幾千もの死体の果て
理解が出来なかった。
あれだけ部屋の中を確認したんだ、当然机の上にランプ以外のものがなかった事だって覚えている。
それに、表紙にデカデカと書かれた文字。
キュクロス・ミトス
俺の名前だ。
身体中に鳥肌が立つのを感じる。
触れてはいけない、知る事自体が禁忌であるような、そんな未知の感覚に襲われる。
だが、俺はその本から目が離せなかった。
呆然と立ち尽くしたまま、考える。
見た目はただの本だ。
しかし、この世界には魔法がある。
この妙な感覚が魔法によるものだとしたら、これは危険かもしれない。
だが、それでも、だ。
俺は意を決してその本に近づき、震える手で本のページをめくる。
ページの一枚一枚が羊皮紙で作られていて、一目で上等なものであることが分かった。
そんな感想を抱きながら、本の内容に目を落とす。
そこに書かれていた内容はあまりにも信じ難く、常軌を逸脱しているものだった。
『 こんにちは。君がこの世界のプロット・アーマーに打ち勝てた事を大変嬉しく思うよ。
と言っても、何が何だかさっぱりだろうから、私から色々と説明してあげよう。
まず、私の名前はキュクロス・ミトス、君自身だ。
色々と言いた気な顔をしているだろうが、一旦最後まで読んでみてくれ。
私達は何者かに何らかの魔法をかけられ、この世界を繰り返している。
世界を救う英雄となった私もいれば、世界を滅ぼす極悪人となった私もいる。
記憶こそないが、私達は何度も死に、その度に別の特性を与えられ、また生を受ける。
これを数え切れぬ程繰り返しているのだ。
君には、私より秀でた空間魔法の才能がある。
これを磨けば、きっと私よりも先に行けるはずだ。
もしかしたら、この魔法を断ち切る事も出来るかもしれない。
まだ幼い君にこんな事を託すのは非常に心苦しいが、私にはもう時間が残されていないのだ。
これより後ろには私が研究し判明した世界の性質や事象などについてまとめておく。
棚にある小瓶や家具なども全て、君のためにそちらへと送った代物だ、是非役立ててくれ。
君に最大限の幸運があらんことを祈っている 』
俺はそこまで読んで、次のページを捲るとそれ以降のページが全てボロボロと崩れていて読めなくなっていることに気づく。
まるで訳が分からなかったが、取り敢えず俺は一度情報の整理をすることにした。
まとめるとこうだ。
この本は別世界の俺によって書かれたものである。
俺は魔法によってこの世界を何度も繰り返している。
俺には空間魔法の才能があり、これを学べば原因である魔法を断ち切ることが出来るかもしれない。
まとめても意味が分からないが、取り敢えずはこういう事だろう。
胡散臭いが、心当たりは幾つかある。
何度も感じたあの妙な感覚。
あれは繰り返された俺の人生の中の幾つかが反応しての事かもしれない。
それに、適性調査で言われたこともそうだ。
別世界の俺が言う、空間属性の才能は彼女が呟いた二つの特殊属性の内、どちらかが空間属性なのだろうと考えれば納得がいく。
だが、不審な点もある。
こいつが用意した物は劣化していたし、研究の成果が書かれたページもその大半がボロボロだった。
こいつの話は綺麗に残っていたのに、だ。
それに、俺のことをどう見つけたのか、また、どうやってそれらを知ったのか、色々と説明不足だ。
そもそも話に突拍子が無さすぎる。
「調べたいのは山々だが、どうするか…」
色々と書いてはいたが、丸腰で魔狼から逃げ出した昨日の夜から、今の俺の現状が変わった訳ではない。
「まずは飯の準備だな」
ぐうぐうと主張をする胃を抑えながら、俺は果実や野草を探しに行くのだった。
主人公の考えについてですが、一つずつ、決定的な勘違いがあります。
まだまだ未熟者なので、表現や設定の矛盾、見ずらい部分等を指摘していただけると大変助かります。




