第4話:読めない討伐難度
レイヴェルに到着したレインとアルマは、任務の情報をおさらいしていた。
「今回の悪魔は寄生型、つまり人に寄生して悪さをするタイプだ。この悪魔はニ十年前にもこの町で出現していて、討伐記録がある」
「あれ? なんで討伐された悪魔がまた出てるの?」
アルマの疑問に、レインは少し呆れつつ答える。
「授業を聞いてなかったのか? 悪魔は倒しても蘇るんだ。原因は不明だが、人の欲望が原因の可能性が高い」
「ええっ!? 生き返っちゃったら、悪魔の根絶なんて無理じゃん! しかも、人の欲望が原因って何!?」
「一度倒せば今回みたいに出現まで間が空くから、全くの無駄ってわけじゃない。人の欲望、ようするに負のエネルギーが悪魔を喚び寄せるってことだ」
魔法協会は出現した悪魔の記録にも力を入れている。討伐された悪魔の特徴や対処法を記しておくことで、蘇っても再び討伐できるからだ。また、弱い悪魔ほど蘇るスパンが短く、強い悪魔ほど蘇るスパンが長いのも特徴の一つだ。
そして悪魔が出現する原因はまだ断定はされていないが、人の行き過ぎた欲望に引き寄せられている可能性を指摘されてきた。
特に傲慢・嫉妬・憤怒・怠惰・強欲・暴食・色欲の七つの欲望は、負のエネルギーが多く、肥大化すればするほど強い悪魔を喚び寄せてしまうとされている。
「ははーん、なるほど。討伐記録がある悪魔なら楽勝だね!」
「油断はするなよ。まったく、こんな初歩のことを知らないでどうやってテストを受けてたんだ?」
「わたしには頼れる友達がいるのだ!」
カップケーキをくれた友達といい、勉強を教えてくれる友達といい、皆アルマのことを甘やかしすぎじゃないかと不安になるレインだった。
「威張れないからな、それ。じゃあ、悪魔の特徴を言うから、しっかり覚えるんだぞ」
「はーい! レイン先生!」
以下、討伐記録から抜粋。
『その悪魔は植物系の寄生型である。
本体は小さな植物でできた目玉のような姿をしている。
人の体に入り込み、額や舌などの体に根を張り、肉体の主導権を握る。そして、暴力や盗みなどの犯罪を行う。
寄生された人間は体のリミッターが外れ、通常以上の力を発揮するので、一般人でもマギアと同等の力を持つことがあるので注意すること。
すばしっこく、寄生された一般人を人質にしてくるが、一体化しているため寄生先への攻撃が悪魔にも効くので、悪魔が肉体を棄てるまで寄生先を攻撃するのも一つの手である。(殺さないように加減すること!)
本体は脆く、打撃に弱い。特に火は肉体を棄てて逃げるほど弱点である。』
「討伐難度は……あれ?」
資料の最後は討伐難度が書いてあるはずだが、インクを垂らしたような、にじんだ黒い跡がべったりと文字を覆っている。
「どうしたの?」
「いや、討伐難度が読めなくなってる」
その黒塗りは、たまたま汚れがついたというよりは、誰かが意図的に手を加えたような不自然さだ。
「誰かが記録を改ざんしたということか?」
「え?」
レインの言葉に、アルマが思わず息をのんだ。
討伐記録は原則持ち出し禁止なので写しを持って来たのだ。しかし、読めなくなってるということは、何者かが改ざんした可能性が高い。
「でも見習いは影級だけだから、見れなくてもいいのかな?」
「いや、階級関係なく、意図的にやったとなるとこれは重大な規則違反だ」
「でも誰がこんなことするの?」
アルマの疑問に、レインは討伐記録を改ざんできそうな人物を頭に思い浮かべる。
まずは教師であるショーン・プライム。ショーンはレインとアルマが任務を命じられた場面にいたので、レインが写しを取る前に改ざんは可能だ。しかし、ショーンが何故そんなことをする理由や、メリットが分からない。
もう一人はレインとアルマに任務を持って来たアリス・ワンダーだ。初めて会った時、レインが悪魔に殺される寸前で助けたように、アリスは性格の悪いところがある。初任務に挑むレインとアルマへの嫌がらせだろうか?
「この任務、何か引っかかる……」
「まあまあ! 考えても分からないことは後! 初任務がんばろー! おー!」
そんなことをつらつらと考えていたが、アルマの言葉に毒気を抜かれたレインは、考えても分からない改ざんした犯人よりも、目の前の任務に集中することにした。
「少し心配だが…。悪魔が出てくるまでレイヴェルを見回りするか」
レインとアルマは気合を入れ直し、悪魔の手がかりがないか探索するのであった。




