風の冷たさを知る
まず俺は、外に出て食料を探すことにした。
幸いにもまだオーラからはそう遠くはないはずだ。
ならば、探せばすぐにミーロの木が見つかるだろう。
俺はそう考え、比較的目立つ木の枝に草を結びなら少しずつ森林を進んでいく。
オーラでの活動を始めて間もない頃は、こうした印をつけ活動範囲を徐々に広げていた。
辺りを見回すと、どこも同じような風景だ。
初めて訪れる森では、馴染みのない場所なことに加え、似たような風景により、方向感覚を失う事かある。
今の俺が帰る場所を見失ったら、火を起こすことも出来ない。そのまま森を彷徨って餓死か、魔物に襲われて死ぬだろう。
探し始めて暫くすると、木の上に、握り拳大の赤い実が生っているのを見つけた。
ミーロだ。俺は石を幾つか拾い上げ、それを狙って投擲する。
最初は中々当たらなかったが、暫く繰り返す事で、なんとか三個のミーロを撃ち落とす事が出来た。
一日分ではあるが、それでも十分な量だろう。
道順もしっかり確認すれば、継続的に食料を供給出来る。
そう考えた後、付けた印を確認しながらミーロを抱えて来た道を引き返す。
小屋に着いた頃には、既に日が沈み始めていた。
俺は机の上に二つのミーロを置き椅子に座る。
一つは歩きながら食べてしまったが、そんな事は気にせずに、俺はミーロの皮ごと齧り付く。
静かな小屋の中に、シャクシャクと小気味いい音が響き渡る。
やはり美味い。水分を多く含んでいるため、多少は喉の乾きも気にならなくなった。
そうして俺はミーロを食べ終え、一息着くと、自身の体がかなり汚れていることに気づいた。
明日も同じようにして活動範囲を広げながら、俺が来た方向を、何か手がかりがないか探してみよう。
上手く行けばまた川の近くに出られるかもしれない。
そうして、疲れた体から力を抜き、床へゆっくりと横になる。
そういえばこの小屋、ベッドがないんだよな、と俺はそんなことを考える。
宿を取れるようになるまでの俺は、基本野宿をしていて、地面にそのまま寝ることが多かった。
その癖が抜けず、宿を取っても椅子や床で寝ることが大半だった。
そう考えると、この小屋を用意したのが、別世界の俺というのも少し納得できる。
少なくとも、ベッドや寝袋をわざわざ用意しないやつなんて、俺以外いないと思っている。
それに、床だって案外いいもんだ。
ベッドに比べてヒンヤリしてるし、起き上がろうとする意志を弱くすることだってない。
部屋の中に誰かが入ってこれば、振動ですぐに気づくことも出来る。
それに、この小屋の中にいてドアをきちんと閉めば魔物や獣なんかに襲われることはないだろうからな。
そんなことを思いながら、俺は目を閉じた。
するとすぐに睡魔がやって来て、俺を夢の世界へと誘った。
外から微かに鳥の鳴き声が聞こえ、優しく俺に語りかけてくる。朝だ。
俺は起き上がると、ドアを開け、空気を大きく吸い込む。
ドアの前には、地面に薄らと人間の形をした跡があり、その滑稽さに少し笑ってしまう。
とは言っても、これだって貴重な情報だ。
俺が川に戻るため、どちらへと進むべきか、これはそれをはっきりと示している。
恐らくこちら側が頭だろう。あの日の夜の光景を思い出し、間違えないよう記憶とすり合わせ確認していく。つまりこっちだ。
そう結論付けて俺は小屋の入口から見て右の方向へと向かっていく。
注意深く観察すると、所々に折れた草や枝があり、地面には僅かに足跡が残っている。
見つけた手がかりの近くに、草で印を結びながら進んでいく。
道中では幸運にもよく採集していた野草がいくつか生えていたので、それらを摘み取る。
今はまだ食べれないが、置いてきた荷物を回収すれば、調理できるはずだ。
引き続き進んでいくと、奥に見覚えのあるキラキラとした光が見えた。
それを目指し走ると、急に視界が開け、そこには見慣れた川があった。
川の近くには、以前よりボロボロで、所々に牙で空けられたであろう穴の空いたカバンがあり、その近くにはナイフや硬貨など、置いていった道具が散乱していた。
近くに魔物や肉食獣の痕跡がないか、或いはそのものがいるのではないかと、色々と不安ではあるが、遠目から眺めても、辺りにそれらしきものは見つからない。
「なくなったのは干し肉と、果実はもうダメだな、虫に食われている」
カバンに近寄り物を確認すると、干し肉がなくなっていて、果実もそのほとんどに虫食いがあるか、腐り始めていて、食べることは出来なさそうだ。
だが、ナイフを初めとした道具類や硬貨、布なんかはそのまま残っていて、まだ使えるだろう。
カバンの中にそれらを入れ、先程摘んだ野草を入れたら、それを布で外側から包み、両手で抱えて持ち上げられるようにする。
そうして荷物をまとめると、俺は服を脱ぎ、川の中へと入る。
しばらく体を洗っていなかったことに加え、今までの活動でかなり泥や土が付いている。
それに、体のあちこちに擦り傷や切り傷があり、それらに川の水が染みて、俺は痛みに顔をしかめる。
手で体や頭を擦り、汚れを落としていくと、自身の周囲の水が茶色に染まり、流れていく。
そんな光景に少し嫌悪感を覚えつつも、俺は体を洗い続ける。
何度も擦り、ようやく汚れが出なくなったところで、俺は川から上がったのだが、
「焚き火、焚いとけば良かったな…」
俺はずぶ濡れのまま服を着て、体を震わせながら荷物を持ち、小屋へと帰るのであった。
まだまだ未熟者なので、表現や設定の矛盾、見ずらい部分等を指摘していただけると大変助かります。




