるって事はシャイターン・ポイントが溜まったって事だな。
「はい、これで手続き終了よ」
受け取った冒険者カードを確認すると、確かにもう少しで溜まりそうだったゲージはすでに無くなり、シャイターン・ポイントLevel.1と刻まれていた。
今までそんな文字はなかった事から、ゲージは最大値まで溜まり俺のLevelは20まで解放されたのだろう。
だから、Sランクの依頼で一気にLevelが15まで上がったのだろうな……
ふむ、いいねっ!!
「あと、これ報酬の魔導書なんだけど……」
「うんうん」
待っていました!!
新しい魔法!!
「リュウイさん魔法使いよね?」
「うん? そうだけど?」
「魔法使いは魔導書読んでも覚える事出来ないわよ?」
「!!!」
くるっ!
と俺はウォルガフの方へと振り返る。
「うちゅ??」
「魔法使いは魔導書読んでも覚える事出来ないって本当なのか!?」
「………」
「どうなんだ?」
「ちらにゃ〜〜い」
ぐはっ!!
ショッ……ショックがでかすぎる……
新しい魔法がぁ〜
「少し魔法について勉強しなさいよね」
「……どうやって?」
「図書館に行くとか?」
「ウォルガフを連れて……?」
「……」
お姉さんと俺の共通意見は一致した。
無理!! と、言う事が……
魔法には、どうやら魔法使いと魔導師と二つあるらしい。
そんなの同じ魔法を使うんだ、大差ないだろう。と思っていたのだがそうではなかった。
魔法使いは、初級、中級、上級までの魔法を使う事が出来るが、更に最上級の魔法が存在しているのだ。
そして、最上級の魔法使いこなす事が出来るのが魔導師。
魔導師になる為には、Level.200以上で上級魔法を極めている事……
これで、魔導師になれるかどうかの試練を受けられる条件を満たすらしい。
試練を受けるには、ムーンサン族のルブシューニェがいる街、フェィオンに赴かなければならないのであった。
まぁこれはまだまだ先の話である……
他の職業にも上級職? というのだろうか? そう言った物は用意されているらしい。
「まぁ、今回は知らなかったと言う事で……魔導書の代わりにこれでいいかしら?」
「これは?」
「冷気と雷撃の魔法書よ」
「おっおおおおおおっ!!」
「まぁ、魔導書よりかなり価値は低いんだけど……って聞いちゃいないし……」
俺の喜んでいる姿が余程嬉しいのか、ウォルガフは踊り出している。
なぜ、嬉しいのか半分も理解してはいないと思うけど……
それでも一気に冷気と雷撃の魔法を覚えられる事は、実に嬉しい!!
堪らず、俺はウォルガフと一緒に踊っていた。
「………えっとそろそろ、いいかしら?」
お姉さんの冷ややかな言葉に俺は我に返った。
ウォルガフはそんなの御構い無しに踊っているけどね……
「あっごめんなさい。嬉しくてつい……」
「それでね、実はこの依頼をやってもらいたいの」
「?」
お姉さんが見せてくれたのはSランク限定の依頼であった。
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ライオネットワイバーン討伐
依頼達成条件:巣の破壊
報酬:金貨三十枚
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「Sランクの依頼はウォルガフと直接交渉して下さいよ」
「そうしたいんだけど……」
「?」
お姉さんは何か言いづらそうだ。
「はっきり言っていただかないと、俺もウォルガフに話し出来ませんよ?」
「そっそうよね……えっと……ガルシアたちの事、覚えている?」
「えぇ、勿論。覚えていますよ」
ガルヴァルデ族、守護剣士のガルシア、ムーンサン族、魔導師のミラージュ、同じくムーンサン族、僧侶のグゥ、デューンキーパー族、念動力士のエクレウス。
彼ら四人は俺に始めてPT戦と言う物を、体験させてくれた人たちだ。
忘れるはずかない。
「ガルシアさんたちが、どうかしたのですか?」
「彼らは、ライオネットワイバーン討伐に向かったわ……そして」
お姉さんは俺から目線を切る。
実に言いづらそうな顔をしていた。
何かあったのだろうか……?
「そして……?」
「……彼らは殺されたわ」
「!?」
そっそんな馬鹿な………




