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俺はなろう系主人公をやめたい  作者: 見切り発車
少年期

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キュクロス・ミトス

俺は脇目も振らず森の中を走っていた。

鼓動がドクドクと血を運び、体中を絶え間なく巡る。


死にたくない、その一心だった。


草木が肌を薄く切り裂き、切り傷を作っていく。

進む度に木にぶつかり、根につまづく。

けれども手足は止まることなく全力で動き、大地を踏みしめ、更なる加速と推進を求める。


魔狼が俺を追ってきていないと気づいたのは、疲れ果てて、地面に倒れ伏した時のことだった。


冷たい地面に転がり、暗がりの中、暫し考える。


思えば当然だ。

どれだけ俺が全力で走ろうとも魔狼は容易く追いつき、俺の肉を喰うことが出来る。

俺が死体になっていないのは、そもそも魔狼が追ってきていないからだ、ということに気づく。


俺は仰向けになり、空を見上げる。


「ここがどこかも分からないし、物もない。

ここで終わりか」


思考の隅々に諦念がじわじわと滲み出していく。


昨日はあんなに綺麗に見えた空も少し寂しさをも感じさせる静かな夜の空気も、その全てが鬱陶しく感じた。


そんな事を考え空を見上げているとふと、目の前の光景に違和感を覚えた。


なんだ、この視界の端にある木の板は。


夜の暗がりに慣れてきた俺の目は、視界の端にある建造物のようなものを鮮明に映し出していた。


不審に思い横向きに寝転がると、そこには古ぼけた小さな小屋があった。


違和感、あの時も、あの時も感じた不快な感覚。


既視感だ。


正直、最悪だった。

この感覚には嫌な思い出しかない。

ギルドで絡まれ、水晶が割れ、次は何が起こるって言うんだ?


しかし、見たところ、こんな所に都合よくある以外は不審な点は見つからないようにも思える。


それに、ここに転がってても魔物の餌になるだけだ。

そう思い、俺は無理をして立ち上がり、ふらふらとその小屋のドアへ近づいた。


ドアをコンコンとノックし、中に人がいるかどうかを確かめる。反応はない。


俺は少しドアを開け、中を覗いてみる。


外から見た通り、中は広くはないが、木製の机や、その上に置かれたオイルランプに、幾つかの椅子、様々な瓶が置かれた棚など、家具や物が十分に置かれていて、窓だってある。


ここで暮らすのに不自由がない程の多様な家具がある事が見て取れた。


俺は、人の小屋に汚れたまま勝手に入ることに多少の罪悪感を覚えつつも、内部へと踏み込んだ。


中を観察すると、家具や道具は古くなっているがそれでいてホコリひとつもない。


そのチグハグさに、俺は背筋が冷たくなる。


というのも、ただ単にそれらが使い古されて古くなっているようには見えないからだ。

一度も使われていないまま風化したような、まるで性質の違う古さだ。


俺はそのチグハグさの正体を確かめようと、家具や道具を一通り確認する。


棚にあるガラス瓶は白くくすんでいる。

中には何かが入っているが、内容物が何かは分からない。

例えるなら、チリやホコリがそのまま瓶の中に詰められたような、そんな外見をしている。


次に椅子と床を見る。

椅子を日常的に使用していたなら、床に微細なキズが生まれるはずだ。それに、椅子自体に傷があってもおかしくはないだろう。

しかし、それらに傷は見られない。


少しずつ、俺の中で未知への恐怖が肥大していく。


次に、机とその上のオイルランプを見た。


オイルランプはその構造上、内部の油壺が劣化しやすく、度々交換しなければならない。

それに、油を補充しようとして零すことだってある。

俺の部屋のオイルランプも補充の際に、手が滑ってよく床に油を零したからだ。

なのに、油を零した形跡や、ランプを解体した形跡は一切見られない。


それらを確認した途端、この小屋が凄く不気味で異質な物のように感じた。


「どういうことだ?何がどうなっているんだ…」


俺はどうにか自分を納得させようと考えを巡らせる。


小屋を使う予定だった持ち主が死んでしまった、あるいはお偉いさんの隠居先だとか、色々想像してはみたが、どれも腑に落ちない。


そんな事をしている内に、しだいに瞼が重くなり、目を閉じる。


そうして迎えた次の朝、くすんだガラス窓から段々と

光が差し込み、目を覚ました俺は起き上がって辺りを見回し、机を見て硬直する。


そこには昨日まではなかった物があった。


本だ。


いや、問題はそこではない。

古ぼけた本の表紙にはデカデカとこう書いてあった。


キュクロス・ミトス

まだまだ未熟者なので、表現や設定の矛盾、見ずらい部分等を指摘していただけると大変助かります。

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