俺の生い立ちってやつだ
俺は元々孤児だった。
いや、元々両親は居たのかもしれないがそれすらも分からない。
物心ついた時には一人で、自分がどう生き延びてきたのか、自分は何者なのか。その一切が分からなかった。
そんな俺に残っていたのはこの体と一つ、キュクロス・ミトスという名前だけだった。
実際にはこれが名前なのかも分からないが、響きが名前のようだから名前として使っている。
最初は何も分からず、その日暮らしで街や国を転々とし、やがてここ、オーラへとたどり着いた。
最初は仕事なら何でもやったさ、内容はかなり酷かったがな。
マトモな大人が草臥れたガキに真っ当な仕事なんてさせるわけがないだろう?
任される仕事は厩舎の掃除やドブさらいといった汚れ仕事が大半だった。
それでも生きていくことは出来たんだから、雇ってくれた奴らには感謝している。
暫くは毎日を食いつなぐので精一杯だったが、ある日、街の建材運搬を終わらせた帰りに、たまたま街の子供が話しているのを見て、大切なことに気づいてからは変わった。
あの子供は大通りのパン屋から大きなパンをお金を渡さずに貰ってた。
あの子供はニコニコと笑っていて丁寧に喋る、それに清潔感があった。
あれだ。
そう直感した当時の俺は、まず街を出て、傍にある川で体を洗った後、街の人がどんな風に話すのか、どんな喋り方が好まれるのかを観察した。
俺には社会性を築いたり、人とコミュニケーションを取る上で最も重要な両親との思い出や記憶ってのがさっぱりなかったからな。
人々の交流を見て、学び、自身に適応していった。
愛想という物を覚えてからは早かった。
以前は門前払いだった売り子、給仕といった仕事が出来るようになり、マトモな飯にありつけたし、安全で清潔な宿も取れるようになったんだ。
今思えば、我ながら打算的な気持ち悪いガキだなと感じるが、あの状況から抜け出すにはそれしか方法がなかったようにも思えた。
それからというもの、俺は前よりも知識や情報といったものを重視するようになった。
相場を知れば物をより安く買える。
人を知ればより多くのものを知れる。
その日暮らしの生活を続けていた俺にとって、僅かな余裕を生み出すそれらは、革新的なものだった。
そうして人並みの生活が出来るようになったのは
俺が12歳になった頃だ。
この頃になると、街の外の冒険者の様子を盗み見て、薬効がある植物や、食用の果実を見分けることが出来るようになっていた。
お陰で俺は店に直接これらを卸して金を稼げたし、実入りだって雇われるよりかは良かった。
だが、全部が全部上手く行った訳でもなかった。
街の外には人を襲う魔物がうじゃうじゃと生息していることを知った。
オーラが円形の壁に覆われているのも、魔物から街の人々を守る役目があったからだった。
金を稼げるようになったとは言え、怪我や病気で休めるほどの貯蓄はまだなかった。
情報を知れば知るほど、自身がギリギリの綱渡りを繰り返していたことを理解した。
俺は悩んだ。
このまま街の外で活動を続けてもいつか限界が来る。
俺には魔物を切り伏せる圧倒的な膂力も、魔物を吹き飛ばす魔法もなかったからだ。
それに、命に危険が迫っていることを自覚した瞬間、それは大きなストレスとして俺の身に降り注ぎ、なんで俺だけこんな目に遭っているのか、俺が何か悪いことでもしたかと、やるせなさに苛まれる日もあった。
それからというもの、魔物への対応策や魔物の情報について調べる日々が何日も続いた。
幸いにも、それらの情報を集めるのは、それほど大変なものではなかった。
夕暮れの酒場や食堂に行くと、依頼を無事に達成して、気分を良くした冒険者がいるからだ。
冒険者に憧れる子供を装って、酒を飲む冒険者から様々な情報を抜き取る、そんな生活を繰り返していた。
これを続けて分かったのが、オーラ周辺の魔物は俺の活動範囲に限って言えば、主に二種類。小鬼と魔狼という魔物が生息しているということだ。
緑色の皮膚を持ち、子供ほどの体躯の小鬼は数は、数は多いが持久力がない。
基本的に群れで暮らすため、必ずしも逃げ切れる保証はないが、油断をしなければ逃げ切ることはできるだろう。
しかし、魔狼は厄介だった。
一般的な狼より一回り大きく、人間より優れたスピードに嗅覚、それに鋭い牙を備えているときた。
一度襲われれば、俺の命はないだろう。
だが、対応策が無い訳ではなかった。
曰く、駆け出しの冒険者は、魔狼が嫌がる匂いを放つ袋を持参し、万が一襲われてもいいように、肉で作ったデコイを携帯しているのだという。
そこまで調べて、俺はこれらを携帯しながら活動し、適正調査の費用、銀貨五枚を貯めることにした。
匂い袋もデコイも魔物という脅威を根本的に解決出来るものではないため、これらが何らかのイレギュラーで効果を発揮しなかったら、俺は呆気なく魔狼の飯だ。
根本的な解決のためにも、小鬼も魔狼も気にしなくていいほどの力が欲しかったのだ。
「そうしてなんだかんだこの物語の冒頭のシーンに繋がるってわけだ、我ながら結構頑張ったな」
「主人公だからなんの苦労もなくチートを貰ってイキがるだけなんてつまらないだろ?」
「だから今回は特別だ、俺の苦労自慢を一話使って見てほしかったのさ、バックボーンってやつだよ」
「じゃ、俺は最新話の物語を作ってくるよ、またな」
まだまだ未熟者なので、表現や設定の矛盾、見ずらい部分等を指摘していただけると大変助かります。




