紫色の髪
床に寝っ転がっていた俺は、朝の訪れを感じ、自然と目を覚ます。
起き上がった俺は、荷物をまとめながら今日の予定を脳内で組み立てる。
今日は街の外に稼ぎに行く予定だから、アリシアに早めに伝えに行くか。
今から急げば、昼には薬草採取に行けるだろうし、そうすれば、日没までには薬草の換金も終わる。
そこまで考えて、俺は宿を出る。
すっかり見慣れた大通りを進みながら、辺りの店を見渡す。
大通りには馬車が何台も走っており、屋台の準備や食材の買い出しをする人々が忙しなく動いている。
街中の屋台の多くは飾り物や手軽に食べられる軽食で、所謂娯楽よりの物ばかりだ。
俺もその事は理解していて、今まで見ることもなかったが、今は妙にそれらが気になった。
そうして大通りを歩いているうちに、魔法学院が見えてきた。
魔法学院に近づくほど、先程のような屋台や、門の近くに集まっている宿屋や食堂などは減り、魔法の研究や薬品の調合に使うであろう材料を売る店が増えてくる。
そうして観察を続けていると、やがて、魔法学院の門へと着いた。
「ああ、アリシア様のお弟子さんですね、どうぞ」
門に近づくと、門番がこちらに気づき、そう告げてくる。
俺は門番の顔を確認して、一つ疑問が浮かぶ。
昨日とは違う門番だ。
「ありがとうございます。
ところで、ここに来てそんなに時間は経ってないはずですが、どうしてそれを?」
俺は聞きにくいことでもないだろうと思い、門番へ率直にそう疑問を投げかける。
すると、その門番は困ったような顔でこう言った。
「アリシア様が昨日、嬉しそうに言ってましたよ。
私にも弟子が出来たんだ、白髪の可愛い子でね。
魔法を教えるのが楽しみで仕方がないよ、と」
「話す人全員にそれを言って回るものですから、私達の間だけでなく、学院内でも有名ですよ」
どうやらいつの間にか有名人になっていたみたいだ。
「そうですか…では、失礼します」
俺は気恥ずかしくなり、逃げるように学院内へと入る。
迷わないよう注意しながら、昨日の道順を思い出し、アリシアの部屋へと進む。
やがてアリシアの部屋の前へとたどり着き、ドアをノックし、声をかける。
「君か、入りたまえ」
ドアの向こうから、くぐもった声が聞こえたのを確認して、扉を開く。
部屋の中には本が散らばっていて、その中に見覚えのあるローブが脱ぎ捨てられているのが見える。
その奥にある書斎机に、肌着を着たアリシアが座っている。
おそらく寝起きなのだろう。長い紫髪はボサボサと絡まっていて、いつもの威厳は見る影もない。
「おはようございます、師匠」
彼女は嬉しそうにこちらを見ながら、こう返す。
「おはよう、我が弟子よ。さっそく魔法の練習を始めようか」
色々とツッコミどころはあったが、まずは要件を伝えることにした。
「その事についてなのですが、今日は生活費を稼ぎに薬草採取に行ってきます」
その言葉を聞いて彼女は、ガッカリしたような、悲しそうな顔をして、その後、閃いたような顔をする。
「生活費がないなら、ここに住めばいいじゃないか
金もかからないし、毎日ここまで歩くのも疲れるだろう、ご飯だってあるぞ?」
彼女は何を言っているのだろうか?
突拍子もない言葉に呆けていると、彼女はこう続けた。
「もちろん、研究が進めば給金も出すし、休みだって作る。そうなるまでは、ここに住んだ方が効率的だろう?」
俺が知らないだけで、魔道士の弟子とは一般的にこういうものなのだろうか。
「それは有難いのですが…」
彼女は俺の言葉の雰囲気を察して、被せるようにこう言った。
「君だってその身にまとわりつく呪いや、その出処について、早く解き明かしたいだろう?」
そう言った彼女に、俺は言葉が詰まる。
確かに呪いについて、俺はまだ何も知らないと言ってもいいだろう。
それに、この呪いが引き起こしたであろう現象を思い出すと、何が起きるか予想が出来ず、あまり悠長にもしていられない。
「そう、ですね。今日からよろしくお願いします」
俺の返事を聞いた彼女は、満足気に頷き、笑顔を浮かべる。
「それは良かった。さっそく練習を始めよう、と言いたいところだが…」
彼女は髪を手ぐしで梳かしながら、俺にこう告げる。
「弟子の手前、こんな格好では恥ずかしくてね。髪を梳かしてはくれないかい?」
何作か他の作者さんの作品読んで、自分の作品を見直してたんですが、どうにも淡白に感じてしまって、投稿が遅れました。すみません。
ちょっと前の話をリライトしながら続き書きます。




