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魔王に再び挑みたい!  作者: kiruhi
目指せ、Level.50![ 上 ]
21/77

【05】

 ジャンケン大会の参加者は合計二十名。

 やはり参加費、銀貨一枚は高いようだ。

 参加者が思っていたより少ない……


「あっリュウイたんだぁ〜」

 聞き慣れた声が聞こえてきた。

「ウォルガフ? それにロジェ……お前たちも参加するのか?」

「うん!」


 俺の渡した銀貨五枚のうち一枚はこうして消えて行くのか……

 まぁいい。どのみち残るとは思ってもいなかったし。


「え〜っ……皆様、参加ありがとうございます」

 主催者と思われるエルフの女の人が現れた。

「まずは、ルール説明をさせて頂きます。

 ジャンケン大会参加証の裏に番号が記載されております。

 まずは、その番号をご確認ください」


 言われた通り、ジャンケン大会参加証の裏を見てみるとそこには[20]と書かれていた。

「俺、20みたいだ。ウォルガフとロジェは?」

「えっとぉ〜」

「……」

 ウォルガフもロジェも中々俺の質問に答えてはくれなかった。

「どっした?」

「リュウイたん、これなんて読むの?」

「へっ??」

 ウォルガフはそう言って俺にジャンケン大会参加証の裏を見せてきた。

 大きく[8]と書かれていた。

「えっとウォルガフは8だね」

「了解でちゅ!」


 ウォルガフ、お前……まさか……


「ねぇねぇ……」

 少し言いずらそうにロジェは俺に話しかけてきた。


 えっ!? ロジェもっ!?


 ロジェのジャンケン大会参加証には[10]と書かれており俺はロジェに10と書いてある事を伝えたのだ。

「ありがとう♪」


「ねぇ、ウォルガフ、ロジェ……ひょっとして」

 その先の言葉を俺は言えなかった。

 ロジェから放たれる殺気は、それ以上何も言うな。と言わんばかりに俺に向けられていた。

「……いや、なんでもない」

「ふにゅ?」

 不思議そうな顔をするウォルガフに、ホッと胸を撫で下ろすロジェの姿を見て敢えてそれ以上の事は聞かないで置く事にした。



「皆様、確認できましたか? まず、今回のジャンケン大会は勝ち抜き戦を予定しております。

 勝てばステージに残って頂き、負ければステージより降りて頂きます。

 最後まで残っていた方が優勝でございます!!」


 ふむふむ。勝ち抜き戦か、最後の方に呼ばれた方が絶対有利だな。

 俺は20だ、どうせ最後の方だろ!


「では、これより(わたくし)がこの箱より取り出した番号をお呼びいたしますので、呼ばれた方はステージの方へお越し下さいませ」

 主催者は、それだけ言うとステージの方へと言ってしまったのであった。


 って番号順じゃないのかっ!?

 これでは、最初の方に呼ばれる可能性も出てきたな……




 ジャンケン大会の会場は俺たちには見えなかった。

 今誰が勝ち残っているのかなんて、全くわからなかったのだ。

 会場からは盛大な盛り上がりを見せる中、次々と参加者たちは呼ばれて行った。

 そして、俺たち三人の中で最初にステージに呼ばれたのはロジェだった。

「10番の方、ステージにどうぞです」

「ロジェたん、頑張ってね!!」

「おぅっ!!」

 ロジェはガッツポーズを決めながらステージへと向かって行くのであった。


 わーーっ!! と歓声が聞こえてきた。

 ここからではわからないのだが、果たしてロジェは勝ったのだろうか?


 次々参加者が呼ばれる中……

「次は20番の方」

「はい」

 遂に呼ばれた。


 この時点で残っているのは、俺とウォルガフと三人の参加者のみだ。


「リュウイたん、頑張っでちゅよ!!」

「おうっ!!」

 俺は案内されるがままステージへと向かった。


 大観衆が見守る中、対戦相手はムーンサン族の女性であった。

 ロジェは負けてしまったらしい……

 最前列の観衆に混じり俺を応援していてくれている。

「リュウイさん、頑張れーー!!」


「それでは、ジャンケンを始めて頂きたいと思います! 3番の方果たして十六連勝する事は出来るのでしょうかっ!?」


 十六連勝だとっ!? まさか、この人ずっと勝ち続けているのかよ!?


「いきますよぉ〜ジャンケン……」


「ポンッ!!」


「おぉ〜これはぁ〜!!」


  俺が出したのは、チョキだ。

 そして、十六連勝しているムーンサン族が出したのはグー。


「凄いぞォ〜3番!! 十六連勝だぁ〜」

 大観衆が更なる盛り上がりを見せる中、俺は対戦相手であるムーンサン族の女性と握手をし、ステージから降りて最後まで見る事にした。

 ウォルガフもこれからだし、何よりあのムーンサン族の女性が最後まで勝ち残れるのか凄く興味があった。


 残り四人……



 ウォルガフは、最後に出てきた。

 ムーンサン族の女性は、三人とも一発でジャンケンに勝利していた。


 なんだろう。何か勝つ法則とかあるのかな?


「では、これより最終決戦でございます!! この勝負で勝った者が勝者です!!」

「わーーーっ!!」

 会場は前代未聞の十九連勝に盛り上がっていた。

 ムーンサン族の女性が勝てば二十連勝の文句なしの優勝。

 そして、ウォルガフがもし勝てば十九連勝した者に勝ったとして盛大な拍手が贈られるだろう。


 ウォルガフはと言えば、緊張している素振りを全く見せずに送られている拍手が、自分に向けられていると勘違いし多いにはしゃぎ回っていた。

「皆ちゃま、見てて下ちゃいねぇ〜」

「頑張れっウォルガフ!!」

 ロジェも力が入った応援が飛ぶ中、遂に始まった。


「では決勝戦、行きますよぉ〜」

 両者の睨み合いが続く中、主催者は合図を送る……


「ジャンケン………ポンッ!!」


 静まり返る会場の中、勝負は一回で決した……


「ウォルガフ……」



「わぁーーーーーっ!!」

 会場中拍手喝采に巻き込まれていく。


 ウォルガフは、ジャンケンに負けた。

 ムーンサン族の女性は前代未聞の二十人抜きという快挙を遂げ、商品を受け取っていた。



 拍手が鳴り止まないうちに俺たち三人は、参加賞言う名のオヤツを受け取りジャンケン会場を後にしていた。

 とりあえず広場まで戻ったのだが、ウォルガフはオヤツも食べずにどょおお〜んと落ち込んでいた。

 ロジェは、ペロリと食べていたけどね……


「そんなに落ち込むなよ。ウォルガフ……」

「でもぉ〜」

「勝負は時の運だろ?」

「……」

 納得出来ないらしい。


「まだ、縁日は続いているんだろ? 二人でまた行ってきたらいいんじゃないか?」

「……」

 なぜ、二人共黙る!? そして、なぜ俺の方を見つめる……


「まさか……もう使い切ったとか?」


 コクンッ……


 二人は同時に頷いている。

 なぜ、どのような使い方をすればあっという間に銀貨五枚が消え去るのだろうか?

 俺は永遠とその事について、二人を問い詰めたい気分だった。

 でも、使い切ってしまったものは戻っては来ない。


「リュウイたん……怒っていまちゅよね?」

 ウォルガフはウルウルとしながら俺を見つめている。

「リュウイさん、ごめんなさい」

 ロジェも深々と頭を下げ俺に謝ってくる。



 ロジェは本心で謝っているのかはわからないが、ウォルガフの事はわかる。

 いつも俺が怒るとウォルガフは、ウルウルしながら俺を見つめてくる。

 だから、これはウォルガフの常套手段なんだ……


 わかってはいるが……これで、許さなかったら俺は悪者みたいじゃないか……


「怒っていないから……」

 俺は甘いんだろうな。結局許してしまう……


「ありがとでちゅ!!」

「リュウイさんは優しいな」

「むぐっ……!」


 だって仕方がないじゃないか……

 ウォルガフはすぐ泣くんだもん……


「さっさて……一緒に見て回ろうか?」

「は〜い」

「了解した」

 気を取り直して俺は三人で縁日を見て回る事にした。


「リュウイたんっ!! ぼくはこれが食べたいでちゅ!!」

「リュウイさん、俺にこれを買ってくれ!!」

 二人は遠慮なくあれも買って、これも買ってとねだってくる。

 まぁまだお金はあるよ。でもさっ何度も言うようだけど少しは遠慮して欲しいな。

 全くもってフォス族と言うのは、遠慮を知らないよな。


「ウォルガフ、ロジェ。そろそろいいか?」

「えぇ〜もうちょっとぉ〜」

「まだ、腹いっぱいになっていないぞ?」

「……」


 あははははっ……

 フォス族、いやぁぁ〜


「しょうかない、ウォルガフ。そろそろ買い物は辞めようか」

「えぇ〜」

「……」

 ゴニョゴニョとロジェはウォルガフの耳打ちしながら、俺の方見ながらニヤニヤしている。

 ロジェの言葉にウォルガフは納得したのかコクンコクンと頷きを見せていた。


「リュウイたん!!」

「んっ?」

「ぼくたちはこれから、宿屋汐音(しおね)で二次会を行いまちゅ!!」

「はぃぃぃ?」


 二次会なんて言葉どこで知った!?


「ちょっと……ま……」

 制止する暇もなく二人は、宿屋汐音(しおね)に向かって駆け抜けていた。

「……」


 行くしかないよなぁ〜

 これで行かなくても、宿屋汐音(しおね)はもう顔なじみになっている。

 次に行った時、高額請求されるよりは今行った方がまだましかぁ〜


「はぁ〜どんだけ食べるんだよ。あいつらは……」




 ◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎



 縁日のせいなのか、宿屋汐音(しおね)の従業員は亭主を残しその殆どが縁日へと出かけていた。

 客は殆どいなくそれでも店を開けているだけ、流石商売人と思える。

 確かに先程まで亭主は暇だった。久しぶりのまったりとした時間を満喫していた事だろう。

 二人のフォス族が現れるまでは……


 二人のフォス族のせいで亭主は大忙しになってしまったのである。

「おかわりでちゅ〜!!」

「ドンドン持ってきてぇ〜」

 遠慮を知らない二人は容赦無く亭主を汗だくにさせていた。


「こんにちわ〜」

 そんな事を知らずに俺は、宿屋汐音(しおね)へと足を踏み入れたのである。


 入った途端汗だくの亭主に、厨房へと引き摺り込まれたのであった。

「なっなんですかっ!?」

 亭主はギロリと俺を睨んでいる。


 なぜ怒っているのかわかるだけに、余計その顔はこっ怖い……


「人手が足りん」

「えっ?」

「儂を残して、皆縁日へと出かけている。手伝えっ」

「むっ無理ですよぉ〜俺、料理作った事ないんですから……」

「誰が作れと言った? 儂が作り上げるから、あの大食らい共にドンドンと持っていけ」

「大食らい共……?」

 厨房から、亭主が指差す方を見てみると後ろ姿で顔は見えなかったが、箸を両手に持ちテーブルに叩きつけながら聞き覚えのある歌を歌っているフォス族が二名いた。

「おい()ぃご飯はぁまぁだぁかなぁ〜

 まだぁかぁなぁ〜

 うちゅ、うちゅ、うちゅ〜〜」

「美味しいご飯は〜もう少しでぇ〜出来あがりぃ〜

 ウキウキワクワクランランラン♪」


「……」


 二番あったんだ……

 一番しか聞いた事なかったよ……


「ほらっボォッとしていないで運んでくれ!」

「いや、でも俺……」

「宿屋代今日だけタダにしてやる」

「!!」


 宿屋代タダと言う誘惑に俺は負けてしまった。

「やらせていただきます。マスター」


 俺は大皿を二つ持って待ちくたびれているウォルガフとロジェの元へと、食事を運び始めた。

 すると……

「漸くお出まちぃ、ご飯でちゅ〜

 ピーマンさいちょに避けまぁちゅ〜」

「それでは、いただきまぁ〜〜ちゅ」

「ピーマン食えよ!!」


 思わず突っ込んでしまった……


「リュウイたん??」

「リュウイさん??」

「あっ!?」

 バレないようにしようと思ったのに……

「何やっているのでちゅか?」

「……」


「リュウイたん?」


 えぇ〜い、やけくそだ。


「手伝いだよ……今日は俺が料理を運ぶ事になった……」

「ほほぉ〜」

「ジャンジャン運べぇ〜」

「べぇ〜」


 くそぉ〜調子に乗っているな……


 それから、食材が無くなるまでの三時間……

 俺は動きっぱなしだった。

 速攻で平らげられる皿を下げ洗う……

 そして、待ちくたびれている二人に出来上がった料理を届ける。

 口元が汚れていたら拭いてあげる……

 ジュースも無くなる前に補充してあげる。


 ……俺、疲れました……


 なのに二人から労いの言葉など何一つなかった。

 ただ一言……

「腹八分でちゅ〜」

「うむ、まだ物足りたいな……」

 だった。


「ほらっ」

 落ち込んでいる俺に亭主はアップルパイを三つ渡してくれた。

「これは?」

「手伝ってくれたお礼だ」

「ありがとうございます……」


 でもこのアップルパイ、二人に食べられてしまいます……


 そう思っていると亭主は俺にトドメを刺してきた。

「まぁ、食事代はきちんと払ってもらうがな」


 精算聞くのか怖いな……


「約束通りいつもの部屋で寝ていいぞ」

「はぃ……」

 食事代を精算した俺は既に疲労困ぱいだった。


 クタクタだぁ〜


 いつもの部屋に辿り着いた俺はそのままベッドへとダイブ……

 そのまま眠気に身を任せようとした。

 だが、そんなに甘くはなかった。


 ゆっさっゆっさっと俺の身体を動かすのだ……

「ねぇねぇ、リュウイたん」

「ん〜なぁに? ウォルガフ……?」

「ほく、お風呂に入りたいでちゅ」

「……」


「まじっ!?」

 疲れが一気に吹き飛んでしまうぐらい、衝撃的な一言だった。

「うん、お風呂ォ〜」

「よしっ! リュウイさんお風呂行くよっ!!」

「……」

 ロジェまで……

 昼間生死を賭けた戦いを俺としたばかりなのに、もう打ち解けているし……


「行きたくないって言ったら?」

 するとウォルガフは床に寝転がりなぜかコロコロと床を転がり始めた。

 それを見たロジェも便乗し転がり回っている。

「……ウォルガフ? ロジェ?」

「……」


 無言の訴えに俺は負けた……


「わあったよ。お風呂行こ……」

「わぁーい♪」

「わぁーい♪」

「でも一つ約束しろ!」

「なんでちゅか?」

「お風呂では絶対走り回らない!

 泳ぎ回らない!

 髪は暴れずに拭かせろ!!

 いいなっ!!」

「えぇ〜〜」


 ウォルガフは実に不満そうだった。

 そんなウォルガフの姿を見ていたロジェは、またゴニョゴニョとウォルガフに耳打ちをしている。

「……」


 ロジェ……頼むからこれ以上ウォルガフに悪知恵付けさせないでくれ。

約束(やくちょく)は守るでちゅ!!」

 片手を掲げウォルガフは、そう宣言していた。


 本当かよ!?


 宣言はしてくれたが俺の予想通り、風呂場は戦場だった……

 まず、脱衣場では服を脱ぎ散らかしたまま洗い場へと侵入……

 それを綺麗に畳む俺……

 洗い場では、ウォルガフとロジェは石鹸で風船を作って遊んだり、走り回ったりと実に落ち着かなかった。

「ちゃんと、頭と身体洗えよぉ〜」

「は〜い」

「はいでちゅ〜」


 返事はいいんだよなっ二人とも……


「身体洗いっこ〜〜」

「いいねぇ〜」

 泡だらけになりながらも身体を洗い終わった二人は、湯船へと走り出した。


 そして湯船では、ウォルガフは犬かき……

 ロジェは優雅に浮いたり沈んたり浮き上がったり、更には優雅に泳いだりとしている。

「何やっているの? ロジェ?」

「見てわからないか? シンクロナイズドスイミングだ」

「……」


 頼む、ゆっくりと入らせてくれ……


「ふぅあちぃでちゅ〜もうあがるでちゅ!」

「そうだね」


 そんな話しをしているが、湯船に入っていた時間は僅か一分もない……

「二人とも風邪引くから、もう少し湯船につかりなさい」

「ブ〜リュウイたんじじくさぁ〜い」

「なっ!?」

「じじくさぁ〜い」

「ぬっ!!」


 そんな事、言われてしまえば上がるしかないだろう……


 脱衣場に上がるとウォルガフとロジェは、何故か大人しい。

 はしゃぎ過ぎて、いい加減疲れたのだろうか?

 いつも嫌がる髪の毛も吹かせてくれるし、乾かせてくれている。そしてなにより、裸のまま脱衣場を走り回っているはずのウォルガフは、俺が言わなくてもきちんと服を来たのだ!


「リュウイたん!」

「んっ?」

約束(やくちょく)は一つでちゅよね!?」

「んっあぁ……」

「ぼく、ちゃんと守りまちぃたよ?」

「??」

 どこがぁ〜

 大暴れだったじゃねぇか……

一つ(・・)でちゅよね??」

 ウォルガフのドヤ顔、そしてロジェのププッと両手で口を押させている所で俺は漸く気づいた。

「……あっ!?」


『お風呂場では絶対走り回らない!』

 楽しく走り回っていたな。

『泳ぎ回らない!』

 犬かきと、ロジェ曰く? シンクロナイズドスイミング見たな……

『髪は暴れずに拭かせろ!!』

 ……確かに暴れていない……


 約束は一つ……確かに守っているな………

「えっへん!!」

 誇らしげにウォルガフはそう語っていた……


 そして……

「ご褒美にフルーツ牛乳買ってくだちゃい!!」


 二人のフォス族のパワーは凄まじかった……






 本日の使ったお金。

 合計 銀貨78枚 銅貨123枚

 ーーー内訳ーーー

 〔縁日〕

 ウォルガフ:銀貨 5枚

 ロジェ:銀貨 5枚

 リュウイ:銀貨 2枚

 三人合流後:銀貨10枚


 〔宿屋汐音しおね〕

 食事代:銀貨55枚、銅貨73枚(ジュース代込み)

 宿泊費:タダ

 風呂代:銀貨1枚、銅貨50枚

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