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マギアワンド  作者: 桑田照知
第3章
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第27話:地上へ

 支えを失った影喰の頭が、落ちる。それから遅れるように、バランスを崩した体もゆっくりと、倒れた。

 影喰の体がボロボロと崩れて、闇に溶けていく。それは、影と同化していた時とは違う。闇に還っていくような、静かな、終わりだった。


「くっ……」


「レイン、大丈夫!?」

  

 ようやく張り詰めていた体が緩み、全身から力が抜けていく。思わず膝を着いたレインに、変身を解いたアルマが駆け寄った。


「無茶するからだよ! 心配したんだからね!」


「すまない。……でも、勝ちたかったんだ」


「それは分かるけどさあー」


 苦言するアルマの肩を借りながら、レインはなんとか立ち上がる。

 リチアとジルが心配だから地上へ戻ろうと、アルマに声をかけようとした時だった。

 

「ううっ……」 


 レインは驚愕して声のした方向へ振り向く。声が聞こえたのは、影喰が倒れていた場所からだったからだ。アルマも、信じられないと言わんばかりの目を向けていた。


「うそ……」


「……行こう」


 アルマに支えられながら、声が聞こえた方へ近づく。ある程度近づいてから、アルマにガントレットに変身してもらった。もう今のレインに魔法を発動する魔力は残っていないが、少しでも危険を減らすためだった。


「体が動かねえっ! 何でだよぉ!」


 声の主は、やはり男だった。まだ、生きている。

 しかし、悪魔と融合した代償か、手足が黒く染まり、動かせないようだった。


「レイン、どうする?」


「そうだな……」


「な、何する気だ! 見てねぇで早く助けろよ!」


 こんな状況でも図太く助けを求める男に、呆れを通り越し、レインは逆に感心してしまう。

 男は、無言で見つめるレインに焦れたのか、今度は下手に出ることにしたようだった。

  

「へ、へへ……お、俺が悪かったよぉ。だからほら、助けてくれよ……!」


「……ほんとどうするの?」


 アルマはすっかり呆れ切っている。地上に出てからのことや、男をどうするか。休憩も兼ねて考えていたが、思っていたよりも男が折れるのは早かった。 

 支えてもらっていたアルマの体から、徐々に離れる。多少ふらついたが、すぐにそれも治まる。これなら、荷物が増えても問題はなさそうだ。


「おっおい! 何すんだ!?」

 

「お前はここに詳しいだろ。案内しろ」


 何せここで寝泊まりしていたかもしれないくらいだ。案内役にはこれ以上ない適任だろう。男を担ぎ上げ、旧水路を進む。


「ここだ……この階段を上がると、研究所の地下に、直接出る」


「……本当だろうな?」 


 じろり、とレインは懐疑的な目で男を見やる。嘘をつくメリットがないのは分かっているが、男のことは信用ができなかった。 


「本当だよぉ! だからもう少し丁寧に運んでくれよ! 体が痛えっ!」


「悪いがそれは厳しい。俺も万全じゃないし、そもそもアルマには持たせたくないからな」


「えへへ……なんかごめんね?」


「ちくしょぉっ! 見せつけやがって!」


「……? 何のことだ?」


 男の言ってる意味はよく分からなかったが、とりあえず進むことにした。どちらにせよ、このまま旧水路にいても好転はしない。

 階段を上り、研究所の地下に出る。そこは、使われていない倉庫のようだった。壊れた魔導具の部品や古い机などが雑多に置かれ、埃っぽい。


「それで? ここからどう行けば、外に出られるんだ?」


「チッ。一階に出て、通路を進めばすぐだ」


「態度悪いよ〜。よくないと思うな〜」


「アルマ、放っておけ」


 地下から一階へ上がり、広い廊下を歩く。研究所内は広く、部屋もたくさんある。一部屋ずつ見ていく時間はない。なので、とりあえず間取りをざっくり把握しておく。 

 リチアとジルは無事だろうか。早く合流できればいいが。


「……けて」


「ん?」


 ふいに、声が聞こえた気がして立ち止まった。耳を澄まし、声を聞き取ろうと集中する。


「けて……助けて!」


「ジルの声だよ! あっちから聞こえる!」

 

 レインが動くよりも早く、一足先にアルマが飛び出す。


「待てアルマ! 一人で行くな!」


「いてっ、いてて! やめろ走るな!」


 まだ本当にジルだと分かっていないのに行くなんて、迂闊すぎる。それに、リチアの声がしないのも不自然だ。言いたいことはいくつかあったが、アルマが聞かないのは分かっている。追いかけるしかない。

 文句を言う男を無視してアルマを追いかける。通路を曲がり、一つの部屋に辿り着く。ドアを開けると、そこには――  

 

「た、助けて……」


『ナーンテ不健康ナノデショウカ! 背スジモコンナニ曲ガッテ! ワタクシガ健康ニシテサシアゲマスワ!』


 メイド服を着たゴーレムに、ジルが絡まれていた。



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