はじめの一歩
俺は朝一番に魔法学院へと赴いた。
「おや、随分と早いじゃないか」
本を読んでいた彼女は、研究室を訪れた俺を見て、興味深そうにそう言った。
「ええ、どうやら良い友達を持ったみたいです」
胸の首飾りを触りながらそう答える。
そうすると、彼女は納得のいったような顔をして、ニヤニヤとこちらを見る。
「そうかい。それで、返事はどうかな?」
「是非、よろしくお願いします」
俺はお辞儀をしながらそう彼女に伝える。
「その言葉が聞けてよかったよ。それじゃあ、早速研究を始めよう。といっても、まずは基礎からだがね」
そう言って彼女は床に積み上げられた本の中から一つの本を引っ張り出し、こちらに放り投げる。
「字は読めるだろう?それを読みたまえ」
その本を受け止めた後、その本の表紙を見ると『基礎魔法の根源』と書かれていた。
「魔法は大まかに四種、火、水、風、土の四つに分かれていて、これらは基礎魔法と呼ばれる。確か、この世界を作った神の魔力の残りが定着し、世界中を廻っているというのがこの説の根本だ」
本を見ると、四人の神がそれぞれ属性の魔法を使い、世界を創造する様子が描かれている。
「君の空間魔法は、それらには分類されない特殊な魔法だ。基礎魔法に比べて適性を持つものが少なく、分かっていないことも多いんだ」
彼女は椅子に座りながら火の玉を作り、それを空中で動かしながら、こう続ける。
「それ故に、危険だ。特に空間魔法は格別でね。制御を誤った術者が、忽然と姿を消してしまった、なんて話もあるんだ」
火の玉はドクロへと姿を変え、やがてふっと消える。
「私も空間魔法を扱えるが、進めば研究は手探りになっていくだろう。折角の弟子がそんな目にあってほしくはないからね。魔力の扱いを覚えてもらうよ」
彼女は席を立つと、俺に近づき、いきなり手を掴む。
驚いて彼女を見ると、突然手に暖かいものが流れる感触がした。
初めての感覚に違和感を覚えながらも、彼女の方を見てこう聞いた。
「これが、魔力ですか?」
「そうだとも。今は私が流しているが、自分で動かせるようになるまで暫くかかるから、覚悟するように」
手から胸、足など、全身に温かいものが巡っていく。
暫くすると、その感覚は徐々になくなっていく。
「そろそろ私は講義の時間だ。それまで適当に部屋の本でも読んでいてくれ。もちろん、魔力を動かしてみても構わないよ」
彼女は挑発的に俺にそう告げて、まとめてあった物を抱えて足早に部屋を出る。
一旦落ち着いた俺は、本を読むより先に、気になった事をまとめることにした。
まず気になったのは、彼女の空間魔法についてだ。
彼女は空間魔法は特に危険だと言っていた。
であれば彼女は誰に空間魔法を教わったのだろうか、或いはどうやって扱えるようになったのだろうか?
二つ目に、彼女が空間魔法を知ろうとする理由だ。
彼女は火の玉を作ってドクロを形作り、消していた。
単なる知的好奇心からかもしれないが、火魔法の適正のある彼女が、わざわざ危険な空間魔法を扱おうとする明確な理由が分からない。
彼女の言う知りたい事とは、それ程のものなのだろうか。
そこまで考えて、俺は考えるのをやめる。
まだ出会ってそれ程時間も経っていないし、彼女と過ごす内に分かることだってあるだろう。
俺は積み上がった本の中から、なるべく簡単な内容の本を探す。
すると、その中から『魔力の操作と魔法の構築について』と書かれた本を見つける。
まずは彼女の言う通り、魔力の操作の基礎から身につけるべきだろう。
そう思い、俺は少し古びた表紙を開くのだった。
まだまだ未熟者なので、表現や設定の矛盾、見ずらい部分等を指摘していただけると大変助かります。




