魔法国家マギア
小屋に着いた俺は、机の上に布で包んだカバンを置き、ドサリと音を立てて椅子に座った。
ここに来るまでに体のほとんどは乾いたが、失われた体温まではまだ戻っていなかった。
俺は、焚き火を焚くためにカバンからナイフと火打石を取り出した。
それを持って外に行くと、適当な枝を見繕い、いつものようにして火を起こす。
火が大きくなるにつれ、俺の体は段々と温まっていき、体の震えが収まっていった。
焚き火が十分な大きさになったのを確認した俺は、もう一本のナイフと、先程摘み取った野草を小屋の中から持ってきた。
ナイフの先の方に野草を刺し、焚き火にかざして、十分に火が通ったら食べる。
決して美味くはないが、暖かい食べ物は久しぶりだ。
今の俺にはそれだけで充分だった。
野草を全て食べ終えた俺は小屋に戻り、いつものように横になった。
一時はどうなるかと思ったが、それでも俺はまだ生きている。
川に戻り、またそれに沿って歩いていけば、夜明けにはマギアに着くだろう。
今日は心地よく眠れそうだ。
そう思いながら俺は、まだ見ぬマギアを想像し、やがて眠りにつくのであった。
「…朝か」
横になったまま目を開き、濁った窓ガラスへと目をやる。
窓ガラスを通った光が、部屋の中にぼんやりと広がり、俺に朝であることを告げる。
俺は立ち上がり体を伸ばすと、荷物の準備を始めた。
ここを出る時に持っていこうと考えていたものをカバンに詰めていく。
棚にあった瓶のうちの一つと、本だ。
マギアに行き、魔法に詳しい人物に話を聞けば、これらの物から俺の境遇を考察するヒントが得られるかもしれない。
そう思ってのことだった。
荷物をまとめ終えると、それを布で包み、持ちやすいよう結び目で持ち手を作る。
昨日は両手で運んできたが、中々に不便であったし、あんな持ち方をしていたら、マギアの門番に盗人だと間違われるかもしれないからだ。
準備を終えると俺はさっそく川の方向へと向かった。
道中で見つけたミーロの実を頬張りながら川へ辿り着くと、今度は黙々とそれに沿って進む。
日が少しずつ昇っていき、下り始めた所で、遠くに開けた景色が見え始めた。
どうやらあそこで森は終わりみたいだ。
ここを抜ければ野原に出る。
小鬼はともかく魔狼が野原に出るというのは聞いた事がなかったため、少しは安全になるだろう。
そう考えると、喜びと共にある感情が生じた。
寂しさだ。
勿論魔狼に出会い、死にかけたという嫌な思い出はあるが、毎朝聞こえる鳥の声や森特有の安らぎを感じる匂い、澄んだ空気に癒されたのもまた事実だ。
そう思うと名残惜しく感じた。
悪かったのだが悪くはなかったと、そう思えた。
夜になれば灯りが必要になる。
野原を出たら枝を見つけるのに苦労するだろうから、先に拾っておこう。
俺は、地面に落ちている乾いた枝を幾つか拾い、布を巻き付け火床と持ち手を作りながら進む。
そうしているうちに、ついに森を抜け、風に迎えられながら野原へと出た。
周りを見渡せば一面に草が生えていて、森と比べると随分と見晴らしがいい。
ここをもっと進めば、マギアの外壁が見えてくるはずだ。
辺りが徐々に暗くなってきた所で、俺は先程作った簡易的な松明に火をつける。
油がないから長持ちはしないが、布を足しながら歩けば、何とか夜明けまでは持つだろう。
俺は足元に気をつけながら歩みを進める。
何回か火が消えたが、その度に布を巻き、火をつけてなんとか歩き続けた。
空が白み始めた頃、前方には薄らと大きな外壁と灯りが見えた。
それは徐々に近づいていき、それが、オーラの街の外壁とは違った白色のもので、花や文様といった装飾が施されているものだと気づいた。
間違いない、マギアの外壁だ。
門はまだ閉まっていて、その近くに商隊や馬車、冒険者に見える団体などが野営しているのが見えた。
俺は無事マギアへ辿り着けたことに感動しつつも、それらから適当な距離を取った場所で荷物を下ろし、マギアの門が開くのを待つのだった。
まだまだ未熟者なので、表現や設定の矛盾、見ずらい部分等を指摘していただけると大変助かります。




