タイムトラベラー
何故それを?
俺の心を読んだかのように彼女はこう言葉を続ける。
「少し前に、私の所に奇妙なガラス瓶が一つ届いてたんだ。危険物でないか確認してほしい、とのことだった」
彼女は面白そうにニヤニヤとしながら、それの種明かしをしていく。
「自分で言うのもなんだが、こう見えて私は物知りでね。たまに危険物の調査なんかも頼まれていて、今回もいつものようにそのガラス瓶の内容物を調査したんだ」
「中身は大したことなかったんだが、問題はそのガラス瓶でね。そのガラス瓶から夥しい魔力の残滓が浮かび上がったんだ」
「不思議なことに、たまたま通り掛かった君の体からも同じように、その魔力の残滓が浮かび上がっているのが見えたんだ」
「それに、数日前に私の友人がオーラへと向かっていてね。オーラの街は水晶を破壊した白髪の少年の話で持ち切りだと手紙を書いて送ってくれたのだよ」
「別にどうこうするつもりはないよ。ただ、君にはその魔力について聞きたいんだ」
そうして、真面目な顔になった彼女は、真剣な眼差しでこちらを見据え、こう問う。
「君はどこまで知っている?」
俺は、質問の意図がよく分からず、困惑した表情を浮かべながら、彼女へこう聞き返す。
「どういうことです?」
すると、彼女は続けてこう言った。
「とぼけても無駄だ。君のその残滓は異世界の魔力の残滓そのものだろう」
なんとなく話が食い違っているように感じた俺は、自身の状況について話すことにした。
何度も既視感を感じ、それを感じると何か良くないことが起こるということ。
オーラからマギアへの道中、魔狼に襲われ、逃げた先に小屋があったこと。
一晩を過ごした後、いつの間にか、俺が書いたであろう本があったこと。
全てを聞き終えたアリシアは、複雑な顔をしながらこちらを見つめていた。
「では、並行世界に直接は干渉していない…?いやしかし…」
ブツブツと何かを呟き、考えている様子だったアリシアに、俺は一つの本を見せる
キュクロス・ミトスだ。
「これが例の?」
その本を読みながら、アリシアは不可解そうにそう言った。
「はい、それに書かれているもの以上のことは、私にも分かりません」
彼女は頭を指でトントンと叩きながら、本を読み進めていく。
「プロット・アーマーは何を指している?繰り返し…?呪いと関係があるのか、あるいは…または並行世界のことを人生を繰り返した自分だと?いやまて、彼には才能があるのか」
呟きは加速していき、やがてピタリと止まる。
そうして彼女は口を開く。
「君、私の弟子にならないか?」
どうしてそうなったのかイマイチ理解が出来ない俺は、彼女にその理由を尋ねる。
「いきなり、どうしてですか?」
「君には空間魔法の才能があるらしいじゃないか。それに、水晶も割っているのだ。
君の反応を見るに、それは疑いようのない事実だろう。
私にはどうしても知りたいことがあってね。
私が君に空間魔法を教えるから、それを知るために、私と他の世界について調べないか?」
「もちろん金銭面については私が援助しよう。それに、休みだって少なくないぞ」
いきなり言われた突拍子の無い言葉に、思考が追いつかない。
やはり彼女にも何らかの事情があるようだ。
しかし、なにが彼女をこうまでさせるのだろうか。
俺の頭に、そんな事が浮かび上がる。
「二日ほど、考える時間を貰ってもいいですか?」
「もちろん良いとも、是非二日後に良い返事を聞かせてくれ」
その言葉を聞いて後、俺は逃げるようにして部屋を出て、来た道を引き返し、宿へと戻る。
未だに先程の言葉が脳内をグルグルと回る。
一体何がどうなっているのだろうか。
もちろん本のことや魔法のことについては気になるが、いくらなんでも急すぎる。
精神的に疲れた俺は、宿の床にどさりと寝転がりながら、明日三人にそれとなく相談してみよう。そんなことを考えながら体を休めるのであった。
まだまだ未熟者なので、表現や設定の矛盾、見ずらい部分等を指摘していただけると大変助かります。




