第24話「影」
森に残る煙が、ゆっくりと薄れていく。
リィンはその中心に立っていた。
ロレッタ「リィン!」
ロレッタが駆け寄る。
そのまま勢いよく、リィンを抱きしめた。
ロレッタ「素晴らしいですわ!!」
ロレッタ「あなた、本当にすごいですわ!!」
リィン「……」
少しだけ目を逸らす。
カイルもよろよろと近づいてくる。
目には涙が浮かんでいた。
カイル「す、すごかったです……」
カイル「ほんとに……生きてる……」
ガルドがゆっくりと歩み寄る。
そして、無言でリィンの頭に手を置いた。
ガルド「よくやったのう」
その声は、いつもより少しだけ柔らかかった。
そのとき。
後ろから、声がした。
??「全然ダメじゃん!」
空気が凍る。
ガルドが即座に振り向き、斧を構える。
ガルド(こやつ、いつからいた?)
そこには、一人の男が立っていた。
黒いフードを深く被り、顔はほとんど見えない。
ただ、口元だけが、笑っていた。
??「待って!待って!」
??「やるつもりはないから」
軽い口調。
だが、場違いなほどの“異質さ”。
男「こいつを回収するだけだから」
その視線の先には、倒れたマルクス。
マルクス「……ありがとうございます……」
弱々しい声。
男「何を勘違いしてるのかな?」
次の瞬間、
ズブッ
男の手が、マルクスの腹に突き刺さる。
マルクス「ぐぎゃああああ!!」
血が噴き出す。
男はまるで物を探すように、腹の中をまさぐる。
男「ここかなー?それとも?」
マルクスは悲鳴をあげている。
ロレッタは口に手を塞ぐ。
男「お!あったあった!」
引き抜かれたのは――透明な魔石だった。
淡く光を放っている。
男はそれを軽く眺め、満足そうに笑う。
男「じゃあね!」
男「こいつは好きにしていいよ」
ガルド「待てぇい!!」
男が足を止める。
ゆっくりと振り返る。
ガルド「お主らはなにもんじゃ」
男「なに?爺さんやる気?」
口元は笑ったまま。
だが、その瞬間、空気が変わった。
見えない圧が、一気に押し寄せる。
カイル「……っ!」
呼吸が詰まる。
ガルドの額に、冷や汗が流れた。
ガルド(……勝てぬ)
男「今日は忙しいからね!」
男「また会えると思うよ。」
一歩、後ろへ下がる。
男「僕たちは“無”(ブランク)」
深くお辞儀をする。そして、消えた。
静寂。
ガルドが、その場に膝をつく。
ガルド「……はぁ……」
カイルはその場にへたり込んだ。
カイル「あいつ……」
カイル「いつでも僕たちを殺せました……」
ロレッタも、言葉を失っている。
リィンだけが、動いた。
ゆっくりとマルクスへ歩み寄る。
マルクスは、血にまみれながらこちらを見ていた。
マルクス「……小娘……」
かすれた声。
マルクス「心しておけ……」
マルクス「その銃は……狙われる……」
リィンは何も言わない。
ただ、ナイフを取り出す。
ザンッ
迷いはなかった。
マルクスの身体が、力を失う。
リィンはナイフの血を払う。
リィン「…可哀想な人」
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ガルド達が傷の手当てをしていると、誰かが走ってきた。
イシュタル「無事か?」
ガルドが手をあげて答える。
ガルド「この通りだ」
イシュタルは笑う。
イシュタル「こっちも片付いた。お主らのおかげだ」
イシュタルは褒め称えるが、ガルド達に笑顔はなかった。
イシュタル「…何があった?」
ガルド「ゴブリンキングは操られていた人間だった。」
ガルドは横たわるマルクスに目を向ける。
イシュタル「…詳しくは帰ってからだな」
ガルド、ロレッタ、カイルはゆっくりと馬車に乗り込む。
ロレッタ「リィン!」
ロレッタが手を伸ばす。
リィンはゆっくりと手を取ろうとする。
リィン(…あれ?)
リィンはそのまま気を失った。
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ある地下施設。フードの男が姿を現す。
フードの男が見る先には椅子に座る男がいた。
男「ヌル様!やっぱり失敗でしたわ」
ヌル「イータ…実験成果は?」
イータ「まあそれなりに成果はありましたね。この魔石を埋め込むだけでSランク相当と戦えよったし」
ヌル「…問題ない」
イータ「…それに良い玩具もありました。」
ヌル「なんだ?それは?」
イータ「…古代魔法の天敵」
ヌル「…なんだと!?まだ残っていたのか!」
イータは不適に笑う。
ヌル「イータ。お主に任せるぞ。」
イータ「…御意に」
イータはゆっくりと立ち去る。
イータ「リィンちゃんとその銃…ゾクゾクするね」
イータは気持ち悪い笑みを浮かべながら、笑っていた。
その視線は、まるで獲物を見つけた獣のようだった。
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