響く音
静かになった部屋の中に、アリシアの言葉がポツポツと響く。
「実は、私には師匠がいたんだ。もっとも、十数年前に消息不明になっていてね」
「食堂で君が聞いてきた空間魔法の知識や、魔力の操作についても、師匠と共同研究したものだ」
「君の手前、こんな話を聞かせるのは気が引けてね、隠していて申し訳ない」
彼女は悲しげな顔をして、話を続ける。
「師匠と研究をしていたある日の事だ。師匠は空間魔法の研究中に忽然と消えてしまった」
「まだ推測の域を出ないが、師匠は空間魔法の構築を誤り、異世界、または並行世界に行ってしまったのだろう」
「そうなってからは私一人で研究を続けてね。師匠の足取りを辿ろうとしていたんだ」
「そんな中、君が現れた。一目見て確信したよ。君から立ち上る異世界の魔力が、研究の手がかりになるだろうとね」
「騙してしまうような形になってしまって申し訳ない。だが、どうか私と一緒に、空間魔法の研究をしてはくれないだろうか」
そう言って、彼女は頭を下げる。
「頭を上げてください。
事情は分かりました。なら、早く魔力操作の基礎を修めなければいけませんね」
俺の言葉を聞いて、彼女は驚いた様子で顔をあげ、こう言った。
「い、いいのかい?」
「ええ、元々呪いの手がかりについて知りたかったですし、恩恵がないわけじゃないですからね」
俺の身に何が起きているのか、分かっているのはまだ少しではあるが、それらが前進したのは偏に彼女のおかげだ。
「そ、そうか…」
彼女は嬉しそうな、安堵したような様子で、呟く。
「それにしても、あんな意味深な感じで伝える必要はなかったとは思いますけどね」
「あ、あれはなんか、折角弟子を取るなら威厳があった方がカッコイイかなと思ってだな…」
顔を赤くし、慌てふためいた様子でそうまくし立てる彼女を見て、思わず吹き出してしまう。
「わ、笑ったな!私にとっては大事な事なんだぞ!」
「じゃあ、服装と髪の毛くらいしっかり整えておいてくださいよ」
そう言葉を返すと、彼女は途端に静かになり、俯いてしまう。
「そ、そんなことよりも、君のその適性についてだ」
無理矢理話題を切り替えるようにして、彼女は俺に向けてこう告げる。
「君の属性は水、空間、時の三つだ。
それも、かなり恵まれた才能があるようだ」
ローブを着ながら、続ける。
「水、空間については君も知っているだろうが、時属性については未だそのほとんどが明らかにされていない」
「単に使い手が少ないからか、それとも構築がとんでもなく難しいからか、どちらか分からないが、前者は正しいだろうな」
「私も長いこと魔法の研究をしているが、時魔法を専門にする教授はおろか、適性を持つという人物でさえ会ったことがない」
「望むなら水属性に詳しい知人を紹介できるが、時属性は難しいだろう。
ここまでで何か質問はあるかい?」
そう説明した後、彼女はこちらの様子を伺う。
「いいえ、特には」
「では続けよう。
従って、時属性の情報については、この学院内にある図書館の本が主なものになるだろう」
「私も知人に聞いて周り、何か分かったことがあれば、君に報告しよう」
そこまで説明して、彼女はこちらを真っ直ぐと見て、
片手を差し出す。
「改めて、よろしく頼む」
差し出された手を見ると、それは僅かに震えている。
俺は彼女の目を見て、笑いながら手を取る。
「ええ、よろしくお願いします」
俺はそう言って手を取ると、彼女は嬉しそうな表情を浮かべ、顔を輝かせる。
そうしていると、グュルルルと、音が鳴った。
俺は不思議に思い、音の発生源を辿ると、彼女は恥ずかし気な様子で俺にこう言った。
「朝から何も食べていないんだ。
取り敢えず、ご飯でも食べに行かないかい?」
まだまだ未熟者なので、表現や設定の矛盾、見ずらい部分等を指摘していただけると大変助かります。




