第7話:伏せられた理由
魔法協会・魔法使い育成学校の校長室。教師であるショーン・プライムは、校長のアリス・ワンダーと、そのパートナーであるルイス・グースと対峙していた。
「どういうことですか、校長先生」
冷静にいようと努めているが、その声には怒気が含まれていた。
「先日のレイン・ヴェルトラムとアルマ・イーリスの初任務のことです。見習いは原則、討伐悪魔は影級のみ。
なのに二人が討伐した悪魔は一体なら獣級、分体がいるなら妖級まで引き上がります。初任務に挑む見習いに任せる相手ではない」
そこでショーンは一旦区切るが、アリスはただ静かに紅茶を口に運ぶだけだった。
「悪魔の被害にあった住人達も、"疑似魔力生成薬エリクサー"で、後遺症も副作用もなく回復しました。
妖級に見習いが挑み、一人の死者が出なかったことは奇跡だと言ってもいい」
「ショ、ショーンさん、少し、落ち着いて…。アリスも、理由話そう?ね?」
ルイスがショーンとアリスの間に入りつつ、アリスに助けを求めるように目を向けるが、なんの反応も返さないアリスの態度にしびれを切らしたショーンは、抑えきれなくなったように声を荒らげる。
「全員死んでいた可能性の方が高かった! 私は教師だ、生徒を守る義務がある!」
ショーンは苛立ちを抑えきれず、拳を握りしめたまま机に詰め寄る。
「どうしてこんなことをさせたんです、理由を話してください!」
「ひぃぃ、ア、アリスゥ!」
「まったく、しょうがないねぇ」
情けないルイスの様子を見てようやく話す気になったのか、アリスはやれやれと重い口を開いた。
「なんであの二人に格上の相手をぶつけた理由?簡単だ、レインには一刻も早く覚醒してもらう必要があったのさね」
「か、覚醒……?」
「無属性にも属性はある。火・水・土・風・雷・光・闇の七属性以外がね。氷や音だとか、水や雷から生まれる希少属性でもない。
…もっと別の、誰にも真似できない“その者だけの魔法”さ。アタシらはそれを【固有属性】と呼んでる」
「固有…属性……!?」
話についていくのが精一杯なルイスの様子を見てか、そこでアリスは一旦話をやめ、紅茶で口を濡らす。水分を得て滑らかになった舌は、歌うように続きを紡いでいく。
「アタシの固有属性は時間。時間を操る属性だ。他にも予知なんてやつもいるし、レインの小僧は重力さね」
「じ、時間……!? まさか、マギステル最古の魔女……!」
「おっと、その呼び名は言うんじゃないよ。まあでも、上手く覚醒するかは分からなかったし、仮契約した四人目と六人目は惜しかったさね。
火属性の四人目はともかく、六人目は初めからレインの重力を発動できてた。ま、アルマとは大分差があるがね」
「いいえ、"重力の申し子"が彼女と契約したのは必然なのです。六人目――いいえ、"万物の器"は、契約すべき相手がいます」
アリスとルイス、そしてショーンしかいないはずの校長室に、低く、凛とした女の第四者の声が響いた。




